手で書き写す、ということ。あるいは保存の価値

昨日に続いて「真似」のお話。

誰でもできる!超シンプル「真似る」ブログ術」(極上の人生)

そんな「真似する」手法ですが、実はちょーシンプルな方法があります。

それは「臨書」です。

「臨書」何それ?と言う方のために噛み砕いて説明すると丸写しのことです。

真似したいブログの、いいなーと思ったエントリー。
その内容を一言一句違えることなく、丸っとタイピングするのです。

ごくごくシンプルに、右から左へ書き写す作業。これは地味に効きます。

有名な画家も駆け出しのころは先達の模写から始めたという話はよく聞きます。写経というのも、これと同じような作業です。

【写経】しゃきょう (名)スル 経文を書写すること。また,書写された経文。そもそもは経典を広めるために行われたが,のちには功徳のある行為とされ,供養や祈願のために行われるようになった。 #daijirinless than a minute ago via 大辞林 Favorite Retweet Reply

上に引いたエントリーを読みながら、「そういえば・・・」と思い出したことがありました。

歌詞の丸写し

中学〜高校時代は、好きな歌の歌詞を手書きで写していました。

こう書くと、

「あっ、あれでしょ。右クリックできないから、コピペできなかったんでしょ」

と若い人は思われるかもしれませんが、別にそういうわけではありません。そもそも歌詞がネット上にある、なんて環境ではなかったのです。

なので、歌詞カードを見ながら、ルーズリーフに一つ一つ文字を書き写すという作業をせっせとこなしていました。歌詞カードが無いようなものは、巻き戻しと再生を繰り返しながら、一つ一つ言葉を拾っていくことになります。

ノート類をまとめてある棚をがさごそと漁ると、そのルーズリーフが出てきました。「知的生産の技術」という本を読む前から、自分が書いた物はなんであれ、残すようにしているのです。

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イメージを刷り込む

やっていることは単なるコピペです。文字を見て、紙に書く。この単純作業の繰り返しです。しかしながら、これをやっていると言葉遣いや感じの使い方、韻の踏み方というのが目に付くようになります。普段耳で聞き流している言葉に、具体的な輪郭が生まれてくるわけです。

山鳥重氏は『「わかる」とはどういうことか』の中で、「わかるとは運動化出来ることです」と書かれています。

しっかりした心象が形成出来れば(表象出来れば)、それはそのまま運動に変換出来るということです。人間の心はそういう仕掛けになっているのです。

書き写すという作業は、この心象作りの土台になるのではないかと思います。

『心臓外科医の覚悟』という本で紹介されている、「手術ノート」もその好例でしょう。著者の山本晋氏が先輩の医師の手術を観察し、付けていたノートです。

何度も何度も同じことをノートに清書していれば、嫌でも先生の手の動きが頭の中にくっきりと刻まれてしまう。

私自身、何かの効能を求めて、歌詞の書き写しをしていたわけではありません。単純にそれをするのが楽しいからであり、たぶんその行為をすることで、その歌詞を「自分のもの」にしたかったという欲求があったのでしょう。

リキュール

歌詞ノートを綴じてあるバインダーをペラペラと捲っていたら、別のノートも出てきました。

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リキュールノートです。

主要なリキュールと、それで作れる代表的なカクテルレシピが書いてあります。これを書いていた頃は、バーテンダーにあこがれていたのです。

あなたがバーに行って、何かカクテルを注文したときに、「え〜っと、ちょっと待ってくださいね」と言いながら、iPadでそのレシピを検索し、「このリキュールはどれかな・・・」と瓶を一つ一つ探し回るバーテンに遭遇したら、ちょっと嫌ですよね。

バーテンというのは主要なレシピを頭にたたき込み、お酒についての知識や雑学を蓄えておく必要があります。というわけで、このころはカクテルの本を読みながら、せっせとこうしてレシピをまとめていました。

さいごに

コピペ時代で、「書き写す」なんて作業は非効率・非生産的にしか見えないかもしれません。私自身は、上のような経験からそういった感覚はまったくありません。こういう所には手間を惜しまないのです。
※他はだいたいずぼらですが。

それはなぜかというと、単純に楽しいから。もう、それに尽きます。

また、書き写したものを残しておく、ということにも意味はありそうです。

通り過ぎ、埋没し、風化し、消去されかかっている過去の出来事でも、何かしらのトリガーがあれば、こうして想起することができます。

自分の過去には一切興味がないし、過去を振り返っている暇なんてない、という方ならば別ですが、時々こういう見返しで自分の歩みを振り返ってみるというのも楽しいものです。結局の所、今の自分というのは過去の自分からの地続きの存在でしかないのですから。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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