【書評】ベストセラーコード(ジョディ・アーチャー&マシュー・ジョッカーズ)

文章を書く人、特に「売れたい!」と強く願っている文芸作家ならば、得るところが多いのではないか。

ベストセラーコード
ベストセラーコード

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日経BP社 (2017-03-24)
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極めて不信感の漂うアプローチから、極めて納得できる結果が導き出されている。

不信感の源は、「コンピュータに小説を解析させる」という行為であり、納得できるポイントは、著名な作家のアドバイスと重なる点である。実感が論理によって補強された、と言えるかもしれない。

ともかくまあ、そういう本である。

概要

目次は以下の通り。

第1章 ベストセラーメーター テキスト・マイニングは出版を変えるか
第2章 代父母(ゴッドペアレンツ) 日常の何気ない時間を大切にする
第3章 センセーション 完璧なカーブをどうやってつくるか
第4章 デビュー 句読点は語る
第5章 ノワール 「ガール」は何を求めているのか
第6章 1冊を選ぶ アルゴリズムがウィンクするとき
エピローグ 機械が小説を書く なぜ作家でなければだめなのか
追記─手法について

大量の小説をコンピュータに「読ませ」て、ベストセラーに共通する要素を探る、というのが著者らのプロジェクトであり、その結果がわかりやすく、かつ面白くまとめられている。どのように解析したのかについても、追記で簡単に触れられているが、さっぱりな人間にとっては、さっぱりな内容だろう(私がそうだった)。

解析の項目は以下の4つ。

  • テーマ
  • プロット
  • 文体
  • キャラクター

ものすごく売れる小説には、上記の要素で共通点があるというのだ。驚きだろうか。ジョン・グリシャムとダニエル・スティールに共通点?

もちろん、著者らはマーケティングの影響をまったく無視しているわけではない。販促によって売上げが「作られる」事例は枚挙にいとまがないだろう。しかし、マーケティングにお金を突っ込んでもまったく売れない作品もあるし、また、小さな出版社やセルフパブリッシングの本であっても大きく売れることはある。つまり、内容も大切なのだ。

では、どんな本を書けば売れるのか(あるいは売れる可能性が高まるのか)。気になるところであろう。ここでそれらを列挙して、本書を読む興を削ぐような野暮なことはなるべくしたくないのだが、一つだけテーマに関することを紹介しておく。たったこれだけでも、箴言に値するはずだ。

豊富なトピックをおりまぜた小説を喜んで読む読者もいるかもしれない。だが、市場は受けつけない。350ページの読書体験には多すぎるのだ。少数のトピックに集中するほうが、物語の深みも増すし、話もわかりやすくなり、読者には好まれる。

140字で表現できることは限られている。それは、350ページでも同じである。小説を書きたいような人は、あれやこれやと言いたくなる系の人々なわけだが、一冊の本にあれやこれやと詰め込んでも、中身が浅くなるか、読者がついていけなくなるかのどちらかである。「頭が良い人向け」に小説を書いているならいざ知らず、多くの人に読んでもらいたいと願っているならば、避けた方が良いだろう。

ちなみに、このテーマやトピックに関する話だけでも、ずいぶんと広がりがある。簡単に言えば、勉強になる。たとえば、ジョン・グリシャムやダニエル・スティールは、どうやって彼ら自身の〈刻印〉を作品に刻み込むのか。そうしたことも、トピックの扱い方から見えてくる。きっと、その他のメディア発信においても応用できるに違いない。

第2章以降でも、物語のカーブ、言葉の使い方、キャラクターという点で、ベストセラーが解析され、そこにある共通点がときほぐされていく。おそらく、それぞれで何かしら学ぶことはあるだろう。

さいごに

もちろん、本書が題材としているのは、「ベストセラー」であり、平たく言えば「市場で大いに受け入れられる作品」である。

そんなものには興味がない、と考えるのはもちろん一つのスタイルではあるが、そうした市場の向こう側には、やっぱり人間がいるという点は忘れない方がよいだろう。ベストセラー小説を目指して書かなくても、人々に受容されやすいフォーマットやスタイルの形について知っておくことは、自分の引き出しを増やす助けにはなるはずである

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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