【書評】みみずくは黄昏に飛びたつ(村上春樹、川上未映子)

川上未映子さんが訊いて、村上春樹が答える、という対談本。

みみずくは黄昏に飛びたつ―川上未映子訊く/村上春樹語る―
新潮社 (2017-04-27)
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ほんと、これが、無茶苦茶面白いんだ。

───どういった点が面白いんですか。
倉下 まず、作家と作家の対談という点だね。長編を書き上げた後のテンションの上がり方で盛り上がる、なんて作家同士でしかまず出てこないし、どうやって書いているのかという質問もがぜん切実なものになる。
───響き合う要素が多いわけですね。
倉下 おかげで新作の『騎士団長殺し』についても面白い話がポコポコ出てきたよ。川上さんがインタビューに備えてしっかり準備していたことも伝わってきたし。そういう仕事に向き合う姿勢は自然な好感が持てるね。
───作家ならではの引き出しの開け方ができた、と?
倉下 はぐらかしているのかどうかわからない部分もあったけど、結構いろいろ出てきたんじゃないかな。でも、プラトン読んでないとかホントかよと思ったのはたしか(笑)
───イデアのくだりですね。
倉下 そうそう。でもまあ、そういうこともあるかもしれないな、とは感じる。なにせ作品に登場していたのは、あくまで「イデア的」なものでしかないからね。でもって、イデア的なものって、そもそもイデアとはぜんぜんまったく関係がない。だって、イデアはイデアでしかないわけだから。定義的に。
───読み手の解釈次第で、いくらでも読めるわけですね。
倉下 春樹さんの作品は、そういうものが多くて、やっぱりそれは頭で拵えた物語ではないからじゃないかな、なんてことを読みながら感じた。作り込んでしまうと、解釈の余白みたいなものが縮んでしまうんじゃないだろうか、って。
───他には何かありましたか。
倉下 短編と長編の違いだとか、作家と読者の関係については勉強になるところが多かったよ。春樹さんは、読者との関係を信用取引みたいなものと言っていたけど、まさにその通りだと思う。
───「どや、悪いようにはせんかったやろ?」(笑)
倉下 まさにそういう感じ(笑)。情報というのは品質検査ができないから、悪意を潜り込まそうと思えば、いくらでもできちゃうわけ。小さい例で言えば、自分が好きでもない商品のレビューを、相手が欲しくなるように技巧を凝らして書くとかだね。そういうことを積み重ねていくと、だんだん信用の材料が減っていく。
───読者から見放されるようになるわけですね。
倉下 だって、考えてみてよ。作家が本を一冊バーンと出すわけじゃない。で、その段階ではレビューもついていないし、ランキングにものっていない。でも、その本を買う読者がいるわけだよ。これってすごいことだよね。というか、そういう読者がいないと作家としてはやっていけないよね、きっと。つまり「面白いから買う」のではなくて、「面白そうだから買う」という関係がなりたっていないといけない。
───だから、読者を悪いようにしてはいけない、と。
倉下 それが作家の倫理観であり、生存戦略なんだと思うよ。
───なるほど。ちなみに一番のお気に入りの箇所はありますか?
倉下 春樹さんの、〈文章を書くときの二つの基本方針〉がめちゃくちゃ勉強になった。一箇所だけブックマークするなら、そこになるかな。
───私もあそこはなるほどな〜と感心しました。
倉下 実行するのは難しそうだけどね(笑)
───(笑)

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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