「生きること」の階層

以下の記事を読みました。すばらしい記事ですので、皆さんもどうぞ。

生きる覚悟の階層性. May 1 2015(gofujita notes)

この経験をとおして、ぼくはこう思うようになった。人はみんな、自分が生きようとする覚悟に階層性をもっている。階層だから、今自分がいる階層での理屈が、新しい階層の発見には役立たないことが多いし、そんな大きな覚悟なんて自分の中にないんじゃないかと感じることも多い。でも、それはちがう。

生きる覚悟。生きようとする覚悟とは何でしょうか。

私たちは受動的に生まれてきます。生きる上で覚悟など必要ありません。気がついたら生まれていて、無意識のうちに心臓の鼓動と呼吸が行われます。

だから「別に生まれたくなんて無かったんだ」と口をすぼめながら日々を過ごすこともできます。きっと、いまわのきわまでデタッチメントでいつづけることは可能でしょう。

でも、生きることを引き受けることもできます。理由は何なのかはわかりません。「せっかく生まれてきたんだから」かもしれません。過去の歴史に思いを馳せるのかもしれません。見えない未来に想像の翼を羽ばたかせているのかもしれません。「どうせ死ぬのだから、あえて」かもしれません。あるいは、理屈はすべて後付けで、何かが自分の在り方に影響を与えただけなのかもしれません。

理由はどうあれ、主体的に生きることを引き受けることは可能です。

『涼宮ハルヒの消失』の中で、キョンは流されるままにハルヒと出会い、流されるままにハルヒを失いました。しかし、彼は選択したのです。もう一度、あの世界に帰ることを。そうして、彼の物語が始まりました。主体的に人生を引き受けるというのは、つまりはそういうことです。

そこに矮小な物差しが入り込む余地はありません。善悪ですら難しいでしょう。儲かるから、あるいは正しいからやる、あるいはやらないといったことではないのです。与えられた、あるいはすでにそうあった状況の中で、自分なりの問いを見出していくこと。それが、生きる覚悟ということです。

そう、それは答えを手にすることではないのです。そんなものでは全然ありません。


では、その階層性とはなんでしょうか。

西村佳哲さんの『自分をいかして生きる』に、興味深いイラストが出てきます。簡単に書き写してみました。

IMG_5391

島を思い浮かべてください。私たちの目に入るのは、海面よりも上の陸地です。しかし、その下にはほとんど山のような積み重ねがあります。ようするに氷山の一角です。一番下には、「あり方・存在」があり、その上に「考え方・価値観」「技術・知識」が積み上がり、最後に「成果としての仕事」が登場します。

普段私たちが目にする「仕事」は、その背景をさまざまなものによって支えられている。そんな構図を示すイラストです。

生きる覚悟の深いレベルのシフトとは、あり方・存在が変わるということでしょう。そこが変われば、その上の段階も必然的に変わってきます。

また、表面的な「成果としての仕事」だけを動かそうとしてもうまくはいきません。地面はしっかり固定されているのです。

最初に引用した文章は、こう続きます。

たとえばここに出てきたユーリは、ぼくとくらべものにならないほど大きな階層の覚悟を経験し、自覚しているのだと思う。そしてそういう人たちは、どんな状況でも笑顔を忘れないし、なぜだか、言葉をとても大切にしている。あと、溢れるような、それでいて自然なやさしさをもつ人も多い気がする。

不思議と、その感覚はよくわかります。私の脳内には、隣町の斉藤さんがぱっと思い浮かびました。

「生きる」ということは、さまざまなものから成り立っています。その中で海面に浮かぶのは、「行為・行動」です。誰かに笑顔を向けるのも、言葉を発するのもその「行為・行動」に含まれます。だから、それらは大切にされなければなりません。なんといっても、それは一種の表現なのですから。ズレていては大変です。


この話から、教訓みたいなものはほとんど引き出せません。

「言葉を大切にしましょう」?
「いつも笑顔を絶やさないように」?

それは技術や知識です。それは有用ではあるものの、この話の根幹までにはたどり着けません。

そして、その根源にたどり着くためには、ほんとうに不思議なのですが(間接であれ直接であれ)痛みが必要です。理屈に合わないこと、理不尽に感じること、どうしようもないこと、非常に醜いもの、おそろしく愚かしいものを一度引き受けなければいけません。なんのでこぼこもない、のっぺりとした状態では、階層を潜ることは不可能です。

もう一度書きますが、階層を潜ることが正しいとか善とかそういう話ではありません。正しさや善悪は、人間が設定するレイヤーです。階層を潜るとは、そのレイヤーから離れることです。だから、同一平面上に並べることはできません。

たった一回しかない、しかも同じものがない個々人の人生は、極言すれば正しさも間違いもありません。ただ、「どう生きるか」という問いがあるだけです。__あまり使いたくないのですが簡略化のために用いれば__魂がどのように輝くのか、というだけの話です。

誰も答え合わせしてくれない問題。

まったくもって恐ろしく、かつそれと同時にすばらしいものです。まるで、人生そのもののように。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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