アイデアの捨て方 〜取り出し方編〜

前回:アイデアの捨て方 〜アウトライナー編〜

これまで各ツールでの、〈じわじわ型〉と〈祭り型〉について見てきた。〈祭り型〉では、まとめて一気に「取り出す」必要があることにも触れ、ツールによっては得手不得手があることも述べた。

今回は、その点についてより深く考えてみる。

PoICで「取り出す」

PoICにおいて、溜まったドックからカードを「取り出す」のは簡単である。

まず、ドック内のカードを読み返していき、これはと思うものをドックから引き抜いて、机の上にでも重ねておけばいい。説明の必要もないくらいシンプルで、直感的で、実感的な作業である。

Evernoteで「取り出す」

では、Evernoteではどうだろうか。

直感的にPoICのやり方をなぞるなら、以下のようになるだろう。

  • アイデアを溜めたドックのノートブックを読み返す
  • これはと思うものを別のノートブックに移動する

あるいは、こうなるかもしれない。

  • アイデアを溜めたドックのノートブックを特定のキーワードで検索する
  • ひっかかったものを別のノートブックに移動する

どちらも簡単にできそうであり、実際に簡単にできる。選別の基準が明確であれば、だが。

どういうことだろうか。

ノートを見返しているときに、これははっきり再生産に使えると確信できるものもあるだろうし、これはまだちょっとわからない要検討というものもあるだろう。情報カードの場合であれば、後者のようなものも抜き出しておいて別の山を作ればいい。が、Evernoteではわざわざ専用のノートブックを作らなければいけない。おそらく必要ないけれども一応とっておこう、というものもあるならば、さらにノートブックが必要となってくる。

あるいは、カードを見返しているうちに、別のテーマでカードをピックアップしたくなるときも出てくるだろう。カードなら同様に別の場所にとりあえず置いておけばいいわけだが、Evernoteではそのたびごとにノートブックを作らなければいけない。

情報カードであれば、単に置き場所を変えれば済むようなことが、Evernoteでは一手間となってしまう(ちなみに、カードは山を崩せば「置き場所」は消えてなくなるが、Evernoteではノートブックの削除作業が必要となる。これが速度感を著しく落とす)。

タグで代替

上記の問題は、タグの添付を併用すれば、いくらかは軽減できる。

たとえば、絶対に使うノートには〈★★★★★〉をつけ(あるいはなにも付けず)、まだわからないノートには〈★★★〉、いちおうのノートには〈★〉をつけるといったルールを設けておく。必要であれば、〈★★〉や〈★★★★〉、を使ってもいいだろう。その上で、ノートブックを移動させれば、あとから「必要そう度」別にノートを切り分けられる。

別のテーマでカードをピックアップしたくなった場合も、ノートブックではなく適当なタグを添付しておけば、後から引き出すことは可能だ。

操作的には、単純にノートを移動させるだけよりも手間がかかってしまうわけだが、必要な機能は実装できるだろう。

WorkFlowyで「取り出す」

問題は、WorkFlowyである。

イメージしていただきたい。2000個の項目が詰まったアウトラインがあり、そこからテーマに沿ったものをピックしようとしている。

まっさきに思いつくのは、新テーマの項目を作成し、そこに必要な項目を移動させる方法だろう。一番シンプルなやり方であり、実行も簡単である。5番目の項目を移動させ、10番目の項目を移動させ、26番、52番、103番・・・・・・と続いてく。おわかりになるだろうか。それを2000まで続けるのだから、後半にいくほどスクロールの距離が長くなる。挙げ句の果てに、項目を移動させて帰ってきたときに、どこまで進んだのかがわからなくなる。非常に面倒だ。

だったら、複数クリックを使って一気に放り込めばいいのではないか、という考えもあるだろうが、途中500番目ぐらいで誤った場所をクリックして、それまでの選択がすべて消えてしまう恐怖を考えると、あまりお勧めはできない(人間はミスする生き物である)。

ちなみにこれは検索結果から一気に「取り出す」ときも同じ問題が生じて、大量の検索結果の中から必要なものをピックアップするには手間がかかる。

場所の方を移動

とはいえ、WorkFlowyでは解決策はある。

たとえば、これからEvernoteに関する項目をピックしようと思っているとする。

最初にやることは、「Evenrote」というテーマ用の項目を作成することだ。この下に必要な項目を移動させていく。

※項目「Evernote」を作成

しかし、スクロールは使わない。使うのは、項目の下方向への移動である。WorkFlowyでは、shift+command+下矢印で、項目を下方向に移動できる。

※項目「Evernote」を1つ下に移動

そうやって下方向に移動しながら、項目を読んでいく。そして、これはと思うものが出てきたら、その項目を「Evernote」の下に移動させる。どれだけ進んでも長いスクロール移動(行ったり来たり)は必要ない。あとは、それを2000回繰り返せばいい。

PoICやEvenroteは、固定された場所に要素を移動させたわけだが、このやり方ではむしろ移動させる場所そのものを移動させることで、長距離運送のコストを削減している。もし集めた項目にも分類が必要ならば、Evernoteの項目の下に、あらかじめ〈★★★★★〉や〈★★★〉といった項目を作っておき、それをぶら下げたまま移動させてもいいだろう。

複数のテーマでピックしたくなったら、「移動先」という項目を立て、その下にテーマの項目を位置づけることで対応できる。

ちなみに、上記は「上から下に」という流れで説明したが、むろん「下から上」に流れていくことも可能である。どちらでも、手間はたいして変わらない。

残る課題と現実的な対処

一応これで解決しているように思えるが、上記の手順はまた別種の面倒さが存在する(一度やってみるとわかるが、項目の開け閉めが頻発する)。ぶら下げる項目が増えるほど(つまりピックしたいテーマが増えるほど)、その面倒さは上昇していく。

さらに言えば、2000の項目を目にした段階で、まだテーマが固まりきっていないので、項目同士を化学反応させてそれらしいテーマを見つけようと思ったら、ほとんど厄災に近い状況が待っている。そのような作業をするためには、小さな塊となる項目を(KJ法的に)近づけていくことが必要なのだが、そのときに発生するスクロールと移動の煩雑さは、大気圏を突破できるくらいのエネルギーを要する。
※カードなら小さな山を複数作れば済む。

結局、一度に項目を移動させるのではなく、全項目を読み返しながら、気になる項目に目印となるタグを付けておき、あとでそれを一気に引き出す方が現実的だと言えるだろう。言うまでもないことだが、別にそのような作業はアウトライナーでなくてもできる、というのが困ったところである。

さいごに

結論としていっておくと、WorkFlowyで何の分類も行われていない2000以上の項目を、一気に操作しようとするのは、どう考えても適切な行為とは言えない。WorkFlowy(や他のアウトライナー)は、速度感の早い、言わば小回りの利くツールである。逆に言えば、大回りにはあまり適さないのだ。

WorkFlowyを使う場合は、作業自体も断片的に進めるのが望ましいだろう。つまり、ちょくちょくこつこつ触っておくのが良いように思う。
※もちろんプラグインやスクリプトで状況を改善できる可能性はあるが、一般ユーザー向けの「普通」の使い方の話である。

Evernoteも、「取り出し」に最適化されているわけではないが、ノートブックとタグの組み合わせで、ある程度情報カード的な運用はやりやすいだろう。
※今回は触れなかったが、ScrapBoxには場所の概念自体がない。

それにしても、2000枚以上のノート(カード・項目)を人間が見返して、それを「抜き出す」という行為では、圧倒的に情報カードが優れている点は驚くべきことである。もちろん、今後のツールの改良で操作性が追いつくことを願ってはいるが、それよりもデジタルツールは「人間が見返して」の部分をいかにエンパワーするかに注力されるのがよいように思う。

情報を捨てたり、再生産に役立てるのを補助する(自動的に行うのではなく、判断を助けてくれる)AIの登場が待たれるわけだ。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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