Category: 物書きの仕事道具

「Milanote」のExport機能

前回:「Milanote」のBoard機能で階層を作る

今回は「Milanote」のExport機能についてみていきます。残念ながら、現段階では一番残念な機能です。

Exportの種類

作成したボードを外部出力するための「Export」機能には、いくつかのフォーマットが選択可能です。簡単に見ていきます。

■PDF(Canvas)

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配置したパーツをそのままに画像形式でPDF化。ちなみに現状では、日本語はバケます。

■PDF

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テキストに起こしたPDF。こちらも日本語はバケます。

■Word

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WordやPagesで読み込めるdocx形式での出力。こちらはきちんと日本語が通ります。

■Markdown

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見出しや他のテキスト装飾がマークダウン変換されたmdファイル形式。

■plaintext

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ごくシンプルなプレーンテキストで、階層表現が行頭のスペースで表現されています。

イマイチな出力機能

というわけで、まず日本語環境ではPDFはどちらも使えません。この辺は徐々に改善されるでしょう。あるいはそれに期待です。

少し使いづらいのは、どれか特定のボードだけを選んで出力、というのが不可能な点です。現状では、すべての階層が一枚のファイルとして出力されます。これは選択できるのが望ましいです。

で、ややこしいのが階層表記です。かなり癖のある見出しの処理をしてくれます。マークダウンで考えてみましょう。

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こういうボードが、以下のように見出し付けされます。

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冒頭の「# tadanori’s workspace」はいいですね。次の「## 月刊くらした計画」も構いません。ややこしいのが、その次の「# 月刊くらした計画」です。階層が一つ上に戻っています。さらにその次の「# 月刊くらした計画ZZ」で、見出し1のレベルが連続しています。さて、これはどのように解釈すればよいのでしょうか。

整理してみると、まずボードそのものの名前は#で見出し付けされます。そして、そのボードに含まれるコラムが##で見出し付けされます。また、ボードに配置されたNote(テキスト要素を扱うパーツ)で設定した見出しは###で処理されます。

ここまではわかりやすいですね。では、ボードに配置されたボードはどうなるかというと、「ボードそのものの名前は#で見出し付けされる」が適用されて、#になるのです。だからもしメインのボードに1つだけボードを配置し、そのボードの中にまた1つだけボードを配置しを繰り返していくとひたすらに#の見出しが並ぶことになります。

これは将来的にボードを選択して出力する事態を見越しているのか、あるいは階層が深くなりすぎると#が7つ以上になってしまう事態を回避しているのかはわかりませんが、とにかく何かしらは理由があるのでしょう。とはいえ、若干扱いが面倒ではあります。

ちなみに「Unsorted notes」に入れてあるものも、きちんと末尾に配置されて出力されます。これはあるいは出力されない方が使い勝手がよいのかもしれません。

さいごに

というわけで、作成の面ではいろいろ気配りが聞いたツールではありますが、現状の段階でのExport機能はそれほど当てになるものでも、小回りが利くものでもありません。一応プレーンテキストであれば行頭のインデントがあるので、WorkFlowyなんかには投げやすいかもしれません。

とりあえず、全体的に改善の期待が強い機能回りです。

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「Milanote」のNote,Image,Link,Column,Linkeの詳細

前回:「Milanote」で使える6つのパーツ

今回は、Milanoteで使える全パーツ6個のうち、5つのパーツを紹介していきます。

Note

Noteの担当はテキストです。テキスト装飾には、見出し、太字、斜体、箇条書きリスト、番号付きリスト、チェックボックス、引用、が使えます。カードの上部の色も変えられます。あと、そのテキストのソースも記入できます。引用文などをメモしておくに最適な機能ですね。

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ともあれ、デジタルノートではありふれた機能なので、特に解説は不要でしょう。

ちなみに、装飾で見出しを設定しておくと、マークダウンでエクスポートした際、ちゃんと見出しとして処理されます。

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「えっ、見出し1(#)じゃなくて、見出し3(###)になるの?」

という疑問があるかもしれませんが、これはちょっとしたトリックというか仕掛けがあるので、それはまた別の回で書いてみましょう。

Image

Imageは画像を扱えます。直接ドロップするか、ファイル選択ダイアログから選びます。カード上部の色が変更できます。また、画像を読み込んだ後は、自由にサイズ変更が可能です(他のカードは任意のサイズ変更は不可能です)。逆に、Lock(ロック)をオンにしておくと、位置の変更及びサイズの変更は不可能となります。巨大なサイズの画像を壁紙がわりに使いたい場合は、ロック機能が便利そうです。

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画像にはcaptionを入力することも可能です。
※が、現在は日本語入力ができません。コピペで対応できます。

Link

Linkeは、URLを扱うためのパーツです。Descriptionで、そのサイトの概要を入力できますが、多くのサイトから自動的に概要を引っ張ってきてくれる便利な使用となっています。もちろん、自分で入力し直すことも可能です。加えて、カード上部の色が変更できます。

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※URLを入力すると、概要つきに変換される

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※いろいろなサイトの例

Column

複数のパーツをまとめるパーツです。他のパーツをドラッグすれば、取り込んでくれます。カード上部の色が変更できます。画像と同じように配置場所をロックすることも可能です。ロックしていても、カードの取り込みは機能します。

Columnは、簡単に言ってしまえば、階層が一つしかないアウトラインです。Column内での順番の配置は自由に変更できますが、横幅は統一され、画像であってもサイズ変更は不可能となります。また次に紹介するLINEは配置できません。

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ぱっと見ると、このColumnは複数のパーツをまとめるだけの手段でしかなく、あまりたいしたことがないように思えます。こんな機能がなくても、複数のパーツを同時に選択して、一緒に移動できる機能があればいいんじゃね? という気もしてきます。が、それは早計です。視覚的に、複数のパーツを「一つのライン」に並べることには、利便性とはまた違った認知上の意義があります。詳しい解説は避けますが、使ってみればすぐにわかるでしょう。

また、Macではcommandを押しながら、パーツ同士を重ねると(あるパーツを別のパーツにドラッグすると)、自動的にコラムとしてまとめてくれるショートカット機能があります。活躍しそうなショートカットです。

LINE

パーツ同士の関係性を示すためのパーツです。普通に矢印を配置してもいいですし、配置した矢印をパーツにドラッグしてジョイントさせることもできます。ジョイントさせると、パーツの移動に追従してくれるので便利です。一つのパーツに複数のLINEをつなげることもできます。

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線の色を変えることもでき、また、末端の矢印マークのオンオフが切り替えられます。つまり、「ただの線」「スタートだけある矢印」「ゴールだけある矢印」「両端矢印」の4つが作成できるわけですね。なかなか便利です。

ちなみにパーツにジョイントした状態で、LINEだけをドラッグしようとするとジョイントが外れてしまう点には注意してください。

さいごに

以上が、基本となる5パーツの動作でした。基本的なものばかりなので、ややこしさはないでしょう。とは言え、Noteのソースや、LinkのDescriptionなど細かい点で気が利いているのが嬉しいところです。そうしたちょっとした動作が使いやすさに影響してきます。

残るパーツはあと1つ。Boardだけです。それは回を改めて紹介します。

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「Milanote」で使える6つのパーツ

前回:「Milanote」は、Evernoteに世代交代をもたらすのか

では、実際にMilanoteでどんなことができるのかを紹介していきましょう。

単一のworkspace

まずこれがMilanoteの基本画面です。

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※初期配置のサンプルパーツは削除してあります。

この「一面」が私の作業場所となります。そして、この「一面」しかありません。ファイル単位の分類は存在せず、すべては空間的配置と階層のもとで分けられます。つまり、Evernote、WorkFlowyと並ぶワンライブラリ志向なわけです。まずはこの点を押さえておきましょう。

具体的な画面構成は以下のようになっています。

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  1. パンくず式メニュー
  2. パーツサイドバー
  3. メインボード
  4. 設定もろもろ
  5. Unsortedスペース
  6. Conversations

まずは、配置できるパーツについてざっと見ていきましょう。その後、細かい機能のお話をします。

6つのパーツ

パーツは左のサイドバーから、メインボードにドラッグすることで配置可能です。もちろん配置後もドラッグで場所を移動できますし、ゴミ箱(Trash)にドラッグすれば削除できます。

Note

テキストを入力するパーツです。ボードに配置するとテキストが入力できます。複数行の入力もできます。

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また、ご覧のようにパーツを選択すると、サイドボードの内容が切り替わります。これはすべてのパーツに言えることで、それぞれのパーツによって表示される内容は変わります。

Noteであれば、見出し、太字、斜体、リスト、チェックボックス、引用といったリッチテキストを扱うことができます。また、Sourceを入力することもできます。必要最低限の表現は備えていると考えてよいでしょう。

ちなみに変更できるColorは、パーツ全体ではなく上部の縁の色です。なかなか小じゃれた感じです。

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Image

画像を表示するパーツです。ファイル選択のダイアログあるいは直接のドラッグで画像を挿入できます。

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画像設定後は、サイズを変更することもできます。

Link

リンクを表示するパーツです。Noteで代用できるようにも思えますが、ある程度のエンベットに対応しています(説明は続回で)。

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Column

Columnは、複数のパーツを一つにまとめるパーツです。

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いささか再帰的な響きがありますが、Columnの中にColumnを含めることはできません。あくまで散らばっている情報を一カ所にまとめるためのパーツです。

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Board

Boardは、階層を作り出すパーツです。Boardをメインボードに配置し、それをダブルクリックすると、一つ下の階層のボードが表示されます。もちろん、見た目及び機能は一つ上のメインボードとまったく同じです。

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※ボードに「入った」ところ

下のボードに「入っている」ことは、パンくずリストからも確認できます。

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でもって、これは再帰的に効いてきます。つまり、そうして作成したボードの中に、新しいボードを設置できるということです。当然その新しいボードにも……という感じで、どんどん奥深くにまで潜っていけます。だから、ファイル構造が必要ないわけですが、その辺の説明はまた改めておこないましょう。

Line

パーツ同士の関係性を明示するためのLineです。単に線を線を引くだけではなく、パーツの上にドラッグすることで、そのパーツとジョイントもできます。ジョイントすると、パーツを動かせばLineも自動的に移動してくれるのがFeel so Goodです。

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※Lineをジョイントしたところ

さいごに

2017/01/27の段階で使えるパーツは、上記の6つです。たったこれだけでも、かなりの使い方ができるかと思います。

特に注目したいのは、コラムと階層的ボードの存在です。このおかげでワンライブラリ志向が綺麗に実現されています。アイデアとは常に横断的なものなので、ファイルの壁に縛られている場合ではありません。一カ所に集めた上で、それらを組み合わせることが必要です。

というわけで、次回はそれぞれのパーツの細かい挙動について確認してみましょう。

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「Milanote」は、Evernoteに世代交代をもたらすのか

Evernoteがアイデア保存場所の最強ツールであることは異論を待ちません。

しかし、それだけでいいのか、という疑問(ないしは不満)もあります。Lifehacking.jpさんでもそのことについて言及されていました。

発想を保存するプラットフォームにならなければEvernoteに未来はない | Lifehacking.jp

ところが、単なる情報の集積所というだけでは、そろそろ有用性に限界が生じてきているというのが、以前から危惧していたEvernoteのアキレスの踵です。

集めた情報を有用に使えなくてはいけないのです。それは、機能の高いエディタを実装するといったことではなくて、情報を扱えるようにしなければいけないのです。

たしかにそうかもしれません。

この「なんでもEvernoteに集めちゃうよ」運動を推進中の私ですら、ある種の作業にはWorkFlowyや紙のカードを持ち出します。つまり、そこには欠落した何かがあるということです。

それを埋めようというのが、「Milanote」の野望です。

Milanote: The notes app for creative work.

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今回からしばらくこの「Milanote」について書いていきますが、まずはこのツールの志向を(ないしは思想を)チェックしてみましょう。

Evernoteにできないこと

「Milanote」のCEOは、Mediumで挑発的な記事を書いています。

Why using Evernote is making you less creative

要約すればこうでしょう。

  • Evernoteには、さまざまな「情報」が一カ所に集まっている
  • 撮影した写真であったり、気になった記事であったり、思いついたアイデアであったり
  • それらは大きな構造物を作る部品(パーツ)のようなものだ
  • そのさまざまなパーツがEverntoeという大きな箱に収まっている
  • Evernoteはそのパーツを検索で見つけ出せる
  • たとえば、「思いついたアイデア」だけを一覧する、というように
  • しかしそれはレゴブロックで「赤い部品だけを見つけ出す」のと変わりない
  • 何かを作る出すためには、さまざまな部品を一つの構造に向けて集合させなければいけない
  • 言い換えれば、部品同士にコネクションを形成させなければいけない
  • そんなことEvernoteにできる? ねえ、できる?

走者一掃の満塁ホームラン並に、ただただ唖然とするくらい見事な理屈です。でもって、実体験としてもその通りなのです。現在のEvernoteは、極めて優れた保存場所ではあるものの、それ以上のことを行う作業場所ではありません。もちろん作業を行うことは可能ですが、快適にそれが行えるとはとても言えません。

言っておきますが、だからといってEvernoteの価値が欠損されることは皆無です。これほど優れた記録ツール、保存ツールは他にはありません。ただ、現在のEvernoteには、それ以上のことができない(あるいは極めてやりにくい)という状況があるのです。

情報を保存し、後から参照することはできる。
でも、集めた情報から新しいクリエイティブを起こすことは厳しい。

だからこそ、多くのユーザーがEvernote+その他のツール、という形でクリエイティブを進めているのでしょう。私だってその一人です。

チラっとMilanote

では、その「Milanote」では何ができるのでしょうか。

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細かい機能については後の記事で改めて紹介しますが、画面はこのように構成されています。勘の良い方ならば、私が以前作った「Barrett Idea」を思い出されるかもしれません。

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「Barrett Idea」はWebブラウザを付箋ツールとして使うものでした。短いテキストを入力してそれを貼り付け、ドラッグで移動させて、アイデアを整理する。そういう使い方です。このツールは非常に便利なのですが、素人仕事なので、機能はまったく足りていません。テキストしか貼り付けられませんし、保存も書き出しもできませんし、階層も一つだけです。

「Milanote」は、それらすべてができます。つまり、テキスト・URL・画像の貼り付けが可能で、保存・書き出しにも対応しており、なんと階層も潜っていけるのです。加えて、簡易なリッチテキストも扱えます。つまりチェックボックスなどもあるのです。

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「Milanote」はアイデアを展開し、位置づけ、関連づけ、階層化できます。それこそまさにEvernoteにはできなかったことです。初期のトップボードには「○○’s workspace」の名前が与えられますが、その名は伊達ではありません。たしかにこのツールは作業場所として機能します。

部品をコレクトするだけではなく、それらをコネクトするための思想が織り込まれているのです。

とは言え

「Milanote」がクリエイティブ作業向きツールであることは同意するにしても、じゃあEvernoteなんて捨てちまえと言ってしまうのは早計でしょう。もともとツールの方向性が異なるのです。

Evernoteは、縦を重視します。時間的蓄積に重きを置き、そこに地層を築いていきます。それによりもたらされる豊かさは、人類が手にしたGoogleと相似ではあるでしょう。どちらかと言えば、脳の長期記憶補佐にフィットしたツールです。

Milanoteは、横を重視します。空間的展開に重きを置き、そこにアイデアを広げていきます。それによりもたらされる広さは、せせこましく混乱しがちな私たちの思考を受け止め、整理するための余白をもたらしてくれるでしょう。どちらかと言えば、脳の短期記憶補佐にフィットしたツールです。

このように考えると、二つのツールは連携するのが望ましいことになります。あるいは競争が働いて、それぞれの良さを内側に取り込むような動きが出てくればいいのかもしれません。

「Milanote」は、Evernoteに世代交代をもたらすのか?

答えはおそらくNoでしょう。なにせ別の志向のツールです。ただ、「Milanote」は細かい点にいろいろ気が利いているので、新しいツールの選択肢として今後存在感を示していくことはありそうです。

というわけで、ざっと紹介してみたので、次回は機能のお話をお送りします。

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Inspiration-State あるいは情報カードに書けること

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ここ一ヶ月ほど、積極的に情報カードを使っています。着想の書き取り用途です。

その中で、いくつかの状態に気がつきました。着想の状態です。

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まずは完璧に書ききれるもの。「豆論文」と呼べるような一つの集塊性を持った文章がそこに記述されます。これが一番わかりやすく、話が早いです。なにせ、もうそれで完成していますからね。

問題は、そうではない状態です。

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フレーズだけを書きつけたもの。書こうとしているものの「見出し」だけが捉まえられた状態です。完成にはほど遠いので、また時間を置いて、書けるときに記入すればよいでしょう。よって、日付の記入もそのとき用に避けておきます。

以上は、まだ扱い方が決定しやすい方です。ややこしいのは以下です。

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いくつかの、断片的なフレーズだけを書きつけたもの。文章にはなっておらず、かつ見出しだけでもない状態です。

これを書いたときに私の頭に浮かんでいたのは、概念というよりは、概念同士のリンクの線だけであって、それは現段階では文章化できるようなものではありません。かといって、時間が経てば言葉にできるかというと、そうではなく、おそらくこれだけでは意味を成さない着想なのだろう、という予感があります。それはたとえば、釘とかナットのようなもので、何かと何かを結び合わせるときに初めて効果を発揮する類のものです。

ステート別の管理

ごく単純に分類しても、着想メモには以上のような3つのタイプ(あるいは状態)がありえます。

完成した情報カードの管理は楽チンで、まとめて一つのボックスに入れておくか、(もしそれが作れるなら)明示的なカテゴリで分類しておけばよいでしょう。それをときどき「くって」内容を短期記憶に想起するのです。

タイトル(見出し)しかないカードは、少し難しくなります。未完成のカードをだけを集めておくのが良さそうですが、完成したカード群に混ぜておいて、記入を促す動きも考えられます。とりあえず、ここでは未完成のカードだけを別に分けておくやり方を取ったとしましょう。

そうなると、フレーズ群を書きつけたカードの扱いが、さらにやっかいになります。完成でも未完成でもないもの。中途半端な着地をしてしまったもの。そのようなものは、完成に入れても、未完成に入れても収まりは良さそうに思えません。たぶん、これは(悪い意味はいっさいなく)「失敗作」なのでしょう。つまり、しかるべきときがやってくれば、別の概念と結びつけて、新しいカードにリライトされる運命を持っている、ということです。「見出し」だけのカードは、単に追記すれば完成しますが、この状態のカードは、おそらく新しいカードとして転生させなければいけないのでしょう。

そう考えたとき、完成版と見出しだけのカードは、アナログでもデジタルでも状態管理的な視点ではまったく違いがありませんが、「中途半端なメモ」に関しては、デジタルが、それもアウトライナーが圧倒的に向いていることに思い至ります。

しかるべき転生が運命づけられたメモ。言い換えれば、被編集が約束されたメモは、アナログの固定性とは相性が悪いのです。それは、後から編集リライトすることがアプリオリに内在されていて、その置き場所はフローさを担保してくれるところが望ましいのです。

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『「目標」の研究』への最終マップ(たくさんの付箋バージョン)

執筆プロジェクトをクローズしていたら、作成した企画案マップが出てきたので、ちらっとご紹介しておきます。

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この手のものは執筆前〜執筆中に何枚も書いたのですが、これが最後のバージョンです。

多用な付箋構成

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中央には吹き出し型の付箋を配置。そこにタイトルを書き込みます。この段階では「夢と目標の研究」となっていますね。発売日の前日まではこの仮題で進んでおりました(表紙を作るときに変更しました)。

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その周囲には、通常の横長付箋をそのまま貼り付けたものと、円形にカットしたものを使って大きなキーワード(キーフレーズ)を書き込んでいます。やはり円形にすると目を惹きますね。

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また、ロールタイプの付箋をちまちまとハサミで切り出し、本に含まれるトピックを並べ、内容的に近いものを近い場所に配置してあります。

たくさんの付箋がありますが、すべてを使ったわけではなく、原稿を整える段階でまるっと排除したものも少なくありません(当初は、『ファスト&スロー』の話をもっと紹介する予定でしたが、ばっさり切りました)。

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最後に、文章的な塊を持つメモを、ノートパッドタイプの付箋に書き込み、適切なサイズに切断して貼り付けました。

このようにして、企画案を紙の上&頭の中で整理し、実際の原稿の整理に進んでいったわけです。

多用な文章構成

単純に数えても、4種類の付箋を使っています。別に趣味でやっているわけではありません。それが必要だから、わざわざ付箋を使い分けているのです。

以前、「Recursive Writing Method : 再帰的執筆技法概論」という記事で紹介しましたが、テキストを「構成」する要素はじつは結構たくさんあるのです。

思いつき・走り書き・短い文章・パラグラフ・プロット・論旨・アイロニー・テーマ・筋書き・概念・原理・表題・etc……

企画案を考えるときには、これらの要素がごそっと頭の中に浮かんできます。そして、それを整理していかなければいけません。それなのに、付箋が一種類でよいでしょうか。そんなはずはありません。

付箋は、規格化された優秀なインターフェースを持っていますが、だからこそ一種類の付箋でテキストを構成する多用な要素を管理するのは苦手なのです。

もちろん、付箋には色のバリエーションが存在しています。しかし、色の違いは同一レイヤーの異なるプロパティーを示せるだけで、レイヤーの違いまでは難しいのです。

たとえば、考えてみてください。上記のマップを、同一の形の単なる色が違うだけの付箋で作成したとしたら。ここまでビジュアル的に力を持つものになったでしょうか。「見ただけ」で情報の差異が把握できる状態になったでしょうか。やはり難しかったでしょう。

だから、そう。脳の使い方に合わせて付箋を使い分けたのです。

さいごに

つまり何が言いたいかというと、知的生産における付箋の使い方はもっと探求の余地があります。さらに言うと、「付箋」というツールにもまだまだ発展の余地はあるように感じます。

「知的生産のための付箋」

いいですね、こういう商品が発売されたら即座にまとめ買いしそうな気がします。どこかのメーカーの方がんばってください。期待してます。

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物書きの戦略図(企画ドリブンからメディアドリブン)

先日、新刊の『「目標」の研究』が無事発売されました。

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これにより「月刊くらした」計画の二年目も無事終了したので、じゃあ、次はどうするのか、と新しい行動指針を考えるタイミングがやってきます。ああ、ここでもやはり「目標」が登場していますね。

こういうときに私が良くやるのは、「自分が書きたいこと」を可視化するというもので、一時期はリスト形式で並べていましたし、マインドマップを使うこともありました。ただ、どれもちょっと違うな〜、という印象があったのです。そんなときに出会ったのがDropTask

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ビジュアル系タスク管理ツールで、どうやらチームによるタスク管理に適した機能があるらしいのですが、そんな話はまるっと無視して、企画案を平面的に並べるのにぴったりではないかと思い立ちました。

企画案の一覧

実際やってみたところ、以下のような感じに。

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うむうむ。可視化できると、いかにもコントロールできているぞ、って気がするものですね。でも、ふと思いました。これだけでは次の一歩が決まらないぞ、と。

たしかにこのマップを見れば、自分の書きたいものが一覧できます。ジャンルごとにカテゴライズすらされています。でも、これらをどのように進めていくのかについての感触は得られません。単に積み荷の一覧表があるだけです。配送先もその手順もまったく不明なのです。だったら、ガントチャートかとも思ったのですが、そこはもうひとアイデア欲しいところ。

そこでうんうんと頭をひねって出てきたのが、「戦略図」(展開図)でした。軍事作戦を考えるときに、将校らが地図を広げて、その上に小隊に見立てた駒を置きながら、喧々囂々と議論を進めるあれです。

戦略は静的なものではなく動的なものなはずなので、それを自分のコンテンツクリエーションに応用できないだろうか。そんなことを思い立ちました。

コンテンツの展開図

そこで、いろいろ考えたあげくに辿り着いたのがこれです。

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まず、自分が今持っている「連載先」をノートに記しました。これが「地形」にあたります。そして、先ほどDropTaskで書き起こした一つひとつの企画案を付箋に書き出していきます。このときインデックスタイプの小さい付箋を使うと、いかにも「戦略図」っぽい雰囲気が出るのでオススメです。

本当は五色くらいあればよかったのですが、手持ちの付箋が三色しかなかったので、「現在連載している企画」「企画案の骨子だけある企画」「すでに終了した連載」の三パターンに分け、それぞれの連載先の上に貼り込んでいきました。その上で、「ここではこれとこれを書くだろう。となると、これはここに配置した方がいいか」といったことを考えていきます。

これまでは、上記のような思索を頭の中だけで行っていました。そして、これがまったく進みません。人間の認知能力の限界をはるかに超えているのでしょう。それを地形化し、部隊化することで、容易に進められるようになったわけです。
※おそらく、私が戦略シミュレーションゲーム慣れしている点も影響しているでしょう。他の人には他の人に合った展開図はありそうです。

「企画案」だけをどれだけ並べたとしても、「じゃあ、それらをどこに書くんですか?」という話が解決しないことには、なかなか実行には移せません。「書く場所」に関する決定も必要なのです。

さいごに

一点だけ補足しておくと、このやり方で大切なのは、DropTask→戦略図、という流れです。

どうせ戦略図で展開するんだから、最初から戦略図だけでやっておけばいいと思えますが、そうすると頭の動きがすでにある連載先の状況に縛られてしまいます。「あれを書いてるから、これを書こう」「こういうメディアがあるから、それに向けて書こう」という発想です。そうした思考は日々のルーチンを回していくのには適していますが、大きな流れを考える上では発想の過剰な制約として働きかねません。

大局を見据えれば、これまでのメディアの特徴を大きく変えたり、あるいは新しいメディアの創出にまで思考の射程を伸ばす必要があるでしょう。その意味で、先に戦略図ではなく、「自分が書きたいこと」を棚卸ししておくことは有用だと思います。つまり、まず企画ドリブンで発想を広げ、次にそれをいかに進行するのかについてはメディアドリブンで考える。この思考の区分けが有効なのではないか、ということです。

とは言え、「物書きの戦略図」とたいそうな名前になっておりますが、別にこの「戦略」通りにすべてがうまく進むことはまずありえませんし、想定外の話もたくさん起きるでしょう。ただ、海上を地図もコンパスもなしで漂っているような不安感はいくぶん減退できます。それはそれで大切なことです。

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2トラック・プロジェクト管理

長い間苦しんでいました。

執筆に関わるプロジェクトマネジメントに、です。

数ヶ月といった長いタームを要する、といったこと以外にも、大きな問題がそこにはありました。

性質が変わるのです。

机上のガントチャート

はじめはガントチャート的な構図で管理しようとしていました。

執筆プロジェクトの全体像を、です。

企画着手からはじまり、執筆があり、ゲラチェックがあり、販売促進があり、と一連の流れを一枚のチャートに落とし込もうとしたのです。

もちろん、チャート自体はすぐに書けます。でも、その通りにはいきません。まったくいきません。

すると人は、その手法そのものから離れたくなるものです。私もそうなりました。

工程の切り分け

あるときから、プロジェクトを切り分けるようになりました。

区画整理です。

執筆前の準備段階、執筆そのもの、脱稿後の販売促進活動。それまで得てきた経験からこの3つの区分けぐらいがちょうどよいだろう、と思い至りました。

そこでプロジェクトを「○○○」(本のタイトル)という大きい括りではなく、「○○○-企画準備」「○○○-執筆」「○○○-販売促進」のように3段階に分けたのです。これは少しうまくいくように思えました。また、副産物もありました。

意外な副産物

副産物とは、チェックリストです。

執筆の工程は、それぞれの本によって違うので「魔法の呪文」は存在しないのですが、よくよく考えてみれば、販売促進は__Twitterの固定ツイートを変更する、ブログで告知記事を書く、プレゼント企画を行うなどなど__本が変わっても同じような活動を行います。

プロジェクトの工程を区分けすることで、繰り返し可能な部分が見出され、それをチェックリストに落とし込むことができたのです。

まっすぐには進めない

しかし、問題は残りました。それはやはり執筆工程にあります。なにせ「魔法の呪文」は存在しないのです。

一番厄介だったのは、居座り続けるタスクでした。

執筆がストレートに進むことはまずありません。なにせこの世にこれまで存在しなかった「本」を書こうとしているのです。手本や見本や師匠からの教えはここでは直接的な答えにはなりません。何か新しいものごとを、頭を使って生み出す必要があるのです。でもって、それには時間と試行錯誤が欠かせません。

となると、たとえば、「第二章第一項を書く」という通常ならばうまく機能しそうなブレイクダウンによるタスクが、まったく進捗しないことが起こりえるのです。それこそ、三日も四日も、そのタスクが私の現前に残り続けることになります。それが、あまりにも苦痛であることは、鏡を見るまでもありません。

毎日毎日、デイリータスクリストに「第二章第一項を書く」と書き、プロジェクトノートにはまったく何の進捗も書き込めないのは、苦痛を通り越して拷問とも言えます。人の心は、終わりの見えない行進に長期間耐えられるようにはできていないのです。

そこで私は決めました。自然な決意だったのか、作為による思い込みだったのかはわかりません。ともかく、「これをコントロールするのはやめよう」と決めたわけです。

ここで一つ、大切なことを書いておきましょう。

「タスクリストを見るのが嫌になっているのなら、タスクの管理方法に何か歪みがある」

その歪みがどこから生じているのかはわかりません。現実と理想のギャップなのか、管理の手間の大きさなのか、ツールのUIの不具合なのか、理由はいろいろ考えられます。が、どのような理由であれ、タスクリストを見るのが嫌になっているなら、何かを変えなければいけません。それを「やる気」などといった見えもしない概念のせいにして問題決着を図ろうとすれば、時間を置いて同じ問題が繰り返されるだけです。

ともかく私は、「本を書く」という工程の中心部に位置する「原稿を書く」という工程を、コントロールするのをやめました。それはつまり「タスクリストを作って、上から順に消化していけば、全体が終わる」というような考え方を捨てた、ということです。

もちろん、進捗状況は確認できるようにします。どこまでできているのかがわからないと、それはそれでツライものです。ただ、ガントチャート的進行の信仰はきっぱり捨てました。他の人は違うのかもしれませんが、私にとってそのやり方は苦痛を生むものでしかなかったのです。

2トラック式

では、現状執筆のマネジメントはどうなっているのかと言えば、次のようになっています。

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まず、「本線」があります。このルートは、通常のタスク管理と同じようにタスクリスト式に進んでいきます。が、途中でトラックの移動が起きます。執筆の工程に入ると、「本線」から外れて「周回トラック」へと移動するのです。

ここでは通常のタスクリスト式の進捗管理は行いません。では、代わりに何をするのかというと、「時間と作業ログ」による進捗確認です。

「企画」の段階では、「メールを送る」というタスクを立て、それを実行すれば消す、というやり方を行います。しかし「執筆」の段階では、「第二章の原稿を1時間書く」とするのです。つまり、あるタスクの項目を成し遂げたかどうかではなく、どのくらいの時間その種の作業をしたのかで進捗を確認するのです。

もちろん、これは成果の直接的なマネジメントにはぜんぜんなりません。1時間作業をして、まるで原稿が進んでいないこともあります。でも、それが現実の姿なのだから仕方がありません。ここが大切なところです。

理想を言えば、1時間作業をしたら、何か一つのタスクが達成されているのが望ましいでしょう。が、その「望ましい状態」をベースにマネジメントを行ってしまうと、辛くなるのは現実の私です。だって、現実の姿は「1時間作業をして、まるで原稿が進まない」のですから。

でもって、私は「本を書く」とは根本的にそういう作業だと認識しています。そして、プロジェクトマネジメントを理想ベースに運用したところで、現実の執筆がその理想に寄るわけではないのです(あと、寄ったら寄ったで嫌ではあります)。

だから、日々のタスクリストには「〜〜の原稿を1時間書く」と書き続け、それを実行します。同じ場所をぐるぐると周り続けるわけです。そして、シンプルながらも作業記録をつけます。その記録の積み重ねは、「自分が何かしらを行っている」という実感の拠り所となってくれます。

これがもしタスクリスト式の管理方法ならば、タスクを一つ消化できないと「何もしていない」ことになるのです。その空虚さは、ほとんど耐え難いものであることは容易に想像できるでしょう。でもって、その空虚さはほかでもない「理想ベースのタスク管理」のせいなのです。

さいごに

執筆作業が終わってしまえば、「周回トラック」を抜け、再び「本線」に戻ってきます。こうなると、タスクリスト式の管理方法でもやっていけます。というか、その方がフィットしています。

というように、私の執筆マネジメントは2つのトラック__2タイプの管理方法__を組み合わせることで実現しています。これは今のところなかなかうまくいっています。

ちなみに、はじめから2トラックという説明を思いついていたわけではなく、たまたまとあるボードゲームを見たときに、「まさに自分がやっているのはこれじゃないか」とひらめいたのがきっかけでした。ラットレースはなかなか悲しいものですが、執筆作業ってまさにそれだと思います。ぐるぐる走り続けるしかないのです。

というわけで、ガントチャート式の方法で「苦しんでいる」人は、こういうやり方を試してみてください。ポイントは「管理方法は一つでなくていいんだ」という発見です。

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見出しの押し下げと引っ張り

観察事例1

たとえばWorkFlowyで文章を書いていたとしよう。まずは、思いつくままに文を重ねていく。

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そうして書いていると、「見出し」が立つことになる。新しくつけることもあるだろうし、元々ある一行が見出しとして機能する場合もあるだろう。どちらにせよ、一塊の文章を代表する一行が生まれるのだ。

その場合、WorkFlowyでは、一塊の文章の方を「押し下げる」ことになる。

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続きの文章を書き、そこでも見出しを立てる。

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すると、それぞれをまとめる「第一章」というコンセプトが立ち上がってくる。

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どうするか。一塊の文章の方を「押し下げる」のだ。

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観察事例2

Ulyssesで考えてみよう。マークダウンを使う。

まったく同じようにつらつらと文を重ねていく。そして、見出し候補が生まれる。

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その際、マークダウンでは本文ではなく見出しを「引っ張る」。操作するのは見出しの方であって、本文ではない。

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さらに文章を続け、同じように「第一章」というコンセプトが立ち上がる。

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この場合でも、やはり見出しを「引っ張る」。

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ただし、最初に引っ張った見出しは、「第一章」の登場で引っ張りすぎになるので少し戻すことになる(#→##)。

考察と疑問

だから何?

と問われても私はうまく答えることができない。そもそも全然別種のものを並べているのだから、違うのは当然である。

ただ、WorkFlowyに代表される(かどうかは知らないけど)アウトライナーの場合、上記のような書き方をしていると、どんどん本文が「下」に移動していく。下位の階層に移っていくのだ。

だから複数の階層を作ると、深さがバラバラになることがある。本文が階層深度2にあったり、3にあったりしてしまうのだ。その代わり、最上位のラインは常にキープされる。それはまっすぐなのだ。

逆にマークダウン式で見出しを作っていると、本文のラインが常にキープされ、見出しが上がったり、下がったりする。だからこそ、どこかの見出しを書いたり、つけ加えたりすると、階層構造が崩れたりおかしくなったりする。#を##に書き換えたのは、それを調整するための是正措置である。

個人的な感触として、Ulyssesのマークダウン式の方が安定感がある。執筆しているときに、階層サーフィングで酔うことがない。

でもこれは、アウトライナーよりもマークダウンの方が優れているという話ではなく、むしろアウトライナーで本文の階層をいかにコントロールするのかについての指針になるのではないか、という気がしている。

どうだろうか。

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仮置くしかない着想

『アウトライン・プロセッシング入門』では、「未使用」の活用が提案されている。

書いてはみたものの使うかどうかわからない断片や、編集中に不要だと思った断片を「とりあえず」格納しておくための項目__それが「未使用」である。これを使うと、要素の扱いに柔軟性が増す。

ポイントは「とりあえず」の部分にある。その時点ではややこしいことを考えずに、言い換えれば、認知資源を使用してしまう「判断」を経由させずに移動させることで、作業に抵抗値を発生させない。

また、その時点で存在している枠組みの外に出すことで「見えなく」はするのだが、完全に消したわけではないので、利用したくなったらすぐさま取り出せる状態は維持できる。そこからくる安心感もこの手法のメリットであろう。「捨てずに、捨てる」というわけだ。


さて、この「未使用」だが、見方を変えれば「未分類」とも言える。

もちろん、「未分類」という項目を立てて、その下位に要素を移動させることはすでに「分類的行為」なわけで、「未分類に分類する」という矛盾のようなややこしさもあるが、実用では困らない。

たんに、「はっきりしないもの」を入れておけばよいだけだ。


「未だ使い道がはっきりしないもの」を入れて置く場所は、予想以上に役に立つし、むしろ必要だと言える。

日常的にいろいろなことを考えていると、いろいろなことを思いつく。粒度も目的もバラバラな着想たちが、戦国時代の合戦前の武将のように次々と名乗りを上げ始めるのだ。「やいやい、我こそは神妙なる思い付きであるぞ」と。

その用途がはっきりしているなら扱いは困らない。しかるべき所属に割り当てればよいだけだ。R-styleの一記事になりそうだな、と思えばネタ帳ノートに書き込むし、まだまだ掘り下げが足りないなと感じるものはincubatorノートブックに放り込む。しかるべきポジションで、しかるべき仕事をしてくれるだろう。

問題は、流浪人である。

彼らは、推し量れない。その辺をうろつく武士と似たり寄ったりにも見えるが、案外日本を統べる武将になるかもしれない。お茶だけ出しておけばいいのか、それとも豪華な馳走を準備すればいいのか、その風体からは推測できないのだ。


たとえば、あるとき、こんな思い付きが降ってきた。「フィルターバブルに囲まれないための戦略」。面白そうではないか。とりあえず、前哨戦としてシゴタノ!で関連する記事を書いたが、まだまだ足りない。このテーマにはもっと肉を付けられるはずだ。

そこまではいい。力のある武将であることはわかった。が、どこに所属させていいのかは、いかにも流動的だ。

たとえば率直に「フィルターバブルを打ち破る5つの戦略」というショートブックを書いてもいい。2〜3万字ぐらいだろうか。カテゴリ的には知的生産の技術となろう。でも、そのとき別に構想を立てていた「情報摂取論」に組み込むこともできそうだ。なんといっても、フィルターバブルへの対策は「どうやって情報をインプットするのか」の姿勢や作法になるからだ。こうなると、この着想は、より大きな着想の一部となる。

片方は小さな国を統べる武将であり、もう片方は大きな国の武将の配下である。そして、どちらも別に「正解」ということはない。コンテンツは、いかようにも形を取りうる。

そして、その「可能性」を担保しておくためには、堅苦しい枠組みは向いていない。せいぜい「未分類」ぐらいがちょうどいい。


プロセス型アウトライナーがそうであるように、あるものの見出しは、あるものの要素になりうる。逆もまた然りだ。

求められるアウトプットが、常に定型・同サイズであるならば、このようなフレキシブルさを担保する要素は必要ないのかもしれない。しかし、私たちの目の前には多様なメディア(手段)が並んでいる。そこに、どうコンテンツを流し込むかも、思った以上にたくさんの選択肢がある。それらに備えるためには「未分類」が必要だ。

もちろん、「未分類」があるだけでは十分ではない。それをどう使うか・どう運用するかもセットになる。が、その話はまたどこかで改めてしよう。ブログがいいかもしれない。メルマガの連載という手もあるな。つまりは、未分類に放り込むネタというわけだ。

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