棒を買う

15歳だかの誕生日の朝に起こされて、王様に挨拶に行ったら、魔王を倒せと命じられて雀の涙ほどの軍資金を渡される。なぜ自分が?という疑問も、「そなたは勇者なんだから」という無茶苦茶な理由で押し切られる。でも、不思議と「そうか、自分は勇者なんだから、仕方がない」という気もしてくる。人生なんて基本的に受動的なものでしかない。そこから何を選び取るのかが人の意志なのだ。

最終的に成し遂げなければならないのは魔王の討伐である。実際は世界に平和をもたらすことが最終的な目的であり、魔王の討伐はそのための目標でしかないのだが、どう考えても「すいません立ち退き料払うんで、帰ってもらっていいですか」という説得に応じてくれそうもないので、選択肢としては魔王をやっつけるしかないだろう。

だとすれば、魔王を打倒するだけの力と装備が必要だ。キラキラと輝き、全力の一撃を受け止めてくれる伝説の剣。おそらくその剣を持ってしか、魔王の討伐は達成できない。

勇者(と呼ばれた青年)は、「最終的な理想」をありありとイメージする。そんなことが本に書いてあったからだ。すべての物事は二度作られる。そこに向かって進んでいこうと、強く決意する。モチベーションは重要だ。

しかし、しかしである。

旅立ちの街にいる勇者が、まっさきにとるべき行動は、「棒を買うこと」なのだ。伝説の剣とは比べようもない≪ひのきの棒≫を5G支払って買うことなのだ。唖然とする格差ではないか。みっともなく、かっこ悪いではないか。でも、どうしようもない。それしか選択肢がないのだ。

もちろん、少し違った選択もあるかもしれない。素手で倒せるだけの敵と戦い続け、必死にお金を貯めてもいい。なんなら街の中で商売の真似事をすることだってできる。それで、高価な剣が買えるだけの貯金をしてもいいだろう。すごく時間がかかるだろうけれども。

しかし、仮に剣を手にしたところで、ろくな敵と戦っていない勇者(と呼ばれた青年)にはそれが扱えないだろう。筋力もおぼつかないはずだ。

そうした問題も、サプリメントとジムでの筋トレで補ったとする。気の長い話だし、たぶんその間に世界は滅びてしまっているだろうが、なぜだか魔王が酔狂な性格をしていて、勇者が来るまで暢気に待ってくれていたとしよう。どうせ彼らは長い寿命を持っているので、そうして待つのも遊びの一種みたいなものだ。

だとしても、だ。

そこまで勇者(と呼ばれた青年)に有利な環境が整っていたとしても、彼が伝説の剣を手にすることはない。その剣は、強敵がうろうろと徘徊するダンジョンの奥深くに眠っているからだ。その剣は、自ら冒険したものしか手にすることができない。街の中には売っていないし、ヤフオクで入手することもできない。

そして、その剣こそが魔王を打倒する剣なのだ。

雀の涙の軍資金でひのきの棒を買い、それで倒せるだけの敵を倒してレベルアップと軍資金集めを進める。そうして徐々に高価な武器を手にしながら、戦闘経験を積んでいく。もしかしたら仲間も集まるかもしれない。そうやって世界を旅し、見たこともない風景を転々としながら、どこか誰も知らないダンジョンの奥底で、宝箱と遭遇する。その宝箱にはもしかしたら≪ギフト≫と銘打たれているかもしれない。でも、それは関係ないのだ。その人が求め、歩き続けてきたからこそ手にできたものなのだ。

伝説の剣を求めているのにも関わらず、棒を買う。
伝説の剣を求めているがゆえに、棒を買う。

たぶん、一番難しいのはその選択なのだろう。ゲームだと簡単なのだが。

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「目標」の研究
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共通する因子

ふむ。何か、何か共通する因子があるずだぞ(ぶつぶつ)。

あそこまで似たような失敗が起きているのを偶然と片付けるわけにはいかない。何かしら体系だった説明ができるはずだ(ぶつぶつ)。

となれば、発言をすべてデータベースに入れて、構造解析だな(ぶつぶつ)

4時間後、

ディスプレイに二つのメッセージが表示された。

他人のことなんて気にするな。自分のやりたいことをやればいい

顧客のことなんて気にするな。企業の稼ぎたいことをやればいい

あっ、

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12/19 〜 12/24 今週のまとめ

今週のまとめエントリーです。

  1. 物書きの戦略図(企画ドリブンからメディアドリブン)
  2. EvernoteのノートをUlyssesにインポートする
  3. 『「目標」の研究』への最終マップ(たくさんの付箋バージョン)
  4. ルーチンとローテーション
  5. プロジェクトの階層がずれる
  6. Rashita’s Christmas Story 8

さて、いよいよ年末でございます。今年も無事Rashita’s Christmas Storyが書けました。10個溜まったら、これも本にしたいところですね。

今日の一言

今日の一言はこちらでつぶやいております。

12月19日

会話のキャッチボールをするということは、相手がどう理解するかを自分ではコントロールしきれない(=誤解されることもある)を引き受けることでもあります。

12月20日

どれだけ完璧に備えていても、それを越えるような自体が起こりうることだけは想像できます。

12月21日

自分がやられて嫌なこと、指摘されて辛いことを、相手にするものです。それを逆から眺めれば自己分析できますね。

12月22日

物語とは、つまりはそういうことです。それが生きるということでもあります。

12月23日

右に行ったり左に行ったりするだけではありません。時として戻ったりもします。計画というのは、そういうものをできるだけまっすぐ進めるように意図することです。

12月24日

何者かになるということは、可能性を捨てるということとイコールです。それが自分の気に入るものであろうとなかろうと。

今週のその他エントリー

Honkure

WRM 2016/12/19 第323号
『人類再生戦線』(A・G・リドル)
『目を閉じて、みえるもの』(るう)
『アクセル・ワールド21』(川原 礫)
『予言者 梅棹忠夫』(東谷 暁)
『月なき夜の幸せなこと』(赤井五郎)

Project:かーそる

創刊号脱稿後の座談会その8
創刊号脱稿後の座談会その9
創刊号脱稿後の座談会その10
創刊号脱稿後の座談会その11

今週触った本

予言者 梅棹忠夫 (文春新書)
東谷 暁
文藝春秋 ( 2016-12-20 )
ISBN: 9784166611065

転位宇宙 (アトランティス・ジーン3)
A・G リドル
早川書房 ( 2016-10-21 )
ISBN: 9784150120962

手帳の選び方・使い方 (エイムック 3566)
趣味の文具箱編集部
エイ出版社 ( 2016-12-20 )
ISBN: 9784777943593

明日のメルマガ告知

毎週月曜日に配信しているメルマガ。来週号の目次はこんな感じです。

○BizArts 3rd 「第四章 第三節 ログ作成時の注意点」
○でんでんコンバーターで電子書籍を作る vol.2
○エッセンシャルEvernote vol.12 「いつか使うかも情報の保存」
○物書きエッセイ 「情報カードで本が書けるのか」
○今年の読書の振り返り
○アイデア・パターン 002 「イノセントに迫る」

頂いた感想など:

Weekly R-style Magazineは、毎週月曜日の朝7時に配信されているメルマガです。

Weeky R-style Magazine
Weekly R-style Magazine ~プロトタイプ・シンキング~(まぐまぐ)

ブログに書けないテーマ、長期的な連載、日々考えていることなどをお送りしています。

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Rashita’s Christmas Story 8

 視界の端の時刻表示が23:59から00:00に切り替わる。セカンダリースペースに置いておいた動画サイトから、サービス名を高らかと宣言するPR音声が溢れてくるが、今は気にしている場合ではない。イベントの始まりだ。

 僕はずっと待機していたイベント入場画面の「開始」ボタンが、暗い背景色から、赤みがかったクリックを促すような明るい色に変わった瞬間にそれをプッシュする。すぐさまローディング画面が視界いっぱいに表示された。予想通りサーバーは混雑しているようだ。

 僕は一時的にオフスクリーンにして、体を伸ばす。疑似フルダイブ型のVRは、体の動きが画面操作に直結してしまうので、予想外の動作を避けるためにはオフスクリーンにするのが基本だ。せっかくいの一番に乗り込んだイベントを「戻る」でキャンセルしてしまっては元も子もない。なにせこのイベントは、その内容も得られる報酬も、事前にはいっさい告知されていない。「惨劇のクリスマス」という不吉なイベント名と、開始時間だけが開示されただけだ。

 今どきのゲーム運営ではずいぶんと珍しいスタイルで、プレイヤーたちは大いに戸惑った。だからこそ、ゲーム攻略情報を公開している僕にとってはまっさきに乗り込む価値があると言える。きっと、僕のような引きこもりゲーマーが画面の向こうで今か今かとローディングが終わるのを待っているだろう。さっさとイベントをクリアし、その内容と適切な攻略方法を真っ先に提示できたサイトは、著しいPVをゲットできるだろう。通常のイベントでもバカにはならないが、今回は内容が不明瞭なイベントなのでいっそう期待できる。

「ゲーム運営会社からのクリスマスプレゼントみたいなもんか」

 僕は自分の冗談につい笑ってしまう。引きこもりのゲーマーにも振る舞われるクリスマスプレゼント。サンタさんも忙しい。

 now loading……の表示が消え、Ready? の文字がでかでかと表示された。

 僕は右手の親指と人差し指で輪を作り、少しだけそれを前に伸ばす。承諾のサインが受諾され、イベントが開始された。

※ ※ ※

「なんだ、あっけねぇ〜な」
 きっと、イベントに参加したプレイヤーは皆同じことを感じただろう。「惨劇のクリスマス」は、ソロプレイ固定イベントで、必要レベルも15〜だった。チュートリアルを終了して数日でもプレイすればたどり着けるレベルだ。また、ソロプレイ固定イベントは基本的に厄介な敵は出てこない。麻痺や石化は、単独戦闘だとそのまま死に直結するし、魔法しか効かない敵キャラは、武闘僧では絶対に歯が立たない。だからどうしても、誰がやっても問題なくクリアできる難易度設定になってしまう。

 攻略組にせよ、情報組にせよ、レベル100以上はザラザラいるので、このイベントは楽勝以外の何ものでもなかった。具体的な内容は、暴走したスノーマンを討伐すること。一応三段階の難易度が設定されており、街を徘徊するスノーマン、森に潜むスノーマン、ダンジョンを彷徨うスノーマンと徐々にレベルは高くなっているが、それでもレベル100のプレイヤーが苦戦するほどでもない。ダンジョンの奥に強力なボス__ビッグ・スノーマン__がいるかと思いきや、そういったものも一切登場しなかった。

 そもそもスノーマン自体、動きが遅く、攻撃力もほとんどない。低いボイスで威圧をかけてくるが、小学生低学年くらいでないとビビることはないだろう。どこまでいっても余裕の戦闘だった。

 それでも、スノーマンは後から後から湧いてきた。街が雪に覆われているのだから、それも当然だろう。ポップの限界はどうやらなさそうだった。

 僕は一体、また一体とスノーマンを屠っていった。イベント専用のウィンドウには、スノーマン・カウンターなるものがあり、その数字が徐々にカウントアップされていく。どうやら、どのマップでスノーマンを狩っても、カウントは同じように進むらしい。どのスノーマンでも困るレベルではないし、一応経験値もそれなりにもらえるが、イチイチ帰るのも面倒なので、僕は初期配置の街でスノーマンを狩ることにした。同じように考えているプレイヤーも多いようで、街には見知った顔が余裕の表情でスノーマンを狩っていた。

 珍しくイベント中にチャットが飛んでくる。普段は、生き馬の目を抜く__スノーマンを倒すよりもはるかに難しそうだ__戦いをしているもの同士、イベント中には一切情報のやりとりを行わないのだが、今回は「ハズれ」イベントの匂いが濃厚で、僕以外のプレイヤーも毒牙を抜かれているのかもしれない。僕も、半ば無意識でスノーマンを狩りながら、チャットのウィンドウを開く。情報組の古参プレイヤーからだった。
「おい、これいつまでやるんだ」
「とりあえず、100体を目指そうと思っている。カウントが3桁までしかないから、いっても999までだろう」
「なるほどね」
 無限にスノーマンが湧いてくる上、「この弱点を突かないと負ける」といった要素も皆無なので、攻略情報などどこにもない。ソロプレイ固定ゆえに効率的なパーティーの組み方も模索しようがない。ただひたすらにスノーマンを狩るだけ。それだけだ。あきれるほど退屈だが、不思議と撤退しているプレイヤーはほとんどいないようだった。まだ報酬が明らかにされていないからなのか、そうではないのか。

 次第に僕もスノーマン狩りに夢中になっていった。目の間に出てくる敵をただ倒す。そんな単調な作業は久しく忘れていた気がする。95、96,97、98、100。あっという間にスノーマンカウンターは100に辿り着いた。鈴鳴りのジングルと共に、大きなウィンドウが開く。
≪Congratulation! You get a present!≫
 提示された報酬は、ミステリーキューブ1つ。
 ……
 ショボい。実にショボい。ガチャすら回せない。まあ、イベント自体が簡単なものだったから、当然と言えば当然だけど、待機してまでイベントに一番乗りした期待は、思いっきり空振りしてしまった。
 ふとウィンドウのスクロールに気がつく。追加の説明があるらしい。
「おめでとうございます。あなたにはミステリーキューブ1つが送られます。あるいは、ミステリーキューブ1つをもらう代わりに、他の誰か二人にミステリーキューブ1つをプレゼントすることもできます。プレゼントしますか?」
 一瞬何が書いてあるのか理解できなかった。落ちているミステリーキューブ1は、ドラゴンの根城の前でも拾っておけ、がこのゲームの鉄則である。なのに、それをもらわないなんて選択があるだろうか。
 もう一度文章を読む。ゆっくりと氷が溶けるように、意味を吟味していく。僕がミステリーキューブ1つを放棄すれば、他の誰か二人が1つもらえる。つまり、全体のミステリーキューブが1つ増える、ということだ。
 僕は想像してちょっとゾッとしてしまった。貨幣でこんなことをやれば、一気にインフレになってしまうだろう。しかし、このゲームではシステム内でミステリーキューブが完結していて、直接トレードも金銭トレードも不可能になっている。完全に運営会社の管理下に置かれているのだ。だから、システム内でミステリーキューブがどれだけ増えても、新しいガチャなりなんなりを投下すれば問題は何も起きない。それにしても大胆な内容である。誰も反応しなければ、ただのショボいイベントで終わってしまうのだから。

 僕は考えた。普通に考えれば自分でキープしておくのが良いだろう。僕が誰かにミステリーキューブを送っても、誰かから僕にキューブが送られてくるとは限らない。どうやらプレゼント相手はランダムに選ばれるようなので、どれだけ有名プレイヤーと友達であっても意味は無い。でも逆に、ある程度のキューブがプレゼントされるならば、一定の確率で僕に返ってくることになる。というか、全員がプレゼントを選択すれば、確率上は期待値は2倍になるはずなのだ。
 しかし、100人中99人がプレゼントを選択し、ひとりだけが自分のポケットに入れてしまえば、そいつだけが少し得をすることになる。そして、誰もがそのひとりになろうとすれば、結局期待値は変わらない。
 どうやら運営会社は、ゲームのイベントを使って、別のゲームを僕たちにやらせたいらしい。

 周りを見渡すと、他のプレイヤーも虚空を見つめて止まっている。ウィンドウのメッセージを「読み取って」いるのだろう。僕はふと我に返り、思わず笑ってしまった。そもそもミステリーキューブ1つなんてそれほど価値のあるものではない。入手が困難だから貴重ではあるが、かといって少なくとも5つ集めないとノーマルガチャすら回せないのだ。でも、僕たちはついつい真剣にこのイベントの攻略方法を考えてしまっている。それがゲームというものなのだろう。

 僕が≪誰か二人にプレゼントする≫を選択すると、スノーマンカウンターはゼロに戻った。それを確認した後で、先ほど声を掛けてきたプレイヤーに僕の意図を開示する。すぐさま彼は同意してくれた。なんと言っても彼もゲーマーなのだ。いったんイベントからログアウトし、情報を待ち望んでいるあまたのプレイヤーに向けて僕はシンプルな記事を書いた。きっと彼も別のテイストで記事を書いてくれているところだろう。
「今すぐイベントに参加して、みんなにプレゼントを配ろう」
 タイトルをそうつけた記事のPVなど気にすることもなく、僕は即座にイベントに戻り、そのまま夜が明けるまでスノーマンを狩り続けた。時間が経つにつれ、プレイヤーは増え続け、スノーマンは惨劇に見舞われた。
 僕たちにはミステリーキューブが見舞われた。

 メリークリスマス!

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プロジェクトの階層がずれる

プロジェクトを管理しようとすると、戸惑うことがあります。階層が揃わないのです。


たとえば、何か単発のプロジェクトがあったとしましょう。≪〜〜さんのKDP出版を手伝う≫のようなプロジェクトです。この場合、そのプロジェクトの項目を作れば、それでOKでしょう。

では、≪「目標の研究」を出版する≫というプロジェクトはどうでしょうか。もちろん、このプロジェクトについても項目を作ればよいでしょう。

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ただし、若干の引っかかりはあります。このプロジェクトは、もう少し長いスパンの≪「月刊くらした」計画二年目≫というプロジェクトの下位に位置するのです。

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話はそれだけに留まりません。そもそも≪「月刊くらした」計画二年目≫というプロジェクトは、≪「月刊くらした」計画≫というより大きなプロジェクトの下位に位置するのです。

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「プロジェクトの全体像を把握したい」

と希求するなら、この構図もまた捉えておかなければなりません。しかしそれをどのように表現すればよいでしょうか。

ベースラインはどこか?

≪「月刊くらした」計画≫を、プロジェクトに設定すれば、その下位はすべてサブプロジェクト(あるいはサブ・サブプロジェクト)になります。

また、≪「目標の研究」を出版する≫をプロジェクトに設定すれば、≪「月刊くらした」計画二年目≫や≪「月刊くらした」計画≫は行き場を失います。あるいは、プロジェクトではなくなってしまいます。しかし、これらもまたその性質から言えばプロジェクトなのです。

Todoistであれば、プロジェクトに階層構造を持たせられるので、たとえば次のような感じになるでしょう。

screenshot

1つのシステムでうまくプロジェクトと、サブ(×n)プロジェクトがまとめられています。しかし、私の実感はこうではないのです。私の実感では、≪〜〜さんのKDP出版を手伝う≫と≪「目標の研究」を出版する≫は同じ階層であり、≪「目標の研究」を出版する≫に関してだけ、その上に階層があるのです。

だから、上記のように構造を表現してしまうと、どうしても違和感が消えません。

何かの位置が揃っているというのは、結構重要な要素なのです。

さいごに

理念あるいはイデアベースで思考すると、階層構造はトップダウンで上から下へと展開していきます。見た目が立派な構造はそれで作れるでしょう。

しかし、実際あるいはアクチュアルベースで思考すると、階層構造は「実際の行動」をスタートラインにして、下から上に展開していきます。

個人的には、後者のようなプロジェクト管理のスタンスを行いたいものです。幸いEvernoteのノートリンクによる管理は、多少近いことができます。ありがたいことです。

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ルーチンとローテーション

さあ、本を書こう、と決意する
面白い本にしようと企画案を練る
モチベーションは高まる、高まる
そうして船をこぎ出す
プロジェクトのスタートだ

船旅はルーチンだ
原稿を書く、原稿を書く、原稿を書く
同じことの繰り返し
そのあいだ、達成感は訪れない
これでいいのだろうか、と悶々と過ごす日々

それが、大きな構造物に取りかかるということ
フィードバックの足音は聞こえてこない
やる気の谷は闇よりも深い

だからこそ、2トラック・プロジェクト管理なのだ
少しでも進捗感を得るために
わずかでも達成感を得るために
谷間で彷徨い続けないための導きの明かりが必要だ

プロジェクトが複数のタスクを持ち
複数の実行日を有するのなら
必然的にそれはルーチン化の道のりを辿る
手を離したらリンゴが地面に落ちてしまうくらい自明なこと

プロジェクトを始める前にはそのことに気がつかない
「計画の誤謬」がそこにはある
それはまあ、しかたがない
はじめからうまくやれる人間はどこにもない
さいごまでいないのかもしれない

情熱には波がある
情熱だよりは波にのまれる
淡々と、が必要だ
淡々と、で進んでいく

淡々とを受け入れること
そこに道はある
そこにしか道はない
まっすぐに歩いて行ける道は

でも、どうしても気になるのならば
繰り返す毎日嫌気が指すのならば
ルーチンを回転させてしまえばいい

月曜日はこれをする
火曜日はあれをする
水曜日はそれをする

そして一週間が巡る

月曜日はこれをする
火曜日はあれをする
水曜日はそれをする

そして一週間が巡る

ローテーションだ
ルーチンをローテーションさせる

無駄なあがきかもしれない
儚い抵抗かもしれない
でも、少しは抗えるだろう
退屈な毎日という幻想に

情熱は中毒を生む
正義と同じだ
その中で、淡々とした日常の価値は棄損され続ける
快ばかりがもてはやされ、それ以外は淘汰される
不快なものを駆逐しようとして、快と不快の間にあるものまで消してしまう
達成感を得るのに時間のかかるものまで

すべては時間との付き合い方である
あらゆることがそうなのだ

だからこそ、情熱に身を焼かれる決意をしてもいい
それもまた時間との付き合い方である
誰にもとめる術はない
誰にも貶める権利はない

ただ、水を沸騰させ、それを冷ましてまた沸騰させるを繰り返すのはどうだろうか
その間にも水はどんどん蒸発していく
グラスの中にあるウィスキーのように

毎日は基本的に繰り返しだ
すべては「日常化」されてしまう
神々しい目標も、毒々しい異物も
やがては日常に取り込まれる
それが日常が持つ力でもある
私たちの精神を安定させる力なのだ

日常に嫌気が差しているならば、逃れる場所はどこにもない
すべては日常化し、すべては陳腐化し、すべては当たり前になっていく
そういう作用が働いている

しかし我々は新奇性を好む
新奇性を求める
だったらどうするのか

新しいニュースを1秒単位で求めるのもいいだろう
幸い世界はそれを満たすように成長しつつある

あるいは、自らの目で新しいものを発見するのもいい
ほとんど同じ毎日だって差異はある
電車で見かける顔、空の風景、猫のご機嫌
ちょっとした、それでいてあまたの違いが世界を満たしている

世界はルーチンであり、世界はルーチンではない
だからこそ、「私」というものが存在できる

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『「目標」の研究』への最終マップ(たくさんの付箋バージョン)

執筆プロジェクトをクローズしていたら、作成した企画案マップが出てきたので、ちらっとご紹介しておきます。

img_7143

この手のものは執筆前〜執筆中に何枚も書いたのですが、これが最後のバージョンです。

多用な付箋構成

img_7144

中央には吹き出し型の付箋を配置。そこにタイトルを書き込みます。この段階では「夢と目標の研究」となっていますね。発売日の前日まではこの仮題で進んでおりました(表紙を作るときに変更しました)。

img_7145

その周囲には、通常の横長付箋をそのまま貼り付けたものと、円形にカットしたものを使って大きなキーワード(キーフレーズ)を書き込んでいます。やはり円形にすると目を惹きますね。

img_7146

また、ロールタイプの付箋をちまちまとハサミで切り出し、本に含まれるトピックを並べ、内容的に近いものを近い場所に配置してあります。

たくさんの付箋がありますが、すべてを使ったわけではなく、原稿を整える段階でまるっと排除したものも少なくありません(当初は、『ファスト&スロー』の話をもっと紹介する予定でしたが、ばっさり切りました)。

img_7147

最後に、文章的な塊を持つメモを、ノートパッドタイプの付箋に書き込み、適切なサイズに切断して貼り付けました。

このようにして、企画案を紙の上&頭の中で整理し、実際の原稿の整理に進んでいったわけです。

多用な文章構成

単純に数えても、4種類の付箋を使っています。別に趣味でやっているわけではありません。それが必要だから、わざわざ付箋を使い分けているのです。

以前、「Recursive Writing Method : 再帰的執筆技法概論」という記事で紹介しましたが、テキストを「構成」する要素はじつは結構たくさんあるのです。

思いつき・走り書き・短い文章・パラグラフ・プロット・論旨・アイロニー・テーマ・筋書き・概念・原理・表題・etc……

企画案を考えるときには、これらの要素がごそっと頭の中に浮かんできます。そして、それを整理していかなければいけません。それなのに、付箋が一種類でよいでしょうか。そんなはずはありません。

付箋は、規格化された優秀なインターフェースを持っていますが、だからこそ一種類の付箋でテキストを構成する多用な要素を管理するのは苦手なのです。

もちろん、付箋には色のバリエーションが存在しています。しかし、色の違いは同一レイヤーの異なるプロパティーを示せるだけで、レイヤーの違いまでは難しいのです。

たとえば、考えてみてください。上記のマップを、同一の形の単なる色が違うだけの付箋で作成したとしたら。ここまでビジュアル的に力を持つものになったでしょうか。「見ただけ」で情報の差異が把握できる状態になったでしょうか。やはり難しかったでしょう。

だから、そう。脳の使い方に合わせて付箋を使い分けたのです。

さいごに

つまり何が言いたいかというと、知的生産における付箋の使い方はもっと探求の余地があります。さらに言うと、「付箋」というツールにもまだまだ発展の余地はあるように感じます。

「知的生産のための付箋」

いいですね、こういう商品が発売されたら即座にまとめ買いしそうな気がします。どこかのメーカーの方がんばってください。期待してます。

▼これでできた本:

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EvernoteのノートをUlyssesにインポートする

先日2.7にアップデートしたUlyssesで、Evernoteからのインポート機能が実装されました。

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ボタン一発でインポート、というほど簡単ではなく、少し手間は必要ですが、憶えておくと何かしら役立つかもしれません。簡単に紹介しておきます。

大まかな流れは以下の通り。

  • Evernoteからノートをエクスポートする
  • エクスポートしたノートをUlyssesに取り込む

これだけです。

Evernoteからノートをエクスポート

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エクスポートしたいノートを選択し、「ファイル」メニューから、「ノートをエクスポート」を選択(※)。
※コンテキストメニューにもあります。

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エクスポートの形式は2種類(enex,html)ありますが、enex形式を選択してOKボタン。

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ノートのエクスポートが完了しました。

Ulyssesにインポート

そうして書き出したノートを、そのままUlyssesにドラッグ&ドロップ。

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それだけでインポートが完了します。

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ご覧のように、ちゃんとノートのタイトルが#で装飾されていますね。この辺は若干賢いです。

複数のノートで

もし、複数のノートを移動させたい場合は、Evernoteで複数のノートを選択してからノートをエクスポートしてください。

作成されるノート・ファイルは1つですが、それをUlyssesに取り込めば、きちんと複数のノートが作成されます。

screenshot

さいごに

これで、Evernoteにメモを蓄積→Ulyssesで肉付け・構造化、という流れが(ある程度は)簡単に行えますね。

ちなみに、画像込みのノートをインポートしようとすると、Ulyssesが落ちます。理由はちょっとわかりませんが、とりあえず今のところはテキストの取り込み用と考えておけば無難でしょう。

[2016年12月23日追記]

ver2.31で、画像が添付されたノートも問題なくインポートできるようになりました。

screenshot

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物書きの戦略図(企画ドリブンからメディアドリブン)

先日、新刊の『「目標」の研究』が無事発売されました。

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これにより「月刊くらした」計画の二年目も無事終了したので、じゃあ、次はどうするのか、と新しい行動指針を考えるタイミングがやってきます。ああ、ここでもやはり「目標」が登場していますね。

こういうときに私が良くやるのは、「自分が書きたいこと」を可視化するというもので、一時期はリスト形式で並べていましたし、マインドマップを使うこともありました。ただ、どれもちょっと違うな〜、という印象があったのです。そんなときに出会ったのがDropTask

screenshot

ビジュアル系タスク管理ツールで、どうやらチームによるタスク管理に適した機能があるらしいのですが、そんな話はまるっと無視して、企画案を平面的に並べるのにぴったりではないかと思い立ちました。

企画案の一覧

実際やってみたところ、以下のような感じに。

screenshot

うむうむ。可視化できると、いかにもコントロールできているぞ、って気がするものですね。でも、ふと思いました。これだけでは次の一歩が決まらないぞ、と。

たしかにこのマップを見れば、自分の書きたいものが一覧できます。ジャンルごとにカテゴライズすらされています。でも、これらをどのように進めていくのかについての感触は得られません。単に積み荷の一覧表があるだけです。配送先もその手順もまったく不明なのです。だったら、ガントチャートかとも思ったのですが、そこはもうひとアイデア欲しいところ。

そこでうんうんと頭をひねって出てきたのが、「戦略図」(展開図)でした。軍事作戦を考えるときに、将校らが地図を広げて、その上に小隊に見立てた駒を置きながら、喧々囂々と議論を進めるあれです。

戦略は静的なものではなく動的なものなはずなので、それを自分のコンテンツクリエーションに応用できないだろうか。そんなことを思い立ちました。

コンテンツの展開図

そこで、いろいろ考えたあげくに辿り着いたのがこれです。

img_7136

まず、自分が今持っている「連載先」をノートに記しました。これが「地形」にあたります。そして、先ほどDropTaskで書き起こした一つひとつの企画案を付箋に書き出していきます。このときインデックスタイプの小さい付箋を使うと、いかにも「戦略図」っぽい雰囲気が出るのでオススメです。

本当は五色くらいあればよかったのですが、手持ちの付箋が三色しかなかったので、「現在連載している企画」「企画案の骨子だけある企画」「すでに終了した連載」の三パターンに分け、それぞれの連載先の上に貼り込んでいきました。その上で、「ここではこれとこれを書くだろう。となると、これはここに配置した方がいいか」といったことを考えていきます。

これまでは、上記のような思索を頭の中だけで行っていました。そして、これがまったく進みません。人間の認知能力の限界をはるかに超えているのでしょう。それを地形化し、部隊化することで、容易に進められるようになったわけです。
※おそらく、私が戦略シミュレーションゲーム慣れしている点も影響しているでしょう。他の人には他の人に合った展開図はありそうです。

「企画案」だけをどれだけ並べたとしても、「じゃあ、それらをどこに書くんですか?」という話が解決しないことには、なかなか実行には移せません。「書く場所」に関する決定も必要なのです。

さいごに

一点だけ補足しておくと、このやり方で大切なのは、DropTask→戦略図、という流れです。

どうせ戦略図で展開するんだから、最初から戦略図だけでやっておけばいいと思えますが、そうすると頭の動きがすでにある連載先の状況に縛られてしまいます。「あれを書いてるから、これを書こう」「こういうメディアがあるから、それに向けて書こう」という発想です。そうした思考は日々のルーチンを回していくのには適していますが、大きな流れを考える上では発想の過剰な制約として働きかねません。

大局を見据えれば、これまでのメディアの特徴を大きく変えたり、あるいは新しいメディアの創出にまで思考の射程を伸ばす必要があるでしょう。その意味で、先に戦略図ではなく、「自分が書きたいこと」を棚卸ししておくことは有用だと思います。つまり、まず企画ドリブンで発想を広げ、次にそれをいかに進行するのかについてはメディアドリブンで考える。この思考の区分けが有効なのではないか、ということです。

とは言え、「物書きの戦略図」とたいそうな名前になっておりますが、別にこの「戦略」通りにすべてがうまく進むことはまずありえませんし、想定外の話もたくさん起きるでしょう。ただ、海上を地図もコンパスもなしで漂っているような不安感はいくぶん減退できます。それはそれで大切なことです。

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12/12 〜 12/17 今週のまとめ

今週のまとめエントリーです。

  1. 現代の知的生産と未来の知的生産
  2. 電子書籍の新刊『「目標」の研究』が発売となりました
  3. 『「目標」の研究』について補足
  4. 【企画】2016年の<びっくら本>を募集します #mybooks2016
  5. 一年の読書履歴を振り返る
  6. 2016年の<びっくら本> #mybooks2016

というわけで、今週は『「目標」の研究』が発売となりました。全国各地から(おおげさ)「面白かった」との声を頂いております。ぜひこの年末年始にでもお読み頂ければ、と。

「目標」の研究
「目標」の研究

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今日の一言

今日の一言はこちらでつぶやいております。

12月12日

胴回りとかを広げてもあんまり意味がないですよね。まず裾野を広げる。そこからです。

12月14日

すべては神が知っていて、私たちはその御心にさえ従っていればいい、と考えたらたぶん科学はここまで発展しなかったでしょう。誰かが「余計なこと」を考え始めてしまったわけです。

12月15日

「直接会ったら、必ずわかり合える」みたいなのは妄想ですよね。

12月16日

だからこそ、互いにその余地を探っていく努力が大切です。

12月17日

むしろ、人は真実とは無関係なパターンを見出す生物です。だから、あとはいかにそれを適切なものに落とし込むかの視点が重要となります。

今週のその他エントリー

Honkure

WRM 2016/12/12 第322号
『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー)
『スタンフォードの自分を変える教室』(ケリー・マクゴニガル)
『プロフェッショナルの条件』(P・F・ドラッカー)
『ギャルソン 2』(ホリエ リュウ)

Project:かーそる

創刊号脱稿後の座談会その3
創刊号脱稿後の座談会その4
創刊号脱稿後の座談会その5
創刊号脱稿後の座談会その6
創刊号脱稿後の座談会その7

今週触った本

SF雑誌オルタナ vol.2 [Locked]edited by Yoshie Yamada
茶屋休石, 進常椀富, 波野發作, 伊藤なむあひ, 淡波亮作, 米田淳一, 山田佳江
電子出版アシストセンター ( 2016-12-15 )

明日のメルマガ告知

毎週月曜日に配信しているメルマガ。来週号の目次はこんな感じです。

○BizArts 3rd 「第四章 第二節 ログの意義と効能」
○でんでんコンバーターで電子書籍を作る vol.1
○タイトル未定エッセイ 「フィルターバブルとアルゴリズム文学の限界」
○物書きエッセイ 「一度パーツに分解して」
○今週の一冊 「感情化する社会」
○アイデアパターン001 第三の道

頂いた感想など:

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ブログに書けないテーマ、長期的な連載、日々考えていることなどをお送りしています。

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