Evernoteの「コンテキスト」と日経新聞、あるいはEvernoteエクステンション

どうやら、一文を書き加える必要がありそうです。

2012年の9月に以下のような記事を書きました。

Evernoteの共有ノート、あるいはナレッジマネジメントについて

その記事に「コンビニ店長未来像」という項があります。軽くリライトして、一文を書き加えてみましょう。

あなたが秋のビール展開を考えていたとしよう。過去の売上げはデータベースから簡単に参照できる。Evernoteに保存してあるPDFを見ればOKだ。後は本部からのメールを保存したノートで方向性を確認して……。

そのとき、ふと「関連するノート」として、ある店員が書き残した「夕方、焼き鳥を大量に買って帰ったお客さんがビールの6缶パックを欲しがっていた」というメモが浮かび上がってきた。別の店員がスクラップした「これが人気!秋の新作ビール特集」というWebページもだ。さらに前任の店長がビール売り場を作ったときのプロジェクトノート「500ml缶をゴールデンラインに置いて、客単価アップにチャレンジ」も浮かんでくる。ついでに、日本経済新聞の「日本酒造大手、高アルコールビールにシフト」という記事も提示された。

後は、アイデアをまとめ、売り場を作るだけだ。

こういうことが、できるようになるかもしれないというのがEvernoteの新機能「コンテキスト」です。

まだ見ぬコンテキスト機能

さて、先日Evernoteと日本経済新聞社の資本・業務提携が発表されました。で、それに伴って「コンテキスト」のコンテンツとして日経電子版が表示される機能が、2015年初頭には追加されるようです。詳細は以下の公式記事をどうぞ。

コンテキストのコンテンツに日経電子版を追加: 仕事をこなすだけではなく、最高の仕事をするために(Evernote日本語版ブログ)

例えば、あなたが取引先とのミーティングに向けてアジェンダや、その他調べた情報やアイデアを入れたノートを準備しているとします。先週、その取引先企業の業界に重要な動きがあり、そのニュースが日経電子版で報道された場合、Evernote 上で該当記事をノートのすぐ下に自動表示します。

良さそうな機能ではありますが、まだ実装されてはいないので使い勝手に関してはなんとも言えません。

記事での解説を読む限りでは、EvernoteのMacクライアントで使える画像編集(ようするにSkitch)と似た雰囲気を感じます。つまり、ちょっと別窓で開いて作業→ノートに情報が追加。そんな流れです。

「知」のインポート

ナレッジマネジメントの視点から言えば、外部の「知」をインポートする、というのがこの「コンテキスト」の役割ではありますが、とりあえず日本経済新聞が(日本での)最初のメディアであったのは賢明な判断でしょう。くだらない政治家のゴシップが並ぶようなメディアだったら、間違いなく関連するノートなんて見たくなくなりますからね。

しかしながら、逆に言うと日本のビジネスパーソンって、大半が日経新聞を読んでいる気がするので(たぶん、偏見ですが)、新しい情報との出会いという側面はもしかしたらあまり大きくないかもしれません。こればかりは使ってみないことにはなんとも言えないわけですが。

Evernoteエクステンション

少し違った視点から眺めておきましょう。

もちろん、連携が日本経済新聞だけで終わる、ということはないでしょう。今後も何らかの形で「コンテキスト」に表示される情報ソースは増えていくだろうことが予測できます。「知」の外部性が拡張するわけです。これを私はEvernoteエクステンション、と(仮に)名付けました。

で、ビジネスモデルから言えば、このエクステンションに「課金」することはできそうです。Evernoteならばプレミアム会員の獲得がそれに当たりますし、メディア側は有料会員の獲得になります。マーケティング的には両方のプレミアムユーザーには何かしらの特典がある、といったプロモーションも考えられるでしょう。

仮にEvernoteから、それぞれのメディアの有料会員登録が完結するならば、Evernoteがメディアの小さなプラットフォームになることすら考えられます。つまり、それぞれのメディアを直接読みにいくためではなく、Evernoteから読めるようにするために会員になる、ということです。

これは日本語変換ソフトで専門用語の「辞書」を買うことに似ているかもしれません。あってもなくてもいいけど、欲しい人は追加料金を出してね、というやつです。

もし、これできちんと売り上げが立つならば、しょーもないPV獲得競争とは違ったメディアの在り方が出てくるかもしれません。たとえば、「コンテキスト」で表示されたノートが、13ページぐらいに細かく分割されていたら、ちょっと嫌ですよね。あと、どうでもいい画像とかも全然必要ないはずです。

「見られる」ことではなく「読まれる」「実際に役に立つ」形であるほうが、読者に支持されて、お金にもなる(有料会員が増える)。広告獲得ほど規模の大きい話にはならないのかもしれませんが、継続性という点で考えるとそちらの方が健全であるのかもしれません。

さいごに

以上の話は、階段を4段ぐらいすっ飛ばした妄想なので今のところはまるっと忘れていただくとして__Evernoteにでもクリップしておいてください__、もう少し身近な話を。

ビジネスパーソン向けに日経新聞を選んだチョイスは抜群だと思いますが、個人的には第二弾、第三弾はニュース系ではないところを攻めて欲しいところです。たとえば、(特に名前はあげませんが)サイエンス系の雑誌なんかが、「コンテキスト」としては間違いなく面白いものになるでしょう。

なんといっても、アイデアというのは異質なものの組み合わせです。

その意味で、既存のコンテキストと別のコンテキストが混ざり合う潮境としてEvernoteが機能すれば、私たちのクリエイティブ&ナレッジライフというものは、より豊かになっていくことでしょう。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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