Category: アウトライナー・ライティング

アウトライナー・ライティングの型 〜その3 アペンディング〜

アウトライナーを使う執筆方法を考察していきます。今回は第三回。

参考文献は『アウトライナー実践入門』ですので、そちらもよろしく。

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今回は非常にシンプルです。

前回「ブラウジング」を紹介しました。アウトラインをざざっと眺めていく行為のことです。その際、「これとこれは近しいな」と思うだけでなく、「ああ、そうだこれもあった」「これも並べておきたい」と思うこともあります。そうなったら、追記しておきましょう。

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※ブラウジング

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※書き加えた

これは、単純に同一階層に項目を付けくわえるだけであり、言ってみればアウトライナーの一番基本的な使い方です。あえて説明の必要はないかもしれません。

ただ、少しだけ込み入ったことを書いておくと、上記のようなブラウジングからの追記は、既存の要素の隙間を埋めるものですから、「fill the gaps」的と言えます。そして、白紙のアウトラインに新しく項目を並べていくことも、広い意味では「fill the gaps」なのです。これが持つ意味については言及しませんが、アウトライナーを使う上では大切な感覚であることだけをここでは述べておきます。

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さて、上記の例では、同一の階層に要素を追加しました。違うパターンもあります。

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※下位に追加した

このように下の階層に書き加えるやり方です。これもまたアウトライナーの基本的な使い方の一つです。そして、ここに少しだけ難しさが入り込んできます。つまり、同一と下位はどのように使い分ければいいのか、という問題が発生するのです。「正確」な使い方を気にする人であれば、結構な難問でしょう。

これを言葉で説明するのは簡単なのです。並列の要素をならば、同一階層に、従属する要素ならば、下位の階層に。間違いはないでしょう。問題は、頭に思い浮かんだことが並列なのか従属なのかをどのように見分けるのか、という点にあります。こればかりは言葉で説明しようがありません。

なので、ここではふんわりとした解説に留めておきます。

「要素を補完する場合は、同一階層に。より詳しい説明をする場合は、下位の階層に」

感覚的に、あれもあったこれもあったと思いつく場合は同一階層に配置し、これについてもう少し説明してみようと思う場合は、下位の階層に配置する、ということです。

これはルールというわけではなく、あくまで目安のようなものです。1ペイン型のアウトライナーでは、要素の移動は自由自在なので、ある段階で同一階層にあっても、別の段階で上位、あるいは下位に移動させることは容易です。ですから、あまり「正確」さを気にする必要はありません。自分の感覚に沿って並べていくのが一番です。

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さて、下位に要素を加えることがあるのならば、上位に要素を加えることもあるでしょう。たしかにあります。

しかしそれは、第一回で紹介した「ドリッピング」なのです。なので、ここでは解説はしません。

よって、要素の追加については3つの方向性が確認できました。

  • 同一階層への追加
  • 下位の階層の追加
  • 上位の階層の追加

このうち「上位の階層の追加」は、ドリッピングと呼び、それ以外の二つを「アペンディング」と呼ぶことにします。対称性を気にされる方ならば、なかなか気持ちの悪い名前の付け方でしょう。対称性に気を配るなら、同一階層だけをアペンディングと呼び、上位をドリッピング、下位に何か別の名前を割り当てるのが良さそうです。

しかし、私が思うに、同一階層及び下位の階層への項目の追加と、上の階層への項目の追加は、頭の動かし方に如実に違いがあります。比喩的に言えば、重力に逆らうような何かが必要なのです。なので、その行為をドリッピングと特別に名前を与えました。そして、その他は一つに括って「アペンディング」と呼ぶことにします。

ちなみに、下位の階層に要素を付けくわえる行為でも、実はいろいろあり、それは『アウトライナー実践入門』において、アウトライン・プロセッシングの<型>の一部として紹介されています。本連載は、『アウトライナー実践入門』で定義づけられていなかった操作を定義することなので、そこについては言及しません。ぜひとも、本をご覧ください。

さいごに

さて、ここまでで三つの型を紹介してきました。他にもいろいろありますが、まずはこの三つがあればアウトラインを「育てて」いくことができるでしょう。

  • 同一階層・下位の階層に追加する
  • 似たような要素を近づけておく
  • 上位の階層を追加する

次回は、少し違った角度の型を紹介してみましょう。

▼これまでの連載:
アウトライナー・ライティングの型 〜その1 ドリッピング〜
アウトライナー・ライティングの型 〜その2 マグネッティング〜

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アウトライナー・ライティングの型 〜その2 マグネッティング〜

アウトライナーを使う執筆方法を考察していきます。今回は第二回。

参考文献は『アウトライナー実践入門』ですので、そちらもよろしく。

アイデアの断片を統合する

まずは、一番大がかりなものから。

アウトライナーにアイデアメモをストックしているとしましょう。そこには「思いついたこと」が脈絡なく保存されています。

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このアウトラインを、上から下に眺めていきます。見ていくような、読んでいくような、そんなふんわりとした気持ちでアウトラインに向き合うのです。これを「ブラウジング」と呼ぶことにします。

ブラウジングを進めると、ときどき「ん?」という感触が発生します。「これ、あれと近しいな」と直感が働くのです。そうしたら、その「これ」と「あれ」を近づけておきます。

どちらの項目を動かすのかは自由ですし、どちらを上にするのかも自由です。そのときの感覚にまかせてください。ともかく、内容的に引き合う項目を一緒にしておきます。

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※「認知的に忙しいと、人は何でも信じてしまう」と

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※「「そうだ、人間は直感的に生きればいいんだ」と直感的に理解する。非常に心地よい。」は近しいのではないか。

このような作業を「マグネッティング」と呼ぶことにしましょう。上記のような移動が、マグネッティングの基本となります。

磁石は成長する

近づけた「これ」と「あれ」は、この段階では単に項目が並んでいるだけです。アウトライナー上での明示的なつながりは、項目の近しさ以外にはありません。そこで、便宜的にその「これ」と「あれ」のかたまりを、「クラスタ」と呼ぶことにしましょう。

この「クラスタ」は、成長します。

一度クラスタを生成したら、再びアウトラインの最上部に戻ってみましょう。そして今度は、「あのクラスタに近しいものはないだろうか」という視点でアウトラインを眺めていきます。

アイデアメモのストックが十分であり、あなたがそのメモを意図的にフィルタリングしていない限りは、高確率で近しいものが見つかるはずです。見つかったら、その項目も近づけておきましょう。

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クラスタに新しく項目が入ってくれば、それが新しいフックとなって、別の項目と近しい関係を構築するようになります。それを繰り返せば、クラスタの規模はどんどん大きくなっていくわけです。

ドリッピング

ある程度、クラスタが成長してくると、それらを一つの階層にまとめたい気持ちが自然と湧き上がってくるはずです。操作的にもその方が楽ですし、また、認知的な把握も容易になります。

そこで、無題の項目を一つ立て、その下にマグネッティングして集まったクラスタを配置します。そして、それらを眺めながら、上位項目名は何になるのかを考えます。この作業はその1で紹介したドリッピングそのものです。

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もちろんこの作業は、集まった項目が二つだけのときにでも行えますが、実際はある程度項目が集まってからの方が良いでしょう。ジグソーパズルの数が少ないうちに全体像を予想するのは、誤った先入観を発生させる可能性を上げるだけです。

また、全体を見渡しても二つ程度しか集まらないのであれば、それはまだ材料集めが進んでいない状況と言えるでしょう。無理をせず、そのままにしておいて、アイデアの熟成を待ちましょう。

アクティブ・マグネッティング

マグネッティングは、くっつくものを探す作業なので、単純に上から下にスクロールしていくこともできますし、また、より積極的に、「これにくっつくものはないだろうか」と項目先行型で探すこともできます。磁石を持って砂場の中に眠る砂鉄を吸い上げるような作業です。

そうした項目先行型のマグネッティングを、「アクティブ・マグネッティング」と呼ぶことにしましょう。逆に、全体を眺めて近いものを見つける作業は、「パッシブ・マグネッティング」となります。どちらも有用な方法です。

「アクティブ・マグネッティング」を行う場合は、磁石となる項目を順々にリフトアップ(あるいはリフトダウン)させていけばよいでしょう。WorkFlowyであれば、shift + command + ↑(↓)で、フォーカス中の項目が上下に移動してくれます。そうやって、くっつく先を見つけることもまたマグネッティングです。

クラスタを集めてドリッピングを行った後に、このリフトアップ(リフトダウン)によるアクティブ・マグネッティングを実行すれば、クラスタをさらに大きく成長させることもできるでしょう。

以上のように、ともかく近しい断片を集めていくのが、マグネッティングの基本となります。

マスとクラスタ

以下のアウトラインをご覧下さい。

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2016年07月26日(火)の下位にある「メモ」と冒頭に書かれた項目は、すでに強い磁力で要素同士がくっついています。これらを切り離したり、並べ替えたりするためには、複数のアクションを起こさなければいけません。このような強固なかたまりを「マス」と呼びましょう。

対して、2016年07月27日(水)の下位にある「システム1化する世界」は、要素が断片的に配置されています。当然、並べ替えも容易ですし、別の場所に移動(別の場所から移動)も簡単です。これがクラスタです。

情報を一瞬で把握するには、マス形式が向いています。対して、情報をmanipulateする場合は、クラスタ形式が向いています。この辺りは、目的によって適切な性質が異なる、と理解しておけばよいでしょう。

さいごに

この「近しいものを近づけておく」というのは、KJ法の代表的な手法ですし、PoICのタスクフォース作りにも似た考え方が適用されています。ボトムアップ手法には欠かせないアプローチと言えるでしょう。

ちなみに、このマグネッティングは、『アウトライナー実践入門』の「アウトライン操作の5つの<型>」における「<型3>グルーピング(分類)」とかなり似ています。実際、その中にある「共通性・類似性・親和性で分けること」は、まさにマグネッティングのことです。

ただし、マグネッティングの目的はグループを作ることではありません。グループはあくまで結果として生まれるものです。一定数の似ているものが集まったから、ちょっとグループを作っておこうか、というおまけ的な流れなのです。むしろ、マグネッティングの目的は、クラスタの可視化にあります。このアウトライナーには、こういう近い奴らがいるんだぜ、ということを見えやすくするために、それらを近づけておくのです。

だから、グループができなくても__やってみたら二つしか集まらなかったというのでも__ぜんぜん構いません。時間が経てば、それらは大きくなるかもしれませんし、あるいは再び移動して別の場所にいくことになるかもしれません。クラスタとは、多層的なものなのです。

その点を考慮しておくと、アウトラインをもっと自由に動かせるようになるでしょう。

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▼これまでの連載:
アウトライナー・ライティングの型 〜その1 ドリッピング〜

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アウトライナー・ライティングの型 〜その1 ドリッピング〜

アウトライナーを使う執筆方法を考察していきます。今回は第一回。

参考文献は『アウトライナー実践入門』ですので、そちらもよろしく。

ドリッピング実践

たとえば、次のような文章があったとしましょう。

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文章内の構造はゼロ。内容的にも未完成で、単に材料を並べただけの状態です。ここに手を加えていきます。

まず、冒頭にある文章のかたまりに注目します。そして、一連の文章は何を語っているのかを考えます。「これをひと言で言い表すならどうなうなるだろうか」。深く考える必要はありません。ただ、的確に捉えればよいだけです。ざっくりとしたものでも思いつけば、それを項目として新しく追加します。

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そして、その項目の下に「一連の文章」を配置します(複数行を選択してTabキーを押す)。ここでのポイントは「一連の文章」です。言い換えれば、どの行までが「一連の文章」となるかの判断が必要です。言わば、切れ目を作る作業です。

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ちなみに、この判断には「正解」がありません(少なくとも採点してくれる人は誰もいません)。ある文が半分ぐらいその項目に入って、もう半分は別の項目に入りうる、ということもありえます。後から考えてみたら、違う配置が適切だったということも十分ありえます。いささか悩ましいところですが、アウトライナーは簡単に再編集できますので、とりあえず心を決めて「えいや」と文章に切れ目を入れます。

あとは、それを繰り返していきます。

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仮見出しとその効用

このような作業を、ドリッピング(dripping)と呼ぶことにしましょう。

すでにある文章の素材から、それぞれのエッセンスをぽたぽたと抽出する作業です。

この作業は、『アウトライナー実践入門』のp.89で述べられている、「整理のための見出しつけ」に相当します。

打ち込みが終わったら、メモの断片ごとに内容を示す見出しを付けていきます。整理のためのものなので、深く考える必要はありません。内容のまとまりごとに、自分がわかるような見出しの下にくくればいいのです。

あるいは、p.126、p.127で紹介されている「流れをチェックするための仮見出し」や「編集用の仮見出し」に対応していると言ってもよいでしょう。ポイントは以下にあります。

仮見出しの使い方は、他にもいろいろ考えられます。共通しているのは、完成した文章には残らないということです。アウトラインは読者のためではなく書き手のための道しるべだということを一番わかりやすく示した使い方かもしれません。

ドリッピングで生み出した「見出し」にも同じことがいえます。

その「見出し」は、最終的な文章においても見出しとなるかもしれませんが、それが本来の目的ではありません。あくまで文章に切れ目を入れ、複数の「ひとかたまり」を作ることが目的です。そうすることで、大きく二つの効果が得られます。

  • 文章全体のエッセンスが捉えやすくなる
  • 文章をエッセンス単位で編集しやすくなる

たとえば文章全体が2000文字ぐらいで、300〜400文字でワンブロックができたとしたら、5〜6個の「見出し」__ハンドルと呼んでもいいでしょう__ができることになります。そのハンドル群を眺めれば、その文章がおおよそ何を言わんとしているのかはわかります。

奇妙な話に聞こえるかもしれません。文章を書いている当の本人が、「その文章がおおよそ何を言わんとしているのか」をわかろうと努めるというのは、なにやらねじくれています。

が、実際にその規模の文章を書いたことがある人ならば、くどくどした説明は不要でしょう。たいてい、頭から読んでいかないと自分が何を書こうとしているのかは捉えづらいものです。このドリッピングは、その把握をサポートしてくれます。

また、そうして生まれたハンドルを使えば、内容(ないしは構造)の整理はぐっと容易になります。たとえば、実際のハンドルをいくつか並べてみましょう。

「一人でいろいろできる人は限られている」
「そこで出てくるのが、複数人の力を合わせることです。」
「出版のはじまり出版社のはじまり」
「利益とコストの構造」

若干粒度がとっちらかっていますが、少なくともこうして並べてみれば話の流れ方が検証できますし、必要ならばドラッグ操作一発で順番を入れ替えることもできます。

たとえばいきなり「出版のはじまり出版社のはじまり」を持ってきて、歴史を振り返る話からスタートさせる展開もありうるでしょう。その他の文章パーツがその流れにぴたりとはまるならしめたものです。うまくいかないならば、現バージョンで進めることもできます。

こうした利便性・操作可能性が、ドリッピングを行うメリットです。

まとめ

このドリッピングは、KJ法における「概念づくり」に対応しています。単位化し、圧縮化する作業です。そうすることで、認知的な把握容易性が上がり、また情報操作容易性も上がります。

おさらいしておきましょう。

ドリッピングは、すでにある素材からそのエッセンスを(あるい概念を)抽出することです。あらかじめ立てておく「見出し」ではありません。その意味で、ボトムアップ的行為と言えるでしょう。

また、そのエッセンスはアウトライン上で構造を把握したり、操作するときに役立ちます。ハンドルとして使えるようになるのです。

そのようにして作成したハンドルは、最終的な文章に残す必要はありません。よって、ハンドルの内容は「自分がわかればよい」レベルで十分です。表現に細かく気を遣う必要はありません。ただ、的確であればよいのです。

少し長めの文章を書いていて、「あ〜も〜、よーわからん」となってきたら、このドリッピングを行ってみてください。ぐっと文章が操作しやすくなるはずです。

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