「役に立たない本は読まない」という指針

一つの指針ではあるでしょう。人生は有限で、書物は膨大にあるのですから、何かしらの線引きは必要となります。でもって、「役に立たない」本を切り捨てるのは、有用で実際的な指針にすら思えます。

何か問題があるとすれば、その「役に立たない」という判断基準についてでしょう。

冒頭の指針をもう少し正確に表現し直せば、

「私がこの本は役に立たないと思う本は読まない」

となります。どうでしょうか。若干、危うさが漂ってくるのではないでしょうか。

読書という行為には、「何を面白いと思うか」の判断基準のアップデートが含まれています。本を読むうちに、自分の世界観が脱構築されちゃうことだってあるのです。しかし、「役に立たない本は読まない」という指針は、そのような脱構築の可能性を大幅に減少させます。ほとんど皆無になると言ってもよいのではないでしょうか。

世の中には、「頭をガツンとやられる一冊」というのがあるわけですが、それはまさに自分の情報判断基準アルゴリズム(ひらたくパラダイムと呼んでもよいでしょう)にアップデートを迫ってきます。

ここで相対主義的に、「アップデートすることにも価値があるし、しないことにも価値がある」みたいな逃げ口上を述べたくなるわけですが、そもそも「アップデート」という言葉遣いには、それが基本的には良いことであるという価値観が埋め込まれてしまっているわけですから、ここはあっさり開き直って、それは良いことだと言っておきましょう。少なくとも、アップデート後の状態に立てば、その前の状態に戻りたくなるような気持ちは湧いてこないはずです(そういう状態を「アップデート」と呼んでいるのですから、いささか欺瞞的な表現ではありますが)。

話がクレータ島の迷宮みたいに込み入ってきたので、あっさりまとめておくと、

「何かしらの判断基準を持つことは大切だが、それが検証・アップデートされない状況はマズイかもしれない」

となります。ときに、自分世界の地平を揺さぶる何か__おそらくそれはノイズと言われるもの__が必要です。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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