Evernote企画:第三回:知的生産におけるメモの重要性

「メモせよ、さればメモられん」

今週は一週間を通してのEvernote企画であるが、一度Evernoteから離れて、知的生産におけるメモの役割や重要性について考えてみたい。効果的にアウトプットしていくためにはメモは欠かせない要素である。加えてメモについて考えてみることは、Evernoteを運用する上でも重要なことだ。

1:Evernoteとは何なのか?
2:Evernoteの機能、プラスαの機能
3:知的生産におけるメモの重要性 →イマココ
4:ノートとタグについて
5:現状の私の運用方法について
6:まとめ

なぜメモするか?

基本的に人間の脳の記憶はすぐに消えてしまう。いや正確に言うとかなり早いタイミングで非常に思い出しにくくなるといった方がよいだろう。つまりは、人間の短期記憶にはやや難があるということだ。
※この脳の記憶の性質について私たちは「長期記憶」しておく必要がある。

携帯電話11桁の番号を右から左に書き写す場合でも、どこか間違える。さっき会ったばかりの人の名前を忘れる、会合が15時からだったのか16日からだったのか忘れる。
何かを取りに台所まで行ったものの、何を取りに行ったか忘れる。しまいには別のものを持って帰ってきてから初めて自分が「忘れていた」事に気がつく・・・

超常的な記憶能力を持っていない人間にとって、このような事はおそらく日常茶飯事だろう。
どうあがこうが人間の記憶のシステムというのはそういったある種の「欠陥」を抱えているのだ。
※もちろん、こういった忘却が無ければ人間の脳は雑多な情報に押しつぶされてしまう。

人の名前を忘れれば、名刺を見ればよい、会合のならば他の参加者に聞けばよい、問題は「アイデア」だ。自分のブラックボックスから出てきたアイデアを一度取り逃がしてしまうと、再び邂逅できる可能性はかなり低いと考えてよい。知的生産においてもっとも重要なコアはこの「アイデア」である。それを志す者としてこれだけは取り逃がしてはいけないのだ。そして最もスピーディーにそのアイデアを捕まえる手段がメモである。

メモの種類

さてここで、問題だ。

問2 「メモすることは、インプット、アウトプット、どちらでしょう?」

すぐに答えが出てきただろうか、それとも結構悩んだだろうか。
答えは、「両方」である。

以下「知的創造のヒント」より引用する。

p167
手帖につけるメモには二種類はあるように思われる。ひとつは、備忘録として、事実などをメモしておくもの、記録である。もうひとつは、頭に浮んだアイデアなどを書き誌しておくもので、これも記録、備忘録だといえばいえないことはないけれども、メモすることで、考えを発展させたり、他日の思考に手がかりを残すという意味合いの方が大きい。

つまり、備忘録としてのメモはインプットであり、自分のアイデアを書き留める場合はアウトプットとなる。メモを取っている人でもこの差を意識している人はすくないかもしれない。しかし、この差は重要である。両者は後の処理が違うのだ。

詳しくは後述するが、アイデアのメモはその時点では「発想の原料」でしかない、ということは認識しておくべきだ。アウトプットといってもその先触れでしかない。

では、どのようなメモの運用法がアウトプットに適しているのだろうか。

メモの三大要件

私が考えるメモ・システムの三大要件を以下に挙げる。

 ・いつでもどこでもメモが取れる
 ・とりあえずメモを取る
 ・とったメモは必ず見返す

すべてのメモに関する機能はこれらを満たしていれば十分である。それ以上の機能は付加要素でしかない。それぞれ少し詳しくみていく。

・いつでもどこでもメモが取れる
メモや発想法の類の本ではかならず出てくる「三上」という言葉がある。三上の三とは、馬上、枕上、厠上といって、良いアイデアが生まれるのはこういった環境が多いという言葉である。これらの環境は非常にメモが取りにくい状態だ。
※メモが取りにくい状況だから(机の前で構えていないから)良い発想が生まれる、ということだろう

となれば、大型のノートにメモを書き付ける準備をしても良い発想はどんどん逃げていってしまう。いつでもどこでもメモを取るためには、機動力、起動時間、などが最大限考慮されるべきだ。逆にそこさえ自分に適していれば何を使っても問題ない。

ステップ1→まず、メモを取る状態を常に臨戦態勢にしておくこと。

・とりあえずメモを取る
何かを思いついたときに、「これは良いアイデアだろうか?」などと考えてはいけない。
そういった疑問は思いついた自分に問いかけても何ら生産的ではない。
アイデアの有用性については他の人にぶつけてみたり、将来の自分に判断してもらうのがよい。その瞬間すこしでもメモしようと思ったことは「とりあえず」メモすべきだ。
とりあえずメモをとらなければメモを取る意味はない、といっても良いだろう。

「超」整理手帳発案者の野口悠紀雄氏もこう述べている。

そもそも、この世にメモしていけないことはないのだから。

どんどん、メモを取っていくのがよい。取り出すのが億劫なメモや入力が面倒なメモアプリはそれだけでメモを取る心理的障害を生むのでメモシステムとしては不十分だ。ただし、これは人の嗜好やスキルによるので、一概に手書きがよい、スマートフォンがよいとはいえない。

メモを取る習慣がでてくれば日常生活の中で「メモするべき事は何か無いか」といった視点で世界を見つめることができる。これは単なる読書か書評が前提となっている読書かの違いにも似ている。

ステップ2→メモするかどうかは悩まず、ぱっとメモを取る。

・とったメモは必ず見返す

 ここで「メモ」ではなく「メモ・システム」としたのは、メモは、取っただけで終わり、というわけではないからだ。そのメモを必ず見返すことが必要になってくる。

備忘録としてのメモは必要時に参照すればよいが、発想の手がかりを書き込んだメモに関しては近いうちにかならず見返さなければならない。「近いうち」というのがどの程度の期間なのかは個人差があるだろう。その日かもしれないし三日以内かもしれない。

少なくとも一週間以上放置しておくと、思いついた自分はとうの昔に過去の人になり、今現在の自分ではそのメモが何を意味しているか、何を言いたかったのか、どのような発想が後ろに潜んでいたのか、などは推し量ることしかない。

先ほども述べたが、アイデアのメモというのは発想の手がかりでしかない。それを最終的なアウトプットにするためにはいくつかの行程が必要だ。メモのアイデアからちょっとした文章を起こしてみたり、自分なりの考えを追加で書き込むことで、ようやくそれは「新しい発想」の形を取り始める。

暖めることなく放置した卵は育たないように、書きっぱなしのメモも大きく育つことはない。必ず見返して、手を加える作業は後に有効活用するために必須といってよいだろう。

この「必ず見返す」という要件を満たすのに一番最適なのが一元化である。一冊のメモ帳、一つのメモアプリでメモを取っていればそれを見返せば全てのメモを見返すことができる。複数のメモ発生源を持っていると「忘れる」ことが起きる。あまりにもこの「忘れる」ことが多くなると、メモの重要性が著しく失われてしまう。これだけは避けたい。
※もちろん、どこかに書いたメモを見返す、というメモを書くことはできる。

思いついたアイデアを走り書きして書き留めても、それを見直さなければ書き留めなかったのと同じである。

ステップ3→必ず見返して、下ごしらえをする。

では、書き付けたメモの「下ごしらえ」とは一体なんだろうか。

メモの情報カード化

「メモのアイデア→アウトプットに適した形」にする一連の流れを私は「メモの情報カード化」と呼んでいる。私が第一回でEvernoteが情報カードシステムだと強調したのはこの点においてだ。

以下「知的生産の技術」より引用

p55
カードは、他人がよんでもわかるように、しっかりと、完全な文章でかくのである。「発見の手帳」についてのべたときに、豆論文を執筆するのだといったが、その原則はカードについてもまったくおなじである。カードは、メモではない。

そう、カードはメモではない。つまりメモはカードではない。

自分で思いついたアイデアをそのままの形でEvernoteに放り込んでいてもそれだけでは使いようがない。メモをそのままカードのように扱おうとしていたのだ。私はここを勘違いしていたのでEvernoteをうまく使えていなかったのだ。素材として使うためには、具体的な追記を行ったり、メモの見出しを付けたりする作業が必要になってくる。
この辺りは「5:現状の私の運用方法について」でもさらに触れることにする。

ともかく要点は「カードはメモではないし、メモはカードではない」ということだ。

まとめ

今回はメモについて考えてみた。メモについては本当にいろいろなシステムやグッズが存在している。その多様性がメモという行為の重要性を示しているようにも思える。

実際にどんなシステムを使うか、メモ帳を使うかなどは個人の嗜好によりけりだが、知的生産の一部としてメモを機能させるためには、ある程度基本となる要件が存在するはずである。

複数の環境で同期でき、かつスマートフォンのアプリも提供されているEvernoteはメモシステムとしてはかなり優れていると言えるだろう。

Evernoteを使いこなして、メモ魔になれば、誰かにメモられるようなアウトプットを行うことができるようになるかもしれない。

次回は再びEvernoteに戻って「ノート」と「タグ」について考えてみたい。

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star冒頭の文章の割には・・・
star悪くはないですが
star内容は殆ど同じだが、1つ位はためになる。

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