退路を断つときは・・・

不安やストレスは大きすぎるとやっかいです。

しかし、まったくゼロというのも問題がありそうです。

体がそういった反応をまったく示さなくなれば、危機的状況への対応力が失われることは容易に推測できます。

池谷裕二さんの『脳は何かと言い訳する』にストレスに関する面白い実験が紹介されていました。

その実験では、治験者に体内のストレスホルモン量を増加させる薬を点滴します。そういうヒドイ薬があるのです(ペンタガストリンと言うようです)。

面白いのはここからです。あらかじめ「これからストレスを感じるようになる」ということと「手元のボタンの押せば、点滴が止まること」を治験者に伝えておくと、点滴を受けてもそれほどストレスホルモンが増えないらしいのです。

このことから、「予測」と「回避」にポイントがあることを著者は指摘しています。

ストレスがこれからやってくるだろうけども、自分はそれを解消する手段がある、と思っている人は、同じ状況でもストレスを抑えることができる、ということでしょう。

つまり、重要なことは、ストレスを解消するかどうかではなく、解消する方法を持っていると思っているかどうかです。

もしかしたら、「根性論」とか「精神論」とか言って鼻で笑う人が出てくるかもしれませんが、脳がそうなっているのだから仕方ありません。

とりあえず、ストレス解消の手段を自分の内側にストックしておくことが__実際にそれを使う・使わないは別として__ストレスへの対抗手段になる、ということです。

これがまず一点。

もう一つは、「逃げ道を持っておく」ことの安心感です。

退路を断つ効果はよく指摘されます。逃げられないんだったら、この唯一の選択肢に全力を傾ける、という心理的効果が発揮されるのでしょう。しかし、これはややもすれば人を心理的に追い詰める状況をも生み出します。

もし、どこかの会社に勤めていて、そこを辞めてしまったら他に仕事なんてまったくない。自分の人生はお先真っ暗になってしまう。なんて考えていたらどれほど辛い環境でもそこで働かざる得なく感じてしまうでしょう。さらに「回避できない」という思いが、その辛さを倍加させてしまいます。

その時、「まあ、辞めてもなんとかなるよ、俺」と心の底から思っている自信家ならば、同じ環境に置かれていても心理的なプレッシャーはそれほど強く感じないのかもしれません。これはあくまで推測ですが、ありそうなことでもあります。

逆境に負けず、退路を断ち、困難に立ち向かう人の姿はカッコイイものです。ドキュメンタリーにもなったりします。でも、それは他の誰かから強制されるものではないでしょう。特に社会制度が行ったりすれば、かなり悲惨なことになりそうです。

逃げ道を持っておくのは全然カッコ悪いことではありません。リスクマネジメントと言い直せばかなりカッコよくなります。そういう選択肢の多様性が、今後の「生き方」の話として語られていくといいなと思います。

教訓:退路を断つときは、自分自身の決断で。


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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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