ライフハック・ハカセの教え

最近、妻が毎食後処方された薬を飲んでいる。私がテーブルに食事を並べていると(夕食担当は私である)、カバンから何種類かの薬が入ったビニール袋をちょこんとテーブルの上に載せる。頭良いな、この人、とシンプルに思う。

一度食事が始まると、撮り溜めていたアニメ鑑賞も一緒にスタートし、そのまま30分でも1時間でも画面に熱中してしまうのが妻の特性である。レイピアのような集中力なのだ。結果、食後の内服を忘れていることに気がつくのが、2時間後ということもあった。由々しき事態である。

おそらくその反省を踏まえてなのだろう。食事の前にテーブルの上に薬を置くようになったわけだが、これは劇的な効果を上げている。なにせ私がテーブルを片付けたら(夕食食器片付け担当も私である)、そこに残るのは薬の入ったビニール袋だけであり、否が応でも薬を飲まなければならない事実を突きつけるのだ。

これって何かと言えば、そう、リマインダーである。物そのものを使ったリマインダーだ。

『Dr.Hack』の第一章では、リマインダーについてのお話が展開されていて、それがいかに物忘れ回避に役立つかが語られている。「覚えておこう」「以後気をつけよう」という心構えだけでは、実際の行動改善には至らないので、何かしら自分にそれを告げるもの、注意を促すもの、認知に変化を迫るものを設置しておかなければならない。それがリマインダーである。

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ただしそのリマインダーは「自分の通り道」に置かなければ効果を発揮しない。認知のルートに沿わなければいけない。けたたましくスマートフォンが何かを告げても、それがカバンの奥底につっこまれているならば役目を果たすことはないし、「薬を飲むこと」と手帳に書きつけていても、食後にその手帳を見返すようなことがなければ、やっぱり薬は飲み忘れられてしまう。

大切なのは何だろうか。

まず、自分が物忘れをしている、という自覚を持つことである。これがないと自主的な行動の改善は起こりようがない。

しかし、それだけでは足りない。反省するのは良いことだし、必要なことでもあるが、何かしら改善する手段を持たないと、心構えの修正だけで終わってしまう。

で、手段として登場するのがリマインダーなのだが、これは自分の認知に訴えかけるものであり、それを適切に機能させるためには自らの認知について識っておく必要がある。ハカセの言葉を借りるならば、

《なぜカバンは忘れなかったのに、傘は忘れてしまったのか》

という視点を持つことが大切なのだ。

そしてこれは、自らの行動を改善すること全般に、つまりライフハック的なもののほとんどに通じる話である。

自分の注意がどう動いているのか、自分の集中がどんな変化をしているのか、認知しやすいのかしにくいのか、操作しやすいのかしにくいのか・・・・・・

たんに「良い/悪い」という二項的な評価を下すのではなく、その感じ・感覚のもとになっている自分の認識や行動にフォーカスを当てること。これが環境と自分とをつなぐツールを用いて状況をfixしていくために必要なのである。

物の整理・情報整理においても、自分がどんな風に物を(あるいは情報を)探すのか、ということがわかれば、それに先回りするように配置方法を決められるだろう。「自分はこうやって物を探すに違いないから、その探し方で見つかるように物を置いておく」というのは、いささか回りくどいように思われるのだが、避けようもないくらいにこれがたったひとつの冴えたやり方なのである。

自分の認識や注意の動きに敏感になること。

いささか面倒そうであり、認知的にも高度というかエネルギーを喰うような作業ではあるのだが、それがないとロクな改善は駆動しないように思われる。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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