ブレインケアもお忘れなく

フリーランサーは、生活の安定性を手放す代わりに、仕事を組み立てる自由を手にします。

午前中に何をしてもいいし、土曜日に何をしてもいい。

自分好みに時間の設計を行えます。さらにいえば、仕事を選ぶことだってできます。直属の上司なるものが存在しないので、「いや、その仕事はちょっと……」と断ることもできちゃうわけです。

ある意味では、とてもすばらしいのですが、気をつけないと問題もありそうな気がします。

脳を伸ばす

先週、多くの時間を使ってプログラミングをしていました。といっても、HTML5 + JavaScriptで自分専用のツールを作っていた、というだけです。その成果は、おいおい公開していきますが、個人的にたっぷり楽しめました。

で、その後文章を書いてみると、何かが違うのです。何かが妙にスッキリした感じがするのです。

長らく椅子に座っていると、体が凝ります。

で、椅子から立ち上がり、腕を目一杯上に伸ばしながら、うう〜っと体全体をひっぱりあげると、ちょっとリフレッシュした感じがしますよね。それの脳バージョンみたいなものをイメージしてください。

そういう感覚が、みっちりコードを書いた後にあったわけです。

書けなくなったライター

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築山節さんの『フリーズする脳』にこんなお話がありました。

とあるフリーライター。当初は「何でも屋」的に仕事をこなしていたが、ヒット作が出たことによって余裕が生まれ、「売れそうな本を一冊丸ごと執筆する仕事に絞って」いった。大きな仕事に専念できると思ったのだ。しかし、徐々に文章が思い浮かばなくなり、思考がすぐに途切れてしまうようになってしまった。なかなか仕事が進まないので仕事により時間を使うようになったが、ほとんど書き進められなくなってしまった……。

自分の状況として想像すると背筋が寒くなってきます。脳が衰えてしまったのでしょうが、その原因は何なのでしょうか。

築山さんは、「何でも屋」という部分に注目します。つまり、いろいろな仕事をこなしていたから、クリエイティブが鍛えられ、ヒット作が生み出せた。その後、雑用的な仕事をばっさり切り落としてしまうと、脳の稼働率が落ち込み、クリエイティブな仕事にも影響を与えてしまった。そんなお話です。

若い頃には嫌でも雑多なことをやらされているわけですが、偉くなってくると「これはもう自分でしなくてもいい」と選べる場面が増えてきます。それで面倒な作業を省いていくと、仕事や生活がどんどんシンプルになっていく。そうした方が効率よく才能を発揮できそうな気がしますが、そうとは限りません。「忙しかったのにできていた」のではなく、本当は「雑多なことをしていたからできた」のかも知れません。

幸か不幸か、私は偉くないので面倒な作業はあんまり省けません。そもそも、フリーランサーは雑多な用事から逃げられないものです。でも、案外それで良いのかもしれません。

私なんかは家事もやっているので、面倒な作業は毎日訪れます。でも、それによって助けられている部分もあるのかもしれません。

文章書き漬けの日々

毎日更新のブログ、毎週配信のメルマガ、毎月発売の電子書籍。

フリーランスになって書く仕事が増えました(というか、増やしました)。そこに書籍の執筆も入ってきます。

一日は書くことからはじまり、書くことで終わる。というのは嘘ですが(一日はお酒を飲むことで終わります)、一週間のほとんどの作業時間を文章を書くことに使っていることは間違いありません。

そういう選択ができるのもフリーランサーのメリットではあるのですが、ややもすれば危ない状況にはまり込むのかもしれません。

「効率的に効率的に」と考えていくと、究極的にはそのことだけをやっていればいいという風になっていきますが、脳はそういうものではありません。

ひさびさにどっぷりコードを書いてみて、このことは実感しました。脳のいろいろな部分を使っておくのが大切なのでしょう。

さいごに

最近「忙しい」を言い訳にして、イベント参加や動画配信などから距離を置いてきましたが、こうしたものも(頻繁にではないにせよ)ちょこちょことやっておいた方がよいのかもしれません。

キャッシュフローケア、ヘルスケア、メンタルケア、そしてブレインケア。

ケアしなければならないものが、いっぱいありますね。

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10/13 〜 10/18 今週のまとめ

今週のまとめエントリーです。

  1. センスは磨くもの
  2. キュレーションアプリをみながらぼんやり考えたこと あるいはWebの古典の作り方
  3. 時間が経過してなお、残っているもの
  4. 【告知】11月3日に「知的生産の技術」系のイベントに登壇します
  5. 【書評】デジタルは人間を奪うのか(小川和也)
  6. 俯瞰性を重視した手帳「MOMENT」が面白そう

なんとなく「センス」に関する話題が多い週でした。

引き続き、11月3日のイベント参加者募集中です。

元祖ライフハック=「知的生産の技術」とセンスを磨いて情報発信の達人になるには?

ご興味あれば、ぜひ。

今日の一言

今日の一言はこちらでつぶやいております。

10月13日

「行動」の力強さを理解しておくのが吉です。危なっかしい理念なんかより、よほど習慣の方が力があります。良い習慣でも、悪い習慣でも。

10月14日

アイデアは、そうやって広がっていきます。

10月15日

「こういうところを目指しましょう!」と掲げるのは、指でどこかを指すことです。それはスタート時には必要ですが、実行時はさほど強い力を持ちません。人の歩みを促進するのは、「うんうん、その方向でいいですよ。頑張りましょう」という評価の方です。

10月16日

計画から具体的な行動をどれだけ導き出せるか。チームでも、個人でもそれが鍵を握ります。

10月17日

いわゆる「遊び」というのは、伸びしろとも考えられます。

10月18日

でないと、自分の想像に囚われてしまいます。

今週のその他エントリー

note

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明日のメルマガ告知

毎週月曜日に配信しているメルマガ。来週号の目次はこんな感じです。

○ブログを10年続けて、僕が考えたことvol.19 「ブログが拡げるもの」
○BreakthrNotebookShell #22
○僕らの生存戦略 vol.64 「進捗記録:14」
○今週の巴読み「センスの磨き方」
○知的生産エッセイ 「閉じてから、開く」

→メルマガの過去分エッセイは「Facebookページ」にて読めます。

頂いた感想など:

Weekly R-style Magazineは、毎週月曜日の朝7時に配信されているメルマガです。

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Weekly R-style Magazine ~プロトタイプ・シンキング~(まぐまぐ)

ブログに書けないテーマ、長期的な連載、日々考えていることなどをお送りしています。

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俯瞰性を重視した手帳「MOMENT」が面白そう

百聞は一見にしかず。

MOMENT

※以下の画像は公式ページより拝借しました。

screenshot

screenshot

ページの右サイドがバーチカルのウィークリーになっています。ビジネス用途を意識して土日だけブロックタイプで、平日の幅を確保しているのが一つの特徴。

で、ページの左サイドはメモです。ごくノーマルなメモ。このままだと普通の手帳なのですが、かなり特殊な構造になっています。

一ヶ月のカレンダー、つまりマンスリーページが折り込み式になっていて、それをウィークリーページに挟み込むことで両方を一覧できるスタイルを作っているのです。その場合、メモページが隠れるわけですね。

一週間経ったら、ウィークリーページをめくる。折り込み式なので、マンスリーページの下にページを送ることになります。すると、マンスリーは固定されて、ウィークリーだけが次週分になる。こういうスタイルです。月の変わり目には、あたらしいマンスリーページが出てくるので、先月のマンスリーは役目を終えます。

ちなみにマンスリーページの裏側はToDoリストになっているようで、マンスリーを裏返しにめくって、3ページ分のビューにすれば、

ToDo – メモ – ウィークリー

というビューにもなります。また、最初のページに年間カレンダーもあるようで、それをめくると

年間 - マンスリー – ウィークリー

というビューもできるとのこと。

なかなか斬新な手帳はないでしょうか。

以前から、「セパレートダイアリー」のような形で、あるビューは固定したまま、別のビューは動かす、といったスタイルは生まれていました。でも、わりと独自感のあるスタイルで、向き不向きもきっとあったことでしょう。

MOMENTは、使い勝手としてはごく普通の手帳とかわりなさそうです。なんといっても、それぞれは普通のページなのですから。でも、手帳そのものの作り方を変化させたことで、ビュースタイルを変化させました。

間違いなくコストがかかる作り方ですが、使い勝手の面はかなり良さそうな雰囲気があります。みなさんも、ウィークリーページとマンスリーページを何度も行き来した経験はお持ちでしょう。一週間の予定は、その前後の週の予定にもけっこう影響を受けるものです。

私はスケジュール管理はほぼGoogleカレンダーに移行しているわけですが、既存のノートの構造に縛られていない「MOMENT」の発想はいろいろ参考になりそうです。

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【書評】デジタルは人間を奪うのか(小川和也)

なかなか印象的なタイトルだ。つられて思わず本書を手に取った。

デジタルは人間を奪うのか (講談社現代新書)
デジタルは人間を奪うのか (講談社現代新書) 小川 和也

講談社 2014-09-18
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ソーシャルメディアによる失言問題、インターネット墓地、忘れられる権利、ロボット記者、ビットコイン、ブレインゲート、……デジタル技術に関するさまざまな最新トピックが紹介されている。

しかし、無批判な礼讃ではない。新しい技術が私たちにもたらしてくれるものに光を当てながらも、そこに潜む懸念は忘れられていない。

そのことはタイトルが示している通りだ。デジタル化と人間性。光があれば、影が生まれる。そして両方があることで、立体感が生まれてくる。

概要

章立ては以下の通り。

序章 デジタルの船からは、もはや降りられない
第1章 デジタル社会の光と影
第2章 モノのネット化で変わる生活
第3章 ロボットに仕事を奪われる日
第4章 仮想と現実の境界線が溶ける
第5章 脳と肉体にデジタルが融合する未来
第6章「考える葦」であり続ける
終章 デジタルは人間を奪うのか

第1章〜第5章では、新しい技術の紹介に力点が置かれている。普段インターネットで情報を摂取していない人なら、目新しい話題が多いかもしれない。あるいはゾッとする話題もあるだろう。その感覚は、きっと忘れてはいけない。

第6章では著者が考える「在るべき状態」が提示される。それは実にシンプルでわかりやすい。「人間は考える葦であり続けなければならない」。ただし、これは想像するよりもずっとずっと難しい。

テクノロジーの舟に乗って

拙著『ハイブリッド読書術』の中で、テクノロジーについて簡単に触れた部分がある。要約すると、「テクノロジーは常に人を楽な方向に導こうとする使命を課せられている」ということだ。「このテクノロジーで人の苦労が10倍アップします」なんてものがあっても誰も見向きもしないだろう。

一方「考える」ということは楽ではない。ぜんぜん楽ではない。すると、一番ありそうな帰結は、私たちはどんどん考えなくても済むようになっていく、という未来だ。テクノロジーを手放しで進化させれば、待っているのはそういう未来である可能性が高い。本書もそれを示している。

だから、意図的な選択が必要になる。意志のある決断が必要になる。

私たちの手に残すものを選ぶ

その意味で、「デジタルは人間を奪うのか」というタイトルは、こう言い換えることもできるだろう。「私たちはデジタルを手に入れる代わりに、何を手放そうとしているのか」と。

もちろんその問いには、「何を手放してはいけないのか」という問いも含まれる。

これは真剣に問われるべき問いであり、さらに言えばバランス良く問われる必要もある。つまり、マッドサイエンティスティックなテクノロジー信奉者や、その逆の無教養なアンチ・デジタル派だけが問うても不十分なもの(あるいは、非現実的なもの)になりかねないということだ。

技術だけでも、倫理だけでも足りない。複数の領域にまたがる議論が必要になってくるだろう。

本書は、その橋渡しとして、一定の役割を担っているように感じる。

(※以下は、私の雑感なので興味がない人は読み飛ばしてくれて構わない)

バカヤロー事件とTwitterの利用

1953年の衆議院予算委員会で起きた「バカヤロー事件」が紹介されている。

質疑応答中にとある議員が小声で「バカヤロー」とつぶやいたものがマイクに拾われてしまい、結果的におおごとに発展してしまった。簡単に言えば、そんな事件だ。そのマイクの機能を現代はTwitterが担っていると著者は指摘する。確かにその通りだ。

そして私はSF的妄想に思考を飛ばす。

ならいっそ、議員一人一人にピンセットマイクを付けてもらい、その音声をテキストに変換し、ネット経由でそれぞれの議員のTwitterアカウントでつぶやくようにしたら面白いに違いない。そのアカウント群のリストを作れば、Twitterから予算委員会が眺められる。なんといっても、動画を見るのですら億劫という人が多いのだから、こういう形で「開かれた国会」を作るのもよいだろう。

確実にこんな法案は通らないだろうが。

ビットコインについて

問題がいろいろ指摘されているビットコインではあるが、以下の点は非常に重要だ。

管理者が存在しないがゆえ管理コストがゼロに近いため、海外送金や電子決済にかかるコストが極めて安い。これにより遠方への送金や小額の取引がしやすく、流動もアクティブになる。

情報の移動コストを劇的に下げたインターネットがもたらした影響を考えると、海外送金や電子決済にかかるコストが極めて安いというのも、相当にインパクトがありそうだ。

もちろん、これはビットコインを使いましょう、という話ではない。コストを下げられる別の手段があるなら、それでも全然構わない。ともかく「間」のコストが下がると、信じられないことが起きる。超伝導みたいなものかもしれない。

パラリンピックとオリンピック

両足義足の選手がオリンピックに出て、好成績を残した。日本だと、苦労体験からのサクセスストーリーとして描かれるだろうが、もちろんそんな単純な話であるはずがない。

もし、義足が不自由さをもたらすもの(あまり早く走れない)ではなく、より早く走れるためのテクノロジーであったのなら。

ひとりだけがその義足を付けていて、その他の選手は生身(あえてこう書く)だったら、そのレースははたして「公平」なのだろうか。あるいは、全選手が義足だったら、その競技では何が競われていると言えるのだろうか。

この問題はマイケル・サンデルが『完全な人間を目指さなくてもよい理由』で論じている。非常に興味深い問題だ。

ニーチェの文体

タイプライターを導入したことにより、ニーチェの文体がそれ以前と変わってしまったらしい。タイトで電報めいたものに近づいた、と本書にはある。

たぶん、こうしてキーボード+テキストエディタで文章を書いている私の文体は、原稿用紙+万年筆で文章を書いていた頃とはきっと変わっているのだろう。

SF的妄想を持ち出さなくても、音声入力をテキスト表示してくれるツールはすでにある。きっとそれで文章を書けば、文体も変わる。では、その次は。

脳内をスキャンして、テキスト出力してくれるツールだろう。そこに文体というものがあるのか。あるいは逆にゴースト(注意:攻殻機動隊を観ましょう)丸出しになるのか。そんなことも文章書きとしては未来の楽しみである。

▼こんな一冊も:
[Kindle版]

デジタルは人間を奪うのか (講談社現代新書)
デジタルは人間を奪うのか (講談社現代新書) 小川和也

講談社 2014-09-20
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ソーシャル時代のハイブリッド読書術
ソーシャル時代のハイブリッド読書術 倉下 忠憲

シーアンドアール研究所 2013-03-26
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完全な人間を目指さなくてもよい理由-遺伝子操作とエンハンスメントの倫理-
完全な人間を目指さなくてもよい理由-遺伝子操作とエンハンスメントの倫理- マイケル・J・サンデル 林 芳紀

ナカニシヤ出版 2010-10-12
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【告知】11月3日に「知的生産の技術」系のイベントに登壇します

以下の本の関連イベントです。

知的生産の技術とセンス ~知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ情報活用術~ (マイナビ新書)
知的生産の技術とセンス ~知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ情報活用術~ (マイナビ新書) 堀 正岳 まつもと あつし 小長谷 有紀

マイナビ 2014-09-25
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元祖ライフハック=「知的生産の技術」とセンスを磨いて情報発信の達人になるには?(Peatix)

今回は、新著「知的生産の技術とセンス」の著者堀正岳氏とまつもとあつし氏、そしてブログR-Style主催の倉下忠憲氏とともに、ライフハックの原点とも言える梅棹忠夫氏の著書「知的生産の技術」から、情報発信の達人を目指す方々へのヒントを提供します。

というわけで、Lifehacking.jpの堀さんと、ジャーナリストのまつもとさんのイベントに、ハンバーガーのピクルスみたいな感じでちょこっと参加させていただくことになりました。パネルディスカッションで「ふんふん」とか「なるほど」とか頷いている係として頑張ろうと思います(※)。
※冗談です。

ソーシャルメディアや、ネットに溢れかえる情報を如何に収集・整理し、向き合うか、仲間をどう見つけ如何にチームで知的創造を行うか、それらを通じて自己の成長のためのセンスをどう磨くのか――誰もが知的生産者となった現代を生きていくヒントを提示します。

みなさんお忘れかもしれませんが、一応Evernote知的生産アンバサダーなんで、何かその辺の話ができたらいいなと思います。

定員は30人ということで、もしかしたら早めに埋まるかもしれませんのでご注意を。

元祖ライフハック=「知的生産の技術」とセンスを磨いて情報発信の達人になるには?(Peatix)

screenshot

▼こんな一冊も:

EVERNOTE「超」知的生産術
EVERNOTE「超」知的生産術 倉下忠憲

シーアンドアール研究所 2011-02-26
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時間が経過してなお、残っているもの

『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』という素敵な本があります。

村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫)
村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫) 河合 隼雄 村上 春樹

新潮社 1998-12-25
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その中で春樹さんは、「フィクション」についてこんなことを書かれています。

最近小説が力を失ったというようなことが巷間よく言われるわけですが、ここでも言っているように、僕は決してそうは思いません。小説以外のメディアが小説を越えているように見えるのは、それらのメディアの提供する情報の総量が、圧倒的に小説を越えているからじゃないかと僕は思っています。

たしかに小説に比べると、あたらしいメディアが持っている情報の量はとてもとても多いものです。

それから伝達のスピードが、小説なんかに比べたら、もうとんでもなく早いですね。

でもって、スピードも圧巻です。ちまちまページを読み進めていったり、空が赤みを帯びるまで本に没頭していたり、なんて必要はありません。ただぼーっと眺めているだけでも、ものすごく短時間で大量の情報が私たちの目に(あるいは脳に)入り込んできます。

だから、小説なんてメディアは時代遅れだ。そんな風に感じることもあるでしょう。

でも、本当にそうなのでしょうか。早く・多く・手軽なものが、常に善なのでしょうか。

でも僕は小説の本当の意味とメリットは、むしろその対応性の遅さと、情報量の少なさと、手工業的しんどさ(あるいはつたない個人的営為)にあると思うのです。それを保っている限り、小説は力を失わないのではあるまいか。時間が経過して、そのような大量の直接的な情報が潮が引くように引いて消えていったとき、あとに何が残っているかが初めてわかるのだと思います。

時間が経過してなお、残っているもの。

非常に残念ながら、それが何なのかは時間が経ってみないとわかりません。短期間では判断できないのです。そうしたものを評価するためには、時間的厚みを持った評価軸が必要です。でも、それはあたらしいメディアが持つ価値観とは相容れないのかもしれません。

私たちに押し寄せてくる圧倒的な情報の量は、言葉通り圧倒的であり、時間が経って何も残っていなくても次々に押し寄せてくる情報がそのことを意識の外へと押し流します。たとえ底に穴が空いていても、蛇口を開きっぱなしにしておけば、一見水は溜まるのです。

でも、何かの拍子に蛇口が閉じてしまったら。

さいごに

春樹さんが小説のメリットとして挙げられている「対応性の遅さと、情報量の少なさと、手工業的しんどさ(あるいはつたない個人的営為)」は、「読書すること」(読むこと)全般に敷衍できる要素も含まれているでしょう。

逆に、小説的なものが、こうした要素からどんどん遠ざかってしまっている傾向もどこかしらあるのかもしれません。

ブログというメディアは、どちらかというとあたらしいメディアに属するとは思うのですが、少なくとも自分のブログに関しては、「読むメディア」としての在り方を考えていきたいところです。

▼こんな一冊も:

それでも、読書をやめない理由
それでも、読書をやめない理由 デヴィッド・L. ユーリン David L. Ulin

柏書房 2012-02
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プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか?
プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか? メアリアン・ウルフ 小松 淳子

インターシフト 2008-10-02
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ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること
ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること ニコラス・G・カー 篠儀直子

青土社 2010-07-23
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キュレーションアプリをみながらぼんやり考えたこと あるいはWebの古典の作り方

Gunosyを利用しています。

といっても、毎朝送られてくるメールをチェックするぐらいです。パラパラと流し読みして、気になった記事はリンクをクリック。一日に1〜2件読めば良い方でしょうか。

感覚的には、(紙の新聞の)朝刊を読むような感じなのですが、大きな違いがあります。それはバックナンバーがないこと。もちろん、送られてきたメールを保存しておけばいくらでもさかのぼれますが、アプリの方では(たぶん)無理でしょう。ようするに、標準的な機能としては想定されていないわけです。
※(2014/10/14 11:49 追記)頂いた情報によると過去分遡れるそうです。

一回読んだら(読まれたら)、その記事の価値はそこで終了。そんな雰囲気を感じます。こういう雰囲気はいわゆるニュースキュレーションアプリ全般から感じることでもあります。

「この分野であれば、とりあえずこのページ読んどけ」

アプリ提供側は、ユーザーがどのニュースを読んだのか、といったデータを持っていることでしょう。送るニュースをカスタマイズする、という視点からみればそうしたデータは非常に有効です。でも、違った利用法もあるかもしれません。

アプリ側は、ユーザーの興味がある分野を知っています。そして、そうしたユーザーがよく読む記事も知っています。であれば、「この分野であれば、とりあえずこのページ読んどけ」というまとめページも作れるのではないでしょうか。

はてなブックマークじゃん。

いや、たしかにそうなんですが、違いもあります。

一つははてなブックマークを使っている層が微妙に偏っている点。その点、キュレーションアプリはスマートフォンの普及でユーザー層が広がっていますし、特定のカテゴリに特化したキュレーションアプリであればユーザーの層もまた変わってくるでしょう。そして、ユーザーが変わればアプリ側が蓄積するデータ(共有知)も変わってきます。

もう一つは、はてなブックマークのページは、トップページを漁ったり、検索で見つける分には良いのですが、「読んでいく」のには向いていない点。ようするにコンテンツが編集されていない点です。

NEVERまとめなんかは、コンテンツが編集され、それ自体が読み物として整理されていますが__あるいは、そうすることが期待されていますが__どんなコンテンツをそこにのせるのかは完全にまとめる人まかせです。そうやってまとめたものを、「お気に入り数」なり「view数」なんかで、順位付けすることになります。

この順番をひっくり返すのです。

Webの古典

まず共有知でコンテンツを選別する。その際、ユーザーの特性には十分に注意を払う。その後、上位になったコンテンツを、読みやすいように人間が編集して並べる。そういうやり方です。そうすると、Webの古典と呼べるような何かができるかもしれません。

さらにこれを動的に管理していけば面白いでしょう。

なにせニュースアプリは情報をユーザーにプッシュできます。なので新規ユーザーが入ってきたり、あるいは既存のユーザーが別の分野に興味を持ち始めた傾向が見られたら、そうした古典ページに掲載されている記事をこっそりと「朝刊」に混ぜることもできます。そこからの反応を確認し続けることで、時間が経っても読まれるページと、そうでないページがみえてくるでしょう。

それを加味して、古典ページに掲載するコンテンツをふるいにかけるのです。生き残るページと脱落するページ。書店に並び続ける本と、そうでない本みたいな感じですね。

さいごに

その古典ページに載れば実利があり、かつ栄誉であるみたいな雰囲気が生まれれば、Webコンテンツの在り方もちょっと変わってくるのかもしれません。

まあ、アプリ側としては短期間でレバレッジできるような施策ではありませんので(時間とコストがかかりそうです)、実現されるようなことはないのかもしれませんが。

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センスは磨くもの

epigraph

~~~~~

センスは磨くもの
信用は築くもの
財は成すもの
才能は授かるもの
価値は見出されるもの
リズムは刻むもの

~~~~~

センスを磨く

言葉というのは、面白いものです。

センスを磨く

こんな表現はよく使われます。

センスを鍛える・センスを育む・センスを貼り付ける・センスを醸造する・センスを混ぜる・センスを肥やす

こんな表現はあまり使われません。

「センスを磨く」が一番しっくりくる表現だと思います。もちろん慣れの問題もあるのでしょうが、<磨く>という動詞が持っているフィーリングが、<センス>が示すものと合致しているのでしょう。

つまり、センスというのは何かをどんどん加えていくものではない、ということです。

むしろそれは何かを減らしていくような、そんなものなのでしょう。

二つの語感

「センスを磨く」の<磨く>は、なんとなく二つの語感を持っています。

一つは、Polish。言葉通りの<磨く>です。表面を滑らかにしたり、光沢を出したりするときに行われる作業です。

もう一つは、Sharpen。<削る>や<尖らせる>といった雰囲気があります。

減らす量は大きく違いますが、どちらも減らしていくアプローチであることには違いありません。

ではなぜ、センスは減らしていくアプローチになるのでしょうか。

センスの効能

それは、センスが発揮されるタイミング__言い換えれば、センスの効能__を考えてみると明らかでしょう。

センスは、選択時に発揮されます。

洋服のセンスが良いと言えば、着る服の選択が良いことを意味します。つまり、選ぶ力、選び出す力がセンスなのです。「あれもいいし、これもいい。でも、あれもいいな〜」と迷っている状態を__言い換えれば、決めきれない状態を__センスが良いとは言いません。

あまた存在する選択肢の中から、ピンポイントで良い組み合わせを見いだせる力。必要なものを、必要な分量だけ、必要なタイミングで提出できること。それがセンスです。

だから平べったく伸ばしていくのではなく、シュッと串刺させるぐらい尖らせなければいけません。ザクッと切り落とせるぐらい鋭利にしておかなければいけません。

さいごに

「センスを磨く」というと、「宝石を磨く」みたいな感じで捉えられますが、むしろセンスはカッティングしたり研磨したりする道具の方です。

その刃を(あるいはやすりを)、どれだけavailableに保っておけるか。それによって、生み出される宝石の美しさは変わってくるのでしょう。

もちろん、道具があってもそれを使って作業をしなければ、何も生み出せないのは言うまでもありません。これがまた、地味な作業なんですが。

▼こんな一冊も:

真ん中の歩き方: R-style selection
真ん中の歩き方: R-style selection 倉下忠憲

R-style 2014-08-28
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10/6 〜 10/11 今週のまとめ

今週のまとめエントリーです。

  1. パラグラフ、トピック・センテンス、あるいは文というパーツ
  2. たかがツール、されどツール
  3. ぼけーっと眺めてインスピレーションを得るためのページを作りました
  4. クリックはメディアを形成する
  5. つまったら、主語を変えてみる
  6. やりたいことができていない状況とその対策

日に日に何ブログなのかわからなくなってきますね。まあ、わかられたら負けの精神でがんばりたいと思います。それにしても、土曜日のエントリーは、本にできそうな気がしますね。売れないでしょうけれども。

今日の一言

今日の一言はこちらでつぶやいております。

10月9日

むしろ、人間が見出すものを「価値」と呼ぶのかもしれません。

10月10日

そう多くはないですが、確実にあります。

10月11日

だから、手近な場所から始めましょう。

明日のメルマガ告知

毎週月曜日に配信しているメルマガ。来週号の目次はこんな感じです。

○ブログを10年続けて、僕が考えたことvol.18 「ブログから得てきたもの」
○BreathNotebookShell #21
○僕らの生存戦略 vol.63 「進捗記録:13」
○知的生産エッセイ「オープンソース・ブック」
○今週の一冊 「コンビニ店長のオシゴト」

→メルマガの過去分エッセイは「Facebookページ」にて読めます。

頂いた感想など:

Weekly R-style Magazineは、毎週月曜日の朝7時に配信されているメルマガです。

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Weekly R-style Magazine ~プロトタイプ・シンキング~(まぐまぐ)

ブログに書けないテーマ、長期的な連載、日々考えていることなどをお送りしています。

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やりたいことができていない状況とその対策

やりたいことがあるのに、できていない状況って結構ありますよね。

なかなか悩ましい状況ですが、案外いろいろな理由がありそうです。

1)やる時間がない
2)やるエネルギーがない
3)とるべき行動がわかっていない
4)そもそもやりたいと思っていない
5)そもそもできないことを望んでいる

1)やる時間がない

よくあるのがこのパターンでしょうか。

「やる時間がない」というのは、「やっていることが多すぎる」ことでもあります。

満タンのコップにあたらしく水は注げないわけで、こういうときは別の何かを止めるしかありません。

その「別の何か」は、

  • 睡眠など生活に必要な行動
  • 仕事
  • 趣味や遊び
  • 無駄な作業

のどれかになるでしょう。

一番上を削りすぎると、やばいことになります。持続可能性が低い方法です。

仕事は、押しつけられる仕事を「断る力」したり、自分から意欲的に仕事を拾いに行かないといったレベルから、時間を確保するために転職する、という大がかりなものまでありえます。

趣味や遊びは一見簡単に削れそうですが、案外それによってメンタルケアやアイデアの素材集めが行われたりしていることがあるので、少々厄介です。しかも、そういう効果は目に見えないので、削ってみないと実際の所はわからないという難しさもあります。

無駄な作業を削るのは、ハックの基本ですね。繰り返しの作業をマクロに任せたり、捜し物をする時間を削減したり。こういうので作れる時間はありますが、やはり限界はあります。10秒を5秒に短縮し、その5秒を1秒に短縮できても、−1秒までは持っていけません。時間は生み出せないのです。その点には注意が必要でしょう。

2)やるエネルギーがない

やろうと思うのだけど、いざ取りかかろうとすると、疲れ切っていてどうしようもない。そんなこともありますね。

この場合のエネルギーには「体力」と呼べるものと「認知資源」と呼べるものがあります。どちらにせよ、有限かつ休息すれば回復するものです。

対策としては

  • 全体的にエネルギーを節約する
  • 順番に気をつける
  • 総エネルギー量を増やす

がありそうです。

  • A(エネルギー10使用)
  • B(エネルギー2使用)
  • C(エネルギー5使用)
  • D(エネルギー7使用)→やりたいこと

こういう状況があるとすれば、A〜Cそれぞれにかかるエネルギーを小さくしてくのが最初のアプローチ。Dを先頭に持ってきて、エネルギー全開の状況で取り組むのが二つ目、何かしらのトレーニングで総エネルギー量を50とかにアップさせるのが最後のアプローチです。

最初のアプローチには作業の効率化や、意識を散らす源から遠ざかるといったやり方があるでしょう。順番を並び替えるのはタスクリストが役立ちます。「認知資源」のトレーニングだと、瞑想とかがありそうです。以下の本も参考になるでしょう。

スタンフォードの自分を変える教室
スタンフォードの自分を変える教室 ケリー・マクゴニガル 神崎 朗子

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3)とるべき行動がわかっていない

ここにはいくつかのパターンが含まれます。

一つは、「知識・スキルが足りていない」状況。つまり「iPhoneアプリを作りたい」と思っているけど、プログラミングのスキルがない、といったことです。これは単に目標の設定が誤っているだけですね。プログラミングの勉強をする、というのが「やりたいこと」に組み込まれていれば問題ありません。

しかし、それが組み込まれていても次に進めないことがあります。それが二つ目のパターンで「具体的な行動がわかっていない」です。つまり、プログラミングの勉強をする必要があることは理解できても、どうすればそれが勉強できるのかがわからない状況です。

プログラミングの勉強で言えば、解説本を読むとか、動画を探すとか、ウェブを検索するとか、勉強会に出るとかいろいろあります。それらのうちから具体的な行動をチョイスできればOKです。

でも、どんな行動がありるうのかがわからないこともあります。特にまったく新しいことにチャレンジしようとしているならなおさらです。その場合は、人に聞いたり本を読んだりするしかないでしょう。行動力がある人なら「とりあえず、何かやってみる」作戦も有効です。間違いなく失敗しますが、そこから得られるものも多いでしょう。

しかしながら、目標が設定され、具体的な行動が定められても、止まってしまうことがあります。実にシンプルな理由ですが、「取るべき行動を忘れてしまっている」状況です。そこではタスクリストやリマインダーが活躍してくれるでしょう。

4)そもそもやりたいと思っていない

よくよく考えてみると、それほどやりたいわけではないことをやりたいと勘違いしていた、ということもあります。他人の熱狂に包まれていると、こういうことはよくあります。

また、やりたいとは思っているけれども、その行動の結果引き起こされるマイナスと天秤にかけて、やらないほうがよいと思っていることもあります。セーブしているわけですね。

ある種の人々は、積極的に囃し立てながら、心のセーブを解きましょう、なんて説いてくるわけですが、やらない方がよいと感じていることは、やっぱりやらない方がよいことが多いです。

人の心は臆病なので、やらないでおく理由はいくらでも思い浮かびます。でも、それと同じくらいやるべき理由もでっちあげられるのです。たとえば、「人生は一回しかない。だから〜〜をしよう」なんて理屈(っぽいもの)を用いれば、なんだって理由になってしまいます。でも、それは何も考えていないのに等しいですよね。

心の中を観察して「やりたいけど、できない」と感じているならば、「なぜ、できないと感じているのだろうか?」と自問し、出てきた答えに対して「私はなぜ、そう思っているのだろうか」と問いを重ねていく。その結果、「できない」というのは自分の思い込みであった、とたどり着くことはありえます。

でも、そんなものをまるっと無視し、careすべきものからも目を逸らして、走り続けていくのは果たして勇気なのでしょうか。それとも無謀なのでしょうか。

とにもかくにも、他人の影響からちょっと距離を置いて、自分の心の中を見つめてみることです。

5)そもそもできないことを望んでいる

無理なものは無理ですね。はい。

どうしても、というなら魔法の壺を買うしかありません。

さいごに

世の中には、「やりたいことをやる」ためのノウハウっていろいろ紹介されているわけですが、自分が置かれている状況はどんなものなのだろうかを一度考えてみる必要はありそうです。

でないと誤った(効果のない)ノウハウを使ってしまうことにもなりかねません。髪を切るのにのこぎりを持ってきても仕方ないでしょう。でも、のこぎりの方が単価が上がるからという理由で売りつけてくる人も結構いるわけです。

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