書評 コンテキスト思考(杉野幹人 内藤純)

コンテキスト思考とは何か?

2009年7月2日初版の「コンテキスト思考」は「ロジカルシンキング」やMBA手法に頼りすぎて目新しいアイデアが出せなくなっている人への新たなるアプローチの提案を行っている本である。

ロジカルシンキングは演繹的に思考を進めていく。与えられた情報が同じならば、演繹的に導き出される解答は同じになる。それは効率よく事例を処理するには適しているが、多くの人間がロジカルシンキングで考えれば出てくる一つ一つの答えは他と似通ったものになってしまう。

別の視点を導き出すために「コンテキスト思考」を用いるために3つのSフレームワークを使い、面白いアイデアを生み出していく手法が紹介されている。

しかし、この3つのSフレームワークを実践的に応用していくのはそれほど簡単ではない。
以下にこのフレームワークを引用する。

Surroundings(環境)=関係性
Soil(土壌)=価値観
Sun(太陽)=目的

ある事柄を分析する上で、表面に見える数字や文章だけでなく、この3つのコンテキストまでを含めて考えていくことが新しい発想を生み出すポイントになると著者は強調する。

ただし、これには問題が一つある。

検証不可

ある事柄について、コンテキストを加えた分析をしたとする。その分析に基づいてあるアイデアが出てきた。果たしてその分析が正しいのかのかどうか、その時点では判断しようがない。

分析した結果でてきた新しいアイデアが成功すればコンテキストの理解は正しく、失敗すれば理解が間違っていた、という結果論的な判断しかできない。

あくまで、文脈の認識というのは個々の思考に大きくゆだねられてしまう分、検証というのが事前には行えない。文脈を使わない表面に出てくる客観的な情報だけならばその正誤については検証できる。
もちろん、検証出来ないがゆえに、それが大きな価値を持つこともあるわけだが、その裏には大きな失敗の可能性も秘められていると思う。

個人的文脈依存

確かに、コンテキストを考慮に入れた思考は差別化をする上で大きな力になってくるだろう。おそらくある程度の事例の成功・失敗の体験を繰り返すことでその人の「コンテキスト思考力」が向上し、それが他の人との差別化に繋がっていくのだろう。コンサルタントを行う人にとっては、その分野の情報を大量に蓄える以上に、そういった経験の蓄積が意味を持つだろうことは容易に推測できる。

逆に言えば、今日コンテキスト思考を始めたからといって、明日から直ぐ結果がでる、というものではないということだ。

ある人が他のコンテキストを理解する上で必要なのはその人自身が持つコンテキストの広さである。
単一の価値観しか知らない人は、他の人間の価値観を理解することは出来ないし、日本のある町から一歩も外に出たことが無い人は、他の国の状況を想像するのは非常に難しい。

コンテキスト不足

インターネットによる情報の氾濫は、我々にコンテンツの福音を与えてくれたが、しかしそこにはコンテキストを読み取る力を鍛えてくれる要素は実はあまりなかった。

なぜならば、ネットの一番の特徴は情報を「選り好み」できる点だ。

本来、様々な情報に触れていれば、その差からコンテキストを感じることができるようになるはずだが、残念ながらネットでは我々が好む情報しか得ることはできない。そこには他の文脈など一切含まない「情報の楽園」が拡がっている。

我々は、新しいアイデアを見いだすために、自分の「外側」の世界に意欲的かつ積極的に目を向けて行く必要があるのだろう。その可能性はおそらく「Twitter」に眠っているのではないか、とそんな感じが今のところしている。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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