つぶやきの欠片

「つぶやきの欠片を集めたら、いったい何ができあがるんだろうね」と彼女は言った。
「つぶやきの欠片?」
ウィスキーを少しだけ流し込み、僕はイメージを膨らませた。
「きっと、綺麗なものはできないんじゃないかな」
「そう?」
「だって欠片なんだろう。モザイクみたいなものしかできないよ」
彼女はビールグラスについた水滴を人差し指でなぞる。
「そうかしら。たとえばちぎり絵ってあるじゃない。あれは、色紙の欠片を貼り合わせてるんだよね」
「まあ、そうだね」僕はビールグラスの高さぐらい頷いた。「確かにそうだ」
「だったら、つぶやきの欠片からでも綺麗なものってできるんじゃないかしら。私はそこに夢を感じるな」
夢?
「それは、誰が見ている夢なんだい?」僕が混ぜっ返す。
「かみさま、よ」彼女はストレートに返してきた。
「私たちのささいなつぶやきから、悔恨のつぶやき、賛美のつぶやき、愛情のつぶやき。それらをびりびりと破りとって、大きな紙に貼り付けるの。そうしたら、誰も想像しなかったような美しい絵が浮かんでくるのよ。素敵だと思わない?」
「でも、僕たちはそれを見ることができない。だって僕たちはかみさまじゃないから」
「確かにそうね。でも、それは問題じゃないのよ。そういう絵がそこにあるかもしれない。そう思えることが、翼になるのよ」
「汝の名、それは可能性という翼なり」
僕が歌い上げるようにつぶやく。
「シェイクスピア?」
「いいや、誰の言葉でもないよ。強いて言えば、そう、ちぎり絵みたいなものさ」

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