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『セルパブ戦略』のScrivenerのプロファイル

先日発売した以下の本ですが、

これまで通り、Scrivener+でんでんコンバーターの体制で作っております。

今回は、そのScrivenerの設定をご紹介。実際の中身と合わせてご覧いただくと、より一層理解が深まるかと思います(遠回しな宣伝)。

では、いきましょう。

Scrivener
カテゴリ: 仕事効率化, 教育

Binder

ファイルの構成は次のようになっています。

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「章」を担当するフォルダが上位で、その下に本文を担当するファイルがあり、さらにその下にコラムを担当するファイルがあります。本文とコラムを別の階層に割り当てることでコンパイル時の処理を変えるのが狙いです。

Separators

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「===」は、でんでんコンバーターにおける改ページ処理。

章の扉ページ、本文、コラムでそれぞれ改ページが発生するようになっています。

Formatting

章の扉ページ担当。
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本文担当(コラムあり)。
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本文担当(コラムなし)。
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コラム担当
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章のタイトルは、h2のタグを指定。本文、コラムはそれぞれh3の指定です。今回は、本文のコラムあり・なしで指定は変えていませんが、やろうと思えば変えられるのがScrivenerのすごいところです。

また、本文とコラムは同じh3ですが、それぞれ別のclassをあてています。フォントサイズやalignの処理を分けるためです。でも、同じH3なので、本における目次上は同じように扱われます。

直CSS

あまりスマートではありませんが、本文中にもCSSの記述があります。

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まずコラムは、全体をdivで括っています。で、cssでフォントサイズを小さくし、右寄せにした上で、左側にマージンを取るようにしました。本をお読み頂ければ、「これはコラムです!」とはっきりわかるようになっているかと思います。

いくつか実装のパターンを考えたんですが、これが一番手軽でした。でも、あまりスマートではありません。

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章の扉ページにあるエピグラフの処理。Scrivenerではフォルダにもテキストを埋め込むことができるので、それを使っています。フォンサイズを小さくし、著名・著者名に関しては右寄せのデザインを指定してあります。

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また、「おわりに」に含められている「おわりにのおわりに 謝辞にかえて」と「おわりのおまけ」は、改ページがない方が良いだろうと判断して、ページ分けの処理を行わず、こうして直に###(でんでんコンバーターにおけるh3)を書いています。

さいごに

以上が『セルパブ戦略』のプロファイルでした。

CSSファイルに関しては、でんでんコンバーターのデフォルトファイルに少し手を加えたものを使いました。上記で出てきたような、オリジナルのclassに関するスタイルを追加したものです。それ以外は、基本的に何もいじっていません。

というわけで、ご自分でScrivenerファイルを構成する場合の参考になれば幸いです。

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ScrivenerにiOSアプリが登場。さて、ファーストインプレッションは

統合執筆環境ツールであるScrivenerにiOSアプリが登場しました。iPhoneあるいはiPadで使用可能です。

Scrivener
カテゴリ: 仕事効率化, ブック

アプリの感覚などは、公式動画をご覧頂ければ十分でしょう。

機能については、他のブログさんがきっと上げてくれることを期待して、当記事では軽く触れるに留め、ファーストインプレッションを中心にお送りします。

位置づけと画面紹介

まず、比較ですが、フルスタックバージョンがMac版であり、それとかなり近いバージョンがiPad版、そして簡易版がiPhone版と位置づけられそうです。コアとなる機能はどのバージョンでも同じであり、どれもが十分に「Scrivener」ではありますが、できることには違いがあります。

その点を考慮すると、メインで使うのはMac版、モバイル用途はiPad版、ちょっとした作業はiPhone版という使い分けが良さそうです。公式動画でもiPad版が選択されていることを考えると、iOSアプリの中心はiPad版と見ておいてよいでしょう。

では、ざっくりとiPad版の画面紹介。

IMG_0720

アプリを立ち上げた状態では、中身は空っぽです。すでにMac版を使っている方は、Dropbox経由でファイルを取り込むのが良いでしょう。

IMG_0721

DropBoxと連携させ、リンクするフォルダを決定します。デフォルトのままであれば、DropBox直下のAppsフォルダにScrivenerフォルダが作成されるので、そこにScrivenerファイルを投げ込めばOKです。

IMG_0722

インポートするとこんな感じになります。

IMG_0723

当たり前ですが、Mac版と同じ構成になっています。エディタもごく普通にリッチテキストが扱えますし、書式設定のいくつかはきちんとMac版で設定したものを引き継いでいます。エディタ背景色の選択は限られていますが、#000000~#FFFFFFで選びたい人はそれほどいないでしょう。

IMG_0724

iPad版では、コルクボード画面もきちんと表示されます。

IMG_0725
※カードを指で動かせる

これ、結構良いんです。Mac版だとマウスで操作するんですが、iPad版だと指でカードをいじれます。「まるで情報カードを扱っているような感覚」__これが宣伝文句としてどれだけ機能するのかは謎ですが__がちょこっと味わえます。ただし、画面サイズの問題は残りますが。
※だれかiPad Pro版の感想を。

他のツールで言うところのExportに当たるcompileもきちんと実装されていて、Mac版ほど細かい指定はできませんが、PDFやらなんやらに書き出すことが可能。ちょっとした原稿、あるいはプレビュー用のファイルくらいならiOS版でも問題なさそうです。

わざわざ買う意味は?

少し触った印象では、「モバイル版のScrivener」という感触で、Mac版の完璧な代替とはなりそうもありません。あくまでMac版との併用が前提といったところでしょうか。

大きな違いは、以下の二つ。

  • テンプレートからのプロジェクトの作成
  • compileの微妙な設定

Mac版では、標準でさまざまなテンプレートが準備されていますし、自分でそれを作ることもできます。私みたいに「何冊も電子書籍を作る」ような場合は、テンプレートが使えるとかなり省力化が図れます。この点は、長期的に使って行く上で結構大切です。ただし、これは今後のバージョンアップで使用可能になるかもしれません。

もう一つは、出力であるcompileについて。

正直私は、Scrivenerの最大の魅力は「精緻なcompile制御」にあると考えています。詳細は割愛しますが、本当にかなり細かい制御できるのです。複数のテキストをまとめて別の形式に出力するツールは他にもありますが、これくらい細かい制御ができるツールはなかなかありません。その機能だけでも十分使うに値します。

現状iOS版では、それほど細かい設定はできませんし、狭い画面に大量の設定項目が表示されてもそれはそれで使いづらいものがありそうです。その意味で、やはりメインはMac版であり、iOS版はそのモバイルタイミングを埋めるものと言えるでしょう。

逆に言えば、モバイルタイミングがまったく存在しないなら、「あえて」買う必要まではないかもしれません。「あったら便利」であるとは言えそうですが。

Ulyssesとの比較

となると、似た__それでいて全然別の__アプリのUlyssesとの比較が気になってきます。

Ulysses
カテゴリ: 仕事効率化, ライフスタイル

まず、MacとiOS端末でテキストを共有する、という用途に限って言うならば、Ulyssesに軍配が上がるでしょう。一番の違いは、Ulyssesはマークダウンであり、それはつまり普通のテキストファイルということです。世の中にはリッチテキストでなければいけない文章というのもあるのですが、メモ段階ではプレーンなテキストで十分がことが大半です。

またUlyssesは、シングルライブラリであり、どこのプロジェクトにも所属しないような所属不明メモを簡単に扱うことができます。Scrivenerはあくまで「プロジェクト単位」であり、所属不明なメモの管理には向いていません。

ただし、Ulyssesは構造を構築することはあまり得意ではありません。むしろ「かなり面倒」と言ってよいでしょう。一つの階層を作り、そこにテキストの断片を配置した上で、それぞれを並べ替えることは非常に得意なのですが、そこから複雑な構造を立ち上げていくことには最適化されていません。細かい構造は文章の中のマークダウンで明示することになりますが、書き手として見た場合、全体の見通しが立ちにくい状況がそこにはあります。

Srivenerはファイルそのもので構造を明示するので、そのコントロールは圧倒的に優れています。

さいごに

先日『月刊群雛 2016年 07月号』寄稿した「「月くら」計画から考えるセルフパブリッシング戦略」は、Ulyssesで執筆しました。たしか5000字くらいはあったと思いますが、構成自体は階層一つ分で済んだからです。

もしこれが「第一章」「第二章」「第三章」とあり、それぞれに節や項が入り込んでくるような中規模の構造を持つ文章(というか本)であれば、Scrivenerが活躍したことでしょう。

Scrivenerは、シングルライブラリではなくワンプロジェクト指向で、中規模以上の構造構築に適しており、精緻な書き出し制御ができる__そういうツールです。そして新たに登場したiOS版は、そのプロジェクト進行の、モバイルタイミングを埋めてくれそうです。

まずは、ファーストインプレッションとしてはそのような印象でした。今後使ってみることで、また違った感想も出てくるかもしれません。

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WorkFlowyの3種のExport +α

WorkFlowyには、作成したアウトラインを出力するためのパターンが3つ用意されています。

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※メニューから「Export」を選択

Formatted
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Plane Text
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OPML
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昔は、「表示されたテキストを選択→コピー→別の場所に貼り付け」、ができるだけでしたが、最近はファイルのダウンロードも可能になっています。

Formatted

ごく簡単に言えば、リッチテキスト。ワープロソフトなどに貼り付ければ、「箇条書き」の形式で貼り付けられます。

たとえば、Evernoteに貼り付けてみるとこうなります。

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同じものをCotEditor(プレーンテキスト)を貼り付けるとこう。

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行頭のバレットが消え、単に空白スペースの数だけで階層が表示されていますね。これはこれで使い勝手があるかもしれません。

ちなみに、このFormattedをファイルでダウンロードすると、html形式となります。箇条書きの形式はリストタグ(ul,li)による表現です。

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※ダウンロードしたファイルをブラウザで閲覧

簡単に解説すると、項目(トピック)のclassは”name”、noteのclassは”note”となっています。正規表現による置換にでもお使いください。

PlaneText

その名の通りプレーンなテキスト。でも、普通にコピペすると、「いやいや、欲しいのはそれじゃないから」的に行頭に「-」が付いてきます。noteは行頭と行末に「”」です。これはダウンロードしたテキストファイルでも同じです。

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このままではまるで使いものにならないのですが、正規表現による置換を使えば、マークダウン形式に変換できる可能性があります。ようは、「- 」を「#」に、「 – 」を「##」に置換すればいいわけですね。ただし、本文が入っている階層がバラバラだとややこしいことになります。

あるいは、行頭に「- 」が必ず付いてくることから、Scirvenerの「text and Split」で読み込ませる手もあります。

Scrivenerにテキストファイルを分割してインポートする機能。そしてEvernoteからScrivenerへ。

分割場所を示す記号に「- 」を指定すれば、綺麗に行頭の文字が消えてすべての項目がScrivenerに読み込まれます。ただし、WorkFlowy上の階層構造はいっさい消えてしまう点には注意しましょう。

OPML

いわゆるアウトライン形式。正式名称はOutline Processor Markup Language(アウトライン・プロセッサ・マークアップ言語)です。

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※テキストエディタで開いてもさっぱり

この形式でダウンロードしておくと、他のアウトライナーアプリに読み込ませられます。また、たいていのマインドマップアプリもこの形式に対応しています。

もし本文をnoteに格納しているなら、Scrivenerへの移行も簡単です。

WorkFlowyからScrivenerへインポート

「いやいや、noteとか使ってないし」という方は、以下の変換スクリプトが役に立つかもしれません。

トピック圧縮ハサミスクリプト|マロ。|note

noteはnoteでも別のnoteですが、最下位項目をnoteに変換するブックマークレットが提供されています。

ふつーにコピペ

ちなみに、Exportを経由せず、普通に項目を選択してコピーし、別のツールに貼り付けたらどうなるでしょうか。

プレーンなテキストエディタなら、こう。

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リッチテキストエディタ(Evernote)ならこうです。

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ようするに、Formattedなわけですね。
※おそらくChromeだとうまくいきません

さいごに

WorkFlowyはすばらしいツールですが、不思議とExportの使い勝手があまりよくありません。たぶん、それもまた本ツールの設計思想と関わっているのでしょう。

ちなみに、テキストファイルで扱う一番面倒のない方法は、Formattedからコピペして、半角スペースを置換で一気に削除してしまう方法です。

※これを
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※こうする
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階層は無くなりますが、使い勝手はあがります。

というわけで、皆様も楽しいアウトライン・ライフを。

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ツールのアフォーダンスと心のモード

先日紹介した『考えながら書く人のためのScrivener入門』に、「大学生・小野みきさんに聞く、Scrivenerの使い方」というユーザインタビューが掲載されていて、これがなかなか面白かった。体験的というか実感のこもった話がいくつも出てくる。

 それくらいの長さになってくるとちゃんと考えてからでないと書けなくなってきます。その頃、先輩や教授に、付箋紙や情報カードで構成を組み立てる方法を教わりました。面白くてしばらくそれでやっていたんですが、あれは場所を取るし、ノリは落ちてくるし、書き終わるまで片付けられないし、誰でもできるものではない気がします。

ここでの「それくらいの長さ」とは、大学の講義の課題で原稿用紙10〜20枚程度の分量を指している。たしかにそれぐらいの分量となると、頭だけではまとまった文章は書けないだろう。ツールの補助が必要となる。

しかし、付箋紙や情報カードも弱点を抱えている。まさに小野さんが指摘するような弱点だ。この適切な弱点の指摘から、単に情報を得ただけでなく、実際に彼女がそれらのツールを試してみたことが伺える。彼女はこう続ける。

 それに、そうやって構成を考えてから書き始めても、いざ書き出してみるとどんどん変わってしまいます。結論は変えなくても、やっぱりこれは後に回そうとか、細かいところですね。ところがワープロソフトってそういう、考えて書くような使い方をするとすごく使いづらいことに気がつきました。Wordならアウトライン機能がありますが、Pagesはそれもないですし。

すごく本質的な指摘である。(アウトライン機能を持たない)ワープロソフトは考えて書くような使い方にはあまり向いていない。もう少し言い換えれば、考えながら書くような使い方を補助するようなツールではない。その通りではあるが、もう少し詳しく見ていこう。


ワープロ、あるいはワープロソフトは、文章の書き方に劇的な変化を与えた。『ワープロ作文作法』でも『「超」整理法』でも触れられているが、「とりあえず書いて、後から直す」ことが非常に簡単になった。となると、原稿用紙に向き合う姿勢と、ワープロに向き合う姿勢は自ずと変化してくる。なにせ、メディアはマッサージである。

ワープロは、原稿用紙に比べて気楽に書き始められる。すべての文章を書き出してから、構成を整えることだってできる。原稿用紙で同じ作業をしようとすると、たとえそれが10枚〜20枚程度であっても、非常な苦労を強いられる。だから、そう、ワープロは「考えながら書く」ことを許容した。あるいはその枠組みを広げてくれたと言えるだろう。

それを可能にしたのは「編集機能」である。つまり、削除・コピー・ペーストといった機能だ。もちろん書き足しもそこ加えられる。

これらの機能によって実現されるのは、たとえば「配置を後から変える」といったことだ。どこかの段落をコピーして、別の場所にペーストする。その他の要素を動かす必要はない。簡単だ。原稿用紙ではこうはいかない。

Scrivenerの分割されたテキストやアウトライナーが実現している項目の移動は、原理的にはこのコピー&ペーストと同じである。「ある段落を選択する→コピーを選択する→別の場所に移動する→ペーストを選択する」という一連の行動を、「項目をある地点から別の地点にドラッグする」という行動に集約的に(代表的に)置き換えているに過ぎない。でも、それが大切なのだ。

なぜなら、原稿用紙だって「編集」はできるからだ。ただしそれが非常に面倒な作業だからほとんどの人はそれをやりたいとは思わない。結果、強い熱意を持つ人だけがチャレンジする行為となる。でも、ワープロに移行すればそれほどの熱量は必要とされない。それがアウトライナーだったら? もっと熱量は低くて済む。

もともとワープロでも、各文章・各段落は「操作可能な対象」である。operableなobjectなのだ。しかし、そこには複数のステップが必要であり、アフォーダンスは存在しない。「ほらほら、操作できますよ! してみましょうよ!」と私たちに訴えかけることはない。実は、その点が大きいのだと思う。特に、知的操作に関わる作業において、そうした認識の影響は計り知れない。

操作そのものに知的複雑さ(あるいは知的負荷)が必要になると、もともとの知的な作業のパフォーマンスに影響を与えてしまう。これは仮説でしかないが、それほど無理な仮説でもないだろう。逆のことも言える。操作そのものに負荷が少なかったり、あるいは誘導要因があったりするとスムーズに流れていく。

アフォーダンスに手を引かれ、私たちは思考のダンスを踊るわけだ。


それに関連して、もう一つ面白い指摘がある。

 書き方は変わっていないと思うんですが、やりやすくなったと思います。付箋もカードも昔からある方法ですけど、Scrivenerは、そういう方法とMacで書くことを素直にくっつけたように感じます。
 そうなったときに一番大きく変わったのは、Scrivenerのアイコンを見るだけで「あ、書かなきゃ」って気になるようになったことだと思います。Pagesだと日常のささいな用件とか、劇団の事務的な書類も作りますが、Scrivenerではそういうものは作らないですから。教授や団長の顔を見て「あ、書かなきゃ」って思うことに似ているかもしれません。そういう気になるのは、専用アプリのいいところだと思います。毎日すごくよく使っていても、Evernoteのゾウのアイコンを見たときは全然違いますから。

ここではツールが持つコンテキストが指摘されている。あるいは心のモードとツールの関係とも言えるだろう。

私はCotEditorを開くと、「ブログの文章を書かなきゃ」という気分になる。が、これと同じことは別のツールでは起きない。この心理的な差異は非常に面白いのだが、それは私がこれまで長い間CotEditorでブログの文章を書いてきたからだろう。心が馴染んでいるのだ。

逆に私はScrivenerを起動して「あ、書かなきゃ」とは思わない。むしろ「あ、構成しなきゃ」と思う。これは私がScrivenerを主に構成するためのツールとして使っているからだろう。だから、Scrivenerでゼロから文章を書こうとすると非常に苦労する。心のモードがツールに対応していないからだ。

あるいはこういうのは、習慣によって形成された後付けのアフォーダンスと言えるかもしれない。


ツールがある種のアフォーダンスを持ち、それが特定の(知的)行為を促す。結果、そうした行為の回数が増える。そうすることによって、ツールと心のモードがリンクし、後付けのアフォーダンス(と呼びうるような何か)が発生する。

これはセルフコントロールの武器にもなる。なにせ私はCotEditorに切り替えて、command + n を押せば文章を書くモードに心が切り替わるのだ。個人的な体験を振り返って言えば、ネクタイを締めたり制服を着替えたりするようなものに近い。

これはテクニックと言えるだろうか。あるいはノウハウと言えるだろうか。いささか属人的過ぎるし、「時間の経過」や「慣れ」といったものも伴う。扱いは難しいだろう。

では、これはライフハックか。そう、これはライフハックである。

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【書評】考えながら書く人のためのScrivener入門(向井 領治)

遂にScrivenerの入門書が発売となった。

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思い返してみると、2008年の以下の記事が発端だった。

物書きをする人の楽園:Scrivener [Mac OS X] | Lifehacking.jp

これを読んでぐぬぬとなり、試用版を経てから購入と至った。たしかにアプリとしては少し高いが、もちろん損した気分は一切無い。

Scrivener
カテゴリ: 仕事効率化, 教育

それでも当初は、「階層構造を持つテキストを管理するのに便利だね」ぐらいの認識であった。紙の書籍のような10万字にも及ぶ原稿を管理するのに最適なツールなのだ。他にも執筆を補助する機能が盛りだくさんである。

でも、私が本当にScrivenerのすごさに気がついたのは電子書籍を作るようになってからである。このツールの「コンパイル」は非常に使い勝手が良い。「そうそう、そういうことしたいんだよ」というのがだいたい実現されている。考え抜かれた細やかなツールである。

実際例をお見せしよう。最近発売した『これから本を書く人への手紙』の原稿データである。

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本文となるものが一つのフォルダにまとめられ、それ以外はDraftの直下に並んでいる。

ちなみに、実際の本の目次はどうなっているかというと、当たり前のようにすべてフラットに並んでいる。

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じゃあ、以上のようにフォルダにまとめる意味はどこにあるのかというと、これがすごくあるのだ。実際の本のページを眺めてみよう。

こちらが「はじめに」だ。

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そしてこちらが第一章の「道を決める」。

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大きく異なることにお気づきだろうか。

「はじめに」では、見出しと本文が同一のページに置かれているのに対し、「道を決める」は見出しだけがページとなり、さらに縦のホライズンラインが入っている。それによくみると、章番号も表示されている。まったく違うデザインである。では原稿データではどうなっているか。

screenshot

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まったく同じである。つまり、Scrivenerのコンパイル機能によって上のようなデザインの違いを「自動的に」生成しているのだ。

話がマニアックになってきたので、開き直ってマニアックな話を続けておくと、コンパイル時のフォーマットは次のように設定している。

screenshot

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この「当てるフォーマットを変えられる」という点で、「フォルダにまとめる」という意味が出てくるのだ。このすごさ・ありがたさはやはり自分で使ってみないと(=そのニーズがそれほど切実なものかを理解しないと)実感できないだろう。でもまあ、かなりすごいのである。

そんな素晴らしいScrivenerなのだが、二つ欠点がある。

  1. メニュー周りがすべて英語
  2. 機能が多すぎる

日本初のScrivener入門書である本書では、みごとにこの問題に取り組んでいる。1.はストレートに「日本語化パッチ」の導入を丁寧に解説し、2.は基本的な使い方に絞り込むことで対応している。正直私もScrivenerの常用者であるが、すべての機能を把握しているわけではない。それでも便利に使えるツールなのだ。

本書では、Scrivenerの簡単な全体像を示し、アイデア出しから本文執筆そしてコンパイルへ、という一連のプロジェクトの進め方をフォローしている。本書で解説されている内容を頭にたたき込んでおけば、Scrivenerを使う上で問題はほぼ生じないだろう。

ちなみに私はコンパイル時の「正規表現による置換」機能を知らなかったので(おーじーざす)、本書は大変勉強になった。これでまた一つ「手抜き」ができるというものだ。それだけでも十分な価値があると言えるだろう。

もう一つ、本書にはおまけコンテンツとして小説家:藤井太洋さんのロングインタビューが付いている。普通、こういうおまけコンテンツは中だるみする中盤か、あるいは付録的に最後に掲載されるものだが、本書では冒頭である。

Scrivenerの説明に入る前にインタビューを載せるという構成に若干戸惑いを感じたのだが、そもそもScrivenerを知らないユーザーの方が多いわけだから、そのツールが実際にどう役立ったのかの話を持ってくるのは導入的に意義があるのだろう。ちなみにかなりマニアックな話が展開されているのでそれもまた面白い。

これでようやく、Scrivenerについて聞かれたとき提示できる本ができたことになる。さらに言えば、本書を土台としてScirvenerの使い込みテクニック集みたいな本も(長大にならずに)書くことができる。もちろん、当ブログで連載している「Scrivenerへの散歩道」も役に立つはずなので合わせてご覧いただけるとよいだろう。

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MacとiPhoneとiPadで使えるエディタ『Ulysses』

先日iPhone版が出たばかりのUlysses。

Ulysses
カテゴリ: 仕事効率化, ライフスタイル

Mac版は少し前から文章書きツールとして使っていたのですが、なんとなく慣れてきた感覚はあります。

Ulysses
カテゴリ: 仕事効率化, ライフスタイル

最初のうちは「Scrivener」と似たツール(同じカテゴリのツール)だと思っていたのですが、使っているうちにそうではないことに気がつきました。

今回はこのUlyssesについて書いてみましょう。

Ulyssesはワンライブラリである

Ulysses(ユリシーズ)は、ワンライブラリです。つまりEvernoteやWorkFlowyと同じ設計思想ですね。簡単に言えばファイルをつくりません。そして、一度馴染むとはるかにこちらの方が使いやすくなります。

Ulyssesはリッチテキストではない

ScrivenerやEvernoteはリッチテキスト指向ですが、Ulyssesはそうではありません。基本はプレーンなテキストで、そこにマークダウンが加わります。だから、基本的に動作は軽快です。

Ulyssesはエクスポートを前提とする

Ulyssesは、アーカイブ的に使うものではありません。どちらかといえば「作業机」といった感じです。

通常のテキストファイルだけでなく、HTMLやPDF、ePubといったフォーマットに出力できますが、何かしらそういうものへ「書き出す」のが本ツールの役割です。出口というか最終的なフォーマットの整形は別のツールで行うことも十分ありえるでしょう。

では、どんなツールか

基本的な概念は、以上を押さえればだいたいOKなんですが、もう少し詳しくみていきましょう。

以下が全体の画面。3つの領域に分かれています。

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一番左が「ライブラリ」、次が「シート列」、最後が「エディタ」です。まずは「ライブラリ」から。

ライブラリ

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Evernoteで言えば、ノートブックリストにあたるのがこの領域。iCloudの下にいくつかの項目(グループと呼びます)が並んでいますが、それらはすべて私が自分で作りました。このグループがテキストの「ひとまとまり」を管理する単位となります。

ちなみに、グループリストは、ノートブックリストと違いドラッグで移動可能です。そして階層を作ることもできます。このあたりはScrivenerのBinderに近い操作感覚です。もちろん、あるグループに含まれるテキストを別のグループに移動することもできます。

シート列

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Evernoteで言えば、ノートリストにあたるのがこの領域。ただし、この領域でも項目はドラッグで自由に移動できます。難しいことは特にありませんね。

エディタ

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実際に文章を書くことになる領域。基本はプレーンテキストなので、ScrivenerやEvernoteのように「装飾ボタン」うんぬんは特にありません。特徴があるとすれば、マークダウン(Markdown)が効く、ということです。

たとえば上記の例では一番上の行が「## 〜〜」となっています。マークダウンで「見出し2」(HTMLではH2)を意味する指定です。で、それを書いた行は、色とインデントが変わります。この変わり方(スタイル)は設定で変更可能なのですが、その辺の話はよいでしょう。

で、その見出しは、シート列にも反映されて、タイトルっぽく扱われます(もう一度、シート列の画像をご覧ください。タイトルっぽいものがあるのとないのがあって、ないものは文中に見出しの指定が存在していないシートです)。

よって「うち、マークダウンとかよくわからんし、あんま使わへんねん」という方でも、とりあえず「#」を使う見出しの指定だけ覚えておけばOK、ということは言えるでしょう。「#」が一番大きい見出しで、それ以降#の数が増えるたびに小さくなっていきます。それだけ覚えておけばバッチリです。

でもってUlysses

Ulyssesは、ワンライブラリ方式でファイルを作りません。だから、Evernoteと同じように何かを記録するたびにいちいちファイル名を与える必要がありません。「トウメイの首輪」という一行だけのフレーズ(言葉)を思いついたら、何の気兼ねもなしにそれを保存することができます。唯一それしか書かれていないシートだって簡単に作れるのです。

で、そのシートを使えそうなグループに移動させ、そこから文章を膨らませるでもよし、どこかの文章に組み込んでもよしと、自由に操作していけます。

この点に関して言えば、UlyssesはEvernoteよりもずっと軽快に「文章作成」に使えます。その点はむしろScrivenerに近いと言えるでしょう。

ただし、Scrivenerに比べると扱えるデータは少ないですし、エクスポート時に行える指定の細かさでも劣ります。たとえば私は自作の電子書籍をScrivenerで構成していますが、同じことをUlyssesでできるかと言えばそれは否です。よって、感覚的にはこの中間当たりに位置できるのではないかと今のところ考えています。

通常のプレーンなテキストエディタよりも、もう少し大きめのコンテンツ指向。しかし、Scrivenerほどではない。iCloudを使うことで端末を越えてデータを扱えるが、Evernoteほど完全なクラウドでもない。何かしら、そういった位置づけのツールです。で、大がかりなものが必要なければ、Ulysssesで十分、という声もあることでしょう。

あるいは別の視点から言えば、「少しアウトライナーに寄ったテキストエディタ」という言い方もできるでしょう。階層的表現力を持つエディタ、というような意味合いです。

どのような視点を持つのであれ、Ulyssesは(似ているようであっても)それ以外のツールとは異色の存在で、独特の「使用感」があります。その点は踏まえておきたいところです。

さいごに

個人的にはUlyssesは、「コンテンツ・プロセッサ」というカテゴリ名を与えようと思います。

ワード・プロセッサでもなく、ドキュメント・プロセッサ(私がScrivenerに与えたカテゴリ名です)でもない。「コンテンツ」を作る過程を支援するツール。それぐらいのサイズ感がおそらくはフィットするのではないでしょうか。

最後に蛇足になりますが、一番似ているのはWorkFlowyかもしれません。だからもろに用途が被る人は多いと思います。

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WorkFlowyからScrivenerへインポート

WorkFlowyからScrivenerに綺麗にインポートする方法を紹介します。

大まかな手順は以下の通り。

  • WorkFlowyからopml形式でExport
  • そのデータからopml形式のファイルを作成
  • そのファイルをScrivenerにインポート

エクスポート

WorkFlowyに以下のような項目があったとします。

screenshot

Exportからopml形式を選択。コピーします。

screenshot

何かしらのテキストエディタで新規ファイルを立ち上げ、さきほどコピーしたものをペースト。それを保存します。名前はなんでも構いませんが、拡張子を.txtではなく.opmlとしておきましょう。

※insert.opml
screenshot

インポート

Scrivenerで取り込みたいプロジェクトを立ち上げます。

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メニューの「File」から「Import」→「Files…」を選択。先ほど作成したopmlファイルを指定します。

すると、以下のように綺麗にアウトライン構造が取り込まれます。

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ちなみに、WorkFlowy上のNoteは、Scrivener上ではSynopsisと本文の両方に入るようです。

screenshot

さいごに

Scrivenerはアウトラインモードの機能があまり強くないので、WorkFlowyでアウトライン上の作業を行い、本文の執筆はScrivenerで、というやり方に使えるかもしれません。

また、Noteが本文として取り込まれるので、WorkFlowy上で執筆を進めていき、PDFやその他ファイルへの出力のためにScrivenerを経由させる、という使い方もできるでしょう。

どちらによせ、両方優秀なツールです。

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『ブログを10年続けて、僕が考えたこと』のScrivenerのファイル構成およびcompileの設定と使用したCSSファイルについて

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あいかわらず作成に使ったツールは同じです。

Scrivenerでテキストを構成し、.txtに出力。それをでんでんコンバーター変換して、KDPにアップロードという流れ。

でんでんコンバーターで少し凝ったデザイン(組版的な意味で)を行う場合は、作成後のepubファイルをzipにして開くことが必要だったりするわけですが、今回の本はでんでんコンバーターからの出力一発となっております。

それはあらかじめ「仕込んである」からなんですが、その辺も含めて今回は中身の方を紹介してみましょう。

Scrivener
カテゴリ: 仕事効率化, 教育

ファイル・フォルダ構成

まずはScrivenerの中身から。

ファイル&フォルダ構成はこのようになっています。

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まず「原稿」という大きなフォルダがあり、その下に本の素材となるファイルとフォルダが並んでいます。フォルダは章ごとに1つあり、その下にそれぞれの章の本文となるファイルが並んでいます。ただし、「扉」というファイルは「原稿」フォルダの直下に置いてある点に注意してください。後ほどのcompileでこの配置が効いてきます。

続いて、本文の中身。

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上の画像は、第一章のフォルダの中身です。第一章のテキストを収めたファイルがここにすべて含まれているわけですが、冒頭の数行に関しては、フォルダの中にあるファイルではなく、フォルダに直接書き込んである内容です。いちおう書いておきますと、Scrivenerのフォルダは、直下にファイルやフォルダを配置するだけのものではなく、そこに直接テキストを書き込むこともできます。
※テキストを入力すると、アイコンの表示が変わります。

こちらは「扉」のテキスト。

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ご覧の通り、マークダウンではなくがっつりHTMLが使われています。ここが組版的デザインのポイントで、でんでんマークダウンだけだとclassの指定ができないので、「じゃあ、もう直接HTML入れとくか」のノリで、それが記入されています。もちろん、対応するCSSもCSSファイル内に書き込んであるわけですが、それはまた後ほど。

separateの設定

separateの設定は次のようになっています。

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ほかはすべてシングルリターンですが、ファイル→フォルダの境界だけカスタム設定として「===」が入ります。「===」は、でんでんマークダウンで「(ファイル分割によって)改ページせよ」として機能します。先ほどのファイル構成をもう一度ご覧ください。

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ファイル→フォルダの境界となるのは(ファイルの次にフォルダが出てくるのは)、

「扉ファイル」→「第一章のフォルダ」
「第一章のラストファイル」→「第二章のフォルダ」
「第二章のラストファイル」→「第三章のフォルダ」
「第三章のラストファイル」→「第四章のフォルダ」
「第四章のラストファイル」→「第五章のフォルダ」
「第五章のラストファイル」→「おわりにのフォルダ」

の6つです。これはつまり、章と章の境目です。ここに改ページが入るようになっています。

このseparateの設定を使わず、本文に直接「===」を記入していっても、できあがるepubは同じです。ただし、こうした設定をしておくと、「記入し忘れる」というミスを防ぐことができます。また、校正作業でファイルの順番を入れ換えても、いちいち「===」の場所を移動させる必要がありません。

formattingの設定

formattingは、3つのパターンを使用しています。「第二階層のフォルダ」「第二階層のファイル」「第三階層のファイル」の3つです。
※第一階層のフォルダは、「原稿」という一番上のフォルダなので使用しません。またその階層にはファイルはありません。

一番簡単なのは、「第三階層のファイル」です。

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ここには本文が入っています。そこで、titleとtextを選択し、titleの接頭辞として、「### 」を指定します。

ここでのtitleはファイルやフォルダの名前ですので、たとえば「ブログの流れは絶えずして」というファイルならば、

### ブログの流れは絶えずして

ここから本文

といった感じでcompileされるわけです。
※###はでんでんコンバーターにおけるH3の指定。

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続いて「第二階層のファイル」。

ここに位置するのは、「扉」というファイルだけです。で、名前の通りこのページは扉ページなのですが、一行だけの言葉が置いてあります。このページを「第三階層のファイル」と同じにしてしまうと、少し問題が発生します。

### 扉

あなたのブログが、良き読者と共にあらんことを。

このように、でかでかと(h3で)「扉」と表示されることになるのです。さすがにそれはダサいです(あと、表示上の問題もあるのですが、それは後ほど)。

そこで、第二階層のファイルは、textは選択するものの、titleは選択していません。

というか話はまったく逆で、このファイルだけtitleを選択したくないので階層を分けているのです。

章の扉ページ

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一番ややこしいのが「第二階層のフォルダ」です。章のトップページに位置する要素です。

ここで使用するのはtitleとtext。そこまでは普通なのですが、接頭辞と接尾辞が込み入っています。

接頭辞と接尾辞は、簡単に言えば、

[○○ title △△]

の○○(接頭辞)と△△(接尾辞)を指定するものです。「第三階層のファイル」ではこの接頭辞を使用しました。で、この○○と△△にはなんでも入力できます。たとえば、○○に<h2>を、△△に</h2>を指定すれば、compile時には、

<h2>title</h2>

となるわけです。そして、接頭語・接尾語には複数行を入力することも可能です。ということは、

<section class=”titlepage”>

<div class=”titlepage-container”>

<div class=”titlepage-collectiontitle-placeholder”></div>
<h2 class=”titlepage-maintitle”>

を接頭辞に、

</h2>
<div class=”titlepage-subtitle-placeholder”></div>
<hr style=”border-top: 2px solid #bbb;” />
<p class=”titlepage-creator”></p>
</div>
</section>

を接尾辞に指定することも可能ということです。

そしてこれは、でんでんコンバーターが自動的に作成してくれる扉ページHTML(titlepage.xhtml)のほぼそのままのパクリでもあります(ある程度はカスタマイズしてあります)。

スタイルシート

が、単にこうしたコードを埋め込んでも、CSSが指定されていなければデザイン上の意味はありません。でんでんコンバーターが作成するtitlepage.xhtmlは、template.cssという特別のスタイルシートが当たっており、本文中に適用されるstyle.cssとは隔離されているのです。

だったら、混ぜてしまいましょう。

でんでんコンバーターの標準のスタイルシートに、epubをzip解体して中身を覗いたtemplate.cssを上乗せしてあります。これで、titlepage.xhtmlで使われているclass指定がそのまま使えます。

その他、標準のスタイルシートから変更を加えている点は、

  • blockquote,ulのフォントサイズをやや小さく
  • h3のmargin-bottomを少し広く
  • エピグラフ用のCSSを追加(フォント小さく、右寄せ)
  • h3のpage-break-beforeを常に

あたりです。

最後の「h3のpage-break-before」はページ制御で、h3の手前で改ページが入るようになっています。見出しごとにページの区切りがあるわけです。

しかし、この指定では、本の一番最初のページがh3で始まっていると、特に意味のない空白ページが生まれてしまいます。本の一番最初の要素がh3→その手間に改ページを入れなければならない→しかし、その手間には何の要素もない→空白のページが誕生、こういう流れです。

そこで、扉ページだけ第一階層に切り分けてtitleを入れないようにしているわけです。こうしておけばh3が入ることはありません。つまり、ここだけ手間に改ページを入れることを避けられるわけです。

この切り分けの強力さは、たぶん実際にcompileを体験してみないと理解しにくいかと思いますが、相当に便利な手法であることをここに宣言しておきます。

さいごに

以上のような、一見ややこしく、その実やっぱりややこしいことをいろいろやっております。

ただ、仕組みを理解するとすごく楽であることは間違いありません。構成を整えていると、文章の順番は結構な頻度で変わります。そのたびごとに、ページ構造を意識してコードを書き換えるのはわりと面倒なのです。

というわけで、上記の設定を確認しながら、実際に本の中身もチェックしてみるとより一層理解が進むかもしれません。宣伝です。

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[Scrivener+でんでんコンバーター]で各章の扉ページに画像を配置する

絶賛好評発売中の『Fount of Word -α-』には、珍しく画像が多用されています。

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各章の扉ページに、こういった画像が配置されているのです。

20141102120616
※本書は、ぜひ画面を縦にしてお読みください。

で、でんでんコンバーターにおいて画像の配置は以下のような記入を必要とします。

![代替テキスト](img.jpg)

こういう記入をしておくと、でんでんコンバーターが次のようなタグに変換してくれるわけです。

<img src=”img.jpg” alt=”代替テキスト” />

※代替テキストは省略することも可能です。

さて、『Fount of Word -α-』は全部で40の章があります。ということは、章の扉ページも40個あります。そのそれぞれに、上のタグを書いていく……。悪夢ですね。

でも、Scrivenerなら大丈夫!(テレビの通信販売風)

Formatting Hack

使うのはCompileのFormatting。

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この「Section Layout」を使うと、その文章のタイトル部分に細工ができます。先に結論を書いてしまうと、

![](word<$n>.png)

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という風に書きます。ポイントは<$n>の部分。

これは一種の変数で、一回呼び出されるたびに数が一つ増えます。n++なわけです。

つまり、上のように書いておくと、第一章の扉ページの部分では、

![](word1.png)

となり、第二章・第三章では、

![](word2.png)
![](word3.png)

となるわけです。もちろんこれが40個続いてきます。

これでいちいち画像タグを書いていく必要はなくなりました。あとは、この連番に合わせて画像ファイルを作成すればOKです。

階層ズラし

が、このまま普通にやってしまうと、「おわりに」とか「著者プロフィール」のページにもこの画像タグが挿入されることになります。それはちょっと嫌ですね。

というわけで、階層を分けます。本文にあたる文章はフォルダの中に格納し、「おわりに」などは第一階層に置いておきます。もちろん、逆でも構いません。ともかく階層をズラすのがポイントです。

そうすると、

screenshot

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というように、当てられるFormattingが変えられます。こうしてめでたく、本文の中だけに扉ページの画像タグを自動的に挿入することができました。

さいごに

もちろん画像ファイルを連番で作成する、という作業が若干面倒なわけですが、それはなんとかなるでしょう(大ざっぱ)。

ともかく、

  • Formattingでタイトルに細工
  • 変数を活用
  • 階層をズラす

という3つのテクニックを知っておくと、Scrivenerは界王拳3倍ぐらいすごくなりますのでぜひ覚えておいてください。

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Scrivenerの「Separators」と「Formatting」で「でんでんコンバーター」に改ページを入れる

先週のエントリーで、Scrivenerにおける改ページを紹介しました。

Scrivenerへの散歩道#011 ページを制御する

が、最終的な着地点をEPUB3と想定する場合、Scrivenerさんはやや非力です。コンパイルとして書き出せるEPUBのフォーマットがEPUB2なのです。

というわけで、Scrivenerからプレーンテキストで書き出し、それをわれらが「でんでんコンバーター」で変換する、というのが最近の私のお気に入りの手順なわけですが(※)、その場合、改ページの手法が変わってきます。
※詳しくはこちらのエントリーを

今回は、その手法について紹介しましょう。

Scrivener
カテゴリ: 仕事効率化, 教育

でんでんコンバーターにおける改ページ

基本的なところから確認します。

「でんでんコンバーター」における改ページは、ファイル分割によって行われます。

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シンプルに言えば、イコール記号「=」を3つ以上入れれば、そこで改ページが行われるよ、ということです。まずは、それを覚えておいてください。

実際は、その部分でファイル分割が行われます。通常であれば、EPUBファイルを構成するxhtmlファイルは、

bodymatter_0_0.xhtml

の一つなのですが、イコール記号「=」を3つ以上入れた行があれば、

bodymatter_0_0.xhtml
bodymatter_0_1.xhtml

となります。一つのファイルが二つに分割されたわけです。

電子書籍リーダーは、これらのファイルを連続で表示しますが、ファイルとファイルの境目に「改ページ」が生まれます。

一般的には、たとえば章ごとに、改ページ(ファイル分割)を入れておくのがスマートでしょう。大きすぎるファイルは、表示も遅くなるそうで、宗教的制約がないかぎりは、改ページ(ファイル分割)を使うのが吉です。

あたまとおしりに自動的に追加

Scrivenerを使う場合は、いちいちイコール記号を入れて回る必要はありません。コンパイル時のオプションで指定可能です。

方法は二つ。「Separators」あるいは「Formatting」。どちらも、境目に自動的に文字列を挿入する方法ですが、前者はおしりに、後者はあたまに挿入することになります。

「Separators」

まずは、「Separators」から。こちらは、ファイルとファイルの境目の制御です。たとえば、改行を入れるのか、入れないのか、といった制御になります。

オプションでは、以下のように表示されているでしょう。

screenshot

  • テキストとテキストの間
  • フォルダとフォルダの間
  • フォルダとテキストの間
  • テキストとフォルダの間

この4つの指定箇所があり、それぞれ、

  • Single return
  • Empty line
  • Page break
  • Custom

の4つが選べます。

ここで「Page break」を選択すれば、前回のページビューにおける改ページが入るのですが、今回注目したいのはCustomで、これを選択すると任意の文字列を間に挿入できます。

任意の文字列?

そう、イコール記号三つ以上ですね。

具体例を挙げてみましょう。

まず、「テキストとフォルダの間」に「===」を指定します。

f006b5a4bef184c9608357376220a8a9

ファイルの構成は次のような感じ。

screenshot

コンパイルで出力されるテキストファイルは、こうなります。無事、改ページ記号が自動挿入されました。

screenshot

Scrivenerでは、フォルダを使って章立てを分ける構成がよく行われますが、たとえば、以下のようなファイル構成ならば、

screenshot

「テキスト→フォルダ」のセパレーターに改ページ記号を指定しておくと、でんでんコンバーターでの変換時に、ばっちり改ページ(ファイル分割)が行われます。

0046af8727f0608b16069cf7c5cdd34f
※注意:フォルダのtitleが出力されないと、セパレーターも挿入されません。

ちなみに、「テキスト→フォルダ」のテキスト部分に直接改ページ記号を書き込んだとしても、コンパイル時のテキストファイルの見た目は同じになります。

しかし、この場合、構成をいじり、テキストの配置が変わってしまった場合、改ページ記号の場所も変更する必要があります。「Separators」で指定しておけば、どれだけ中身が変わっても、「テキスト→フォルダ」の間には改ページ記号が入ることになるので、手間が少ないと言えるでしょう。

「Formatting」

もう一つが、「Formatting」ですが、これについては以前ブログで書きました。

二冊目の電子書籍の製作手順(2) 〜Scrivener→「でんでんコンバーター」のちょっとしたコツ〜

上の記事の中頃に出てきます。

こちらはテキストあるいはフォルダの頭の部分に指定した文字列を入れる方法ですが、階層ごとに指定を分けられるので、フォルダの中にフォルダがあって「Separators」ではうまくいかない……、みたいな場合には便利でしょう。

「Separators」と「Formatting」のどちらが正しいということはありません。機能の特徴を踏まえながら、パズルを解くように手間少なく改ページを入れる方法を編み出してください。

CSSによる強制的な改ページ

改ページはしたいけど、ファイル分割はちょっと……という場合もありますね。

たとえば私のエッセイ集は30とか50とかのエッセイが入っていて、それぞれ改ページしてあります。もし、すべてをファイル分割すると、30とか50のxhtmlファイルができあがるわけです。まあ、読む人には関係無いのでそれでも良いと言えば良いのですが、ファイル分割を行わない、改ページの方法もあります。

それは、CSSの「page-break」を使う方法です。

page-break-before(HTMLクイックリファレンス)
page-break-after(HTMLクイックリファレンス)

たとえば、H2がエッセイのタイトルになっているならば、H2タグに”page-break-before:always”を指定しておけば、H2が登場する度に、その前に改ページが入ります。ちなみに、ラフに指定すると、どこに登場するH2にも効果が発生してしまうので、改ページしたくないところで改ページになってしまう可能性がある点には注意。

が、どうやって指定したらいいのか、という話は本稿の手に余りますので、適当にググってみてください。

さいごに

ふつうに作っている分には、章と章の間で改ページを入れる方法で問題ないでしょう。

数が少なければ、上記の話は一切無視して手で入力していくのもありです。が、構成が大きければ、Scrivenerのコンパイルオプションは非常に便利ですので、覚えておいてください。

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