お金を払って、正直なレビューを書いてもらうのは何が悪いのか?

別に、開き直ろうとしているわけではありません。

Amazonレビューをお金を払って書いてもらったら、かなり問題になっていた件について(きんどるどうでしょう)

アメリカではKindle本の「レビュー」をお金で買うことができます。しかし、この行為はガイドライン違反であり、そのことで、いま向こうで議論が巻き起こっています

この記事を読んで、小学六年生のように「何が悪いの?ねぇ、何が悪いの?」とキラキラとした知的好奇心が湧いてきただけです。

「お金を払って、本を読んでもらって正直な感想を書いてもらう」

これのどこが問題なのでしょうか。

何を問題にしているのか?

ストレートな答えでは「Amazonのガイドラインに違反するから」でしょう。

しかし、これは実のある答えではありません。なぜそれがガイドラインに違反するのか。そして、それは「正当」なのか。考えたいのはそこです。

上の記事からわかる範囲で情報を整理してみましょう。

  • epubファイルなどを無償で提供して、正直なレビューを書いてもらうのはOK
  • 無償でも作家同士のレビュー交換は違反
  • 金銭・物品の受け渡しが伴うものは違反
  • Amazonは不正なレビューと思われるものを大量に削除している様子
  • その影響で無関係のレビューまで削除された人もいるらしい

これらを眺めてみると、Amazonが定めているガイドラインは「不正なレビュー」をなくす(あるいは少しでも減らす)のが目的であることが見えてきます。この場合の「不正」とは、実際は星3ぐらいの評価だったのに5をつけたりだとか、あるいはまったく読んでいないのに4を付けたりだとかいった行為のこと。

では、なぜそれを減らそうとしているのか。

それは、レビューが本の購入の判断において強い影響を持っているからでしょう。ランキングと同じぐらい、時にはそれ以上のパワーがレビューにはあります。

もしあなたが何かのジャンルで本を検索して、検索結果に2冊の本が提示されたとき、やはり星の数の多い方からチェックし始めるでしょう。もしかしたら一冊目で購入を決定して、次の本はチェックしないかもしれません。あるいは二冊目のチェックに移ったとしても、すでに先入観というバイアスがあなたを支配している可能性は十分にあります。

直接的な「もの」を確認できない電子書籍においては、レビューというメタ情報の価値はさらに高まります。判断材料が少なくなれば、既存の材料の存在価値が高まる。ありふれた話です。

もしフレディック・ルヴィロワの『ベストセラーの世界史』という本が改訂されるのならば、<電子書籍>の項目が加わり、そこに「カスタマーレビュー」についての詳細が記されることでしょう。それぐらいレビューは重要な要素です。

だからこそ、Amazonは正直なレビュー(だけ)を載せたいと考える。それはもちろん、購入者をがっかりさせないための措置です。Amazonの視点はいつもそこを向いています。

正直なレビューって?

しかし、よくよく考えてみると、正直なレビューとは何かがわからなくなってきます。

「epubファイルなどを無償で提供して、正直なレビューを書いてもらうのはOK」

だとして、それが正直であるかはどうやって判別するのでしょうか。無償で書いたから、それは正直に違いない。そう判断するのはさすがに早計すぎます。

あるいは、普通に本を買って、普通にレビューを書いた場合でも、それが正直であるかはわかりません。著者に悪意を持って、ことさらミスを暴き立てるようなレビューは正直なのでしょうか。

紙の本では「献本」というやりとりがありますが、私も献本を受けたらできるだけその本の「良いところ」を探そうとします。これは正直なのでしょうか。そうではないのでしょうか。

簡単に言ってしまえば、金銭や物品の受け渡しが伴わないレビューであっても、実はそれほどアテになるものではない、ということです。真っ当なものもあれば、真っ当でないものもある。そういうのがカスタマーレビューです。実際、買った人のレビューを信頼して買っても、がっかりすることはあるでしょう。

そうすると、Amazonのガイドラインはあまり意味がないのでしょうか。

星のインフラ化懸念

もう少し考えてみましょう。

  • 無償でも作家同士のレビュー交換は違反
  • 金銭・物品の受け渡しが伴うものは違反

これが意味するものは何か。

たとえばあなたがKindle作家だったとしましょう。そのあなたに一通のメールが届きます。

「はじめまして。Kindle作家をやっております○○と申します。
この度、私は新刊『○○○な×××』を発売しました。誠にぶしつけなお願いではございますが、そのEpubファイルを添付させていただきますので、Amazonでレビューを書いていただけないでしょうか。もちろん、正直な感想で構いません。
その代わり、私もーーー様の『たった1秒で世界樹を制覇する方法』のレビューを書かせていただきます」

残念ながらあなたの会心の作である『たった1秒で世界樹を制覇する方法』はレビューが一件も付いておらず、ランキングも毎日下がり続けています。レビューを書いてもらうのは大変ありがたい。それに無料。

そこであなたは『○○○な×××』を最後の1ページまで読み、<正直な感想>として、星5つを付けます。もちろん、その次の日、『たった1秒で世界樹を制覇する方法』にも5つ星のレビューが付きます。予定調和。あるいは暗黙の了解。

そうです。作家同士のレビュー交換は、基本的に悪い評価が付きません。というか、基本的に5が付くでしょう。フィードバックを考えれば当然のことです。

市場で生きのこるには?

では、金銭の受け渡しが伴うものはどうでしょうか。

たとえば、そういうレビューを請け負う業者がいたとします。そこではきっちり、きっぱり、はっきりと「正直なレビューを書きます」と明言していたとします。すばらしい明朗感想の姿勢です。

ある作家がレビューを依頼し、星5つをもらう。別の作家は星4つ、また別の作家は星3つ。

Viva!正直なレビュー。

しかし、三人目の作家が次の作品のレビューを依頼してくることはありませんでした。

やがて、二人目も、一人目も姿を消します。

どうせお金を払うのであれば、星に色を付けてくれる業者に払いたくなるものではないでしょうか。

自分の心に正直になって考えてみてください。あなたは本の営業・販促を担当しています。そこで一冊だけ本を献本することになりました。選択できるレビュアーは二人。一人はダメな本はものすごくこき下ろす(あるいは無視する)レビュアー。もう一人は穏便に褒めてくれるレビュアー。さて、どちらに送付しますか。

レビューマーケットというものが生まれてしまった場合、本の評価がどんどん星5つ方向にシフトしていきます。しかも市場化すれば、レビュー1件に対する価格はどんどん低下していくでしょう。行き着く先は「全ての本に星5つのレビューが付く世界」です。これはレビューとしてまったく機能していません。

さいごに

お金を絡ませないからといって、Amazonのレビューがまったく真っ当であるとは言えません。

しかし、お金が絡めば本の内容とは別のゲームが始まり、レビュー自体が崩壊してしまう可能性があります。それは長期的に見て、本の売り上げを下げてしまう影響をもたらすでしょう。

「お金を払って、正直なレビューを書いてもらう」

のは別に悪いことではありません。出てくるのが「正直な」レビューであり続けられるのならば、という限定が付きますが。

で、それがなかなか難しいのがお金というものです。

それはそれとして、レビューが本の販売に与える影響は強く、セルフパブリッシングの本はそれが販売におけるネックになってしまう問題は付きまといます。パブリッシャーの積極的な売り込み・働きかけが必要なのでしょうが、それとは別に何かシステマティックな解決法はないだろうかと、ちょっと考えております。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。