ドラッカーの教え:「時間からスタートする」

ドラッカーの『プロフェッショナルの条件』は、セルフマネジメントの知見の宝庫です。

プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))
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たとえば、「時間管理」について。ドラッカーは次のように書いています。

私の観察によれば、成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする。

「時間からスタートする」とは、どういうことでしょうか。進行計画表を作るということでしょうか。

ドラッカーはこう続けます。

計画からもスタートしない。何に時間がとられているかを明らかにするところからスタートする。

まず、自分がどんなことに時間を使っているのかを具体化するところから始めるわけです。戦いを始める前に敵情視察をするようなものでしょうか。あるいは、家計を改善するために毎日の出費を確認するというのにも似ているかもしれません。

時間&行動ログ。

まずはここから始めるわけです。

その後、

「自分の時間を奪おうとする非生産的な要求を退ける」
「その結果得られた時間を大きくまとめる」

という二つの段階を踏みます。

すなわち、時間を記録し、管理し、まとめるという三つの段階が、成果をあげるための時間管理の基本となる。

考え方自体は、とてもシンプルですね。しかし、なかなかこの発想にはたどり着けません。多くの場合「仕事」からスタートしてしまうのです。

なぜ時間に注目するのか?

一日の「時間」は、私たちが平等に与えられているものです。朝起きれば、新品の一日があなたの目の前にあり、次の日も同じことが繰り返されます。

しかし、これは逆から考えると「誰しもが24時間しか持てない」という風にも捉えられます。CEOの肩書きを得たからといって、一日が32時間になったりはしません。でも、仕事や責任の量が増えるとすれば、何かしらの対処が必要なことは自明でしょう。

映画「TIME」では、寿命が通貨の代わりになっていましたが__痛烈な資本主義への皮肉ですね__、現実世界では時間の貸し借りや譲渡はできません。どこからか輸入してくることも不可能です。その人の一日は、あくまでその人の一日でしかありません。

「時間こそ真に普遍的な制約条件である」とドラッカーは書いていますが、私たちの行動が常に「時間」を必要とすることを考えれば、この指摘には頷かざるを得ないでしょう。

ただ、私たちが脳内で計画を立てているとき、その実体はあまりよく見えていません。時間は掘り当てた温泉のようにどこからともなく湧いてくるような感じがしてしまうのです。なぜならば、時間は見えないから。

あこがれを抱いている異性の心の中のように、見えないものはいくらでも妄想が機能します。その妄想が計画になり、現実の前に姿を現すと、「時間不足」という実体が登場します。しかし、それは単に妄想でしかなかったのですから、そうなるのは必然とも言えます。

だから、記録を付け、スポットライトを浴びせるように時間の姿を明らかにするのです。

仕事からスタートすると?

仕事からスタートすることの問題点はなんでしょうか?

簡潔に言えば、「箱に入りきらない」ということです。

まず、「やるべきこと」が山のようにあります。
そして、「やっといて」と割り振られる仕事も後を絶ちません。
また、「やったほうがいいかも」ということも泡のように湧き出てきます。
あげく、「やるべきではないけど」といいながら娯楽を貪る時間も必要です。

これら全てを、サイズ拡張できない「時間ボックス」に詰め込むことはできません。一ヶ月の給料で、自分が欲しいもの全てを買うことはできません。当たり前です。でも、なぜか時間ならこれができそうな気がするのです。時間の方がレアエレメンタルなはずなのに。

一番目に付くのが「やったほうがいいかも」でしょう。

世の中には「やったほうがいいかも」なことはいっぱいあります。英語は話せないよりも話せた方がいいでしょう。たぶん、中国語も、ロシア語も、イタリア語も、全部そうです。だからといって、その全てを一気に学ぶことはできません。最新のニュースや話題について知ることも同じ。

こうしたものが、どんどん時間を食い散らかしていきます。

ただ、「やったほうがいいかも」なことは、裏を返せば「やらなくても問題ない」ということです。この視点に立てば、多くの「やったほうがいいかも」なことは駆逐できます。そこには、罪悪感も勇気も必要ありません。

一番難しいのが、「やるべきこと」の選択です。

・プロジェクトA
・プロジェクトB
・プロジェクトC
・プロジェクトD
・プロジェクトE

どれも、魅力的で価値のある企画だとしましょう。どこに出しても恥ずかしくない企画です。新しい価値や利益を生むことが予想出来ます。できれば、この全てを進めたい。そう思います。

でも、時間が足りません。そう、やる気があっても、時間が足りないのです。

人は損失回避性がありますし、サンクコストの呪縛というものも襲いかかってきます。だから、少しでも価値あるものを捨てるのは辛いです。

しかし、勇気を振り絞って決断しなければなりません。「やるべきこと」と感じられることでも、長期的な自分の視点に立って、泣きながらでもデリートキーを押さなければなりません。その際には、「自分は何を優先するのか」という基準を持っておいたほうがよいでしょう。斬られた馬謖すら納得する基準があれば、後悔は少なくなるはずです。

さいごに

まず、時間が「欠乏した資源」だと理解することです。

その手助けとして、時間の記録をつけることは大変有用です。その記録を眺めていれば、「時間がない」ということが、一体何を意味しているのかが見えてきます。

たいていは、「必要のないことをやりすぎている」か「時間以上にやるべきことを詰めすぎている」のどちらかです。でも、これはこうして言葉だけで伝えても、たぶん実感できないでしょう。

簡単なものでいいので、二週間ばかり作業記録を付けてみるとよいと思います。それが最初の一歩になるでしょう。

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