なぜなに”知的生産” 〜カード・システムとこざね法〜

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どっか~ん!

なぜなに”知的生産”~!

「お〜いみんな〜、集まれ〜。なぜなに”知的生産”の時間だよ〜!」
「わ〜い! ねえねえ、お姉さん、今日はどんなお話をしてくれるの?」
「今日はね、カード法とこざね法の違いについてだよ!」
「まってました〜〜!」
「じゃあ、さっそく始めましょう」

(シーン切り替え)

梅棹の二つの手つき

梅棹忠夫の『知的生産の技術』には二つのメソッドが登場します。

一つは、「発見の手帳」をベースとしたカード・システム。もう一つは、アウトライン作りとしての「こざね法」です。

カード・システムは日々の着想を管理するためのものであり、思いついたことを小さくてもまとまった文章として書き残していくことでそれを実現します。いわば日常的実践であり、それは習慣でもあります。

対して「こざね法」は、アウトプットを生み出すための手法です。小さな紙片を使い、構成案を練り込んでいきます。これは原稿を書くときに用いられるものであり、日常的実践というよりもプロジェクト的実践と呼んだ方が近いでしょう。

梅棹はこの二つの手法を用いてアウトプットを生み出しています。

こざね法

カード・システムについては前回簡単に紹介したので、ここでは「こざね法」について触れてみましょう。

こざね法では、紙きれを使います。カード・システムは厚手の紙を使いましたが、こちらはペラペラの紙でまったく問題ありません。ただし、その紙はすべてB8判に切りそろえます。規格化するわけです。

その紙きれを以下のように使うのが「こざね法」です。

  • いまの主題に関係あることがらを、単語、句、または短い文章で、一枚に一項目ずつ、書いていく。
  • おもいつくままに、順序かまわず、どんどん書いていく。
  • すでにたくわえられているカードも、きりぬき資料も、本からの知識も、つかえそうなものはすべて一度、この紙きれに書いてみる。
  • ひととおり、出尽くしたと思ったら、その紙きれを、机の上、またはタタミの上に並べてみる。

こうすることで、その主題について自分の頭の中にある素材のすべてを一覧することができます。
※以上は『知的生産の技術』p.202~203より。いくつかひらがなを漢字に直した。

あとはそうして書き出した紙きれを1枚ずつ見ていきながら、「これとつながりのある紙きれはないか?」を探し回っていきます。もし見つかれば、それをいっしょに並べておきます。ポイントはカードを分類するのではなく、論理的につながりがありそうだと思われるコネクトを自らの手で(もう少し言えば自らの頭で)探していくことです。機械的な部類は、知的生産の要である「自分の頭を働かせて」が抜け落ちてしまうので注意しましょう。

で、何枚か紙きれがまとまったら、論理的にすじが通ると思われる順序に紙きれを並べて、その端を重ねてからホッチキスでとめます。このひとまとまりの紙きれが、鎧を構成する鉄製の短冊状の小さな板(こざね)に似ていることから、この手法は「こざね法」と名付けられています。

screenshot
大鎧 – Wikipediaより、

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※ウメサオタダオ展で展示されていた「こざね」。

共通点と相違点

カード・システムとこざね法の二つを見比べてみると、共通点と相違点が浮かび上がってきます。

まず共通点ですが、「頭の中の情報を、外のツールに預けること」が一番重要な共通点でしょう。どちらも情報をカードや紙に固着化させ、操作可能な単位を作り出しています。これは人間の脳が、そういうことをあまり得意としていないからです。

また、それを操作する意図があるので、「一枚に一項目」という原則も共通しています。これは目的からくる要請です。この辺りは、他のツールや手法に目を向けても同じことになるでしょう。

では、相違点は何でしょうか。

簡単に言えば、カード・システムは長期記憶を補強するものであり、こざね法は短期記憶(≒作業記憶)を補強するためのものです。メタファーを用いれば、前者は自分だけの辞書を作る、後者は筆算するための大きな紙を準備する、となるでしょう。

私たちは日常的に会話をしていますが、もちろん言葉の意味を忘れることもあります。そのとき辞書は大いに役立ちますね。

また、私たちは暗算だけで簡単な計算を行えますが、4桁の掛け算くらいになると急にスピードが落ちますし、3次方程式とかになってくると暗算ではもうお手上げです。しかし、紙とペンがあればそれが可能になってきます。なぜ可能になるのかと言えば、一つひとつの小さな出力(=計算結果)を記憶に留める必要がなくなるからです。

暗発想としてのカードあるいは紙

「こざね法」でやっていることも、基本的にこれと同じです。私たちは脳内で情報のつながりを見出すことはできます。しかし、10を越える情報単位を同時に扱うのも難しいですし、またひとつのつながりを作ったあと、別のつながりを考えているうちに前のつながりを忘れてしまうこともあります。紙に書けば、これを回避できるわけです。

「暗算」「筆算」に対応させるなら「暗発想」「筆発想」と呼んでもよいでしょう。

ただし、「構成を寝る」作業は、数式を一つひとつ展開していくようなリニアな作業ではなく、さまざまな材料を組み合わせて一つの大きな流れを作るタイプ作業なので、「一枚の大きな紙に書き出す」よりは「一つひとつの要素を一枚の紙に書き出す」方が向いてはいるでしょう。カードではなく付箋で似たような作業を行っている人も多いはずです。

が、一応「記憶の補助」ということを考えれば、大きな紙でもやってやれなくはありません。消しゴムは必要でしょうが。

さいごに

今回は、「カードを使って情報を操作する」の二つのタイプを眺めてみました。

カード・システムの「情報の操作」のスパンは比較的長いものです。自分なりの図書館の蔵書を増やしていくような、そんなイメージがあります。

対するこざね法は、特定のアウトプットに向けた「情報の操作」であり、スパンそのものはそんなに長くはなりません。紙の上での計算と似ようなものです(もちろん数ヶ月かかるようなことは十分ありえるでしょうが)。

この二つの手法の違いについて、今回は「補助する記憶の違い」という補助線を引いてみました。案外すっきりしたのではないかと思います。

さて、前回紹介したカード・システムと今回のこざね法は、使う紙のサイズが違います。片方はB6、もう片方はB8判でした。これはなぜなのでしょうか。

では、次回は「カードのサイズ」をお送りします。お楽しみに!

▼前回:
カードを使って情報を操作する

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梅棹 忠夫
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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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