色のない世界 #kdp60

 最初に世界から色が消えたのは、19歳のときだった。  僕はその日、傘も差さずに大雨の中を歩いていた。青春真っ直中の青年にはよくあることだ。シャツからズボンまでびしょ濡れになった僕は、家に帰り着くとやすりで削るようにタオ…

つぶやきの欠片

「つぶやきの欠片を集めたら、いったい何ができあがるんだろうね」と彼女は言った。 「つぶやきの欠片?」 ウィスキーを少しだけ流し込み、僕はイメージを膨らませた。 「きっと、綺麗なものはできないんじゃないかな」 「そう?」 …

レインおじさん

「いつも…その恰好を?」 僕は男に尋ねてしまった。 なにせ彼はいつも同じ服装なのだ。365日彼の姿を確認したわけではないが、僕が目にするときはいつも同じ服装である。そこから演繹的に導かれる仮説を確認したくなっても不思議な…