Category: 目標力

「やることを減らす」というやること

前回:R-style » プロジェクトを1つ1つ1つ終わらせていく


「やることがいっぱいありすぎて、どうしようもなくなってますね。そんなときは、やることを減らしましょう!」

さて、どんなイメージが頭に浮かんだでしょうか。すごく長く伸びているタスク・ゲージが、ぎゅんと減ったようなイメージが浮かんだかもしれません。非常に清々しい状態ですね。でも、それは間違っています。

すごく長く伸びているゲージが、さらにほんの僅かだけ伸びて、その後、ぎゅんと減るのが正確なイメージです。

どういうことでしょうか。

「やることを減らす」ということも、純然たる「やること」なのです。だから、やることを減らそうとすると、まずやることが一つ増えます。そして、それが実行されて、やることが減るのです。

でも、そんな風には思えませんよね。きっと、いっきにぎゅんっとゲージが減るだけのイメージしか湧かないと思います。それが「時間が見えない」ということです。

ゲージが、処理可能数範囲よりも上に伸びているのなら、その上に積まれたタスクはいつまでたっても実行には移されません。「優先順位」を上げて、無理矢理処理可能範囲に放り込むなら、別の何かを抜き出す必要があります。このトレードオフからは逃れられません。
※これはタスクシュートを使うと非常によく分かる(というより体感できる)と思います。

どれだけ具体的なノウハウがあろうとも、どれだけ意欲を刺激される言葉が並んでいても、その作業に時間がかかることだけは変わらないのです。むしろ、やる気だけが刺激されて、実際にそれができない自分が自覚されると、「やっぱり自分はダメなヤツだ……」となる可能性があります。

教訓

・できないことを自分から背負い込んでいって、「できない……」と嘆くのは避けましょう。それははじめからできないのです
・何かをやろうとするならば、そこには時間がかかることを意識しましょう
・今自分がやっていることすべてにも時間がかかっていることを意識しましょう

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目標に水を差す

前回:着手を限定する3プロジェクト・マネジメント その2


前回は、プロジェクトの3つのステージについて書きました。「やりたいこと」は捨てずに貯めておきながらも、行動に近ければ近いほど、それを限定してしまう。そういうやり方です。

これにより、(おおげさに言えば)大志を失わず、かつ現実的な行動を拠り所にできます。

今回は少し違ったお話をしてみましょう。三つのお話です。

移動する価値の基準点

人間というのは、多かれ少なかれ目標を立てるものです。

目標という言い方がきつすぎるなら、抱負や希望、期待という言い方でも構いません。「こうありたい」「こうなって欲しい」「こうなったらいいな」__そんな希求の気持ちを持つことは自然なことでしょう。むしろ、それがあるからこそ、前向きに生きていけるという側面もあるかもしれません。

それはそれで別段かまわないのですが、不思議とその「こうありたい」状態が、価値の基準点になってしまうことがあります。

screenshot

現在の状態、つまり「こうありたい状態」にはまだ至っていない状態ではなく、「こうありたい状態」を基準点にしてしまうのです。そこにたどり着けなければ、自分はダメだ、人生は失敗だ、と考えがちなのです。

このような考え方は、だいたいにして人を苦しめます。少なくとも、そこに辿り着くまでの間ずっとマイナスの状態が続くことは間違いありません。

「人が苦しむこと」自体にも、プラスの意義があるかもしれないので、そのすべてを否定できませんが、かといって、わざわざそちらに向けて進む必要もないでしょう。なにせ、生老病死は避けて通れないわけで、結局どこかの時点で人は苦しまなければなりません。仮にそれにプラスの意義があるにしても、余計に荷物を背負い込む必要はないのです。

ともかく、上記の基準点の移動から考えると、目標そのものが人を苦しめているわけではないのです。目標(やそれに類するもの)によって価値の基準点が移動し、現状の状態がマイナスとして捉えられてしまうことが問題なのです。
※あるいは価値の基準点が移動した結果として、目標が表出してくるとも考えられます。

だからといって、頭にメスを入れて脳梁を切断し、未来について何も期待を抱かないようになることが解法かと言われれば、それはちょっと首をかしげたくなります。「人間的な悩みは、人間でなくなれば消失する」というのはあまりに大胆で、いささか取り返しのつかい意見でしょう。

これが一つ目。

移動させられる価値の基準点

行動を生み出すには、動機やモチベーションと呼ばれるものが必要なようです。

だから、新しいノウハウを提供するビジネス書・実用書は、さかんにその動機になるような燃料を提供してくれます。薪をくべてくれるのです。

それはそれで結構なことなのですが、そうして高められすぎたモチベーションは、理想を高い方に押し上げてしまう弊害を生みます。その人では__さまざまな要因から__絶対にたどり着けない地点にまで高めてしまうのです。

しかもそれは、「やってもやらなくてもいいよ」という形ではまず語られません。明示されるかどうかは別として「こうするのが良いんだ」「こうすべきなんだ」「こうなって当然なんだ」という価値観と共に語られます。それがモチベーションを刺激する上で一番効果が高いからです。

結果的に、高すぎる理想が、「そうなって当たり前」の状態として認識されます。価値の基準点を大きく変化させるのです。本人の現実は無視してです。

これが二つ目。

実行を疎外する情報提示

本を読んだとき、そこに有用な情報がたっぷり詰まっていた方が良い気がしますね。どうせなら1から10まで解説して欲しい。より具体的に、より詳細に語られていた方が望ましい。

では、ノウハウ本についてはどうでしょうか。

『なぜ、ノウハウ本を実行できないのか』では、ノウハウ本の内容が実行に移されない理由を三つ挙げています。

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  1. 情報過多
  2. ネガティブなフィルター装置
  3. フォローアップの欠如

簡単にまとめると、知識を得ることばかりに注意が向き、いかに実行に移すのかが意識されないこと、うまくできるかどうか自信が湧いてこないこと、短期的なフィードバックサイクルによるフォローアップがないので行動が継続しないこと、この三つです。

これを踏まえると、行動を必要とするノウハウ本の場合、提示される情報は必要最低限であるのが望ましく、さらに「こうなれば完璧」という理想図を提示しない方が望ましく__提示してしまうと「自分にはそんなの無理」となってしまう__、できるだけ短いスパンでループを回していける方が望ましい、ということになります。特に「人によって、それぞれ実行のスタイルが違う」というノウハウの場合は__言い換えれば、職人的な「この通りにやればよい」という”正解”がない場合は__、より顕著にそうだと言えるでしょう。

つまり、ノウハウ本はちょっと物足りないくらいがちょうどいいのです。あまり書きすぎると、その書かれたことが読者を縛りつけます。むしろ余白があった方が、「自分ならどうするかな」という思考が促されるかもしれません。

これが三つ目。

さいご

さて、困った事態となりました。

人は目標(やそれに類するもの)を抱きがちで、それが動機の要因にもなります。ノウハウ書は、その動機を強める情報の提示を行い、懇切丁寧に膨大な量の知識を手渡してくれます。

結果、「知識は得たが、行動は生まれなかった」という状態になりがちです。

人が目標(やそれに類するもの)を抱かずにはいられないように、ノウハウ本も動機を刺激しないわけにはいきません。少なくとも、その力を有していないノウハウ本は、役立たずだと断じられてしまうでしょう。

だから、そう水を差すのです。

人間の前を見る力を否定するのではなく、それを受け入れた上で、いろいろ未来について想像する。そのことは全然悪くありません。生きる意欲を生んでくれたりもします。しかし、それを立てた後で、「いや、ちょっと待てよ」と現実にかえります。「現実的なこと」を考えるのではなく、1日には24時間しかなく、人間には寿命があり、体力や意志力にも限界があることを思い出すのです。

そうなれば、そうやって思い浮かべたバラ色の未来からいくつかを選択する__つまり、いくつかを捨てる__ことができるでしょう。また、「理想は現実ではないから理想なのだ」と気がつけば、価値の基準点が前に行きすぎることも避けられるでしょう。大切なのは、今を歩いて行ける力の方です。

同じように、ノウハウ本も、動機自体は刺激します。でないと、そもそも行動は生まれないでしょう。でも、最後の最後でそれに水を差します。料理の用語で言えば、「締める」わけです。グツグツに煮えた鍋でゆがいた後、すぐさま氷水に移して締めてしまう。そのような仕組みがあれば、ノウハウとうまく付き合っていけるのではないでしょうか。

大切なのは二つの視点を持つことで、もっと言えば、一方向に向きすぎた視線を瞬間的に「戻す」体験を持つことです。

ええ、以下の本についての話ですよ。

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目標達成力なんかよりも

目標達成力は、結構注目されるんですよ。クラスで言うところの人気者。Amazonでも、このタイトルを含む本はいっぱいあります。

まあ、わかりやすい力(パワー)ですし、あたかもそれさえあれば大丈夫、な雰囲気もあります。

でも、まっさきに考えるのは目標が達成できるかどうかではなく、目の前にある目標はそれでいいのかと、問うことです。人間のバイアスを考慮すれば破綻のない目標をスマートに立てられると考えるのは無理がありますし、目標そのものに善悪はありません。そうです。目標そのものには善悪はないのです。

目標を達成する力ばかりを追い求めるのは、前提として立ててある目標が「正常である」という認識があります。それは大変申し訳ないのですが、「会社が言っていることに従っておけば、自分の人生は安泰だ」という認識と呼応しています。与えられた枠組みを疑わないことなのです。つまり目標達成力とは、誰かが作ったゲームをプレイし、攻略するための力であって、自分で物語を紡ぐ力ではありません。

でもって、これからの時代で必要なのは、後者の力でしょう。私はそう思います。

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目標、思考矯正、書斎

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

目下、原稿がいろいろ滞っているので、今年のテーマを「着々、進捗」にしようかと模索中です。なんならTwitterで一日一回「着々、進捗」とつぶやいてみましょうか。

今、冗談だと思ったでしょ。

でもね、たとえば元旦とかに「今年一年はこれこれする!」とか高らかに宣言したとしても、よくて一週間後、わるければ3日後ぐらいには忘れてます。もう、まるっと忘れています。人の脳なんてそういうものです。

だからこそ、手帳とかに今年の目標みたいなものを「書き留める」わけですね。書くことによって、置き留めておくわけです。記録による情報の固定化です。

そうして固定化しておけば情報の消失は防げます。が、それだけでは十分ではありません。書いたものがもう一度目に触れない限り、記憶を想起する働きは生まれないからです。

だからこそ、「毎日見るツール」に書くわけです。ある人は手帳でしょうし、別の人はEvernoteかもしれません。だったら、Twitterでもいいですよね。毎日自分宛にDしてもいいくらいです。

その目標、大丈夫?

でもまあ、よくよく考えてみると、これは一種の洗脳です。軽く言えば、マインドハックです。思考矯正とすら言えるかもしれません。

骨折している骨をギブスで固めるようなもので、もちろん基本的には良いことなんですが、やっぱり注意は必要でしょう。悪しきものが、目標に混じり込んでしまうと、じわじわと淵に吸い寄せられてしまいます。これは、冗談ではありません。真剣な話です。

目標を設定することの重要性はたしかにあります。設定した目標をいかに進めるのかのノウハウも意味があります。

でも、根本的に、根源的に、ベーシックに、シンプルに、プリミティブに、立てた目標の良し悪しについて問うことも必要でしょう。

いやいやそんな、目標を立て間違うなんて、ありえないでしょ。

と思われるかもしれません。そうでないのは、企業活動をみれば一目瞭然です。能力の高いはずの人たちが、滑稽無糖な(あるいは有害な)目標を立てているではありませんか。人間の認識なんて限られたものです。誰しも間違うことがあるのです。

さらに私たちには社会的模倣という性質があります。人の影響を受ける、人の真似をする、そういう性質です。でもって、目標を立てることも、間違いなくそうした性質の影響を受けます。

自分の人生にとってどうでもいいことでも、周囲の影響を受けて「これが大切」と、思い込んでしまうことは珍しくありません。

だからこそ、「書斎」が必要なのです。

ここでの書斎は、概念的な存在を指しています。部屋としての書斎ではなく、周りと距離を置くための場所です。雑音を遮断する空間です。自分自身と対話するための時間です。

そこで、自分が大切にしたいと思っていることを確認すること。自己を確立(あるいは再生)すること。人生を深化させること。

そういうものの上に立った目標ならば、ある程度は安心して自分の行動をゆだねられるのではないでしょうか。少なくとも、納得感は得られるでしょう。

さいごに

大げさな話に聞こえるかもしれませんが、そうではありません。

「生きるとは何か?」みたいな哲学に入り込む必要はありません。自問の中で「おいしいカレーが食べたい」とかが出てきてもいいのです。それがFacebookの写真を見て思ったのでないのならば、たぶんカレーに対する根源的な欲求があり、それを充足していくことが人生の納得感を増やすことにつながっていくでしょう。

空虚なものが残るのか、納得感が残るのか。そこには大きな違いがあります。人はやがて虚無に吸い込まれますが、だからこそ納得感の多さこそが鍵を握るのかもしれません。

しかしながら、自分のプリミティブな欲求が見えにくくなっているのが現代です。そういう現代だからこそ、目標の立て方についても、改めて考えておく必要があるでしょう。

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“あなたの目標”設定の4ステップ

さて、元旦といえば「今年の目標」ですね。

今年一年はこれをやる!と決めるのは心躍るものです。まあ、三ヶ月も経てば、からっと忘れてしまうのもよくある風景なんですが。

今回は、目標の設定法について少し考えてみましょう。以下のステップを踏むのが、おそらくベターです。

  • 去年の目標の振り返り
  • 自分の価値観を確かめる
  • 新しい目標を立てる
  • 目標達成に必要な戦略を組み立てる

それぞれ見ていきましょう。

去年の目標の振り返り

何はともあれ、去年の目標を振り返るのがスタートです。

一年という単位で人間のスペックが劇的に向上するなんてことは、(比喩ではない)肉体改造を受けなければ到底無理な話です。昨日の自分と今日の自分のできることが似ているように、去年の自分と今年の自分のできることもそれほど乖離していません。だから、去年何を目標にして、どれだけできたのかを振り返るのは大切なことです。

達成できている目標は「おめでとう!」と心の声で祝えば良いのですが、問題は達成できなかった目標。そこで、「なぜ、達成できなかったか」を自分を責めるのではなく真摯に問いかけてみるのがポイントです。たいていは、「時間がなかった」という答えが返ってくるでしょう。そこからもう一歩踏み込んで「なぜ、時間がなかったのか」というところまで考えておくことです。

もし、この問いを自分を責めるように投げかけてしまうと、返ってくる答えが自己正当化のための言い訳ばかりになってしまいます。それは、心のダメージを防ぐ効果はありますが、事態の改善には貢献しません。素直に「遊ぶことに時間を使いすぎていたな」みたいな答えが出せるのがベストです。

あなたが社会人一年目で、去年の目標なんて立てていないというのであれば、このステップはまるっと飛ばしてもらった結構です。ただし、来年これができるように、今年の目標は必ずどこかに書き留めておきましょう。手帳でもノートでも、ブログでもOKです。

自分の価値観を確かめる

去年の目標を振り返ったから、さあ、今年の目標設定だ、と荒くした鼻息は少し押さえましょう。

ちょっと落ち着いて考える時間が必要です。

例えば、次のような一連の問いに答えてみてください。

  • どんなことに価値を感じているだろうか?
  • どんなゴールを目指しているだろうか?
  • 心から好きなものは何だろうか?
  • 自分にとってもっともインパクトのあることは?
  • これだけは絶対にやりたくないことは?
  • 一番大切なことは何だろうか?

人の心は動きます。感情だけでなく、そのときどきにインプットした情報にも左右されます。ジョブズの感動的な動画を見た後ならば、起業家になってみたくなるのです。でも、それって本当にあなたのやりたいことなんでしょうか。あなたが心の底から価値を感じていることなのでしょうか。

他人からの影響をゼロにして生きていくことはできませんが、心のドアを閉めて井戸に潜ることは可能です。目標は、そういう場所で考えた方が自分の肌に馴染むものができるのではないでしょうか。

一番危ういのは、自分と似たような人(と勝手に考えている人)が立てた目標を見た後に目標を立てることです。それがどれだけ偉大な目標であっても、結局の所その人の人生に沿った目標でしかありません。あなたの人生とは、柿とマルコポーロぐらい縁遠い存在です。

誰かに熱く「私はこういう目標を立てました。あなたも是非目標を立てましょう」と語りかけられたら、クールダウンの後、目標を立てることをオススメします。でないと、あなたの人生を見失いかねません。

また、自分が過去に感銘を受けた本を読み直してみるのも一手です。時間が経ってみると、ちゃちすぎてなぜその本の価値観に惹かれていたのかまったくわからない、なんてことも起こりえます。しかし、惰性で目標を立ててしまうと、そういうちゃっちい本の影響も受けてしまいがちです。

あらためて自分の鏡を覗いてみましょう。

新しい目標を立てる

自分の鏡を覗き終わったのなら、いよいよ新年の目標の立案です。いくつかのフレームがあります。おおよそは、数による分類です。

たった一つだけの目標を決める。三つ決める。十個決める。思いつく限り決める。

個人的には三という数字が気に入っていますが、やる気と体力とお金と時間がある人は10個でも良いでしょう。もちろん五個とか七個とかでも問題ありません。

さて、こうして新しい目標がリストアップできればめでたしめでたし、というわけにもいきません。

目標達成に必要な戦略を組み立てる

目標を設定するだけで、それが達成できるならそもそも目標を立てる意味はありません。

目標というのは、現状の状態と乖離があるから立てるわけです。その乖離を埋めるためには、何かしらのアクションが必要です。魔法使いですら、起こしたい現象をイメージした上で、そこに魔力を注ぎ込むのです。平凡な私たちであれば、より多くのアクション(及び資源投下)が必要になってくるでしょう。

ここで、去年の目標の振り返りが効いてきます。

去年の状況からみて、今年の目標はハードルが高すぎないだろうか。あるいは、今年の目標達成を阻害する要因となるのは、なんだろうか。

そうしたことを考えるわけです。出てきた答えによっては目標を下方修正することも必要でしょう。大丈夫、どこの企業だって下方修正はやっています。幸い私たちは株式市場に上場してはいないので、下方修正の発表による投資家の反応を気にする必要はありません。数値目標であれば、8割ぐらい(つまり2割減)ぐらいにしてみてもよいでしょう。

高い目標は人を引っ張る力がありますが、高すぎる目標はむしろ断崖から人を突き落とす効果があります。つまり、自信の喪失ですね。それが繰り返されると無力感を学習して、”安易な自己啓発”__ほぼ矛盾した言葉__に吸い込まれてしまう危険性があります。それよりも、「ある程度は達成できるであろう」目標を立て、実のある自信を育んでいく方が健全ルートでしょう。

また、目標の下方修正だけではなく、ブレイクダウン__中目標・小目標の設定__や、リマインダー__よく目にするところに目標を貼っておく__というのも一つの戦略です。

こうしたことをまったくしないのであれば、三ヶ月先にはからっと忘れてしまっていることでしょう。もちろん、それでも人は生きていけますので問題ありませんが。

さいごに

今回は目標の4ステップを紹介しました。

本当に地味すぎて申し訳ありませんが、着実な方法論ではあります。とりあえず、深呼吸してから目標を立ててみてください。

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タスクとの心理的距離感を「5分だけやる」ことで維持する

いつのまにか疎遠になったプロジェクトはありますか。

高ぶるモチベーションと共に目標を立て、ブレイクダウンして、タスクリストに書き込んでいったプロジェクトたち。

はじめのうちは勢いよく進んでいたものの、はっと気がつけば、まったく手がけなくなっているプロジェクト。やったほうがいいんだろうなと思うけれども、手がける気持ちがしぼんでしまっているプロジェクト。

心理的距離がぼっかり空いてしまった状態。

よくあることです。

人が立てる目標

ちょっと考えてみましょう。

20日で100の事柄をやり遂げる。そんな目標設定が為されました。

なんと一日に、たった5進めるだけでOKです。コーヒー1杯分の価格でラッセンが手に入るようなもの。これは余裕、と思い込むことでしょう。

が、現実は過酷です。

調子が悪くて5進められない日もあれば、忙しくて時間が取れないこともあるでしょう。そもそも必要な作業が110であったと気がつくかもしれません。それらを織り込んで作られていない目標は、どこかで無理が発生します。そして、人間の認知だけをよりどころとして作られた目標は、だいたいそれらが織り込まれていません。

さらに言えば、たいていの目標は人間の認知だけで作られています。結局、多くの目標には無理が混じり込む結果となります。

徐々に上がるハードル

しかし、それは仕方ありません。人間は目標作成マシーンではないのです。

が、弊害は確実に出てきます。

100の事柄を20日でやり遂げる。もし、一日潰れてしまったら19日で100の事柄をやり遂げなければなりません。さらに一日できなければ18日で100です。

つまり、一回先送りするごとに、ハードルが上がってきます。

タスクリストをみて、心理の奥の方で「あっ、これはちょっと面倒だな」と感じたとしましょう。だいたいは突発的なトラブルのせいで、ちょこっと日付が空いてしまった時に発生します。面倒だと感じたら、次に起きるのは安易な先送りです。「明日やろう」、あるいは「もうちょっと落ち着いたらやろう」。こう自分に言い聞かせてタスクを先送りします。

結果どうなるか。それで一日潰してしまい、ハードルを上げることになります。

今日「ちょっと面倒」を感じたことは、先送りするとより面倒さが増えるのです。単に明日以降の自分にパスしているつもりでしょうが、実はそこに利子が発生しているのです。
※何日までに○○を達成する、という目標でなければ、これは発生しない点に注意してください。

今日「ちょっと面倒」と感じて先送りしたタスクは、明日それよりもわずか増えた面倒さをまとって登場します。今日と明日の自分が同じような存在であれば、そのタスクもまた先送りされるでしょう。そうやって雪だるま式に「面倒さ」が増えていくのです。

もし、どこかのタイミングでモチベーションに火が付けば、タスクに着手することはありえます。しかし、面倒さが増えていけばいくほど、必要なモチベーションの量も上がります。先送りし始めならば対応できるかもしれませんが、時間が経てばもはや手遅れです。大きく膨れあがった雪の玉は、誰にも止められません。

心が落ち着く不協和の解消

そして、どこかで閾値を超えます。相転移が発生します。

「あのプロジェクトは自分にとって意味があるからやらなければいけない」
「とてもじゃないができない。激しく面倒そうだ」

二つの異なる方向の認知が、その人の中に宿ることになります。ジレンマ発生です。結果起きるのは、認知的不協和の解消。

心理時間的に近いのは「激しく面倒そうだ」の方でしょう。目標を立てたときの自分の心理はすでに遠くにあるので、いくらでも改ざんが可能です。

つまり、「あのプロジェクトは自分にとって意味があるから」が「あのプロジェクトは自分にとって意味があるかもしれないけど」に変わります。「あのプロジェクトは自分にとって意味があったらいいな」ぐらいに落ち込むかもしれません。あるいは、「あのプロジェクトは自分にとって意味があった」と、堂々と過去形にしてしまうこともあるでしょう。

自分がやらなくてもいいタスクが、どれほど面倒であってもジレンマは発生しません。

そうして、私とそのプロジェクトの心理的断絶が起きます。自分が感じるプロジェクトの意義が消えていくのです。

理想的な対応

このような話は、別に「ダメ人間」だけに発生するものではありません。むしろ、ごく普通な認知の働きでしょう。

こういうのがまったく発生しない人はある側面ではとても優秀なんでしょうが、もしかしたらどこかのネジが外れている可能性もあります。別に悪口とかではなくて。

ともかく話を整理しましょう。

  • 目標を設定しても予定外のトラブルなどでうまく進まないことがある
  • それによって、「ちょっと面倒」という心理的な溝が空く
  • 溝を放置すると、どんどんそれが大きくなる

こういうプロセスです。

理想的な話を一つと、対処療法を二つ書きます。

できるならば、目標はゆるやかに余裕を持って立てることです。自分の8割の力で(あるいはもう少し低くてもよい)達成できるような目標ならば、ハードになりすぎる危険性はありません。むしろ、それぐらいで「ちょうどいい難しさ」になるかもしれません。

が、人の認知だけではこれはなかなか難しいでしょう。何かしらのツールによるサポートが必要です。

現実的な対処療法

では対処療法はというと、一つは「ちょっと面倒」と感じたら取りかかるようにする、ということです。軽傷のうちにケアしてやるのです。

「ちょっと面倒」は黄色信号なのです。いずれそれが赤に変わり、やろうとする気持ちすら消えてしまいます。
※やろうとするから、面倒に感じるのです。

そこで「5分だけやる」のです。

「5分だけやる」は軽いライフハックのようですが、実はジワジワ効いてきます。利子の全額返済は無理でも、それを多少は減少させられますし、作業興奮によって思わぬくらい作業が進むこともあります。

一つ言えることは、まったく作業をしない(作業時間0分)と、5分作業するの違いは、5分作業すると、10分作業するの違いよりも遙かに大きいということです。

ともかく、「ちょっと面倒」と感じているうちに、5分だけでも取りかかってみましょう。そんなに難しいことではないはずです。少なくとも、投下時間に対する費用対効果__ただし「〜〜を発生させない」という予防的効果__は高いものです。

リセット・ザ・ワールド

では、完全に距離が空いてしまったらどうするか。

これはもう目標をゼロから立て直すことです。白紙の状態からガンチャートを引き直すのです。前の計画はおじゃんにして、新しい計画を立てるのです。そうすれば発生していた面倒の負債は解消されます。たいらのまさカード発動です。

計画を立て直すことなんて全然恥ずかしいことではありません。所詮、それは何かを達成するための手段です。物事が1ミリでも前に進むなら、Re:計画もじゃんじゃん実行しましょう。

さいごに

当たり前ですが、「5分だけやる」ことにも上限があります。

12個もやれば、1時間が必要です。1時間をまるまるひねり出すのは至難の業でしょう。

というわけで、「やろうしていることがあまりにも多すぎて、タスクが実行できない」場合には、この方法は使えません。もう少し、ベースの部分での対処が必要でしょう。

とりあえず、あなたのアクションコマンドの中に「5分だけやる」を取り入れてみてください。「ちょっと面倒」というモンスターが登場したら、そのコマンドを実行するのです。

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目標のトリセツ

目標には、人を引っ張る力があります。

これを逆からみてみましょう。すると、人は目標に引っ張り回される可能性がある、ということが浮かび上がってきます。

薬と毒のように、人に作用を与えるものは益にも害にもなえりえるのです。目標の取り扱いにも、十分な注意が必要でしょう。

今回は、目標について考えてみます。

目標は計画ではない

目標は計画とは違います。

目標は「そこまで行う、なしとげようとして設けた目当て」であり、「あそこまでいこう!」という感触のものです。

対して、計画は「事を行うにあたり、その方法や手順などをあらかじめ考えること。また、その案」であり、「こうしよう!」という感触のものです。
※ともに大辞林より

意味を見れば、この二つは明らかに異なっていますが、たまに混同されています。

「あそこまでいこう」(目標)→「そのためにこうする」(計画)

と捉えれば、目標を達成するための手段が計画になります。仮に目標が変わっていなくても、状況が変われば計画は変更せざるを得ないでしょう。手段なのですから、いくらでも変わって問題ありません。むしろ、状況に合わせて積極的に変更することが求められます。

よくあるミステイクは、根源的な目標を忘却し、手近な計画を目標と勘違いしてしまうこと。具体例はあげませんが、たまに「なにか大切なことを忘れていないか?」と感じる場合がありますね。そういうのです。

目標は現実ではない

もう少し丁寧に書くと、目標は未だ達成されていない現実ではない、です。

目標はあくまで目印です。計画は単にプランです。それは現実ではありません。目印やプランは概念上の存在であって、今あなたが生きている場所が現実です。この二つは重なる部分はあるにせよ、別の位相に属しています。

目標が達成できないから、現実の自分が劣等感を抱く、というのは控えめに言って勘違いです。

天体の動きを精密に予測するシュミレーターがあるとして、実際の天体の動きがそれとずれていたとしましょう。シュミレート通りに動かない天体は劣っている。なんて変ですよね。

多くの目標は、その人の理想を内蔵しています。あるいは、あこがれと言い換えてもよいでしょう。それが達成できないのはたしかに残念かもしれません。しかし、考えてみると理想というのは今の自分の状態とずれているから理想として機能するのです。多くの問題は、そのずれている方の自分を、「本当の自分」と勘違いしてしまうことにあるのかもしれません。

それは、今の自分を無視し、貶めることとイコールです。どうであれ、土台とスタートは今の自分なのです。目標を見つめすぎると、それを見過ごしてしまいます。

遠い目標ほどぼんやりと

目標は、日本海沖の海底からぶくぶくと湧き上がってくるわけではありません。

誰かが作り出すものです。誰かの脳が作り出すものです。

不確定性原理やカオス理論を持ち出すまでもなく、私たちの見通しがいかに役に立たないかは「計画経済」の失敗が露わにしてくれています。物理的、経済的な話でなくても、私が1秒後どうなっているかを予想した場合なら比較的その精度は高いでしょうが、1日後だとずいぶん精度は落ちます。1年後、10年後なら、お手上げでしょう。

10年前、私はコンビニの店長に任命されてオロオロしていました。10年後、本を書いているなんてアウトオブ想像です。

時間的距離の違いに注意しましょう。10年後なんて、まったくわからないのですから、適切な目標を立てるのはたいへん困難です。そういうのはちょっとピンボケするぐらいでよいのです。

でないと、「今」を見失います。

フォーカスは「今」

ピントを合わせるのは、「今」です。

今週何をするのか。今日何をするのか。今何をするのか。

注意力を振り向けるのはそこです。

しかし、漠然と「今」を繰り返しているだけでは成長はありません。成長しなくてもいい、という考え方もありますが、現代においては成長しなければ現状維持すら難しいこともあるでしょう。

ピンボケでも大きな目標を持っていれば、「こういう方向でいいな」という指針にはなりますし、「これはやっちゃダメだろう」と判断基準を設けることもできます。

クリアする課題(テーマ)を持つ

『仕事は楽しいかね?』の中で、マックス翁は

「明日は今日と違う自分になる」

と自分の目標を掲げています。実にハードな目標です。毎日毎日、変化し続けていかなければならないのですから。

こうした目標は、「今」にフォーカスを当てていますが、その裏側には言葉にされない目標が隠されています。あるいは人生哲学と言い換えてもいいかもしれません。
※もちろん言葉にされないものですから、私も言葉にするようなことはしません。

長期的な目標などない、という人でも、持続的、継続的な「何か」を所持している場合があります。本当に何もない人と、言葉にならないものを持っている人はやっぱり違うので、そこには注意が必要です。

桜井章一さんは、半荘ごとに何かテーマを持つという麻雀の訓練法を紹介されていました。たとえば、南一局はなにがなんでもアガる、といった課題を(勝敗とは別に)自分の中で持つわけです。その課題をクリアするには、工夫が必要になってきます。アイデアが必要になってきます。漠然と数を重ねるのとは違う体験が、そこでは生まれてきます。

「今」にフォーカスをあてる一番簡単な方法は、自分なりの課題を持つことなのかもしれません。

私は本を書くたびに、違った課題を設定しています。このブログでも、書評や記事の書き方にときどきテーマを設定したりもしています。そうすると、あまり効率の良い作業にはなりませんが__テンプレートが使えないため__、やるたびに何かを身につけているような感覚は得られます。

課題は小さなものでもよいでしょう。

一日のタスクリストでも、「これだけは今日中にやり終える」というのも、一種の課題と言えます。きっと一日の過ごし方の中にも、課題を織り交ぜることができるはずです。今日は一日Twitterを見ない、とか。

さいごに

言ってしまえば、「よく生きる」というのも目標みたいなものかもしれませんね。

ともあれ、目標は現実ではないのですから、目標を立てただけで達成した気になってはいけません。同じように、目標を達成できなくても自尊心を傷つけないようにしましょう。そして、決して「今」を見失わないように注意してください。

目標に人生を丸投げ、というのはやっぱりつまらないです。

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新年と、その不確かな目標の傾向と対策

明けましておめでとうございます。

新年を迎えて、「新年の抱負」や「今年の目標」を決めようとしている方もいらっしゃるでしょう。

しかし、目標力(女子力のようなもの)が低ければ、目標をうまく立案&運用できないかもしれません。目標を扱うのも簡単ではないのです。

去年最後のエントリーでは、新しい目標を立てる前に、以前の目標を確認しましょう、とオススメしました。事前準備ですね。
ほぼ日手帳で今年の目標を振り返り、来年につなげる。

それが終わったら、いよいよ今年の目標設定。

いくつかのステップを踏んで進んでいきましょう。

「今年はどんな一年にしたいか?」

まずは、この質問に答えてみましょう。

「今年はどんな一年にしたいか?」

ここでは意思が問われています。別に未来予想する必要はありません。答えが曖昧であっても構いません。一年終わってみたら、全然そんな風になっていなくても問題ありません。

「大躍進の一年」でも、「守りの一年」でも、「いつも通りの一年」でも、なんでもOKです。

この質問に真剣に答えようとしたら、自分が置かれている状況や、周りの環境について考えざるを得ないでしょう。現実のしがらみが湧いてくることもありますし、自分自身の頼りなさに嫌気が差すこともあるかもしれません。

でも、どんな状況であっても、「こうしたい」と思うことだけは自由です。

多くの人が「目標を設定せよ」と説くのは、それがモチベーションの薪になるからです。薪をくべすぎると、火事になってしまう恐れがありますが、適度な量であれば暖をとれます。

とりあえず、「今年はどんな一年にしたいか?」を考えてみましょう。ポイントは、できるだけ外部情報を絶つことです。でないと、あなた以外のものが入り込んでくる恐れがあります。ビジネス雑誌の新年号を読んだ直後なんて、特に危険です。

「他の人がこう言っていたから」「他の人がこうしていたから」

というのとはまるっと距離を置いて、自分自身の意思について考えてみましょう。

目標ブレイク

「こんな一年にしたい」

ということが決まったら、次に「じゃあ、そのために何をしますか?」という問いに移行します。

この辺りの話は、さんざんビジネス書に出てくるので割愛しましょう。「大きな目標→中ぐらいの目標→小さい目標」というアレです。

私の場合は、「大テーマ」「中プロジェクト」「小タスク」という区分になっています。

ーーー脱線ーーー

「テーマ」→「プロジェクト」→「タスク」

よりも、

「大テーマ」→「中プロジェクト」→「小タスク」

の方が粒度感が出ていてイイカンジではないかと思う今日この頃ですが、いかがでしょうか。

ーー脱線終わりー

「執筆業で生きていく」という一年にしたいなら、「本を何冊か出す」という大テーマが必要ですし、となると複数の「本を執筆する」プロジェクトをこなしていく必要があります。当然その中には「章立てを完成させる」とか「第一章第一項を書く」という具体的な行動も必要になってきます。

ざっくりとした目標だけでは、実際に何をするのかが曖昧です。でもって、曖昧な行動は実行に移されません。

目標を立てたならば、それをかみ砕いて考えてみることも必要です。

どこに入れるか?

目標をブレイクすれば、それでおしまい。というわけにはいきません。

砕いたものを、どこかに設置しなければならないのです。いくつかのパターンに分けて考えてみましょう。

プロジェクトに設定する

目標が、何かしらの中プロジェクトにまでブレイクできたのなら、それをプロジェクト管理ツールに入れておきましょう。いわゆるタスク管理ツールです。

別に専門ツールでなくてもよいですし、手帳などでもOKです。ともかく、目標を立てた日以降の自分に、その目標が引き継がれれば何でも構いません。

カレンダーに入れる

目標が、特定の日に特定の行動を必要とする場合は、早速カレンダーに記入しておきましょう。

夫婦生活円満のために、結婚記念日にプレゼントを送る、と決めたら、記念日の一週間前に「プレゼントを買う」というスケジュールを入力するのです。もちろん、手帳でもOK。自分が普段目にする日付管理ツールであれば機能します。

ルーチンに組み込む

目標が、同じ行動を繰りかえし必要とする場合もあります。

たとえば「毎日15分読書する」というようなもの。こういうのはプロジェクトとして少々扱いにくいので、ルーチンワークに設定してしまうのが手っ取り早いです。

朝起きてご飯を食べる前に、本を読む。というように、日常のどこかにその行動の居場所を定めてしまうわけです。

残念ながら、日常のルーチンを管理していない人はこの手法が使えません。あと、毎日全然違う生活を送っている人も無理でしょう。そういう時は、カレンダーにその行動を繰り返し登録することで対応できます。

ちなみに、ルーチンを管理していると、「無理なものは無理」がはっきり見えるメリットがあります。ルーチンとして組み込もうとしても、どこにも空き時間がないことがわかるのです。そういう時は、やはり何かを止めるしかありません。そういうことが実感としてわかると取り組みやすいものです。

リマインダーに指定する

具体的な行動を定めにくい目標もあります。

「健全な市民として行動する」というのは理念としては立派ですが、ブレイクダウンは難しいですね。ギリギリ「人に親切にする」というぐらいでしょうか。あるいは下世話なことを書かない、とかかもしれません。こういうのは行動というよりも、行動指針、あるいは「心がけ」のようなものといえるでしょう。

これらは、折に触れて目に入るようにしておくのがコツです。手帳に書き込んでおく、ノートに付箋で貼っておく。定期的にメールに飛んでくるようにする。Evernoteのリマインダーに設定しておく。

方法はいろいろあります。

さいごに

これらの方法を使えば、目標を運用していけると思います。

あとは二つのポイント押さえるだけです。

  1. 記録に残す
  2. 目標の振り返りを設定する

「記録に残す」ことの重要性は、以前のエントリーで書きました。デジタルでもアナログでも良いので、何かしらに記録しておきましょう。

あと目標を設定したら、その振り返りの時期も設定することです。1月1日に目標設定したら、カレンダーの4月1日にでも「今年の目標の中間報告」と書き込んでおきましょう。

たぶんそのころには、状況もいろいろ変わってきて、目標についても変更が出てくるでしょう。人間は未来を完璧に予想もできませんし、自分の能力認識にもバイアスがかかっているので、それは当然のことです。それはそれで、修正して、また対応していけば問題ありません。

ちなみに、私の毎年の目標の一つが「一年間、生き延びる」です。これだけの目標でも、結構大変で、さまざまな修正を迫られたりもします。でも、生きるというのは本質的にそういうことなんだなと思います。

では、今年もよろしくお願いいたします。

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目標が持つ力と副作用 〜『戦場にかける橋』を観て〜

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1957年に公開された古い映画である。当然、映像も古くさい。最近の映画を見慣れていると、チープさが画面全体から漂ってくる。

が、見終わった後、どうにも不思議な印象が胃の中に残る映画であった。ザラザラとした手触りの、適切に収まる場所がない小石のような感触だ。

※以下はネタバレ要素を含むのでご注意。

概要


第二次世界大戦のまっただ中、イギリス軍兵士たちの「行進」から物語は始まる。彼らは、とある場所へと向かっている。あるいは、運ばれている。ビルマ国境付近にある日本軍の捕虜収容所だ。

その収容所を統括しているのは斎藤大佐。ちょびヒゲで、始終しかめっ面を浮かべている日本人だ。漫画で「貴様なんぞに、娘がやれるか!」と主人公に怒り出す父親をイメージするとよいだろう。

彼は、捕虜であるイギリス軍兵士たちに橋造りの労役を命ずる。それは、「ルール」的に問題がない。しかし、作業を急ぐ斎藤大佐はイギリス軍将校たちにも労役を命じた。将校とは、普通の兵士よりも階級が高い軍人のこと。とにかく全員働け、というわけだ。

将校への労役が命じられたとき、イギリス軍をとりまとめるニコルスン大佐はきっぱりとそれを断る。「ジュネーブ協定に反する」と。ジュネーブ協定では、戦争時のルールとして捕虜になった将校に労役を命じてはいけないことになっているのだ。

もちろん、見た目からして頑固者の斎藤大佐は聞く耳を持たない。むしろ怒りを露わにする。命令を聞かない__そしてニコルスン大佐の命令はきちっと聞く__イギリス軍将校たちに機関銃を向けたりもする。しかし、頑として彼らは動こうとしない。

両者は対立し、意見は平行線のまま、ただ時間だけが過ぎていく。橋の完成予定日は迫っているのに、将校によるとりまとめを欠いたイギリス軍の兵士たちは、労働力としてほとんど当てにならない。完成への見通しは絶望的である。

最終的に匙を投げたのは斎藤大佐だ。

独房に閉じ込めていたニコルスン大佐を解放し、イギリス軍兵士の指揮を将校に委譲する。大佐は、大音量の歓声と共に帰還する。

ここまではいいのだ。

悪役を担う斎藤大佐。彼からの迫害にもめげずに、ジュネーブ協定という「ルール」を遵守するために命を張ったニコルスン大佐。そして、ニコルスン大佐の勝利。

わかりやすいストーリーだ。この映画を見た人は皆、まず斎藤大佐を憎み(あるいは嘲り)、ニコルスン大佐に心情を寄せるだろう。彼の勝利は、わかりやすいカタルシスをもたらしてくれる。

しかし、物語はここでは終わらない。希望が輝く空のむこうには、黒い雷雲の影が見え始める。

兵士に士気を取り戻す


兵士たちへの指揮を取り戻したニコルスン大佐は、さっそく「組織化」に取りかかる。すでに兵士たちは、兵隊としてはまったく機能していなかった。

大佐は部下の将校たちに以下のような言葉を投げかける。

「兵隊には自分の仕事に誇りを持たせる事が肝心だ」
「兵隊には目標が必要だ」
「ない場合は我々が考え出す」
「むずかしい仕事だが幸い橋という良い手段がある」

仕事に対する「誇り」と「目標」。この二つは現代組織においても重要な要素を持っている。

「誇り」は自尊心や自己肯定感を生み出すと共に、その仕事に全力を出すことを促す。誇りがあるからこそ、プロはプロとして研鑽し、成果を出し続ける。これはアイデンティティーの問題でもあるし、企業文化の問題でもある。

「目標」の重要性は改めて指摘するまでもない。バラバラの個性を持つ人々は、共通の目標が無ければ、自由気ままに力を発揮するだけになる。円の中に小さな点がいくつも集まっていて、それぞれが好き勝手な方向に矢印を伸ばしているのをイメージするとよいだろう。これでは力が分散するだけではなく、時に逆向きの力同士が打ち消し合ったりもしてしまう。

ある方向、ある点を指し示すことで、その人々が同じ方向を向くことができる。当然、発揮される力も同じ方向を向くことになる。出てくる成果は大きいものになるだろうし、また同じ方向を向いているという一体感が、「誇り」を生み出すという副次的な効果もある。

ニコルスン大佐は、「橋を完成させる」という目標を手段として使い、なまりきったイギリス軍兵士たちを再び兵隊にしようと考えたわけだ。そして、彼は実際にそれをやりとげた。期限までに間に合わないと思われていた橋を、しっかりと完成させた。しかも当初予定していた以上にしっかりとした橋を。兵士たちにも士気が戻り、兵士たちは再び兵隊になった。

実に素晴らしい。

それほど長い部分ではないが、この下りはプロジェクトマネジメントについて学べる要素が多いだろう。

しかし、私は「大佐の帰還」ほどストレートにカタルシスを感じることはできなかった。むしろ、そこにはある種の危うさが感じられる。

目的に飲み込まれる


ニコルスン大佐は、「橋の完成」を手段として意図していた。その目的は「イギリス軍兵士たちの士気をあげ、規律と健康を取り戻すこと」だった。その大佐の目的を達成するために、橋の完成を兵士たちの目標にしていたわけだ。

しかし、橋の工事が進むにつれ、どうにも雲行きが怪しくなってくる。見るからに大佐の目標が「橋の完成」になっているのだ。彼は、完璧な計画を練り上げ、イギリス軍兵士たちの労働量をギリギリまで上げたうえ、病気やけがで倒れたものたちの手を借りようとする。将校すら人手である。

この橋はきっと400年以上も残るものになるだろうと想像し、そのことに非常な満足感を感じている。明らかに彼の中の優先順位は「橋の完成」がトップにきている。

そもそも、その橋は敵軍が使用する橋なのだ。敵軍に利する行為を全力でまっとうしようとする大佐の姿は、英雄というよりも、強迫症のそれに近い。しかし、大佐は自分の目標がすり替わっていることにまったく気がついていない。だからこそ、よりいっそうタチが悪い。

が、現実の世界をみれば、こういうことは実によくある。

当初の大きな目的が失われ、手段そのものが目的へと変容してしまうことが。

たとえば、「組織」。ありとあらゆる組織は、何かしら達成したい目標があったはずなのだが、いつのまにか組織の存続そのものがその組織の目的となってしまう。最初の目標が達成されていたり、あるいは組織の存在が目標の達成において邪魔になっても、その慣性の力は強く働き続ける。

あるいは、「整理」。物事を(あるいは情報を)、適切に使いやすくするために行う整理のはずが、整理そのものが目的になってしまう。使いやすさとはまったく関係ない整理が行われたり、あるいは整理することに没頭しすぎて、物事(あるいは情報)を使う時間を削ってしまう。

目的(ないし目標)は、人を動機づける強い力を持っている。であるが故に、人はそれにすぐに飲み込まれてしまう。そして、飲み込まれている間は、より大きな目的が何であったのかは注意されない。

それほどまでに、目的というのは強力かつ甘美で、吸引力があるものなのだ。

さいごに


人を助ける薬であっても、量を間違えれば毒になる。目的(ないし目標)も同様だ。

「目的」に飲み込まれたくないから、そんなものは一切立てない。

そんなスタンスをとる人もいるだろう。医者だってミスをする可能性があるのだから、病院には一切行かない。そんなスタンスだ。

しかし、目的や目標はうまく使えば大きな力を発揮することも間違いない。

組織はバラバラの個人の集合体だが、一人の人間だってそれとフラクタルな構造を持っている。四六時中まったく同一の「自分」が存在している、という感覚は単なる幻想である。

いろいろな場面で、いろいろな「自分」が登場する。それらを同一の方向に向けることができれば、確かに大きな成果を残すことができるだろう。その役割を目的や目標が担ってくれる。

が、そうした目的や目標は、大きな目的を達成するための手段であることを忘れてはいけない。

大きな目的とは、「生きる」(ないし「よく生きる」)ことだ。人生を充実するための手段を実行しているうちに、人生が空虚に近づいていってしまう、なんてことはないようにしたいものである。

※ちなみに、橋の完成後もこの物語は続いていく。オチに興味があるかたはウィキらずに直接映画をご覧になることをオススメする。

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目標について4:機能する目標と「自分」

前回まで:

今回はまとめになります。

リンカーンの言葉

「自分が今どこにいて、どこに向かっているのかわかれば、何をどのようにすればいいのかがもっとよくわかる」

このエイブラハム・リンカーンの言葉からいくつかのことを学ぶことができます。

  • 第一に、自分が今どこにいるのかを知ることの大切さ
  • 第二に、どこに向かっているのかを知ることの大切さ
  • 第三に、上の二つが分かっていれば「何をどのようにすればいいのかがもっとわかる」ということ

「目標」というのは、二つ目の「どこに向かっているのか」にフォーカスが当てられています。というか、たいていの「目標」はそこしか見ていません。しかし、「自分が今どこにいるのか」を知ることはとても大切です。

さらに、この二つが適切に分かっていれば、「何をどのようにすればいいのか」が見えてきます。逆に言えば、これが見えてこないのであれば、上の二つのどちらかが分かっていない、ということです。

これについてもう少し考えてみましょう。

無茶な目標と機能する目標

たとえば、コンビニで「来年の年商を10億にする!」と目標を決めるのは、中学生でもできます。夢に満ちあふれた数字です。しかし、その年の年商が1億円だったとすれば、いささか大きすぎる目標と言えるでしょう。単純に考えれば、一日800人入っているお店を、一日8000人入るお店にする、ということです。大きすぎるというか現実的ではありません。

この目標が10%アップならどうでしょうか。1億1000万円。心躍る数字ではないにせよ、現実的な感じが出てきます。一日の客数が880人。このぐらいだと、現実的に何をすればよいのか考えられます。

このように、目標というのはモチベーションを上げる(つまり心のガソリンになる)だけではなく、実際に行動を生み出すものでないと機能しているとは言えません。

「目標を決める」というのは、誰にでも簡単にできます。しかし、「適切な目標を決める」ことや「機能する目標を決める」ことは、そんなに簡単ではありません。その難しさを作っているのが、「自分のこと」に関する情報不足です。

私の知らない物語

一つ言えることは、「自分のこと」について人は想像以上に知っていない、ということです。

自分にとって一番身近な存在である「自分」について、「自分」はすべてを理解していると考えがちです。が、だいたいそれは誤りです。人の記憶というのは、それぐらい当てにならないものです。

そんなあやふやな状態で「目標」を掲げても機能するはずがありません。まるで、これから攻め入る敵陣の地形を把握しないまま、戦略を練るようなものです。エイヤ!と攻め入った歩兵は、あえなく惨敗してしまうでしょう。そのとき兵士の力不足を指摘しても仕方ありません(する人が多いかもしれませんが)。根本的な戦略ミスを反省・改善すべきでしょう。

だからこそ、「ログ」が生きてきます。

自分についての記録を残すことは、自分について知る手がかりになります。それらを踏まえて、一つ一つ機能する目標を立てられるようになれば、もうちょっとだけ「自分が理想とする自分」というのに近づけるのではないかと思います。

さいごに

目標というと、『七つの習慣』の「ミッション・ステートメント」(MS)が想起されます。このMSも、簡単に書けるものではありません。

ミッション・ステートメントは短期間に書けるものではない。深い反省、注意深い分析、入念な表現、そして多くの書き直しを経なければ、完成には至らない。本当に自分のものにするには、あるいはそれが自分の心の奥底の価値観と方向性を十分に表現できるまでは、数週間あるいは数ヶ月を要するかもしれない。

同じように「機能する目標」も簡単に書けるものではありません。少なくとも、今の自分について知る、方向性を明らかにする、という二つの要点を押さえておく必要があります。

というわけで、今回は「目標」について長々と書いてきました。

もちろん、「目標」を立てて来年の自分を鼓舞するのはすてきなことです。とりあえずは、それをどこかに「記録」しておくこと。そして、それが達成できなくても自己嫌悪に陥らないこと。この二つを意識しておくとよいかもしれません。あと、できれば行動記録もつけてみたいところです。

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