ジョブチェンジの心境 オッズとチップ あるいはささやかなエール

いつものようにとりとめもなく書き出してみよう。

頭のスタート地点にぽつんと置いてあったのは、上記のタイトルだけである。この文章がどこに行き着くのかはまったくわからない。

振り返ってみると、6月30日に発売された新刊で拙著ももう6冊目である。Amazonによると一冊目の発売日が2010年の8月。するともう一ヶ月ほどで二年の年月が流れることになる。

二年で6冊。多いのか少ないのかはわからない。こういうのは他人と比較してもあまり意味がないだろう。ただ、まだまだ書きたいことは山のようにある。たぶん、読んで・考えて・書いて・読んで・考えて・書いてのループを回していく間は、書きたいことがつきることはないだろう。

仕事を変えた二年前には、「ジョブ・チェンジなう」というエントリーを書いた。去年は「「ジョブ・チェンジなう」から一年を迎えて」だ。繰り返される日常に浸かっていると、何も変わらないように感じてしまうが、足跡を振り返れば確かに変化していることが見て取れる。是非とも皆さんも何かしらのログを取っておくことをオススメする。

話が逸れた。

二年前や一年前と比べても、ほとんど手探りで仕事を進めている状況には大差ない。が、自分自身の仕事が「物書き」である、という意識はますます強くなってきている。「ビジネス書作家」ではなく「物書き」だ。その違いはなんだろうか。

もちろん、その答えはわからない。わからないからこそ、この仕事を続けているのだ。むろん、他の人から「ビジネス書作家」と呼ばれるのはかまわない。ただ、自分自身の認知の中で「ビジネス書作家」と呼ばれている人とは違った「仕事」をやりたいとは常々考えている。

今までそこに存在しておらず、いまだにカテゴライズされていないこと。そういうことをやりたいと思っている。何かしらの型にはまって安心する、というのが私が一番距離を置いていることだ。ようはへそ曲がりで、天の邪鬼なのだ。非常に扱いづらい。

立花岳志さんの『ノマドワーカーという生き方』に次のような文章が出てくる。著者が長年勤めてきた会社に別れを告げる決意を固めたときのお話だ。

実はこの段階では、僕には「独立後はこうやって日々の生活費を稼いでいこう」という明確な方法を見つけられてはいませんでした。「独立したい」「自分の力で生きていきたい」という気持ちは非常に強くなって、押さえることができなくなってきていたわけですが、具体的な方策についてはノープランでした。

ノープラン。実に素晴らしい響きだ。そんなことを言えば、私が仕事を変えた時だってまったくノープランだった。というか、現状ですらノープランである。

私の中には、楽天家でリスクを取るのが大好きな自分と、冷静で数字を細かくチェックする自分がいる。いや、もっとたくさんいるのだが、今回対象になるのはこの二人だけなのでその他のご紹介は割愛する。

仕事を変える決断をしたときは、当然のように楽天家でリスクを取るのが大好きな自分が全面に出張ってきた。まあ、日常の大半はそいつが表に出ているわけだが。

しかしたまに、冷静で数字を細かくチェックして右手の人差し指でメガネのブリッジを押し上げる自分が、これまでの判断と足跡を振り返って「やれやれ、無茶しますね」などとため息混じりにつぶやいたりもする。

心の一部分では愚かしいことをしているという自覚があるのだ。何の実績も才能も資金も持ち得ない自分が、「物書き」としてやっていく。オッズは一体何倍だろう。考えれば考えるほど虚しくなってくる。

そうやってテンション下がり気味の冷静くんの肩をバンっとたたきながら、「まぁまぁ、面白いからいいじゃん」とチップを場に出すのだ。彼の目は実際のところ「面白くなければ、意味なんか無い」と沈黙のうちに語っている。だって、チップがあるんだから、賭けなきゃゲームは始まらないよ、と。

『仕事は楽しいかね?』という本がある。このBlogでも何度も紹介している本だ。その本には、下の言葉が出てくる。

”適切な時”とか”完璧な機会”なんてものはない

一か八かの掛けをしないなら、チャンスなど一つもない

もちろんこれは、「準備」しなくていい、という意味ではない。それに、最大限のリスクをとれ、と述べているわけでもない。

人生というのは予測できないものだ。一体誰が「あなたの人生」を経験したことがあるだろうか。誰もいない。「人生」に対するアドバイスをすることはできても「あなたの人生」に対する適切なアドバイスをすることができる人はない。だから、いつだって予想外のことが起きるし、起こりえる。

この予測不能な人生の中で「完璧な準備」を整えることはできない。それは永遠に終わらない作業だ。予測不可能性が人生に付随する要素である以上、これから起きる出来事に完璧に対応することなどできない。だから、何かにチャレンジすることに対するリスクを100%消すこともできない。

あとは、それを受け入れるか、それとも想像の楽園に存在する「リスクのない人生」を追い求めるかだ。

それを受け入れると、現実はとたんにグラグラしてくる。でも、決して歩けないほどではない。一歩一歩慎重に足を踏み出せば__カイジが高層ビルにかかる鉄筋を渡るように__なんとか進んでいける。風が吹けば、必至にバランスを取ればいい。カイジの世界と違って、休憩する場所も手助けしてくれる人もいる。もしかしたら、こちらのほうが楽園ではないかという気すらしてくる。でも、それは違う。ここはあくまで現実だ。

話が混乱の色合いを帯びてきたので一時撤退しよう。非常に残念ながら、この手の話はきっとまたこのブログで語られることだろう。

最後に一つだけ言葉を置いておく。

<価値とは、「見出される」ものだ>

だから、自分に価値がないことについて(あるいはその自覚について)そんなに心配する必要はない。できるだけ、見出されやすい状態にしておくのがポイントになるだろう。

たぶん、それだけが次の世代に今の私が送れるエールである。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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