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『セルパブ戦略』のScrivenerのプロファイル

先日発売した以下の本ですが、

これまで通り、Scrivener+でんでんコンバーターの体制で作っております。

今回は、そのScrivenerの設定をご紹介。実際の中身と合わせてご覧いただくと、より一層理解が深まるかと思います(遠回しな宣伝)。

では、いきましょう。

Scrivener
カテゴリ: 仕事効率化, 教育

Binder

ファイルの構成は次のようになっています。

screenshot

「章」を担当するフォルダが上位で、その下に本文を担当するファイルがあり、さらにその下にコラムを担当するファイルがあります。本文とコラムを別の階層に割り当てることでコンパイル時の処理を変えるのが狙いです。

Separators

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「===」は、でんでんコンバーターにおける改ページ処理。

章の扉ページ、本文、コラムでそれぞれ改ページが発生するようになっています。

Formatting

章の扉ページ担当。
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本文担当(コラムあり)。
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本文担当(コラムなし)。
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コラム担当
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章のタイトルは、h2のタグを指定。本文、コラムはそれぞれh3の指定です。今回は、本文のコラムあり・なしで指定は変えていませんが、やろうと思えば変えられるのがScrivenerのすごいところです。

また、本文とコラムは同じh3ですが、それぞれ別のclassをあてています。フォントサイズやalignの処理を分けるためです。でも、同じH3なので、本における目次上は同じように扱われます。

直CSS

あまりスマートではありませんが、本文中にもCSSの記述があります。

screenshot

まずコラムは、全体をdivで括っています。で、cssでフォントサイズを小さくし、右寄せにした上で、左側にマージンを取るようにしました。本をお読み頂ければ、「これはコラムです!」とはっきりわかるようになっているかと思います。

いくつか実装のパターンを考えたんですが、これが一番手軽でした。でも、あまりスマートではありません。

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章の扉ページにあるエピグラフの処理。Scrivenerではフォルダにもテキストを埋め込むことができるので、それを使っています。フォンサイズを小さくし、著名・著者名に関しては右寄せのデザインを指定してあります。

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また、「おわりに」に含められている「おわりにのおわりに 謝辞にかえて」と「おわりのおまけ」は、改ページがない方が良いだろうと判断して、ページ分けの処理を行わず、こうして直に###(でんでんコンバーターにおけるh3)を書いています。

さいごに

以上が『セルパブ戦略』のプロファイルでした。

CSSファイルに関しては、でんでんコンバーターのデフォルトファイルに少し手を加えたものを使いました。上記で出てきたような、オリジナルのclassに関するスタイルを追加したものです。それ以外は、基本的に何もいじっていません。

というわけで、ご自分でScrivenerファイルを構成する場合の参考になれば幸いです。

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考えながら書く人のためのScrivener入門 小説・論文・レポート、長文を書きたい人へ
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「月くら」計画2周目に入りました

先日発売した以下の新刊ですが、

ブログを10年続けて、僕が考えたこと
ブログを10年続けて、僕が考えたこと 倉下忠憲

倉下忠憲 2015-05-28
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実は「月くら」計画の二周目第一弾です。「月くら」計画とは、一年間、毎月一冊の電子書籍を発売するというわりあい無茶な計画で、

一年間の「月くら」計画、無事達成しました

今年の3月でとりあえずの達成をとげられました。もちろん、それで終わるはずがありません。

二周目となる今年は、「二ヶ月に一冊、電子書籍の新刊を発売する」という目標を掲げております。つまり、5月、7月、9月、11月、1月、3月にそれぞれ一冊ずつ、合計6冊の本を発売するわけですね。

一周目の「月くら」計画では、ハイペースで出版したために、一冊の本作りにかけられる時間は実質一ヶ月もありませんでした。二周目となるこの計画では、もう少し余裕を持って編集・構成作業に取り組もうと企んでおります。より柄の大きい本作りにチャレンジするのです。

といっても、どんどんボリュームが増えるというわけではなく、単に時間をかけて本作りを行うということです。今回の新刊も、それぞれの章の扉ページにエピグラフを置くなど、本文以外のところでちょっと凝ったりしております。二周目となるこの計画では、そういうところもいろいろ「実験」していきたいな、と。

それはそれとして、いちいち「一周目の計画」とか「二周目の計画」とか呼ぶのは面倒なので、それぞれに名称が欲しいところですね。

………
……

というわけで、二周目となるこの計画は〈「月くら」Ζ計画〉と名付けることにしました。Z(ゼット)ではなく、Ζ(ゼータ)ですのでご注意ください。略して、Ζ計画と呼んでもらってもOKですよ。そうすると、次がΖΖで、その次がνで、と次々にネーミングが浮かんできますね。楽チンです。

では、では次は7月の新刊をお楽しみに。

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[Scrivener+でんでんコンバーター]で各章の扉ページに画像を配置する

絶賛好評発売中の『Fount of Word -α-』には、珍しく画像が多用されています。

Fount of Word -α-
Fount of Word -α- 倉下忠憲

倉下忠憲 2014-10-31
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各章の扉ページに、こういった画像が配置されているのです。

20141102120616
※本書は、ぜひ画面を縦にしてお読みください。

で、でんでんコンバーターにおいて画像の配置は以下のような記入を必要とします。

![代替テキスト](img.jpg)

こういう記入をしておくと、でんでんコンバーターが次のようなタグに変換してくれるわけです。

<img src=”img.jpg” alt=”代替テキスト” />

※代替テキストは省略することも可能です。

さて、『Fount of Word -α-』は全部で40の章があります。ということは、章の扉ページも40個あります。そのそれぞれに、上のタグを書いていく……。悪夢ですね。

でも、Scrivenerなら大丈夫!(テレビの通信販売風)

Formatting Hack

使うのはCompileのFormatting。

screenshot

この「Section Layout」を使うと、その文章のタイトル部分に細工ができます。先に結論を書いてしまうと、

![](word<$n>.png)

screenshot

という風に書きます。ポイントは<$n>の部分。

これは一種の変数で、一回呼び出されるたびに数が一つ増えます。n++なわけです。

つまり、上のように書いておくと、第一章の扉ページの部分では、

![](word1.png)

となり、第二章・第三章では、

![](word2.png)
![](word3.png)

となるわけです。もちろんこれが40個続いてきます。

これでいちいち画像タグを書いていく必要はなくなりました。あとは、この連番に合わせて画像ファイルを作成すればOKです。

階層ズラし

が、このまま普通にやってしまうと、「おわりに」とか「著者プロフィール」のページにもこの画像タグが挿入されることになります。それはちょっと嫌ですね。

というわけで、階層を分けます。本文にあたる文章はフォルダの中に格納し、「おわりに」などは第一階層に置いておきます。もちろん、逆でも構いません。ともかく階層をズラすのがポイントです。

そうすると、

screenshot

screenshot

というように、当てられるFormattingが変えられます。こうしてめでたく、本文の中だけに扉ページの画像タグを自動的に挿入することができました。

さいごに

もちろん画像ファイルを連番で作成する、という作業が若干面倒なわけですが、それはなんとかなるでしょう(大ざっぱ)。

ともかく、

  • Formattingでタイトルに細工
  • 変数を活用
  • 階層をズラす

という3つのテクニックを知っておくと、Scrivenerは界王拳3倍ぐらいすごくなりますのでぜひ覚えておいてください。

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KDPではじめる セルフパブリッシング
KDPではじめる セルフパブリッシング 倉下 忠憲

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Gingkoでプロフィールページを作ってみるテスト

シゴタノ!の方では何度か取り上げた「Gingko」。

新しいワードプロセッシング体験「Gingko」
Gingkoのテンプレート紹介と面白そうな使い方

あたらしいワードプロセッシング・ツールとしても興味深いものがありますが、あたらしい情報の見せ方としても可能性を秘めているかもしれません。

Gingkoでは、テキストだけでなく、画像などの表示も可能です。

そこで私は考えました。これって、プロフィールページに使えるのでは、と。

こんな感じ

さすがに百聞は一見にしかずです。画像をご覧ください。

※略歴
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※著作リスト
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※ブログ一覧
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※その他の活動
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※商業出版リスト
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※セルフパブリッシングリスト
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※寄稿リスト
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※ツイートの埋め込みからの〜〜〜
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※EPUBサンプルファイルの表示
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ついでに、動画も作成しておきました。

上記の画面だと、EPUBのサンプルファイルが表示されていますが、ページを公開して閲覧してみると、うまくいきません。私の指定が悪いのか、何かの不具合なのか、プレミアム版にせよ、ということなのかは不明です。

まあ、サンプルはテキストで普通に突っ込んでおけばよいので、そこはスルーでOKでしょう。うまくEPUBファイルを(Twitter経由で)埋め込めれば、さらに面白そうではあります。

さいごに

いちいちリンクでページを飛ぶ必要がありませんので、見る方は楽でしょう。スルスルとスクロールで進んでいけます。

こういうのは、これまであまりなかったのではないでしょうか。ただ背景エトセトラは誰が作っても同じになりますので、そこで個性を出すことは難しいかもしれません。そういう用途なら、Tumblrとかの方が手っ取り早いですね。

いまのところ「オススメ!」という感じにはほど遠いですが、こういうもあたらしい試みとして面白いのではないかと紹介してみました。

実際は、こんな感じになります。
※あくまで試運バージョンです。

https://gingkoapp.com/rashitaprofile

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【告知】一冊目の電子書籍の無料キャンペーンを実施しております!

本日は9月5日。私の妻の誕生日です。

というわけで、妻の誕生日記念に電子書籍の無料セールを行うことにしました。対象は以下のエッセイ集。メルマガのエッセイをまとめた短い本です。

赤魔導師の白魔法レベルぐらいまでは (WRM エッセイ集)
赤魔導師の白魔法レベルぐらいまでは (WRM エッセイ集) 倉下忠憲

倉下忠憲 2013-08-25

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まあ、この本の発売が2013年8月で、そろそろ一年経つな〜というのが理由の半分ぐらいなんですが。

無料期間は本日9月5日から、日曜日の9月7日まで。終了は何時になるのかわかりませんが(おそらく17時頃)、ご興味あれば早めにポチって頂けると良いかと思います。

そうそう、以下の新刊も好評発売中です。

真ん中の歩き方: R-style selection
真ん中の歩き方: R-style selection 倉下忠憲

R-style 2014-08-28
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こちらもよろしく。

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「世界設定」をクリエイティブ・コモンズで売る

クリエイティブ・コモンズについて調べていたら、ふと思いついたことがある。

それについて書く前に、まずクリエイティブ・コモンズについて書いておこう。

クリエイティブ・コモンズ

クリエイティブ・コモンズ(Creative Commons、以下「CC」)とは、著作物の適正な再利用の促進を目的として、著作者がみずからの著作物の再利用を許可するという意思表示を手軽に行えるようにするための さまざまなレベルのライセンスを策定し普及を図る国際的プロジェクト およびその運営主体である国際的非営利団体の名称である。

うむ。よくわからない。ウィキペディアにある動画をみると、少し理解が進む。

ようは、柔軟な著作権の運用法を提供しよう、ということらしい。

著作権には、「私が全ての権利を持っているので勝手に利用しちゃダメですよ」という”All rights reserved”と、「どうぞどうぞ、ご自由にご利用くださいませ」という”No rights reserved”の二つのタイプがあるのだが、その二つだけだと少々問題が残る。

著作権は保持しておきたいのだけれども、他の人も(ある程度は)自由に使ってくれていいですよ、という運用ができないのだ。インターネット時代では、「共有」は当たり前の感覚である。その感覚に、著作権が追いついていない状況がある。そこで、登場したのがクリエイティブ・コモンズというわけだ。

左端を”All rights reserved”、右端を”No rights reserved”として、その中間にあたるライセンスをクリエイティブ・コモンズは提供してくれている。

細かい話は上のウィキペディア及び、「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」あたりを参考にされたい。

ざっくりまとめておくと、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスには4つの項目(以下)があり、

表示(Attribution, BY) 作品を複製、頒布、展示、実演を行うにあたり、著作権者の表示を要求する。

非営利(Noncommercial, NC) 作品を複製、頒布、展示、実演を行うにあたり、非営利目的での利用に限定する。

改変禁止(No Derivative Works, ND) 作品を複製、頒布、展示、実演を行うにあたり、いかなる改変も禁止する。

継承 (Share Alike, SA) クリエイティブ・コモンズのライセンスが付与された作品を改変・変形・加工してできた作品についても、元になった作品のライセンスを継承させた上で頒布を認める。

それらを組み合わせた6つのライセンスが準備されている。

  • 表示(CC BY)
  • 表示-改変禁止(CC BY-ND)
  • 表示-継承(CC BY-SA)
  • 表示-非営利(CC BY-NC)
  • 表示-非営利-改変禁止(CC BY-NC-ND)
  • 表示-非営利-継承(CC BY-NC-SA)
  • ※CC……Creative Commons

たとえば、「表示(CC BY)」なら、著作権者の表示がなされていれば、基本的に何でもOKということになる。もし、このR-styleが「表示(CC BY)」であるなら、それを翻訳しようが、パクる……インスパイアされた作品を作ろうが、いちいち私の許諾を取る必要はない。R-styleが元ネタで私がその著作権者であることさえ明記されていればよい、ということだ。

6つのライセンスのうち、上に行くほど”No rights reserved”に近く、下に行くほど”All rights reserved”に近くなる。

もちろん、何が「適切なライセンス」なのかに一律の答えはない。それぞれの著作権者が、作品にどのような運用を望むのかによって、ライセンスを選んでいくことになる。

逆に言えば、著作権者は、単に作品を生み出しそれをパブリッシャーに投げて終わり、というのではなく、もう少し主体的な関わり合いを求められるということでもある。

ファンノベルという創作

本エントリーは、クリエイティブ・コモンズの解説が趣旨ではないので、この辺りで割愛しておこう。

そもそも私がクリエイティブ・コモンズに興味を持ったのは、以下の記事を読んだからである。

ファンノベル(SF小説「Gene Mapper(ジーン・マッパー)」公式サイト)

Gene Mapperは一次原稿のテキストデータをCreative Commons BYというライセンスで購入者へ配布している。KindleやKobo、iBook Storeで購入した方はEPUBなどと同列にお渡ししているので、気兼ねなく巻末のメールアドレスまでご連絡いただきたい。第一版の元になった原稿なので誤字や英語などの誤りも含まれているが、翻案のベースとしては充分に利用可能だと考えている。

先ほども登場した「CC BY」である。なぜ、「CC BY」を採用したのか、著者はこう述べている。

Gene MapperでCC-BYとした理由は、他のメディアでGene Mapperを用いることを容易にしたかったからだ。マンガの原作、戯曲のベース、読み上げソフトのサンプルとして著作が広がることを期待していたのだが、ファンノベルという形で始めて頂いたのは、大変に喜ばしい。忌川タツヤ(@imagawatatsuya)さん、ありがとうございます。

たしかに、「Gene Mapper」の世界観は独特の奥行きがあり、物語空間の余地はまだまだあるように思う。それを広げていくような試みが可能になっているわけだ。

だから、私がある日突然思い立ち、メルギアソリッド顔負けのアクションゲーム「Power Mapper」とかを勝手に作っても良いわけだ。で、上の記事では実際に書かれたファンノベルも紹介されている。

「Gene Mapper」のパロディ小説で「Gene Napper(ジーンナッパー)」とか書いてもOKらしい。(CC-BYを遵守するかぎりにおいて)(忌川タツヤのブログ)

この動きは大変面白いと思う。ただし上の記事は2012年のことであり、その後こうした動きがどこまで広がったのかは定かではない。でも、一つの芽ではあると思う。

TRPGについて

ここで思い出すのがTRPGである。テーブルトーク・ロールプレイングゲーム。

たとえば、こういう本がある。

ソード・ワールド2.0 ルールブックIII (富士見ドラゴン・ブック)
ソード・ワールド2.0  ルールブックIII (富士見ドラゴン・ブック) グループSNE 北沢 慶 輪 くすさが

KADOKAWA/富士見書房 2008-08-20
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ゲームのルールブックだ。悲しいぐらいシンプルな目次はこうなっている。

第1部 プレイヤーキャラクター
第2部 ルール
第3部 データ
第4部 ワールド
第5部 ゲームマスター

デジタルゲーム世代の人にはよくわからないかもしれないが、この本はある意味で「ゲーム」を売っている。

ゲームマスター(とプレイヤー)はこの本を読み、その「ゲーム」を理解して、プレイに臨む。シナリオを描くのはたいていゲームマスターだ。ゲームブックには世界設定や選択できる職業も記述されているので、描けるシナリオには一定の制約がある(もちろん、ゲームバランスを無視すればいくらでも拡張は可能であるが)。

そしてプレイヤーたちは、ゲームマスターが描いたシナリオを、この「ゲーム」のルールに沿ってプレイしていく。つまり、「ゲーム」を売るとは、ルールと世界設定を売る、ということでもある。

世界の上に作品が生まれる

TRPGでは、ゲームマスターもプレイヤーもそれなりのクリエイティビティを要求される。そして、それが楽しいわけなのだ。

だったら、それを一歩先に進めてみるのもおもしろいかもしれない。つまり、作品を生み出すための「世界設定を記述した本」を作り、それを売るのだ。もちろん、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスで。

世界設定オンリーでは寂しすぎるので、短編を一つぐらい加えてもよいかもしれない。もちろん、無しでもよいだろう。

たくさんのクリエーターさんに話を聞いていると、「世界設定を作り込むのが大好き」な人と「そうでもない」人がいることに気がつく。それはそれで特性なのだから別に構わないのだが、世界設定を作り込みすぎて、実際の作品に取りかかれないという人すらいる。それを本末転倒と笑わずに、いっそそのものを作品化すればよいのではないだろうか。そういうことを考えたわけだ。

別段、全ての作品が作家の内部世界を表現する必要はないだろう。エンターテイメントでは特にそうだ。それに世界設定を借り受けても、オリジナリティーのあるものは生み出せる。

クトゥルフ神話」の体系なんて、複数の作家による産物と言えるだろうし、ある意味では「艦これ」の二次創作も、共通の「世界設定」の上に記述された(そして、バラエティー溢れる)作品群とも言える。

作家と作品の世界観が、一対一で対応している必要はない。
※もちろん、対応していてもよい。

言うなれば、アプリ開発における「フレームワーク」のようなものがあってもよいのではないだろうか。その「物語のフレームワーク」をクリエイティブ・コモンズ・ライセンスで販売すれば、面白いことが起きるかもしれない。

さいごに

と、書いておきながら無責任極まりないのだが、私自身がこういうことをやろうとはあまり考えていない。なぜならば、私は「そうでもない」人の方だからだ。これはもうどうしようもない。

でも、架空の世界地図描いたり、魔法の名前考えたり、近未来の電子機器を考案したりするのが好きな人は、それを突き詰めてみることで、これまでとは違ったクリエイティブが生まれるかもしれない。

いや、これはもっと卑近な話で、私がそういうものを欲しいな〜と思っているだけかもしれない。みなさんはどうだろうか。

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Gene Mapper -core- (ジーン・マッパー コア)
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二冊目の電子書籍の製作手順(3) 〜でんでんコンバーターを使う〜

前回まで:
二冊目の電子書籍の製作手順(1) 〜EPUBファイル作りの大きな流れ〜
二冊目の電子書籍の製作手順(2) 〜Scrivener→「でんでんコンバーター」のちょっとしたコツ〜

epubnised.003

前回は、Scrivenerからでんでんコンバーターへのつなぎを紹介しました。

そうして作成したテキストファイルを、でんでんコンバーターにアップロードしてみましょう。

EPUBファイルを作成

でんでんコンバーター

screenshot

1)ファイルを選択する

まずアップロードするファイルを選択します。基本的にはテキストファイル(.txt)を選べばよいのですが、実は他にもアップロードできるファイルがあります。対応しているファイルは以下の4種類。

  1. テキスト(.txt)
  2. 画像(.png、.jpeg、.gif)
  3. CSSファイル(.css)
  4. およびでんでんコンバーターの設定ファイル (ddconv.yml)

ふつうに使う分には最初の3つを理解しておけばよいでしょう。あるいは、上位2つだけでもよいかもしれません。つまり、

  • 原稿データ (~~.txt)
  • 表紙画像(cover.jpg)

この2つです。

原稿データのファイル名は何でもよいのですが、半角英語にしておくのが賢明です。仮に日本語名をつけているなら、とりあえずこのときだけファイル名を変更しておきましょう。

表紙画像は3つの拡張子(.png、.jpeg、.gif)のどれかを選んで、coverとします。

とりあえず、この2つを準備すればOKです。私もこの2つだけをアップロードしました。

2)メタ情報

本のタイトルと、作成者を入力します。

作成者は、一応任意の入力(入力しても、しなくてもOK)になっていますが、出版物を作るのですからできる限り入力しておきましょう。ペンネームやら団体名でもOKです。

3)ページ送り方向

縦書きか横書きかを選んでください。

私は横書きでしたので、「左から右」を選びました。

4)ページ自動生成

チェックできる項目が二つあります。

  • 扉ページ
  • 目次ページ

ここにチェックを付けると、自動的にこれらページを作成してくれます。

扉ページとは、以下のようなページです。本の冒頭に配置されます。

20140604092658

目次ページは、目次のページです。実は、手作りのEPUB作成において、一番面倒なのがこの目次なのです。というわけで、扉ページはともかく目次ページはチェックを入れておきましょう。

5)その他

公式の「ヒント」をお読みください。ここでは割愛します。

EPUBの中身を覗く

これらを設定したあと、「変換」ボタンをポチッと押せば、しばらくのちにEPUBファイルがダウンロードできます。

一応このファイルがあればKDPに登録可能なのですが、電書ちゃん、もとい「でんでんコンバーター」にもっと肉薄するために、その中身を覗いてみましょう。

まずダウンロードしたEPUBファイルの拡張子を.epubから.zipに変更します。つまり

538a92e2377d2.epub → 538a92e2377d2.zip

のようにするわけです。おそらく「ねえねえ、本当にzipにしてもいいの?」とOSから尋ねられるでしょうが気にせずGOサインを出してください。

そうしてzipにしたファイルを解凍します。かなりの確率で、Macでは直接解凍できませんので、Stuffit Expanderなどを使ってみてください。

解凍してみると、このようなファイル構成が見えるはずです。

screenshot

1)本文ファイル(.xhtml) → 本のページを構成するファイル
2)content.opf →「これはこんな本です」を説明したファイル
3)cover.jpg → 表紙画像
4)cover.xhtml → 表紙ページ(表紙画像が載せられるページ)
5)nav.xhtml → 目次ページ
6)style.css,template.css → スタイルシート
7)toc.ncx → 目次情報

作成時「扉ページ」にチェックを入れると、ここに「titilepage.xhtml」というファイルが追加されます。ちなみに、「目次ページ」にチェックを入れなくても、nav.xhtmlは作成されますが(※)、本のページとしては使われません。
※論理目次の構成に必要なためでしょう。詳しいことは割愛。

こうして解凍しておくと、本文ファイルをいじるなどしてEPUBファイル作成後に原稿に手を入れることも可能になるのですが、xhtmlファイルを追加したりなんかしちゃうと、話がややこしくなります。それについては回を改めましょう。

ちなみに、原稿ファイルと同時にスタイルシート(.css)をアップロードすると、style.cssの内容がデフォルトのものからアップロードしたファイルの内容に書き換えられます。その場合でも、template.cssの内容は変わりません。
※template.cssはcover.xhtmlやtitilepage.xhtmlにあてられています。

さいごに

今回はでんでんコンバーターによるEPUBファイルの作成と、その中身について紹介しました。

次回はこうして解凍した中身を、自分でカスタマイズする話に突入します。若干マニアックになってきましたね。

次:二冊目の電子書籍の製作手順(4) 〜zipとEPUBの行き来の注意点〜

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カドカワ70%セールについての雑感

Kindle版がむちゃ安い。

そんな噂を聞きつけて、Amazonにアクセスしてみると、たしかにカドカワの本がいくつも70%OFFになっています。コミックなんかは200円を切る価格。

なんだかんだで、『Fate/Zero』とか『僕だけがいない街』とか揃えちゃいました。前評判なしで読んだ『僕だけがいない街』でしたが、結構ビビっときましたね。うん。面白い。他にも『日常』とか『新世紀エヴァンゲリオン』とか『機動戦士ガンダムUC』とかのコミックも今のところ安くなっています。

ネットをみていても、結構買っている人が多いみたいで、売り上げベースだとすごいことになっているんじゃないでしょうか。Kindle本のランキングなんてほぼカドカワが席巻しています。セール効果的にみれば、大成功と言えるでしょう。

今回は、この超絶70%オフセールをみて、考えたことなんかを。

電子書籍導入者が増えたかも

まず、「ちょっと買ってみるか」と思い、実際に買った人がすごく増えたのではないか、ということ。

電子書的との対峙では、いろいろな状態がありうると思うのですが、

  • すでにKindle版をばりばり購入している人
  • Amazonのアカウントは持っているけど、電子書籍は買っていない人
  • スマホやタブレットを持っているけど、これで読めるとは知らない人
  • 「普通の電子機器には興味がありません」な人

さすがに一番下にアクセスするのは無理でも、二つ目、三つ目ぐらいにはアクセスしたのではないでしょうか。

もし、これを契機にAmazonでアカウントを作ってみたり、あるいは初めての一冊にチャレンジした人が増えたとしたら、電子書籍業界全体にとってプラスと言えるでしょう。なにしろ、そこのハードルが高いのです。

iTunesとかもそうですが、一度こういうプラットフォームで買う経験をしてしまうと、どんどんそれがナチュラルな体験になって、あとは泥沼のように……という話は横においておくとして、ハードルを超えた人が結構増えただろうな、という印象があります。

やはりそれは有力なコンテンツを持っているカドカワさんが、結構な全力投球でセールを打った、という点がポイントになるでしょう。コンテンツの数が少なかったり、値引率が低かったりすれば、ここまでのインパクトは無かったかと思います。

コンテンツにお金を支払うという態度

という話になると、「紙の本の売り上げが・・・」という展開に流れていきそうな気もします。

しかし、電子書籍云々をまるっと抜いても、きっと下がるべくして下がって行く流れはあったかと思います。あまり大きな声では言えませんが、「本」というメディアに対する不信感・残念感しか生み出さないような本が書店の新刊コーナーに平積みされていた時期がありましたからね(とりあえず、過去形で)。

出版業界の一番の懸念は、電子か紙かという以前に、「コンテンツにお金を支払う」という感覚を持たない人が増えることではないでしょうか。それが減少していけば、どのような手を打ったところで、売り上げ回復の目処は立ちません。

逆に言えば、「コンテンツにはお金を支払う」感覚を持った人が増えていけば、紙の本にも光が見えてきます。それはまぶしすぎる天啓の光ではないにせよ、何かを照らすだけの光量は持っているでしょう。

退屈しないだけの時間を満たすコンテンツは、ネットでいくらでも見つかります。でも、お金をもらうことを前提として作られたコンテンツは、やっぱり質が高いのです。面白いか面白くないかで切り分けると面倒な話になりますが、トータルでみた場合の、質の高い時間を経験させてくれる期待値はずいぶん高いと言えるでしょう。

でも、そういうコンテンツは無くても別に死なないのです。生命活動に差し障りはないのです(活字中毒を除く)。さらに言えば退屈しないだけの時間はネットで満たせます。

というわけで、導入部分はできるだけ敷居を低くして、多くの人がまたげるようにしておくのがよいかと思います。

70%オフにすれば売れる?

もう一つ、別の視点から。

たぶんカドカワさんは、このセールで「実績」となる数字を作られたかと思います(あくまで推測です)。

じゃあ、他の出版社さんも70%オフにすれば、同じようなセール効果が見込めるのでしょうか。そんな単純な話ではないでしょう。

当たり前ですが、セールを打ったことだけが販売数を作ったのではありません。それが話題になったのが一つのポイントなのです。

Kindle情報を取り上げているブログ・メディアでは、当たり前のように紹介されていましたが、普段はそういうものに言及しないようなブログにまで話題が上がっていました。詳しい言及は避けますが、タイミング的にもインパクトのあるセールだったのです。

コンテキスト余地

金額的にもそうですが、コンテンツの量も話題性があります。なにしろ数が多いのです。

この「多さ」は一つのポイントで、メディア的な切り口の余地、別の言い方をすればコンテキストを発生させられる含みがあります。

たとえば対象が10冊だけだったら、ブログ1記事でそれを紹介しておわりです。他のブログでも似たような記事になることでしょう。結局、流通するのはそれらのうちのどれか一つだけ。話題波及力は乏しいと言わざるを得ません。

しかし、今回のように数が多いと、切り口がたくさんうまれます。引用はしませんが、実際いろいろな記事を見かけました。それら一つ一つがバズる可能性を持っているわけです。当然、セールの存在を知らない人に届く可能性は上がります。

結局、こういうのはこぢんまりとやってしまうと、ほとんど無いに等しい結果しか生まないことになるのでしょう。特にネットの世界では情報の回転が速いので、小さな話題はすぐに押し流されてしまいます。

逆に、大きな話題(になるもの)を提供すれば、コンテンツそのものが創発的・自発的に生み出され、勝手に(というといささか語弊がありますが)広まっていってくれます。

というわけで、セールを打つときは、これでもか!というぐらい全力でやるのがよろしかろうと思います。

さいごに

安く本が買えてお得、というのとは別の所で、面白い現象でした。

カドカワというブランド名ではなく、カドカワが持っている優秀なストックがものをいった、と言えるのかもしれません。

やっぱり、なんだかんだいって、ストックは強いです。それをネットだと全展開できちゃうわけですから。しかも、自発的なキュレーターがわんさかいるという、すばらしい環境です。

私もこつこつとストック作りにいそしむとしましょう。漫画でも読みながら。

▼こんな漫画とかも

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僕だけがいない街(1) (角川コミックス・エース) 三部 けい

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日常(1) (角川コミックス・エース) あらゐ けいいち

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機動戦士ガンダムUC 虹にのれなかった男 (角川コミックス・エース)
機動戦士ガンダムUC 虹にのれなかった男 (角川コミックス・エース) 葛木 ヒヨン 福井 晴敏

KADOKAWA / 角川書店 2014-01-10
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kobo Touchがやって来た

魔が差す。

日常生活でよく見られる風景です。きっと誰を責めることもできません。だって、魔が差したんだから。

つまり、kobo Touchを購入した、ということです。

箱とご対面

今回は実用性のまったくないレビューを書く、という不退転の決意があるので、それをそのまま実行します。

ちょっとだけ役立ちそうなファーストインプレッション記事は日曜日のシゴタノ!をお待ちください。画面の写真などは、いつものようにFacebookページにアルバムとしてまとめてアップします。
Facebookページの写真アルバム

購入したのは「kobo Touch」のブルー。もう少し深い青が良かったのですが贅沢は言ってられません。

箱の中身はシンプルですね。USBケーブルと紙は数枚だけ。いいですね。

アクティベーションについてはまるっとすっ飛ばして、基本的な画面。

なるほど、なるほど。確かに文字は読みやすいですね。

では、早速新しい書籍を購入しちゃいましょう。

Macのkoboアプリ。

いろいろラインナップはあるようです。

ドラッカーの赤本なんて全部集めれば本棚が相当圧迫されるので(されるだけの価値はありますが)、電子書籍でそろえるというのもアリなのかもしれません。他にもいろいろな本がならんでいます。

ただ、当たり前ですがリアルな「書店」のラインナップからすればかなり物足りない感じです。カテゴリー分けも「ん?」と思わないではない部分が多少あります。

まあ、この辺はスタートした段階なので絶対的な判断は保留したいところ。

とりあえず、何か一冊購入してみましょう。

で、今回選んだのが、この一冊。

・・・。えっと、・・・そう、たまたま。たまたま目に付いたんです。別にこのカバーを書店で買うのは躊躇するなぁ〜とか、そういう他意があったわけではありません。単なるたまたま。

クレジットカードを登録していると、操作はするする進みます。この辺はiPhoneなどでアプリを購入するのと同じ感覚ですね。

UBSつなげっぱなしにしていたので、そのまま同期されていました。

で、これ。

本文はこんな感じ。うむうむ、なかなか良いです。

「さてさて、記事でも書こうか」と、スリープモードにすると、この画面が。

おぉう。表紙が画面表示になっちゃうのか・・・。いろいろ設定を探してみると、一応オンオフの切り替えが可能とのこと。で、オフにしてみる。

・・・。あまりにも貧相。この二択は新しく「究極の選択」に加えてもよいのではないだろうかという気がしないでもないです。まあ、本の表紙を選択しましたけどね。

機能はまだまだたくさんあって、まだこれから触るところですが、表示のフォントあたりは触っておきたいところ。


※右下のボタンから変更可能です。

とりあえず「モリサワ リュウミン」というフォントを選択しておきました。「モリサワ ゴシック MB101」はちょっと文字の肉厚が強いので圧迫感があります。この辺は__当たり前だけど__好みの問題です。

さいごに

とりあえず、楽天ポイントのおかげで恐ろしく安く買えたので、人柱でも全然OKな感じです。少なくとも端末を触った感じではそれほど「君からは未来の匂いがしない」というイメージはありません。ごく普通に使える印象。

もちろん、電子書籍リーダーとして見た場合、電子書籍ストアがいかに充実し、かつ利用しやすいのかが大きな問題になるでしょう。が、そこら辺はバージョンアップと共に改善されるはずです(あくまではず)。

しかし、まだ本命とも呼べる対抗馬がその全貌を明らかにしていないので、過剰な期待をかけるのは難しいかもしれません。そういうストアの話を抜けば、わりに使いやすい端末ではないかと、個人的には思う次第です。kindle持ってないから断言はできませんが。

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「本」の特徴と電子書籍

最近、電子書籍と読書体験というものについてよく考えている。

パブーというお手軽に電子書籍を作れるサービスの登場が登場したので、いよいよ素人でも簡単に本を作れる環境が日本でも整ってきたと言えるだろう。支払い方法が多様化し、閲覧性能が上がってくれば有料であっても売れるコンテンツが出てくるだろう。
パブー http://p.booklog.jp/

コンテンツを生み出す人にとって選択肢が増えるというのは良いことだ。当然私もそれを視野に入れている。しかし、安易に「電子書籍へGO!」となって良いのか、という不安もまた同時にある。

iPhone3GSで電子書籍を読んだ際には、取り立てて違和感はなかった。そこは問題ではない。ただ、私は自分の本を断裁してスキャンしたいとは考えていない。私の中では「電子書籍」と「本の電子化」というのは異なった位相に存在している物だ。

その差とは何だろうか、という疑問がずっと残っている。そしてそれについて考えることは、「電子書籍ならでは」について考えることにつながるのではないだろうかと思う。

そういう事を考えている時に、興味深いエントリーを読んだ。中原淳氏の「NAKAHARAーLAB.NET」のエントリーだ。

奇妙な既視感・・・電子書籍ブームとeラーニングブーム

 それによって、読者が快適に、楽しく、読書をする経験をもつことができるのか?

 それは紙で読む場合と同じなのか、それより高い付加価値のある読書経験が存在するのか、どうか?

これを読んで、自分の中で本と電子書籍の関係性について方向性が見えてきた。

大きな骨格となるのは

「違って良い」

ということだ。

電子書籍というのは、本の類似品ではない。本もまた電子書籍の類似品ではない。それは別のレイヤーに存在するものだ。あくまで情報を読者に提供するという機能を共有しているだけだ。全くの別物と考えたほうが良いだろう。

本は本で優れているところがあり、電子書籍がない物を持っている。
電子書籍は本では提供できない機能がある。

だから、電子書籍を本に近づけていくアプローチよりも、本では実現できない要素を強化していくべきだろう。リアルの本の代用品である必要はない。無理に本を目指す必要もない。

愛着

本にあって電子書籍には無いものとはなんだろうか。変な表現になるが例えば「愛着」というものがそうだろう。電子書籍を読むデバイス、例えばiPadには愛着が湧くことはある。しかし、その中で展開されるコンテンツに愛着が湧くことはないだろう。それはデバイスの中で均一化されたものだから当然だ。

例えば、ブログを考えてみよう。魅力的なブログ、好きなブログはたくさんあっても「愛着があるブログ」を持っている人はいるだろうか。少なくとも私は自分のブログですらあんまり「愛着」めいたものは持っていない。それらは簡単に形やデザインを変えられる。代用可能なものだ。

コンテンツとデバイスが一体化したモノ_つまり安易に代用できないもの_だからこそ、愛着が湧きやすいということはあるだろう。

限定性

本はコンテンツとデバイスが一体化したもの、とは先ほども述べた。これは「限定性」を作り出す。

それは「世界に入れる」という感覚だ。本を読むと意識が別の世界に行くような感覚を覚えないだろうか。まるでアバターを使ってオンラインの世界に身を置いているような間隔。本を読む行為は、そういった意識を外に飛ばす事ができる。

例えば、誰かと二人で話をしているとしよう。そのとき、携帯を見るのはそれほど失礼な事ではない。あるいは会話の最中にメールを送ることもあるだろう。もし、会話の最中に相手が本を読み始めたらどうだろうか。メールのやりとりと同じぐらいの時間だったとしても、不快感を覚えないだろうか。

基本的に読書というのは本と自分の中で閉じた行為だ。だからこそ、アウトプットが必要になってくる、というのはまた別の文脈の話なのだが、とりあえず「限定性」を作り出すというのも本の特徴だろう。

物質性

本は物である。そこにはある種のアフォーダンスがある。いや、そんな小難しい話をするまでもない。机の上に読みかけの本が置いてあれば、つい手を取って読みたくなるだろう。これが電子書籍ならばどうか。デバイスを起動させて、ビューアー、そして最近読んだ本、といった具合にアクセスする必要がある。つまり、読もうという意志が読むという行為の前になければならない。しかし、本という一塊の物質は、それ自体が「読む」という感情を呼び起こす機能を持つ。

実際には「ぱらぱらと目を通す」つもりで本を手に取ってみたら、じっくりと読み込んでいたという事になるかもしれない。どちらにせよこれは、電子書籍ではおこりにくい事態だろう

まとめ

上に挙げたような要素は電子書籍にはない。「だから電子書籍はだめなんだ」と言いたいわけではない。電子書籍は、編集のしやすさ、出版までのスピーディーさ、アクティブな要素を加えられる、といった別の良さを持っている。

「読者が快適に、楽しく、読書をする経験をもつ」ためには、本と電子書籍が同じ形を目指す必要はまったくない。提供する物も違えば、提供する形も違って当然だ。注目すべきはその差異なのだ。その差異を強化していくことが、両方のコンテンツを提供する人々にとって重要なことになっていくのだろう。

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star出版業界が破壊した出版文化を電子書籍が再生する…かな
starなんかあかんわ
starここのところの電子書籍の基本的事実は分かったが、今後の読書文化をどう豊かにするかは見極める必要があると思った

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