贅沢な推敲時間

『Dr.hack』は、「月くら」計画ZZの一発目の本でした。

Dr.Hack (Lifehack Lightnovel)
Dr.Hack (Lifehack Lightnovel)

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倉下忠憲 (2017-03-23)
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で、「月くら」計画ZZは三ヶ月に一冊新刊を発売する、という計画です。つまり、執筆猶予期間は三ヶ月。

しかしながら、『Dr.hack』の企画に着手し始めたとき、すでに原稿はありました。もともとメルマガで連載していたので、10万字ほどの原稿が書き下ろされてそこに揃っていたのです。つまりは、どういうことでしょうか。

まるまる三ヶ月ほどの期間を、ただ推敲することだけに使える、ということです。そして、実際にそうしました。

これはまあ、単純に言って贅沢な時間の使い方でした。少なくとも、これまでの執筆体制を考えれば、マハラジャぐらいの豪勢な時間の使い方です。

step1

まず取りかかったのは、書いた原稿をシンプルに頭から読み返すことでした。なにせ2012年〜2014年に書いたものなので、ほとんど内容を忘れています。どのような方針で推敲を進めるかを確認するために、まずはまっさらな状態で読みました。

ええ、まあ、酷かったですね。エゲツなくダメ、まではいきませんが、技巧の至らなさが目につきます。簡単に言えば、ところどころすごく読みにくいのです。

とは言え、いきなりの大手術はたいへんなので、最初は誤字脱字を直すところから着手しました。原稿はScrivenerで管理しているので、そこでちょこちょこと直していきます。

というか、構造に大きく手を入れるつもりはありませんでした。一通り読み終えてみて得たのは、「うん、これは面白い」という感触で、それだったら大工事は必要ありません。小説的読みやすさと小説的面白さを向上させればそれで十分でしょう。そもそも、大工事となれば、三ヶ月ではとても足りない予感がビンビンしてきます。

step2

続いて、意味の通らない文をすべて改めました。昔はなんとなく誤魔化してしまった箇所を、意味の通る文に直していきます。

だいたい、この辺りでそれなりに読める文章にはなったのですが、これはあくまで序盤戦というか、足場を整える段階です。本格的な推敲はここからです。

まず、キャラの描写や台詞回しを徹底的に見直しました。私は「キャラクター設定」みたいなものを事前に作らないで書いてしまうので、どうしても長丁場になってくるとブレが出てきます。矛盾点も出てきます。それを改めて調整していきました。

この辺りで、全体感みたいなものが徐々に生まれてくるのですが、さらにアクセルを踏み込みます。徹底的に不必要な記述を刈り込み、それでいて小説的余白を削りきらないようにする。さらに、書き足すべきところがないかも模索します。リズムの調整です。

メルマガ連載時では、毎週一回2000字ほどの原稿を読者さんに読んでもらっていた形ですが、本にするとなると、それは連続的な体験に変身します。すると、シーンとシーンの変わり目が持つ余白感もまた変わってきます。読み手のテンポが変わるのです。そのテンポに合わせて、文章のリズムも変えていく。そういう作業を、これでもか!これでもか!えいえい!という感じでやりました。

さいごに

以上のような工程で、だいたい三ヶ月です。書き込みに関する時間もそれなりにかかるのですが、「最初から最後まで通して読む」という行為を何度も繰り返すのが一番時間を取られるかもしれません。これよりも長い小説ならば、さらなる期間が必要でしょう。

さらに言うと、『Dr.hack』は物語性がずいぶん弱く、章ごとに話が(ほとんど)独立しているので、物語についての手入れが少なくて済んだ、という事態も考慮した方が良いかもしれません。物語の形によっては、さらなる時間な必要なことも想定できます。

で、とりあえずこういうことがわかっていると、計画というか算段みたいなものも作りやすくなります。

もちろん、これは私の話なので、他の人には他の時間的見積もりが成り立つでしょう。とは言え、推敲には時間がかかる、ということはある程度共通して言えそうではありますが。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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