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簡易な月次レビューのやり方

月の切り替わりに行う「月次レビュー」を紹介しましょう。

まず、WorkFlowyに月次レビュー用のトピックを立てます。その下に、二つの項目をセッティング。

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この二つの項目(問いかけ)が、レビューの軸となります。

  • 先月(今月)は何をしたか?
  • 今月(来月)は何をするつもりか?

※月頭に行うなら「先月」、月末に行うなら「今月」と適宜読み替えてください。

先月何をしたか?

まず、考えるべきは先月何をしたのか。ただし、粒度が荒いので、もう少し項目を掘り下げます。

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先月、気がかりだったことはできたでしょうか。これを考えるためには、「先月、気がかりだったこと」を書き残しておく必要があります。ほとんど間違いない話ですが、一ヶ月前に気がかりだったことはまず覚えていませんし、それが解決されているならなおさらです。

とは言え、記録がないなら記憶の想起だけで振り返ってみましょう。何も出てこなければ、そのままにしても大丈夫です。

成果チェック

気がかりチェックが終わったら、次に「仕事」と「その他」の領域で何をやったのかを振り返っていきます。

たとえば「仕事」の領域であれば、電子書籍の原稿が半分くらい書けたとか、メルマガ読者さんの数が微増したとか、何かしらそういうことです。「その他」の領域なら、ブログのデザインを変更できたとか、本棚の片付けが進んだとか、何かしらそういうことです。

この「仕事」と「その他」の区分けは、恣意的なものであって、いくらでもアレンジ可能です。ただし、スタートの段階では、あまり細かく分けない方が良いでしょう。「その他」にいろいろ書いていたら増えてきたので、別にカテゴリを立てた、ぐらいで十分だと思います。

なぜなら、「仕事」とそうでないものの線引きは難しいからです。でもって、レビューの目的はそうしたものを厳密に整理することではないので、細かいことは気にしない方が吉です。カテゴリを設けるのは、あくまで想起のトリガーを引くためであることを念頭に置いておきましょう。

で、ほとんど間違いない話ですが、こうして成果の振り返りをしていると、「ああ、次はあれやらなくちゃ」という考えがぽこぽこ湧いてきます。その場合は、遠慮せずそこにそのまま書きつけておきましょう。なにせ、そのためにアウトライナーを使っているのですから。

今月何をするつもりなのか?

一通り先月の成果を確認できたら、今後は今月何をするつもりなのかを確認していきます。同様に掘り下げると、こうです。

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何をした方がいいのか

注意してください。何をすべきなのかでもなければ、何ができるのか、でもありません。「何をした方がいいのか」です。先月の成果を振り返ってきたときに、いろいろ思いついたことがあるかと思いますが、それがベースとなります。上から項目を移動してきてもいいですし、コピーしてもいいですし、まるっと新しく立ち上げてもいいです。

また、どのようにカテゴライズしても構いません。仕事を立てて、その下にプロジェクト・ルーチンを立ててもいいです。立てなくてもいいです。ともかく、今月何をした方がいいのか(と思うのか)を書き出していきます。

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※たとえば私の場合

そのための課題は何ですか?

しかしながら、「した方がいい」と思うことが、その通りに実現できるわけではありません。時間がない、資金がない、スキルがない……いろいろ課題がありえます。

ここでちょっと現実的なことを考えます。やるべきことと気がかりなことを洗い出していくわけです。

リストの更新

上記が終わったら、書き終えたことを考慮しながら、既存プロジェクトリストを更新したり、新しいプロジェクトを追加したり(あるいは削除したり)します。

これで、簡易の月次レビューは終了です。

月次のレビューについて

こうしたレビューの手法は、いわゆるGTDシステムの一部なのですが、実は、GTD本には「月次レビュー」なるものは登場しません。固有の名詞を持つのは「週次レビュー」だけで、その他は雑多に扱われています。

なぜかと言えば、それぞれの職場によって区切りのタイミングが異なるからでしょう。当然レビューを行うべき区切りも違っています。ただ、多くの仕事サイクル(生活サイクル)において、「一週間」という単位は共通しているので、「週次レビュー」というのはわりと提唱しやすいわけです。
※あと、人間の記憶の感覚にも適しているのかもしれません。

本書が主眼をおいているのは、日々の作業をどう片付けていくかという視点と、それよりももうすこし高いレベルの視点である。ただ、人生を謳歌して理想に近づくという本来の目的から見れば、より高い場所から眺めるのも大切なことだ。日々の行動とプロジェクトをうまくコントロールできるようになったら、ときどきはもっと上からの視点でもレビューし、本当の意味で頭をクリアにしていこう。

よって、とりあえず注力するのは「週次レビュー」です。それに慣れてきたら、次のステップとして、それよりも長いタームでのレビューに取りかかるのがよいでしょう。具体的には、毎週週次レビューをやっているのだけれども、どうにも頭がモヤモヤするな、という状態が出てきたら、より高い場所からのレビューのタイミングです。脳のデフラグを行うのです。

ちなみに、「Horizon レベル2」の解説にはこんなことも書かれています。

次にやってほしいのは、「重点的に取り組む分野」のリスト作りである。「仕事」と「プライベート」の二つの下位リストに分けてもいいが、その場合、どちらも同じように定期的にレビューする必要がある。このリストは自己管理のチェックリストの中でも最も有用なものの一つだ。これについては「プロジェクトリスト」のように週一で更新する必要はない。もうすこし長めの問題でレビューすることに意味があるリストだ。仕事や人生の重要な分野における変化のスピードを考慮し、1ヶ月から3ヶ月ごとにレビューして、新しいプロジェクトを見つけるトリガーにするといいだろう。

これが月次やそれ以上の単位で行うレビューの意義です。

基本は週次レビューでOKなのです。しかし、週次レビューでは、今そこにあるプロジェクトにしか視点が向きません。「もしかしたら、このプロジェクトは必要ないかも」「新しいプロジェクトをやった方がいいのかも」については考えにくいのです。それをフォローするのが月次以上のレビューとなります。

心理的価値構造の上位項目が変化してしまっているのに、下位構造を固定的に捉えてしまえばズレが大きくなります。それを修正することが、月次レビューの一つの意義です。

さいごに

まとめてみると、月次レビューには二つの役割があります。

一つは、月単位でしか振り返ることができない要素の振り返り。たとえば「月間売上げ目標」についてレビューしようと思えば、少なくとも月単位のタームが必要となります。言い換えれば、これは週次レビューの拡大版です。

もう一つは、少し大きな視点から各プロジェクトを振り返るためのレビュー。あるプロジェクトが必要かどうかは、たとえばそれを3週間ほど続けてみないと見えてこないことがあります。そうしたものを確認するのもまた月次で行うレビューの意義です。

ともあれ、基本が週次レビューであることは間違いありません。それで足元を固めて、次なるステップに進む。そのように段階的にレビューを捉えることが大切なのでしょう。

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GTDとタスクシュート

メルマガの「BizArts」という連載で、新しいGTD本を取り上げました。

そこで、GTDとタスクシュートの関係について少し触れたのですが、あまり込み入ったことを書くと脱線になると判断して大半は割愛しました。

本エントリーで、その脱線を広げていきましょう。

GTDの思想的背景

基本的に、GTDとタスクシュートはそんなに違いません。「ええ〜〜」という声が聞こえてきそうですが、まあ、落ち着いてください。

GTDは、「タスク管理システム」の名称です。あるいは、それを支える概念です。

GTDを実行するためには、カレンダーやプロジェクトリストなどのツールが必要となってきますが、これらはGTDのシステムを構成するパーツでしかありません。注目すべきは、それらを背後から支える思想です。どのような思想でしょうか。

「水のような心でタスクに向かうこと」
「そのためには気になることを頭の外にすべて追い出すこと」
「実行時には、しかるべきリストを参照してタスクを選ぶこと」
「リストは定期的にレビューすること」

こうした行為の裏側にあるのは、「脳の負担を減らすために、適切な外部記憶装置を使う」ということです。脳はあまり信用ならないし、そこに情報を蓄えすぎていると負荷も大きい。だから、「適切な」外部ツールにそれを保存し、うまく使いましょう。というのが、GTDです。

で、その「適切な」をどう解釈するのかで、GTDのツール実装は変わってきます。

水のような心と機械的

GTDの視点から、タスクシュートを眺めてみましょう。

TaskChute(具体的なツールの方)に並んだタスクを、上から順番に、「機械的」に処理していくとき、その心はちりぢりに乱れているでしょうか。もちろんNoです。「機械的」に処理していくというのは、脳の負荷がそうとう小さい状況のことです。軽々しくイコールで結ぶことはできなくても、それは「水のような心でタスクに向かっている」状況に近いと言えるでしょう。

もちろん、これはある種の理想であり、タスクシュートに慣れた人の話です。一つのタスクごとに「今、これを本当にやるべきなのか」と考えていては、結局心はちりぢり状態になってしまうでしょう。よって、TaskChuteというツールがあれば、それだけで脳の負荷を減らして作業を進められるとは言えません。

ツールに(心理的に)慣れること、極端な言い方をすれば、ツールに信頼を寄せることが必要になります。それはGTDを構成するツールでも同じことです。

選択は適切か

GTDでは、複数のツールを使います。

やるべきことのスタート時点がはっきりしているものはカレンダーに、そうではないものはコンテキスト別のリストに、といった具合です。その意味で、タスクシュートは直近のタスクを全て「カレンダー」に収めていると言えるかもしれません。だから、コンテキスト別のリストを廃棄できるわけです。

そのように考えれば、GTDとタスクシュートは極端に異なるものではないことが見えてきます。「適切な」外部ツールの選択が違うだけ、という風にも捉えられます。
※もちろん差異に注目すれば、ぜんぜん別のものであるとも主張できます。

では、タスクシュートとGTDでは、どんな「適切さ」のジャッジメントが違うのでしょうか。

GTDでは、「次にやるべきこと」をすべてリストアップし、他の「気になること」もきちんと処理できていれば、空いた時間に何をするべきかは、リストを目にすれば自然と明らかになると説きます。

基本的に合理的なGTDですが、唯一ツッコミどころがあるとすれば、このポイントでしょう。私なんかは「本当に、そうだろうか?」などと疑義を挟んでみたくなります。

人間の認知は歪んでいます。バイアスを持っています。完璧なリスト整備されていれば、適切なタスクを選択できると断言するのはいささか飛躍があるのかもしれません。想像ですが、まったく同じリストがあるとしても、朝の8時と夜の22時の開いた時間に選択するタスクは変わってくるでしょうし、虫歯に悩まされているときも違うはずです。

もちろん、違っていてもいい、という反論はあります。で、私もそう思っています。基本的には適切かどうかは重要ではありません。「適切だ」と信じられるかどうかが重要なのです。適切だと信じられれば、心のちりぢりは抑えられ、「水のような心」に近づいていけます。それこそが、GTDが目指す場所でしょう。

が、「外部ツールに預けるのはいいとして、毎回の空き時間に自分の行動を選択していくって本当に適切なのか?」というスタンスを持つことも可能です。で、それを進めていくとタスクシュートに近づいていきます。

さいごに

私はどちらかの方法に優劣を付けることに興味はありません。私が興味を持つのは、それぞれの方法の背景にあるものです。

どちらの方法でも、脳に対する一定の不完全感は共通しています。だからこそ、外部ツールを使うのです。ただし、タスクシュートの方が、より人間のバイアスに注意を払っているように感じます。だからこそ、「適切な」ツールの選択が変わってくるのでしょう。

どちらの方法が正解だとは言えません。相性はあります。が、それ以上に、それぞれのツールに慣れないことにはわからないことがいっぱいあります。よって、一定期間は続けてみることが必要でしょう。

そうしながら、どういうやり方をしているときに「適切だ」と感じられるか、言い換えれば集中して__よけないことを考えずに__作業に取り組めているのかを把握していくのがよいかと思います。

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【ミニ書評】全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術(デビッド・アレン)

全面改訂版が出たということで、早速購入。

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整理しておくと、『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』の発売が2008年。ただし、原著の方は2001年発売である。つまり、10年以上も経っているわけだ。たしかに全面改訂版が発売されてもおかしくないタイミングである。

では、内容はどうだろうか。10年以上の年月を経てGTDは色あせてはいないだろうか。どうやらその心配はなさそうだ。もともとGTDは、「物事の進め方」や「情報・思考の整理法」の基本的な原則にフォーカスしている。目立つ表層ではなく、深層部にアクセスしているのだ。だからこそ、全面改訂版ではない方のバージョンも未だに売れ続けているのだろう。

もちろん本書も十分に有用な内容である。基本的な骨子は何一つ変わっていない。その意味で、前バージョンを熟読した人にとっては復習的な意味合いが強くなるだろう。それでも何かしらの発見はあるかもしれない。私の場合であれば、GTDの「原則」という部分に改めて注目した。

GTDがやっていること、あるいはGTDを通じて主体者が実行することは、なんのことはない脳が当たり前にやっていることだ。それを注意深く、丁寧に、意識的に行うのが一つの鍵である。呼吸と深呼吸の関係に近いかもしれない。

もう一つの鍵は、そうした行為を脳内だけではなく、外部の記憶装置(たとえば紙のノート、たとえばパソコン)の助けを借りて行うことだ。脳に補助装置をくっつける、というとなにやらサイバネティックスな響きがあるが、一般的に考えられる以上に記録の力を使うという話である。言い換えれば、それほど脳を信用しない、と言えるかもしれない。

そしてこの二つの鍵は、多くの発想法が、結局のところ脳内の情報(意味)操作を外部化しているに過ぎない、ということとイコールの関係にある。でないと、うまくいくはずがないのだ。どうあがいたところで、私たちは私たちの脳から抜け出せないわけだから。

この点については、内容的に追加された第14章「GTDと認知科学」が補強している。2000年以降に発売されている「意志力」や「やる気」に関する書籍では、GTDに言及しているものが多くある。そうした事例を取り込んで、GTDの有用性が主張されている。

おそらくそのことに関係があるのだろうが、2015年に発売された本書では、新しいデジタルツールや便利なクラウドツールの紹介が行われて__いない。そう、ほとんど言及されていないのだ。少し名前が出てくるのがマインドマップやアウトラインプロセッサくらいである。それを除けば、印象として著者は紙ツールを押しているように思える。

「最新のデジタルツール」の話が省かれているのは、本書がより長く読まれることを想定したものであろう。何せソフトウェアの進化や変化の速度は恐ろしく速い。2年経てば全く別のUIになっていたり、そもそもそんなツールが無くなってしまう可能性もある。ただし、5年経っても、まあコピー用紙とボールペンは平然と存在しているだろう。

ただ、それだけではない。著者はこのように述べる。

すでにデジタル派の人にとっては、もう紙でなあくてもいいのでは、と思っている人も多いだろう。(中略)ただ、実際には紙のほうが便利な場面もまだまだ多い。手書きでメモすることの利点は、いつでもどこでもできること、文字だけでなく図も自由に描けること、といったものがあるだろう。表現のために使うツールが違うと、そこから生まれる思考もまた違ってくる。

おそらくではあるが、その人の思考が(この文章のように)テキストの羅列でできあがっているのであれば、デジタルツールだけでもやっていけるだろう。

しかし、もう少し図面的・空間的・映像的な要素が混ざっているのであれば、現状のデジタルツールはやや苦しい。自分のThinkを、狭い型にはめたり一種の変換が必要だったりする。その点手書きのメモは、(完璧ではないにせよ)Thinkをそのままで出せるのだ。それはつまり、「脳が当たり前にやっていること」に近い、ということだ。そしてこの点がもっとも重要であることは先ほども述べた。

よって、ツールの選択は最終的には何でもよいわけだが、本当の意味で何でもよい(あるいはどうでもよい)わけではない。脳にフィットする感触が、そこには必要である。その点は、タスク管理あるいは発想法に関するツール選びにおいて忘れないでおきたい。


ちなみに、どれだけGTDが「脳が当たり前にやっていること」に近くても、簡単にできるわけではない。深呼吸だって意識を向けないとできないし、意識が切れたらだいたいは普通の呼吸に戻る。「習慣」にするためには、慣れるまでの期間、負荷に耐えなければいけない。

特にGTDは、準備段階で注意をかなり使う。これは脳にとってかなりの負荷だ。もちろん、準備段階で注意を使うからこそ、実行段階でのそれが減らせる。つまり、注意の前払いをしていることになる。ただし、それは慣れるまではずいぶん億劫に感じられるだろう。おそらくこの点が、GTDの敷居の高さである。さて壁を壊す巨人は現れるだろうか。

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GTDの高度について

デビッド・アレンの『ストレスフリーの整理術 実践編』では、将来への見通しを得るための考え方として「高度」という概念が用いられている。

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第11章〜17章がその解説に当てられているのだが、少々全体像が掴みづらいこともあり、自分なりに整理してみた。

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これを少しまとめてみよう。

「高度」とは

まず「高度」とはなんだろうか。簡単に言えば「視点の高さ」ということだ。

Googleマップをイメージしてみよう。日本列島が俯瞰できる状態から縮尺を上げていく。視点がぐんぐん寄って行き、関西の全体像になり、京都府の全体像になり、私がいる街の全体像になる。今、私が現実の目で見ている現実の世界が一番低い高度だ。対して、日本全体、あるいは地球全体を見る視点が一番高い高度になる。

私が近所のコンビニに行くときに必要なのは、低い高度の視点であり、日本の全体像ではない。

しかし、大分なり宮城への旅行計画を立てるときには、その視点だけでは足りない。関西の全体像でも力不足だ。できれば日本地図が欲しいところである。

「高度」とは:その2

もう少し別の例で考えてみよう。

あなたは兵士だ。当然、自分が次に踏み出す一歩がどのような道であるのかを把握する必要がある。少し先の地形も把握して、突然襲われそうな場所はないかもチェックしておく必要がある。

あなたは隊長だ。隊長は目の前の道ばかりに注目してはいけない。そのまま進めばどんな地域に突入するのか、その地域はどんな状況であるのかを把握する必要がある。

あなたは将軍だ。将軍は一つの地域ばかりに目を向けているわけにはいかない。戦場の全体を眺め、適切な量の部隊を適切なタイミングで配置しなければいけない。リソースの分配やタイミングを間違えただけで、結果に致命的な影響を与えてしまう。

あなたは国王だ。国王は戦場ばかりを見ていてはいけない。周辺の国々がどのように動いているのか。それが自国にどのような影響を与えるのかを考慮しなければいけない。時に過剰な戦力の投入、時に勇気ある撤退の判断を下す必要もあるだろう。

役割ごとに、持つべき地図の縮尺は変わってくる。

高度についての誤解

こういう比喩的イメージは理解しやすいが、一つ致命的な勘違いが生じる可能性に気をつけなければいけない。

それは、上位の(高高度の)視点ほど「偉い」という思い込みだ。

現実世界の組織でも高いマネジメント層は高い地位と給料を得ている。それは要求されるスキルや追うべき責任の量が多いから、という前提なのだろうが、本当にそうなのかは検討の必要があるだろう。

ともかく、自分の行動管理に限っていえば、どの高度が特別に重要ということはない。どれもがそれぞれに重要である。むしろ、高い視点ほど偉いと感じるバイアスを相殺するために、下の視点ほど重要であると強調しておいても良いぐらいだ。

さらに言えば、上の視点に登っていくほど、具体的な要素はぼやけてくる。

将軍が地図上で小隊を動かすのは実に簡単だ。しかし、現実の地形によっては進行がひどく困難な場合がある。そして、兵士が現実的に前に進まなければ小隊は何一つ機能しないし、誰かが立てた作戦も同様だ。

行動する主体の視点を忘れてはいけない。

遠目にみれば、富士山は綺麗に見える。でもその道程はゴミで散らかっているかもしれない。その可能性は忘れてはいけないし、ゴミが散らかっているのならば片付ける必要がある。

高度0:<次に取るべき行動>

一番低い視点。現実という言葉に一番近い視点だ。これが機能していないと、その上の高度の視点は単なる夢物語に過ぎない。綺麗な富士山。

この高度で必要なものは、「次に取るべき行動」だ。GTDのフローで作成されるコンテキストごとの「済んでいない行動リスト」(ネクストアクション)や「カレンダー」がその管理方法になる。

この高度を整理したい場合は、「必要な行動は何か?」を問いかける。

とにもかくにも行動だ。現実的、具体的、実質的な行動だ。コンビニに行くときの視点。兵士の視点。「あいつらに攻撃だ!」「サーイェッサー!」。難しいことは一切考えない。ただ、ただ、行動あるのみ。それを補助するためのリストを作る。

きちんと整理され、これがあれば大丈夫と思えるリストがあれば、行動はより容易にスムーズになる。リストの形はさまざまであってよい。ともかく「これがあれば大丈夫」と思えるかどうかが鍵だ。

高度1000:<プロジェクト>

少し視点の高さが上がる。行動した後のこと、時間軸における未来のことを少しだけ考える。「誰を撃つか?」から「倒すべき部隊は?」と考える。

この高度で必要なものは「プロジェクト」だ。それを一覧できるプロジェクトリストを作る。ノートに一行一件で書くなり、一ぺージ一件で書くなり、方法はいろいろある。

この高度の整理には「何を終わらせなければならないか?」を問いかけるとよい。

その問いから出てくるものは、それ自身直接行動できるものではない場合が多い。「部屋を片付ける」「旅行を計画する」「マーケティングを勉強する」など、ある種の行動をひとまとまりにパッケージしたような答えが出てくる。

それぞれの項目について、「それを達成するために必要なことは何か?」を問いかければ、高度0のリストが再構成できる。あるいは最新の状態に同期される。「週次レビュー」で実施される行動だ。

おそらく、高度0と高度1000を愚直に続けるだけもかなりの効果がある。きっと安心感が得られるはずだ。

高度2000:<コミットメント>

さらに視点があがる。ここでは、自分が責任を持っている事柄について考える。短いフレーズで「コミットメント」と呼ぶことにした。

問いかけはこうだ。「維持していかなければならないことは何か?」

プログラマーならば「生産性」や「コードスキル」がそれにあたるだろう。人によっては「新人育成」なんかも入ってくるかもしれない。

私のようなフリーの物書きならば、文章に関する要素以外にも経理・営業・広報などといった要素も入ってくる。

もちろん仕事以外の要素(家族関係、健康管理、住居を清潔に保っておくこと、……)も存在する。

このコミットメントがプロジェクト発生装置である。何かしらの責任があるからこそ、「終わらせなければならない」という義務が発生する。

時折コミットメントを再確認したり、あるいは馬謖を斬る思いで古いコミットメントとおさらばする必要も出てくるだろう。

A4の紙を横に置き、中心に自分の名前を書いて、そこから自分の「コミットメント」をさまざまに書き出していくとよいだろう。コミットメントは短い期間でクルクル変わるものではないので、頻繁に行う必要はない。

やることが一杯ありすぎる、と感じた時などに行ってみるとよいだろう。

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※Rashitaの活動領域を描いてみた図

高度3000:目標とゴール

このあたりから、視点の質的な違いが出てくる。高度0のような現実感覚は薄れ、綺麗な富士山が見えるようになる。

ここでの問いは「何を達成したいか?」だ。

期間としては一年以上かかるような目標が、このあたりに位置することになる。

高度0は日常を回していくための視点であり、こちらは新しい行動を生み出すための視点である。もちろん、出てくる答えは何だってよい。「電子書籍を一冊書いてみる」でもよいし「大学に入学する」でも「PV100万のブロガーになる」でもよい。「宇宙飛行士になる」はちょっと厳しいかもしれないが、目標はいろいろあってよいだろう。

遠目で見た富士山の輪郭線が単純な線で表せるように、この高度も高度0のような入り組んだ手法は必要ない。単に箇条書きのリストにしておけばよい。

時折見返して、達成できたものはリストから外す。それだけで十分である。

高度4000:<ビジョン(構想)>

さらに視点が上がる。「構想」という翻訳はイマイチしっくり来なかったので「ビジョン」をメインで採用した。

ここでは長期的な成功のイメージを描く。長期的とは、達成するのに数年を要するような、という意味だ。

この高度ではすでに高度0の視点はまったくない。今がどうであるかはあまり関係ないのだ。なので「もし、自分が成功していたらどういう状態になっているか」を考えるとよい。

たとえば「100万部のベストセラーを出す」は高度3000の<目標とゴール>にあたるが、「執筆依頼が10/月でやってくるようになる」だと<ビジョン>になるだろう。

個人的にはここの高度が高すぎて酸素が薄くうまく息をできない人もいるのではないだろうか、という気はする。そういう場合は無理して登る必要ないだろう。

この<ビジョン>を導き出す手法として「宝の地図」が紹介されている。当ブログの読者さんならマインドマップ的なやつ、と書いておけば十分だろう。自分の理想的な(あるいはこうなりたい)将来像について自由気ままにブレストすればよい。

高度5000:<目的・価値観>

とうとう山頂である。細かい要素は消え失せ、大きな要素だけが目に入る。ムスカならば「人がゴミのようだ」と言いそうだが、実際はまったく見えないぐらいの高視点だ。

ここでは「自分や組織の存在意義は何か?」を問いかける。「なぜそれをするのか」「何のためにそれをするのか」を真摯に考えていくことになる。表現は逆になるが、かなり深い井戸に潜る必要があるだろう。

<目的>とは何のために存在し、どこに向かっていくかを決めるアルティメットな判断基準だ。<価値観>は守っていくべき重要な価値。大企業が掲げているビジョンはこれにあたる。

山登りと同じで、いきなりこんな高度にチャレンジするとエラい目にあうだろう。延々と答えのない問いに拘泥してしまう可能性もある。仮にヘリコプターか何かでここにたどり着いたとしても、高度0からの視点から徐々に上がってきていないと、それが「大義」に化ける可能性がある。

現実感覚を一切欠いた言葉の音だけが虚しく響くあれである。ネット界隈でも、っと脱線は止めておこう。

いつ問いかける?

デイビッド・アレンは「何かうまくいかないことがあったとき、これを考えるとよい」とアドバイスしてくれているがまったく同感である。

何かに行き詰まる。その時「なぜ、これをしようとしているのか?」を問いかける。「〜〜のために」と答えが出てくる。さらに「なぜ〜〜を求めているのか?」を追問いする。「××が必要だから」と答えが出てくる。さらに「なぜ、それが必要なのか」を追追問いする。

ある程度問いを重ねていくと、最終的に(あるいは原初的に)求めているものを得る上で、当初の行動は別に必要ないことが分かったりもする。それが分かれば別の手段に切り替えたり、きっぱり諦めたりすることもできるだろう。

その時、出てきた原初的な答えをどこかに書いておくと、自分の目的や価値観のリストが出来上がる。

さいごに

おさらいしておこう。

  • 行動を管理する上で複数の視点があったほうがよい
  • それぞれの視点に優劣はない
  • 注目すべきは高度0だが、高高度の視点も忘れない方がよい
  • 高い視点ほどラフで良く、低い視点ほど細かい管理が必要
  • 高度が近い要素は、互いに影響し合う
  • 視点ごとの問いかけを活用する
  • それぞれを書き留め、見返せるようにすべし(そして見返すべし)

GTDの理解の助けになれば幸いである。

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週次レビューの数年前の姿

少し前、「週次レビューオフ」イベントに参加しました。
その際、「週次レビューは最初からうまくいきましたか?」
     という質問を受けました。

そんなわけはありません。

     少し回想してみましょう。

数年前のお話

毎週土曜日、仕事終わりに、マクドナルド。
もちろん、一人です。

私の場合、仕事終わりは、早朝〜朝。
ほとんど人のいない店内で、ジャズをBGMに、
お気に入りのB5のリングノートを広げます。

当然、最初に頭に浮かぶのは仕事のことです。
今週やり残したこと、来週の頭に手を付けなければならないこと。
記憶と記録を引っ張り出しながら、浮かぶままにノートに書き付けていきます。

一回で4〜6ページ程度は書きつけていたでしょうか。
時に長々とした文章を書く場合もありました。
思いついたものを、素直な形で書き出します。

徐々に仕事以外の事柄も顔を覗かせます。
     たとえば、ブログ。
     たとえば、家計。
     たとえば、将来。
どれもこれも、自分にとっては大切なことです。
仕切りも区切りも、タグ付けもなく、ただひたすらに書いて、書いて、書いていきます。

ホットコーヒーの底が見える頃には、頭の中がスッキリし、ほっと一息つけます。

これが現在の原型です。

毎週これを繰り返していました。

     「書き出したものはどうするの?」

それは、もう少し先のお話です。

さいごに

「壮大なところから始めない」
これが事始めの鉄則です。

私の場合、「書き出すこと」から始めました。
スッキリ感が快として機能し、続けることの助けになっていた側面もあるはずです。

やり始めは、非効率的なところも、不十分なところもありました。
だいたい、書き出したものの処理ができていなければ効果的とは言えません。

でも一番最初に身につけるべきは、
決まったタイミングに「レビュー」を行うという行動習慣です。

つまり、「箱」です。

「箱」さえ出来てしまえば、その中に何を詰めるのかは後で変えられます。

つまり、最初から「うまく」いく必要はない、ということです。

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「信頼できるシステム」にするために気をつけること

先週の「GTDにおける「信頼できるシステム」とは何を意味するのか」からの続きのエントリー。

ある種のツールと信頼関係を結ぶために気をつけることとは何かを考えてみます。

inbox

頭の中の「気になること」の入り口であるinboxですが、これについてはいくつかのポイントがありそうです。

まず、全てのinboxを把握しておくこと。そして、それを見ること。これの二つが重要です。inboxの数をあまり増やさない方が良いと言われるのもこのためです。GTDはいくつかのステップで「気になること」を処理していきます。そのため各ステップごとに時間的な隔たりが生じます。

つまり、ある時点で気になった事をinboxに放り込んで置いて、後で整理するというのはある種の「先送り」と言えます。あるいは今の時点の自分から少し先の自分への「引き継ぎ作業」と考えてもよいかもしれません。

であれば、「引き継ぎ作業」を行う際に気をつけるべき点に注意を払っておけばよいでしょう。要点は、それが次の人に必ず伝えられること、でしょう。inboxを使う場合も同様です。

気になることをinboxに一時的に放り込んで安心を感じられるのは、後でそれを必ず見返すという確信(というのは強すぎる表現ですが)があるからです。それが無いと「書き出した」ことによるスッキリ感は得られても、安心感までは得られないでしょう。

inboxの数を増やしすぎれば、見落とす可能性が忍び寄ってきます。これはinboxのチェックリストを作る事で対応できますが、ツールを切り替える時間がかかったり、そもそも面倒に感じられるデメリットが存在していることだけは把握しておいた方が良いでしょう。

ちなみに、私のメインinboxは「Gmail」「Evernote」「書類受け」この3つ。メールは全てGmailに集約していますし、Evernoteはなんだかいろんなものを入れていますし、紙の書類などは書類受けに入れるようにしています。これらは最低一日一回はチェックして空っぽになるように努めています。

チェックするのが毎日ではないサブのinboxもありますが、これは今回は割愛。それは週一回のペースでチェックしています。

何にせよ、「こういう情報はこのinboxに入っている」というのと「それを必ずチェックする」という状態と動作(習慣)が組み合わさって始めてinboxが機能していると言えるでしょう。

リマインダー

リマインダーも「先送り」の仕組みです。であれば、それが必ず届くこと。これが寛容です。例えば、電波が悪いところに頻繁にいるのに、メールによるリマンダーを使うのはかなり危うげです。そういう場合は、スマートフォン内部からのリマンダーを使った方がよいでしょう。

そもそも、電池に心配があるような環境ならば、スマートフォンすら信頼できないシステムになりうる可能性を秘めています。

そういう時は、紙の手帳や付箋などがリマインダーになりますが、これも「必ず見る」という確信に近いモノが必要です。「こういう状況ならば自分が何かあることを忘れていても目を通すだろう」という予測の上にリマインダーは成り立ちます。

逆に言えば「覚えていたら見るだろう」ではリマインダーとしては信頼できないシステムだと言えます。これはまあ当たり前の事なんですが、意識していない人もいるかもしれません。

紙の手帳に予定を書くならば、時間の空いたタイミングで手帳を見る習慣が必要ですし、そんなものが無ければ、Googleカレンダーにメールで通知してもらうしかありません。どちらにせよ、自分がどんな環境でどんな仕事の仕方をしてどんな習慣を持っているのか、を知らなければ信頼に足りうるリマインダーは構築出来ません。

リスト

リストの最大の要件は「違う文脈のものを入れない」、これにつきます。と、いうかこれ以外ありません。レビューでリストをチェックして「最新状態」にするのも文脈を保つためです。

「今日すべきこと」のリストに「今日してもしなくてもどっちでもいいんだよな」を入れたり、「今日したいこと」を入れたりすれば、それは「今日すべきこと」のリストとしては機能を失います。

プロジェクトのリストにシングルタスクが混ざっても、その逆でも同様です。

逆に言えば、リストを見たときに「それは何のリストなのか?」というのを自問する必要があるのかもしれません。

GTDには優先順位がないという話を聞きますが、実際は「プロジェクト」に認定し「次の行動」を決めている時点で優先順位が発生しています。そうでなければそれは「いつかやる・たぶんやる」に入っているはずです。

リストがうまく機能していないのならば、一つ上、さらに上ぐらいの視点から自分の優先順位を確認しなおす事が必要かもしれません。だいたい人間は、有用かつ必要だと思ったこと以外はやりたがらないものです。別にGTDはやりたくない事を成し遂げるための技術ではありません。そういう意味で、長期的にGTDを運用していく場合はプロジェクトごとの週次レビューだけではなく、もう少し長いスパン・高い視点のレビューを実行する必要があります。

備忘録ファイル

ここまで書けば、この辺の説明も特に不要ですが、一般的に備忘録ファイルと呼ばれるモノも、要するに「特定の日付で必ず目を通すもの」であれば何でもOKです。逆に言えば、ファイルを43個揃えただけではそれは機能しません。

日付に紐づけたファイルを準備する→何か日付に絡む情報が入ってくる→それを適切な備忘録ファイルに入れる→毎日その日付のファイルを確認する、という状態と行動(習慣)があって、はじめて信頼できるシステムになります。

だから、日めくりカレンダー一枚一枚にクリアファイルを貼り付けても備忘録ファイルとして機能させることができます。同様にGoogleカレンダーに「○○の書類を確認すること」と書いておいても、備忘録ファイルとほぼ同じと言えます。

要は、日付に紐づけたリマインダーとファイル保存の二つの機能を持っているのが備忘録ファイルというわけです。

さいごに

今回はGTDに使えるツールの注意点について考えてみました。単にGTDツールを導入したからといって信頼できるシステムが手に入るわけではない、というのは至極当たり前の事ですが、始める前には理解しておいた方がよいでしょう。

メモ帳を買ったとしても、持ち歩かなければ意味をなしませんし、持ち歩いても実際にメモしないと何も残りませんし、メモを書いたとしても後で見返さなければ効果を発揮しません。

つまり、単にメモ帳を持つのではなく、メモ帳を「装備」することが必要ということです。あるいは「心の中にメモ帳を持つ」と言い換えることができるかもしれません。

これは習慣というのが一つのキーワードになります。日常的に習慣になっているものをツールに使うか、新しい習慣を身につけるかの二つの方向性が考えられます。

どちらにせよ、「信頼できるシステム」というのはツールだけの話ではないというのは最低限の土台です。ある意味では、そのシステムに相対する自分というものにどうしても視線を向けざる得ない、というのがGTDの面白い所であり、面倒に感じる点なのかもしれません。
※上の部分がよく分からない人は、GTDを実践している人に、使っているツールの良さを聞いてみてください。何がどういいのか、きっと力説してくれると思います。

編集後記:
いろいろ書いてみて思うのは、GTDについて説明するのは本当に難しいということ。具体的なシステムの在り方は人それぞれです、と言ってしまえばそれまでなんですが、それだと踏み込みが足りないような気もします。

全体像から概要を説明するパターンと、実際のツールの動作から形を組み立てて行く方向があって、メルマガの方では全体像の方から切り込んでいってますのでBlogでは実際のツールの動作からいってみようかと考えています。

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GTDにおける「信頼できるシステム」とは何を意味するのか

今回は、GTDにおける「信頼できるシステム」について考えてみたいと思います。

発端は、こちらのエントリー。
Nozbeの使い方~その11(信頼できるシステムについて)(このまま一生β版)

GTDの最初のステップとして、頭の中にある気になる事全てを信頼できシステムに預ける というものがあります。
この信頼できるシステムと言う言葉の意味する所はなかなか分かりにくく、Twitterのタイムラインでもよく議論されているのを目にします。
このシステムという言葉については、さしあたり使用するツール、道具ということで問題ないでしょう。

この「信頼できるシステム」という言葉の意味するところについて、いくつか書いてみます。

基本的に言えることは、

  • 独立した「信頼できるシステム」というものが存在しているわけではない
  • 信頼できるシステムというのは、信頼しているシステム
  • 信頼できるシステムはツール+フローで成り立っている

この3つです。この辺を寄り道して考えてみましょう。

信頼できているシステム?

実はこの辺の話題は、待合室の方で一度書きました。

信頼しうるシステムを持っているかどうか 「信頼できるシステムと手書きのリスト #gtdjp – 私的言語」を読んで」(R-style 待合室)

そこでは、こんな風に書いています。

信頼できるシステムというのは、変な言い方だが使っていて安心できるツール、と言うことだ。それに任せれば「漏れ」も「ミス」も無いよ、と思えるシステムの事だ。

これを具体例で考えてみましょう。

信頼できる日めくりカレンダー

「日めくりカレンダー」を想像してください。365日が1ページずつになっていて、一日経つごとに一枚めくっていく、古風な感じのやつです。

あなたは、毎朝起きたときにそのカレンダーをめくる習慣があるとします。あるいは2355のように、日付が変わったタイミングでめくるとしてもかまいません。どちらにせよ、日中目にするとき、そのカレンダーがその日の日付になっている、という状態を毎日維持しているということです。

そうしたとき、その日めくりカレンダーは、あなたにとって「信頼できるシステム」になります。今が2月11日として、3月4日に忘れてはいけないイベントがあれば、その日付のページに「Evernoteセミナー」と書いておけば、「忘れるかもしれない」という不安に苛まれることはないはずです。

毎日それをやっていて、そこに書いておけばかならず目にするという習慣が自分にあることが分かっていれば、その「先送り」が必ず機能するであろうことが「実感」できるわけです。

信頼できない日めくりカレンダー

では、別のバージョン。あなたは日めくりカレンダーをめくる習慣がなかったとします。一週間に4日ぐらい毎日めくって、週末にまとめて3ページぐらいめくる。こういうやり方でカレンダーを使っていたとしましょう。

その場合、このカレンダーは今日の日付を確認するツールとしても、予定を「先送り」するツールとしても信頼できるシステムとはいえません。

あるいは、一年のうち12日ぐらいページが欠落していたとすればどうでしょうか。あるいは、特殊な紙で出来ていて、書いたインクが20%ぐらいの確率で消えてしまうような場合ならどうでしょう。あるいは、鉛筆でしか書けなく、誰かがいたずらでそれを容易に書き換えられる環境だとしたら。

このどれもが信頼できるシステムとは呼べません。

ツール+フロー=信頼の醸造

これと同じような例は日常の中でも、そこらじゅうにころがっています。例えば家の「鍵」。普通の人は自分の家の鍵を「信頼」していると思います。家に帰って、鍵を取り出して解錠しようとするとき「この鍵で本当にあくのだろうか?」とは心配しないはずです。なぜ心配しないかというと、何度もその鍵でそのドアを空けている経験を持っているからです。

あるいは逆の意味での「信頼」もあるでしょう。その鍵を掛けておけば、家の中のものは安心だ、という信頼です。これも、基本的にその瞬間までは泥棒に入られていないから感じられる「信頼」です。もし、一度でも泥棒に鍵をこじ開けられた経験があるならば、同じ「鍵システム」には信頼を感じられなくなるでしょう。

トータルで言えるのは、ツール単体に信頼が内在しているわけではないということです。

基本的には、ツールとそのフローの継続が信頼を生み出します。つまり、日めくりカレンダーを誰かがリマインダーとして使いこなしていたとしても、それをそのまま自分の家に持ってきた段階では「信頼できるシステム」とは呼べない、ということです。

毎日めくって日付を更新する、そして毎日それを目にするという行動習慣とセットになってはじめて「信頼できるシステム」として日付に関するリマンダーの機能を担うことができるようになるわけです。

もちろん、ツールそのものにも日付の歯抜けがないなどの基本的な機能要件はあります、しかしながら、そういった基本的事項さえクリアしていればどのようなツールであっても「信頼できるシステム」になりうる可能性を秘めています。アナログノートでも、情報カードでも、カレンダーでも、アプリケーションでも、おなじです。

さいごに

「信頼できるシステム」という概念自体は、それほど難しいものではありません。難しいのはその維持です。

『ストレスフリーの整理術』には次のように書いてあります。

本当に信頼できる整理システムを維持していくには、折に触れてより高いレベルから自分の頭の状態やシステムを点検し、更新していかなければならない。

要点はここにあります。信頼できるシステムが先にあって、それを使えばバリバリGTDができるようになる、という考えだとある時点できっと止まってしまうと思います。そうではなくて、システムを維持している行為の中で、信頼がうまれてくるものなのです。

もちろん、すでに信頼できているツールを使ってGTDを実施することは効率的です。日めくりカレンダー、日常的に持ち歩くメモ帳、押し出し式のファイル・システム、なんだって良いのですが、「自分が普通に使っている」ツールにGTD的な機能を持たせていくというアプローチは、その他のアプローチに比べても使いやすいことは間違いありません。

毎日システム手帳を目にして、いろいろ書き込んでいる人が、あえてクラウドベースのタスク管理システムを使わなければならない理由はありません。もちろん、使ってはいけないというわけではありませんが、新しく「必ず目を通さなければならないもの」が一つ増えてしまうことは念頭に置いておいたほうがよいでしょう。

今回は、「信頼できるシステム」の言葉的な意味から考えてみました。次回(来週?)は、GTDを構成する要素を「信頼できるシステム」にするためには何を満たせば良いのかを考えてみます。

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書評 「ストレスフリーの整理術 実践編」(デビット・アレン)

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「ストレスフリーの仕事術」「ストレスフリーの整理術」に続く第三弾。監訳も同じく百式管理人である田口元さん。

第一弾の「ストレスフリーの仕事術」はウェブサイトに記載されていた文章をまとめ直したもので、エッセイ風の仕上がりでした。対して「ストレスフリーの整理術」はGTDという大きな一つの枠組みを提示したもので、かなり「ガッツリ」系の内容になっていました。若干わかりにくいという評判も聞きましたが、あの一冊を読めば「GTD」について大まかな理解をすることができるはずです。

ただし、「ストレスフリーの整理術」には足りていない部分があります。まず各フローの具体的な意味合いについての説明。手順についての説明はありましたが、それが何を意味するのか、についてはまではフォローされていませんでした。本書では今まで使われていた用語をよりわかりやすいものに変え、フローの意味することを詳しく解説してあります。

もう一つが「垂直的視線」の話。この縦方向の話がないと「GTDでボトムアップすぎて・・・」という評価になってしまいます。このあたりも「〜の整理術」ですこし触れられてはいましたが、水平と垂直の統合という部分に関しては掘り下げ具合が弱かったように思います。本書ではそのあたりもかなり詳しく説明されてあります。

今回の第三弾は「実践編」と銘打っていますが、むしろ「GTDについての理解」をより深めていくための一冊だと思います。

大まかな内容

サブタイトルは「人生というゲームと人生というビジネスに勝利する方法」。
章立ては以下の通り。

第1章 イントロダクション GTDの新しいレベルへ
第2章 GTD現象
第3章 すべてを機能させる
第4章 自己管理の基礎
第5章 状況のコントロール 収集
第6章 状況のコントロール 見極め
第7章 状況のコントロール 整理
第8章 状況のコントロール 見直し
第9章 状況のコントロール 取り組み/行動
第10章 状況のコントロール 人生と仕事に活用していく方法
第11章 将来への見通し
第12章 将来への見通し 次にとるべき行動
第13章 将来への見通し プロジェクト
第14章 将来への見通し 注意を向けるべき分野や責任を負っている分野
第15章 将来への見通し 目標とゴール
第16章 将来への見通し 構想
第17章 将来への見通し 目的/価値観
第18章 将来への見通し グレイシーズガーテン再訪問
第19章 GTDを総合的に活用する 実践編
第20章 最後に

章立てを見てもらえばわかりますが、「状況のコントロール」と「将来の見通し」という二つの大きなカテゴリーが中心的なテーマになっています。。そしてこの二つこそがGTDの肝といってもよいでしょう。

GTDが目指すところは「集中して物事にあたること」です。完璧な整理システムを作ることでもないし、一日24時間をフル活用することでもありません。GTDがやっていることは、ある意味では「集中力マネジメント」と呼べるかもしれません。

人は「これは自分のやるべき事だ」とはっきり認識していれば、自然と集中できます。もし集中できないのなら、他に気にかかる何かがあるか、あるいは「これって本当に自分がやるべき事なんだろうか」という疑問を持っているか、そのどちらかでしょう。

GTDを構成する要素は、「集中して物事に当たるための準備」として捉えることができると思います。そう考えるとちょっと違って視点からGTDを見つめることができるかもしれません。

新しい時代の技術とツール

あまりにもこの本から得られた示唆が多すぎるので、一回の書評で書ききることはできません。このあたりはメールマガジンの連載か、ブログなどで少しずつ消化していきたいと思います。

本書を読む中で、GTDとEvernote、そしてドラッカーのマネジメント、これらがある種同一の方向性を示しているという弱めの確信(あるいは強めの気づき)を得ました。これからの社会で要求されるものは、いままでの社会とは違ったものになっていくでしょう。

そして違った社会の要求に応えるためには、違ったアプローチが必要になってきます。それがGTDの「考え方」であり、Evernoteが提供するものであり、マネジメントの手法である、と強く感じます。

さいごに

本書は前著で足りなかった部分を補い、さらに深めることが意図されているようです。

というわけで、本書を読む前に未読の方は「ストレスフリーの整理術」を読まれた方がよいと思います。そして少し自分なりにGTD形を作ってみてもよいでしょう。その上で読み始めれば、本書はぐっと理解しやすくなると思います。

最後に一節だけ引用しておきます。

本書は、あなたがやらなければならないことのために何をやらなければならないかが曖昧なときに、それを見極めるようにするための指南書である。

意味の取りにくい文章ですが、言わんとすることは伝わってきます。こういうアプローチを持っているかどうかで、人生の「バランス感覚」というのは大きく変わってくるのではないでしょうか。

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GTDは何のために行うのか?

私はかなり天の邪鬼な性格をしている。流行しているものがあれば疑いのまなざしを向けるし、誰かが大声で正論を述べればたとえ私自身がそれに同意していても何かしらの反論を組み立てたくなる。その天邪鬼の対象は自分自身にも及ぶ。

ささかやかな人体実験

以前「うつの原因は食べ物にあった」という本を読んだときに、「よし、しばらくサプリを飲もう」と思い立った。サプリにもピンキリあるのだが基本的なビタミンとカルシウム・マグネシウムを飲むことに決めた。
※ちなみにこれが一番安かったからだ

しばらく飲み続けていると確かに効果があるような気がする。朝の目覚めがずいぶんと楽になったし、日中でも「もうだめ」と思うタイミングがだいぶ後ろにずれた。疲れにくくなった、というわけだ。しかし、ここであの天の邪鬼が顔を出す。

これって本当に効果があるのか?
そういう疑念がモクモクと湧いてくる。別にプラシーボでもなんでも身体が元気になればいいじゃんか、たいした金額でもないんだし、という思いはあるにはあるのだが、ある種知的好奇心の呪いのように気になってしまう。

そして人体実験の始まりだ。といってもたいしたことをするわけではない。単にしばらくサプリを飲まないというだけ。もちろん正式には「何の効果も無いはずのサプリ」を飲まないとプラシーボかどうかは判断できないわけだが、そこまではこだわらない。

サプリ無しの生活を続けてみると確かに「身体が重く」なることを発見する。その段階で私の中で「サプリの飲むことには一定の効果がある」と初めて認められる。もちろん、これは飲まなくなったことでプラシーボ効果が無くなったというだけかもしれないので、科学的な証明としてはまったく意味はない。

ただ、「このサプリメントを飲む習慣は身体を軽くする」という効果だけは確かめられた事だけは間違いない。つまりサプリを飲まなくても何かしらの影響で_例えば季節的な変化など_で体調が改善するということはあり得る。もしかしたら、たまたまこのタイミングでそういった状況になったのかもしれない。

サプリをしばらく飲まない事で身体が重くなったとすれば、それがサプリ本来の効果であれ、プラシーボ効果であれ私の身体が何かしらの影響を受けたということは間違いない。とりあえず継続する理由はそれで十分だ。

私の中の承認はこのようにして行われる。

GTDが日本で流行しない理由

さて、上の話は長めの前置きなわけだが、取り上げたいのはこの問題である。

GTD Japan Review(3) 日本でGTDが流行らない理由(works4Life Season VI)

さて、以上の話と+αをまとめて言えることは、日本では、アメリカのように、GTDを心底必要とする人間が会社の中枢部におらず、GTDを誰かに適用した後展開が難しい。だから、日本ではアメリカほどGTDが流行らないのでは、と私は想定する。

確かに、GTDが一番の最適環境は忙しい状況に身をおいている環境である。そして日本ではそのような環境にいる人間は仕事を回している現場の人間であって、経営層に近い状態にあることは難しい。経営層はすでにそれなりの力を持っており、自分自身が能力を発揮できるように、仕事の量を調整できる立場にいる。GTDは仕事量を調整できにくい立場にいるからこそ必要となるのだ。

論点としてはなかなか面白い。確かにGTDは「ライフハッカー」の中ではかなり浸透している言葉ではあるが、ビジネスパーソン全体に裾野を広げてみると、強い影響力を持っているとは言い難い。

著者のnomico氏の論旨はまとめると

・経営陣はGTDを必要と感じていない→組織の下の方に展開されない

ということになるだろうか。もしどこかの組織の経営陣が「GTDサイコー!」と思っていれば、それが「組織全体に導入され、やがて広がりを見せる」となるだろう。しかし現状はそうなっていない、ということだ。

この仮説が正しいのかどうかはわからない。しかし現実的に今の日本ではGTDがそれほど流行しているとは言えない。そこには理由があるはずだろう。

気になるのは「そもそも現場で働く人間がGTDを必要とするかどうか」だ。以下は@shimoyamaさんのBlogより

効率化の罠 生産性の向上と仕事のコントローラビリティ(When you were young)

しかし、現実としてサラリーマンであれば2日の余剰を生み出しても、その2日をまたアウトプットを出すことに割り当てられます。それは仕事それ自体を自分でコントロールできないからです。よくよく考えれば生産性の向上や効率化を説く本というのはだいたい非サラリーマンによって書かれているものです。代表とも言えるGTDにしてもコンサルタントである著者の仕事術です。そして、それをうまく実践しているのも多くはフリーランスで活躍されている方です。

中略

以上は、日本でなぜGTDが流行らないのか?という疑問に答えるものでもあります。仕事に対するコントローラビリティが低い状況では効率化は逆に自分の首を締めることになるので多くの人が率先しないのです。もし、効率化によって生み出される余剰を自分の自由にできるとすればもっと生産性を上げる取り組みは活発になるのではないでしょうか。

大雑把にまとめると「GTDによってもたらされる効率化は忙しさをもたらすだけ」という日本のビジネスパーソンの状況ではGTDなど積極的には受け入れられない、ということ。確かに日本のビジネスパーソンは仕事に対するコントローラビリティが低い事は間違いない。

効率を上げるという文脈でGTDを見た場合、それが受け入れられない事はありえるかもしれない。

ただ、私はGTDを効率を上げるためのシステムとは認識していない。結果的に効率はあがる、ということはあるだろうが、まず効率化ありきというものではないと考えている。

そして、その意味では普通のビジネスパーソンでも経営者でもGTDを導入するメリットはあると思う。GTDが持つ意味については後述することにして、まずなぜGTDが流行していないかについて考えてみたい。

3つの理由

GTDが日本で流行しない理由は、「なぜ、ノウハウ本を実行できないのか」から見付けることができると思う。

この本の中で「知識を行動に移せない理由」が3つ上がっている。

  • 情報過多
  • ネガティブなフィルター装置
  • フォローの欠如

これがそのままGTDが日本で流行しない理由の説明になると思う。

情報過多

GTDでぐぐってみると、トップが「Getting Things Done – Wikipedia」。ウィキだ。その下が「誠 Biz.ID:Getting Things Done(GTD)まとめ」で、その次が「連載:GTDでお仕事カイゼン!|gihyo.jp … 技術評論社」。その後にGTDに関連するブログ記事などが出てくる。

上の連載記事を読めばGTDについては理解できると思う。ただ、その他の「解説BLOG」の数が多いわりには、メインとなる「GTD」のサイトは存在しない。日本でGTDならこのサイトという決まり決まったものがなく、解説記事などや解釈などについてのBlogは数多存在している状況だ。

Blog記事の内容は個人の解釈によって違う部分もでてくるので、当然「共通規格」というものは存在しない。流れ自体は同じでもアレンジしている部分がたくさんあるので、初心者は一体どれをやれば良いのかまったく見当も付かないだろう。これが情報過多だ。

ネガティブなフィルター装置

これは上にも関連しているが、あまたのやり方があるので、「これで正しいのだろうか」という疑念が生じてしまう。そしていろいろなやり方を「つまみ食い」するという流れに陥りがちだ。加えてビジネス本ブームの影響もある。いろいろなやり方を試してダメだった人がGTDだけを特別視理由はない。これもダメなんじゃないかと思いながら試せば当然結果もそれに引きずられる。

フォローアップの欠如

「なぜ、ノウハウ本を実行できないのか」の中にこんな一節がある。

「行動を変え、望むような結果を得るには、仕組みとサポートと説明責任が必要です。」

そう、行動を変えるためには知識を伝達するだけではまったくもって不十分、というわけだ。そして今の日本にはこの環境がほぼ無い状況だ。

GTD人口も低く、GTDマスターがたくさんいるわけはない。英語でDavid Allenに質問することができない人も多い。こういった環境の中ではフォローアップは確実に欠如する。

ただ、これは今後改善することは十分考えられる。人口が増えてくれば徐々に「環境」はできてくるだろう。しかし現状では難しいと言わざる得ない。

これらの理由から「日本でGTDが流行していない」と私は考える。つまりGTDの中に潜む何か、日本社会の労働環境に潜む何かが問題を持っているわけではないということだ。GTDに関しては単にティッピングポイントを超えていないだけ、そんな印象を受ける。

では次にGTDが持つ意味について考えてみたい。それを導入すれば何が得られるのか、ということだ。おそらくGTDを効率を上げるためのものとして捉えているだけでは「参加者」を増やすことはできないと思う。GTDがもたらすものについての理解を広めることがGTDブームの下地作りになるだろう。

何のためのGTDか

私はGTDを継続し続けているし、土曜日の週次レビューは欠かすことのできない「週課」である。週次レビューに関しては「状況をコントロールできている」感覚を得るために特に重要だと思っている。しかし、ここに至るまでには例の天の邪鬼が一度登場している。

これって本当に効果があるのか?
こう考えた私は、約2週間週次レビューをやらなかった事がある。その二週間は本当に悲惨だった。もちろんタスク管理はしているのだが、どうにもうまく進まない。正確には「進んでいる感じ」がしない。また、気がかりな事が増えてタスク処理中のミスが増えた。

晴れた昼下がりに川沿いを散歩していたら、突然砂漠のど真ん中に地図も渡されず放り出されたような心境の変化だった。今でも時間が取れずに十分な週次レビューを実施できないと似たような感覚を覚える。

そういう状況の中では自分の意識しない部分でかなり大きな負荷(ストレス)がかかっているのだろう。とりあえず疲れるのだ。目的地を知らない軍隊の進行は兵隊の疲労度を増すというのに似ている。

逆に週次レビューを行っていると、どれだけタスクが目の前に積まれても「なんとかやれる」気がしてくる。実際は切り捨てたり、次の週にまわすタスクがあるので「完璧にこなせる」わけではない。ただマッドスルーはできる。そういう自信は湧いてくる。こうして私の中でGTDは承認された。

GTDに「ストレスフリー」という言葉がついて回るのも納得できる。それは自分自身の地図を作る行為だ。少なくともそれが目的の一つだ。そうして地図を作った結果、効率よいルートを進めるようになるかもしれない。でもそれは私は副産物だと考えている。

あくまで抱え込んだ荷物を下ろすこと。それが第一だ。100も200もタブを開いたブラウザーの動作を想像してみて欲しい。今見ないサイトは「お気に入り」に入れておけば十分だ。

もう一つの目的

もちろん、荷物を下ろすことがだけが目的ではない。もう一つは「再構築」することだ。重要なことや重要でないことを分別したり、細分化したり、膨らませたり、など。こういった変化は常に起こりうる。

ライフハックトーク「GTDの週次レビューを成功させるたった1つの問いかけ」の中で堀氏が以下のように述べている。

堀 週次レビューが「頭をもう1度空にする」という作業だけだと思っている方も多いですが、もう1つの大きな役割はプロジェクトレベルで実行可能なアクション、手元のレベルで実行可能なアクションというように、全体のバランスを見直す作業です。GTDはこのように常にアテンションをバランスさせて管理する仕事術なんです。この辺り、常に時間を管理するタスクシュートとはいい対比ですね。

これが目的の二つ目だ。リュックサックを背負ったまま中身を整理することはできない。「お気に入り」に入っていないウェブサイトは分類することもできない。地図を持たない進行はルートを決めることができない。

状況を自分の管理下に置くためにはどうしても一度荷物をレビューする必要があるわけだ。

まとめ

基本的にGTDはノウハウではなく、一つのシステムを自分の生活の中に組み入れる事である。それはシステムであり習慣でもある。他人のやり方がそのまま通用するわけではない。
GTDの軸となる考え方を理解し、他人のやり方も参考にしながら、実践し、自分なりに改良を加えて「最適化」していくしかない。そしてそのためには「メインとなるコンテンツ」と「フォローアップ」していくシステムが必要だ。

フォローアップについては今後GTDを実行している人が増える中で徐々に形作られていくと思う。勉強会が増えていけば自然にその役割をこなすだろう。「メインとなるコンテンツ」はなかなか難しい。David Allen氏が日本語でのコンテンツ展開をするか、代理人的な人が出てくるか。少なくともGTDでググったときにウィキより上位に来るような「公式サイト」ができるとそれがメインコンテンツとなるだろう。

そういう状況がうまれてくれば、確実にGTDは拡がっていくと思う。今は準備段階なだけだ。

最後に一つだけ言いたいのは、GTDは特定の人が使うように限定されたものではないということだ。主婦でもボランティアでも「ストレスフリー」の状態を得ることにメリットはあるだろう。現在「ストレスフリー」の状態で無い人であれば、ビジネスパーソンだって、経営者だって、活用できる。少なくとも私にそう考えさせるだけの力がGTDにはある、ということだ。


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GTDのリストを見直す リスト・レビュー

GTDにおける基本の仕分けの処理は、inobxの中身を

  • ゴミ箱
  • いつかやる/多分やる
  • 資料
  • プロジェクトリスト
  • プロジェクトの参考情報
  • 連絡待ち
  • カレンダー
  • 次にとるべき行動

に割り振っていく作業です。しかしながら、これはあくまで基本なので自分の使いやすいようにアレンジしていく必要があります。

ライフハッカー[日本版]に 「デヴィッド・アレン直伝、GTDのためのタスク仕分けリスト」ではさらに細分化されたリストが掲載されています。

  • 必要ないし、やりたくない=「ごみ箱」
  • その意義をもう少し考えるべき=「保留」
  • もう少し情報が必要=「参照」
  • これを使う=「ツール」
  • 見てみたい=「デコレーション」
  • もう少し進めば、選択肢のひとつになるかも=「次のアクション用リマインダー」
  • 短期的な成果を振り返るべき=「プロジェクトリスト」(週次レビュー要)
  • プロジェクトをやる上で必要なもの=「サポートアイテム」
  • 将来、やってみたいかも=「いつか/たぶん」
  • ある前提条件をクリアしたら、やってみたいかも=「予定」(レビュー日を事前に定めておく)
  • より大きな成果を出したい=「ビジョン・目標」(より長い期間をおいて成果をレビュー)
  • 自分が気になることで、ほかの人がやること=「待機」(最低でも週次でレビュー)
  • 繰り返しの作業のとき考えるべきこと=「要チェック」

基本のリストにないものがいくつか加えられています。

リストの要素を抽出する

では、これらのリスト近い要素を持ったものごとにまとめ直してみます。

不必要

「ごみ箱」

必要ないものを入れておく所。「絶対的なゴミ箱」と「もしかしたらゴミ箱」の二つの種類に分けることもできるかもしれません。

醗酵

「保留」
「参照」
「次のアクション用リマインダー」
「いつか/たぶん」
「予定」(レビュー日を事前に定めておく)

そのままでは使えない、直ぐに行動を移せないのがこのグループ。備忘録的意味合いもありますが、次の次のステップを覚えておくためのもの。

レビュー(状況確認)

「プロジェクトリスト」
「ビジョン・目標」
「待機」

週次レビューや月次レビューの際に参照し、状況を確認するためのリスト。地図と現在地点のようなもの。

参考情報

「サポートアイテム」
「要チェック」
「ツール」
「デコレーション」

行動する際に見返す情報や、単に見返すためのリスト。

リスト・レビュー

GTDにおけるリストは、上の四つの属性に分類できると思います。

・不必要
・醗酵
・状況確認
・参考情報

リストの名前や中身はその人それぞれで使いやすいものを構築していけばよいと思います。ゴミ箱を複数作ったり、参考情報の分類を細かくしていったりと、アレンジはさまざまあるでしょう。ただ、そのリストをどのように使うのか、どんな目的があってそのリストを作っているのかを明確にしておく必要はあります。

そうした上で、随時のレビュー時に、このリストは必要なのか、新しいリストは必要ではないか、リストの形式は変えられないか、というリストのレビューを行い、GTDの「最適化」を行うことが継続してGTDを行っていくためには必要なのではないかと思います。

関連エントリー:
整理の整理 〜システム・レビューの必要性〜(シゴタノ!)

参考文献:

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