2トラック・プロジェクト管理

長い間苦しんでいました。

執筆に関わるプロジェクトマネジメントに、です。

数ヶ月といった長いタームを要する、といったこと以外にも、大きな問題がそこにはありました。

性質が変わるのです。

机上のガントチャート

はじめはガントチャート的な構図で管理しようとしていました。

執筆プロジェクトの全体像を、です。

企画着手からはじまり、執筆があり、ゲラチェックがあり、販売促進があり、と一連の流れを一枚のチャートに落とし込もうとしたのです。

もちろん、チャート自体はすぐに書けます。でも、その通りにはいきません。まったくいきません。

すると人は、その手法そのものから離れたくなるものです。私もそうなりました。

工程の切り分け

あるときから、プロジェクトを切り分けるようになりました。

区画整理です。

執筆前の準備段階、執筆そのもの、脱稿後の販売促進活動。それまで得てきた経験からこの3つの区分けぐらいがちょうどよいだろう、と思い至りました。

そこでプロジェクトを「○○○」(本のタイトル)という大きい括りではなく、「○○○-企画準備」「○○○-執筆」「○○○-販売促進」のように3段階に分けたのです。これは少しうまくいくように思えました。また、副産物もありました。

意外な副産物

副産物とは、チェックリストです。

執筆の工程は、それぞれの本によって違うので「魔法の呪文」は存在しないのですが、よくよく考えてみれば、販売促進は__Twitterの固定ツイートを変更する、ブログで告知記事を書く、プレゼント企画を行うなどなど__本が変わっても同じような活動を行います。

プロジェクトの工程を区分けすることで、繰り返し可能な部分が見出され、それをチェックリストに落とし込むことができたのです。

まっすぐには進めない

しかし、問題は残りました。それはやはり執筆工程にあります。なにせ「魔法の呪文」は存在しないのです。

一番厄介だったのは、居座り続けるタスクでした。

執筆がストレートに進むことはまずありません。なにせこの世にこれまで存在しなかった「本」を書こうとしているのです。手本や見本や師匠からの教えはここでは直接的な答えにはなりません。何か新しいものごとを、頭を使って生み出す必要があるのです。でもって、それには時間と試行錯誤が欠かせません。

となると、たとえば、「第二章第一項を書く」という通常ならばうまく機能しそうなブレイクダウンによるタスクが、まったく進捗しないことが起こりえるのです。それこそ、三日も四日も、そのタスクが私の現前に残り続けることになります。それが、あまりにも苦痛であることは、鏡を見るまでもありません。

毎日毎日、デイリータスクリストに「第二章第一項を書く」と書き、プロジェクトノートにはまったく何の進捗も書き込めないのは、苦痛を通り越して拷問とも言えます。人の心は、終わりの見えない行進に長期間耐えられるようにはできていないのです。

そこで私は決めました。自然な決意だったのか、作為による思い込みだったのかはわかりません。ともかく、「これをコントロールするのはやめよう」と決めたわけです。

ここで一つ、大切なことを書いておきましょう。

「タスクリストを見るのが嫌になっているのなら、タスクの管理方法に何か歪みがある」

その歪みがどこから生じているのかはわかりません。現実と理想のギャップなのか、管理の手間の大きさなのか、ツールのUIの不具合なのか、理由はいろいろ考えられます。が、どのような理由であれ、タスクリストを見るのが嫌になっているなら、何かを変えなければいけません。それを「やる気」などといった見えもしない概念のせいにして問題決着を図ろうとすれば、時間を置いて同じ問題が繰り返されるだけです。

ともかく私は、「本を書く」という工程の中心部に位置する「原稿を書く」という工程を、コントロールするのをやめました。それはつまり「タスクリストを作って、上から順に消化していけば、全体が終わる」というような考え方を捨てた、ということです。

もちろん、進捗状況は確認できるようにします。どこまでできているのかがわからないと、それはそれでツライものです。ただ、ガントチャート的進行の信仰はきっぱり捨てました。他の人は違うのかもしれませんが、私にとってそのやり方は苦痛を生むものでしかなかったのです。

2トラック式

では、現状執筆のマネジメントはどうなっているのかと言えば、次のようになっています。

screenshot

まず、「本線」があります。このルートは、通常のタスク管理と同じようにタスクリスト式に進んでいきます。が、途中でトラックの移動が起きます。執筆の工程に入ると、「本線」から外れて「周回トラック」へと移動するのです。

ここでは通常のタスクリスト式の進捗管理は行いません。では、代わりに何をするのかというと、「時間と作業ログ」による進捗確認です。

「企画」の段階では、「メールを送る」というタスクを立て、それを実行すれば消す、というやり方を行います。しかし「執筆」の段階では、「第二章の原稿を1時間書く」とするのです。つまり、あるタスクの項目を成し遂げたかどうかではなく、どのくらいの時間その種の作業をしたのかで進捗を確認するのです。

もちろん、これは成果の直接的なマネジメントにはぜんぜんなりません。1時間作業をして、まるで原稿が進んでいないこともあります。でも、それが現実の姿なのだから仕方がありません。ここが大切なところです。

理想を言えば、1時間作業をしたら、何か一つのタスクが達成されているのが望ましいでしょう。が、その「望ましい状態」をベースにマネジメントを行ってしまうと、辛くなるのは現実の私です。だって、現実の姿は「1時間作業をして、まるで原稿が進まない」のですから。

でもって、私は「本を書く」とは根本的にそういう作業だと認識しています。そして、プロジェクトマネジメントを理想ベースに運用したところで、現実の執筆がその理想に寄るわけではないのです(あと、寄ったら寄ったで嫌ではあります)。

だから、日々のタスクリストには「〜〜の原稿を1時間書く」と書き続け、それを実行します。同じ場所をぐるぐると周り続けるわけです。そして、シンプルながらも作業記録をつけます。その記録の積み重ねは、「自分が何かしらを行っている」という実感の拠り所となってくれます。

これがもしタスクリスト式の管理方法ならば、タスクを一つ消化できないと「何もしていない」ことになるのです。その空虚さは、ほとんど耐え難いものであることは容易に想像できるでしょう。でもって、その空虚さはほかでもない「理想ベースのタスク管理」のせいなのです。

さいごに

執筆作業が終わってしまえば、「周回トラック」を抜け、再び「本線」に戻ってきます。こうなると、タスクリスト式の管理方法でもやっていけます。というか、その方がフィットしています。

というように、私の執筆マネジメントは2つのトラック__2タイプの管理方法__を組み合わせることで実現しています。これは今のところなかなかうまくいっています。

ちなみに、はじめから2トラックという説明を思いついていたわけではなく、たまたまとあるボードゲームを見たときに、「まさに自分がやっているのはこれじゃないか」とひらめいたのがきっかけでした。ラットレースはなかなか悲しいものですが、執筆作業ってまさにそれだと思います。ぐるぐる走り続けるしかないのです。

というわけで、ガントチャート式の方法で「苦しんでいる」人は、こういうやり方を試してみてください。ポイントは「管理方法は一つでなくていいんだ」という発見です。

Related Posts with Thumbnails
Send to Kindle

コメントはまだありません

コメントはまだありません。

この投稿へのコメントの RSS フィード TrackBack URI

コメントをどうぞ

WordPress Themes