アリとキリギリス

大きなものごを一瞬で成し遂げることはできない。
小さな行為をコツコツと積み重ねていくしかない。

積小為大。万里の道も一歩から。

それはまあ、その通りでしょう。この文章ですら、言葉を一つひとつ重ねることで、キーボードのボタンを一つひとつ叩くことで生まれています。「一気にすべて」なんて、基本的には絵空事に過ぎません。

でもじゃあ、コツコツやっていればそれで万事が為せるのか、というとやはりそれは難しいでしょう。特に、コツコツ、真面目にやっている場合はそうです。

コツコツとは、大局の夢想に溺れず、目の前の道を一歩一歩進んでいこう、という一つの指針です。現実的で、実際的な指針ではあります。ただしその指針は、道が接続する場所については何も触れていません。想定と違う場所につながる道もあるでしょうし、あるいは、途中で分岐点が発生することだってありそうです。これが問題なのです。

コツコツ進むことばかりに心注してしまい、道の選択ができなければ、辿り着きたくなかった場所に辿り着いてしまうかもしれません。あるいは、「かつて、違う選択をしていれば、こんな場所ではなかったはずなのに」という後悔を抱え込むこともありそうです。

「真面目に」という言葉には、「すでに存在している基準に沿う」という含みがあります。誰かのルールに準拠するのです。そしてそれは過去に生まれたルールでもあります。今の私の状況にはそぐわない可能性があるのです。しかし、「真面目に」のスタンスでは、そのことについて疑義を挟むことができません。ただ一つの道を、ただ目の前にある道を、黙々と進んでいくだけなのです。

もちろんそれで成し遂げられることもあるでしょう。丁寧に整えられた環境で、再現性・効率性が重視されるような舞台(たとえば資格試験)であれば、真面目にやることは圧倒的な力を持ちます。そこにコツコツやる指針が合わされば強力無比です。しかし、それが通じる舞台は限られています。「丁寧に整えられた環境」で戦えるのは子ども時代までで、一部の人はそれすらも叶わない状況に身を置かされます。基本的に人生はその状態がデフォルトなのです。

だからこそ、道を疑い、道を選ぶことが必要です。ほんとうにどうしようもなければ、道を作ることすら視野に入れなければいけません。そのために、遊び心は欠かせないのです。真面目にやることでは、それは為せません。創造性は常に(一番広い意味での)「遊び」にかかっているのです。

コツコツ、真面目に、ではなく、コツコツ、遊びで。

ときに笑い、ときにズルをし、ときにちゃぶ台をひっくりかえして、ときにソウゾウする。競争し、偶然に身を投じ、模倣し、逸脱する。

ということを、コツコツとやっていく。そういうことだって、可能なはずです。

アリかキリギリスではなく、
アリとキリギリス。

そういう指針と姿勢を持ちたいものです。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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