Posts tagged: 「タスク」の研究

ルーチンのノロイ

前回:「やることを減らす」というやること


繰り返し。
繰り返しの力。

習慣化。
認知エネルギーの省力化。
素晴らしい。

毎週発行のメルマガ。
5つのコンテンツ。
月〜金で毎日一つ。

月はBizArts。
火はSS。
水は週替わり。
木はエッセイ。
金は今週の一冊。

毎週、毎週繰り返す。
学校の授業のように。
今日何をするのかをいちいち判断しない。
月曜日はこれを書く、と自然に決まる。

それならば。
それであるならば。
どこまでも繰り返していける。
いつまでも繰り返していける。

轍の上を進むのは楽なのだ。

でも。
困ることもある。

たとえば、200回目だとする。
たとえば、新年特別号だとする。
何か変わったことがやってみたい。
そんなことを思いついたとしても。

月曜日にはBizArtsを書いている。
火曜日にはSSを書いている。
水曜日には週替わりを書いている。
木曜日にはエッセイを書いている。
金曜日には今週の一冊を書いている。

気がつけば、メルマガは完成している。
そんなことがよくあった。

意識することなく取り組んで、
意識することなく完了する。

それが轍の力。
それがルーチンの呪い。

ルーチンが悪いわけではない。
むしろ、それはたしかな力を有している。
できれば、積極的に利用していきたい。

しかし、それ以外の視点もたまには持っておきたい。

部屋の空気を入れ換えるように。
クラスで席替えするように。

ルーチン以外のことも、取り組めるように。

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プロジェクトを1つ1つ1つ終わらせていく

前回:目標に水を差す


前々回、着手するプロジェクトを3つに限定する、と書きました。

ではなぜ3つなのでしょうか。1つでもなく、5つでもなく、3つです。

もちろん、意味はあります。

リピート化するプロジェクト

一口にプロジェクトと言っても、その粒度はまちまちです。一週間で終わるものもあれば、数ヶ月かかるものもあります。

そして、一度着手したプロジェクトは__決定的な破綻が訪れなければ__終了するまで続けることになります。つまり、リピートされるのです。今週もやり、来週もやり、その次の週もやり。完了するまで、それが繰り返されるのです。タスクリストにはほとんど似たような項目がのり続けるのです。

長期的な目標を立てるときの私たちは、この事実をよく見逃します。「一年間毎日ブログを更新するぞ!」と高らかに決意することは、毎日毎日タスクリストに「ブログを更新する」と書き加えることとイコールです。そこで生じるであろう倦怠感に、高い意欲に燃えているときの自分は気がついていません。

逆に、そのイコールが体感的に分かっているならば、その人は時間が見えていると言って差し支えないでしょう。

話を戻します。

本の執筆を進めるならば、それこそ数ヶ月は「〜〜の執筆」というプロジェクトに関わることになります。悪ければ、一週間以上同じ章にかかりっきりなんてこともあります。その間、ず〜〜〜と同じ風景(同じタスクリスト)を目にすることになるのです。これは、精神衛生的にあまりよろしくありません(もちろん、個人差はあるでしょう)。

だから、三つ選ぶのです。

リスクの分散

プロジェクトが3つあれば、1つくらい進まないものがあっても、他の何かは進んでくれます。そこで、充実感や達成感が得られるのです。

理想的には三ヶ月以上かかるプロジェクトと、二週間くらいで終了するプロジェクトが両方含まれていることです。それくらいであれば、腰を据えながらも、充実感を得て進捗していけます。

もちろん、時と場合によっては、そうはうまくいかないこともあります。結果、長期プロジェクトばかりでどうしようもない、という状況もありえます。しかし、完璧なノウハウなどこの世に存在しないのだから、それは仕方がないでしょう。ようは、全体的に見てそこそこうまく稼働しているかどうかが重要です。

プロジェクトが1つだけならば、それが行き詰まったときのリスクがあります。逆に5つや10選んでしまうと、使える時間が非常に限定されてしまいます。3つくらいが、ちょうど良いのです。それが、私がこれまで仕事をしてきた経験から得た教訓です。

着手しない勇気

3つのプロジェクトを選ぶということは、4つめのプロジェクトはやらない選択をする、ということです。

これがかなり重要であり、難しいことでもあります。

今私は、とある電子雑誌に投稿するための原稿を書いています。2000字程度の原稿ならだいたい一日で完成するのですが、今回は規模が大きく、おそらく一週間はかかるだろうと見込んで、それを一つのプロジェクトとして扱うことにしました。4つめのプロジェクトの登場です。

もちろん、4つめは存在できないので、そのプロジェクトに着手している間は、雑誌「かーそる」のno.2の原稿作業を着手プロジェクトから外す決定をしました。

理想的に言えば、両方を共に進めるのがよろしいでしょう。「進めるべきプロジェクト」をいったん「着手せず」に戻すのは、心躍る作業ではありません。人間の損失回避性に訴えかけてくるような痛みすらあります。でも、そうするしかないのです。

時間が見えない人間は、両方を同時に進められるような気がします。「プロジェクトを1つくらい追加してもなんとかやっていけるだろう」と甘い見積もりを立ててしまうのです。

それは、家に帰ったら置き場所に悩むのにも関わらず、書店では気楽に本を買ってしまうというのに似ています。書店にいるときは、圧迫されている本棚が「見えない」のです。だから、そこに本来潜むはずのトレードオフが感じられません。

ある種の「仕事術」は、理想を膨らませてくれます。能力は無限大で、時間もいくらでも湧いてくるような気にさせてくれます。時間を見たくない人にとっては最高のデザートでしょう。とは言え、目を逸らしたところで時間はそこにありますし、私たちは時間からスタートするしかありません。

「あることをやれば、別のことができなくなる」

なんの変哲もないただの事実です。でも、それが見えないのです。それを見たくないのです。それが、人間というものなのです。

プロジェクトを3つだけ選ぶ、という指針は、その忘れたい事実を否応なしに突きつけてくれます。むしろ、それが見えなくても、時間からスタートさせてくれます。

さいごに

もちろん、その雑誌原稿が書き終われば、「着手せず」にしておいたプロジェクトを、再び「着手」に戻すことになるでしょう。あるいは、そのタイミングで何か別のプロジェクトが発生しているかもしれませんし、次はそれに取りかかることになるかもしれません。ともかく、永遠に同じことをしているわけではないのです。どこかで終わりがやってきます。そして、次のプロジェクトが始まるのです。

一つのプロジェクトが終わるたびに、次のプロジェクトを選択する。そして、一つ、一つ、また一つとプロジェクトを亀のように進めていく。ただしマルチスレッドの亀なので、速度はそんなに遅くありません。これが唯一希望を抱けるポイントでしょうか。

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着手を限定する3プロジェクト・マネジメント その2

前回:その1


着手するプロジェクトは3つだけに限定する、というお話を前回は書きました。

すると、「プロジェクト3つだけなんて、つまらなくない? 成果はあがるの?」という疑問があがってくるかもしれません。もっともな疑問です。なにせ、世の中はすごい勢いで進んでいます。なのに「3つだけ」はあまりにも頼りなく感じられます。

で、結論から言っておくと、「大丈夫、問題ない」となるわけですが、少しずつ確認していきましょう。

「やった方がよいこと」圧

私はフリーランスです。で、フリーランスにとって「やらなければならない仕事」は山のようにあります。実際の作業から雑用までなんでもござれです。さらにたちの悪いことに、「やっておいた方がよい仕事」も星々のようにあります。

たとえば読者さん一人ひとりに感謝のメールを送ってみたり、名前を知っている出版社すべてに企画案を送信してみるのも、「それなりに」有用でしょう。書籍を出版したら、全国行脚をすることだって、やらないよりはやった方が売上げに貢献するはずです。

で、この「やらないよりはやった方がよい」ことは、ものすごくたくさん存在していながらも、一種のトリックを含んでいます。それぞれの主張はたしかに真なのです。やらないよりはやった方が良い。しかし、それをやることによって、別のことをやる時間が損なわれるデメリットが隠蔽されています。つまり、時間からスタートしていないのです。

ぱっと考えると、「行動をたくさん増やした方が成果があがる」と思いがちですが、成果にそれほど貢献しない行動を増やしても、もちろん成果にはつながりません。この点は考慮すべきです。

で、3つしかプロジェクトを選べないのならば、これはもうどうしたって、「やらないよりはやった方がよい」程度のことは切り捨てられます。心理的な動きをあえて記述すれば、「やった方がいいのかもしれないが、プロジェクトは3つしか選べないので、実行できない」となるわけです。

「やらないよりはやった方がよい」ことも、まったくやらないわけではありませんが、時間の使い方の中心には位置しません。中心はあくまで3つのプロジェクトです。言い換えれば、分散しがちな資源(リソース)を一点__実際は三点ですが__に集める効果があります。散漫に何かをやるよりは、はるかにこの方が効果的でしょう。

もちろん、これは職種によって変わってきます。いろいろなところに注意を振り分けた方が能率が良い仕事もあるでしょうから、これは私の、つまり物書きとしての選択だということを補足として書いておきます。

つまる?つまらない?

また、つまらないかどうかですが、これはまったくもってつまらなくありません。私にはプロジェクトに3つのステージを用意しています。

第一ステージが「いつかやる」ステージ。あるいは「できたらいいな」ステージ。ここにはプロジェクトと見なせる大量のものが放り込まれています。

第二ステージが、「プロジェクト」ステージ。第一ステージの中から、そろそろこれにとりかかろうかと決めたものがここに移動されます。一般的なタスク管理で、プロジェクトと呼ばれるものがここに相当します。数はだいたい3〜10程度。それ以上に大きくなることはまずありませんし、そうなったらレビューして整理が必要です。

第三ステージが、「着手しているプロジェクト」ステージ。第二ステージの中から、実際に行動することを選んだプロジェクトです。これまで書いてきたとおり、ここが「3つのプロジェクト」の場所です。

流れを確認します。

何かを思いついたとしましょう。プロジェクトと呼べるような何かです。そうしたものはまずinboxに入り、その後振り分けられます。緊急性のないものであれば、「いつかやる」ステージへと移動。重要性があるものは、「プロジェクト」ステージへ移動。そして、一週間の予定を立てるときに、そのプロジェクトステージから、「今週はこれとこれとこれをやろう」と決めます。つまり、「3つのプロジェクト」の選択です。このような段取りになっています。

私は実行時には3つのプロジェクトにしか触りませんが、実際は自分の興味があること、関心があることはすべてEvernoteにストックしています。閲覧しようと思えば、いつでも閲覧できるのです。しかし、一週間の計画を立てるときには、大量の「いつかやること」を目にする必要はありませんし、一日のタスクを実行する際には、できもしない「プロジェクト」に思いを馳せる必要はないのです。

三つのステージにプロジェクトを分けることは、それぞれの状況(自分の全体を確認したい、一週間の予定を立てたい、今日のタスクに集中したい)に合わせて、目に入れる情報を変える、ということです。着実に実行しつつも、大局を見失わないことです。ボトムビューを確保しながらも、トップビューを参照できるようにすることです。

車を運転しているときに、世界地図は必要ないのです。

さいごに

以上のようなことを書くと、きちきちっと目標を立て、正確にそれをこなしているかのように思われるかもしれませんが、実際のところ、達成率は100%にはほど遠く、せいぜい(甘い自己評価でも)80%くらいでしょう。日によっては、割り込んできた作業ばかりやって、3つのプロジェクトにはぜんぜん触れないこともあります。

でも、それが一体なんだというのでしょうか。

目標は、達成されるべきものではありません。あくまで目印です。こうやって3つのプロジェクトを決めて、それに邁進するように意図しておけば、そうでなかったときよりもはるかにリソースを集中させることができます。それは100%意図した形ではないにせよ、意図がなければ到底たどり着けない量であることは、これまでの自分の行動ログからも明らかです。

“Progress is better than Perfect.”

これが目標について非常に重要な指針です。

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着手を限定する3プロジェクト・マネジメント その1

かつてドラッカーは言いました。時間からスタートせよ、と。

仕事に関する助言というと、計画から始めなさいというものが多い。まことにもっともらしい。問題はそれではうまくいかないことにある。計画は紙の上に残り、やるつもりで終わる。成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする。

『「目標」の研究』で書いたように、計画は常に楽観的に立てられます。実効性よりは、「こうあって欲しい」という理想が強く投射されたものとなります。それは短期的に士気をあげる役には立つかもしれませんが、実際に歩みを進めていく上でのサポートにはなりません。無能な将軍が戦力差も弁えず、突撃命令を繰り返すのと同じです。

必要なのは、地形を見極め、兵力や兵糧を数えることです。また、地形は変えられませんが、兵力や兵糧はマネジメント可能です。つまり、勝負の鍵を握るのは資源(リソース)マネジメントなのです。

で、個人のセルフマネジメントにおけるリソースといえば、時間・能力・意志力の3つです。この管理こそが鍵であり、計画や目標はその土台の上に乗っかるものでしかありません。計画や目標を立てれば、それだけでそれが現実化するなんて思うのは、さすがに甘すぎる見通しでしょう。

そこで回を分けて、いくつかのお話をしてみます。何かしら上記に関わるお話です。

3プロジェクト・マネジメント

私は、一日に進めるプロジェクトを3つまでと限定しています。

たとえば、書籍の執筆、電子書籍の作成、雑誌の編集をやったら、それ以上はやらない。閉店ガラガラ。次の日も、書籍の執筆、電子書籍のリライト、雑誌の表紙作りをやったら、それ以上はやらない。閉店ガラガラ。これを繰り返して、毎日を進めています。

貪欲なタスク管理では、これらに必要な作業時間を「効率化」し、もっともっとたくさんのプロジェクトをこなすことを目指したりします。私は、そういう幻想をすべて捨てました。なぜか? そのやり方にはどこかで無理がやって来るからです。

10の作業を効率化して、8に圧縮し、新しく2を追加する。また10を圧縮して、2を追加。さらにまた2を追加……。

はたしてそんなことが可能でしょうか。どこかに「もうこれ以上効率化はできない」地点が存在するのではないでしょうか。あるいはそれは、「効率化を達成するためには質を落とさなければならない」地点かもしれません。どちらにせよ、破綻はあるわけです。

となると、「もっともっとたくさんのプロジェクトをこなそう」と思う気持ち、言い換えれば、欲望の火が消えない限りは、無理がやってくるわけです。イカロスの翼です。

だからプロジェクトは3つまでと決めました。そもそも、日常生活を維持していくためのルーチンをこなすだけで、大半の作業時間は失われていきます。たくさんあるようにみえる時間も、実際に作業に取りかかってみれば、思いの外少ないことに気づかされるのです。

この点からも、目標の弱点は見えてきます。着手する前は、手持ち時間は「たくさんある」ようにみえるのです。それは、戦闘を開始するまでは、兵士の数が多そうに見えるということです。そこで立てられる戦略の危うさは想像に難くありません。

さいごに

ともかく、手持ちの時間を考えれば、プロジェクト3つくらいがいいところなのです。多すぎもせず、少なすぎもせずというゴルディロックス・プロジェクト量なのです。

もちろん、これは人によって違いがあるでしょう。ある人は5プロジェクトかもしれませんし、別のある人は1プロジェクトがせいぜいかもしれません。でも、これはどうしようもないのです。手持ちのルーチンや、作業にかかる時間が違えば、リソースマネジメントも違ってきます。ある人が「一日にたったこれだけやるだけで、すごい成果が出ますよ」と言っていたとしても、別の人にとっては、それすらぜんぜん無理なことがあります。

ただし、その人なりの「たったこれだけ」を見つけ出すことはできるでしょう。もちろんそれは成果を確約するものではありませんが、世の中に存在する成果を確約するものの大半がダミーなので、そこは気にする必要はありません。

(次回につづく)

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