やりたいことをやるために僕たちができること (その2)

前回:やりたいことをやるために僕たちができること (その1)


青年 さあさあ聞かせてください。優先順位を付けることについて。

徹人 優先順位を付けることは、とても簡単で、ひどく複雑だ。

青年 駄目ですよ。そんな禅問答で逃げようたって。

徹人 そういうわけじゃない。そうだな、たとえば100個ほどのタスクがのった「やるべきことリスト」について考えてみようじゃないか。

青年 よくあるやつですね。僕も何度か作りましたよ。

徹人 良い心がけだ。では、そこに優先順位を付けてみようじゃないか。プレーンな方式で、A、B、Cの三段階がいいかな。Aは最優先事項、Bはやや優先事項、Cはどっちでもいい。どうだい。難しくはないだろう。

青年 一つに2〜3秒かかるとして、5分もあれば付け終わるでしょうね。

徹人 だろうね。で、そうしてつけた優先順位は何の意味も持たない。

青年 どういうことですか。優先順位を付けたんだから、あとはそれに従って作業を進めればいいだけでしょ。

徹人 原理的にはそうだろう。でも、実際的にはどうだろうか。そんなにうまくいくかね。いや、いったかね、と聞いた方がいいかな。

青年 あなたは意地が悪いですね。たしかに、そういうやり方を試したことはありますよ。そして、うまくいかなかった。でも、どうしてですか。僕の優先順位の付け方が間違っていたということですか。

徹人 そういうわけじゃないさ。A〜Cの優先順位づけはそんなに難しいことじゃない。間違う可能性は低いだろう。問題は別のところにある。

青年 というと?

徹人 第一に、Aをつけたタスクだって数が相当にあるということだ。そうだろう。世の中には「やるべきこと」が溢れかえっている。優先順位を付ければ、それが「やるべきこと」であることは確認できる。でも、それだけだ。つまり、何をやるべきなのかがわかっていないときにはその方法は有効だが、やるべきことがありすぎる状況では単に優先順位を付けただけではお手上げなんだ。

青年 なるほど。他にも理由が?

徹人 第二に、状況は動いているということだ。タスクリストに付けた優先順位はある意味で静止している。しかし、周りの状況は動いているのだ。つまり、優先順位はいつでも変わりうる。Cだったものが、突然の誰かの思いつきでAになったりする。これは非常な混乱を伴うに違いない。だから、機能しないわけだ。

青年 だったら、何かを優先するためにはどうすればいいんですか。

徹人 簡単だよ。何かをすればいい。

青年 だからどうやって。

徹人 それは私の管轄外だよ。話は極めて単純なのさ。君がリストを眺めて、その中の一つに取りかかろうとしたとする。何かを選択したわけだ。それはつまり、その他すべてのタスクを捨てたということでもある。優先順位的に言えば、100のタスクのうち、たった1つにAを付けて、そのた99個にCを付けたということだ。わかるかね。

青年 理屈はわかります。でも、それが一体何の役に立つというのですか。

徹人 何の役に立つか? これがスタートラインなのさ。優先順位付けを、まるでタスクの鑑賞会のように捉えてはいけないさ。「う〜ん、このタスクは重要だ。Aだね。おっ、これもAだし、それもAだね」とやっているうちは、何も優先していない。何かを優先するということは、他の何かを優先しないということだ。

青年 それはわかります。でも、そうはいっても優先すべきことは実際にあるわけですよね。

徹人 そりゃそうだろうね。しかし、人間にできることは限られている。タスクリストを使ってもそれはかわらない。リストにできることは、単に順番を整えることだけなんだ。たしかに世の中には、現実的に優先すべき事柄がある。山ほどね。でも、結局我々はあるタイミングにはそのうちのどれかを選ばなきゃいけない。不義理、不都合、不合理があろうとも、何かを選んで、何かを捨てなければいけない。それが何かを優先する、ということだ。

青年 つまり、優先順位は「優先した方が良い順位」であって、自分の行動選択としては機能しないということですか。

徹人 概ねそう言っていいだろうね。

青年 だったら、やりたいことをやるためにできることは何があるんでしょうか。

徹人 さっきも言ったように極めてシンプルな話だよ。「やる」。それだけだ。そして、それ以外のことを「やらない」。簡単だろう。

青年 そうは言っても……

徹人 もちろん、その実行は困難だろうね。なにせ人間がもっとも不得意とするところの「捨てる」をやらなければいけないんだから。その点、「優先順位を付ける」みたいな言葉で遊んでいれば、何かを得るためには何かを捨てなきゃならない事実と向き合わなくても済む。でも、人生は有限なんだ。それだけは忘れてはいけない。

青年 ……それはループ的な構造をしていますね。

徹人 さすがだね。その通りだ。「優先順位を付けるという言葉で遊ぶ」というのも、ようは選択の結果なんだ。その可能性を引き受けて、そうでない可能性を捨てている。結局は誰もが選んでいるのだ。意識的か、無意識的かはともかくとして。だから、極限的に言えば、我々は誰もがやりたいことをやっている。アリストテレスが言っていたようにね。

青年 だとしたら、ライフハックに出番はないのでしょうか。

徹人 そんなことはないだろう。むしろ、だからこそライフハックの出番があると言えるかもしれない。

(つづく、かも)


徹人と青年シリーズ
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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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