地位の高さとフィードバック

「ピーターの法則」をご存じでしょうか。ウィキペディアにはこうあります。

  • 能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する。したがって、有能な平(ひら)構成員は、無能な中間管理職になる。
  • 時が経つにつれて、人間はみな出世していく。無能な平構成員は、そのまま平構成員の地位に落ち着く。また、有能な平構成員は無能な中間管理職の地位に落ち着く。その結果、各階層は、無能な人間で埋め尽くされる。
  • その組織の仕事は、まだ出世の余地のある人間によって遂行される。

これだけ読むと、ちょっと何を言っているのかわかりませんね。

極めて簡単に考えれば、能力を持った人は、その人が無能になるレベルまで昇進する、ということでしょう。


Aさんという平社員がいるとして、その人が「デキる」としましょう。それをめざとく見つけた課長は彼を平社員の中のリーダーに指名します。そのリーダーでも有能さを示したAさんは係長補佐に、やがて係長にとステップアップしていきます。

彼のその「サクセスストーリー」が止まるのはどこでしょうか。「デキる」人だと見なされなくなったところです。たとえば、課長にはなったもののたいした成績が残せなければ、そこから出世することはありません。逆にそこで「デキる」と見なされる成績を残すなら、さらに彼には昇進のチャンスがあります。

つまり、ある役職でめざましい結果を残せる能力を持つ人は昇進してしまい、そこ留まり続けるのはあまりたいしたことのない人ばかり、と状況が生まれるわけです。

そこから、たいがいの上司は上司として無能、みたいな話が出てきます。できる上司はさっさと階段を登ってしまうわけで、まだそこにいるということは、推して知るべし、ということですね。

現実に組織を見回してみると、これはまあ、ある程度は頷ける話なのですが、ちょっと気になることもあります。

成長への手がかり

たしかに「ピーターの法則」が示すような問題はあるにしても、階層的組織社会には別の問題もありそうです。簡単に言えば、「偉くなると、フィードバックが減る」というものです。

階層的組織の末端にいる場合、自分の同僚及び、上司にあたる人間はわんさかいます。しかし、ステップを一つ登るたび、その数は減っていきます。となると、どうなるか。自分の間違いを指摘してくれる人間が減っていくのです。

人間の行動の適正化(あるいは学習)には、フィードバックが必要です。間違ったことをしていても、それが間違ったことであると認識できない限り、それが正されることはありません。その意味で、出世の階段を登っていくことは、山登りしていくとやがて酸素が薄くなっていくのと同様に、フィードバック不足につながります。

ときどき、店長的な立場の人が、スタッフの意欲を盛り上げるのではなく、むしろ盛り下げるような言動を繰り返すのを見かけることがあるのですが、きっとフィードバックをもらえていないのでしょう。そして、その言動こそがフィードバックを遮断していることにも気がついていないのかもしれません。

単純に考えて、コンビニの店長なんかは、アルバイトのスタッフに対して、正社員の店長ということで、力関係が強く非対称です。仮に店長が誤った言い方、間違った指示の出し方をしていても、アルバイトはそれをぐっと飲み込むでしょう。そうなってしまったら、そこでお終いです。その店長が、「店長力」を向上させることはほとんどありません(別の業務なら話は別ですが)。

さいごに

広義の「コミュニケーション」が重要です。

それによって、その人の成長が決まります。別段すべての人に好かれる必要はありませんが、ある程度の人たちには信頼される、あるいは「少なくとも話をする価値はある」と思われなければ前には進めません。

ほら、あなたの周りにも「コイツには、言ってもムダだな」と思う人がいるでしょう。もしそれが自分だったらと想像してみてください。ゾッとしてきますね。

「偉くなると、フィードバックが減る」

この力学は意識しておいて損はないでしょう。

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