【書評】賢く決めるリスク思考(ゲルト・ギーゲレンツァー)
副題は「ビジネス・投資から、恋愛・健康・買い物まで」と盛りだくさんです。
原題はRisk Savvy。リスク賢者という訳が与えられています。
How To Make Good Decisions。いかにして良い決断を下すのか。
現代では、難しい決断を迫られることが多々あります。特に、変化が早く、未来が見通せないような時代ではなおさらでしょう。
本書はその助力となってくれます。
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※献本ありがとうございます。
目次は以下の通り。
- ●第1部:リスクの正体をとらえよ
- 第1章:人間はバカなのか
- 第2章:確実性は幻想にすぎない
- 第3章:なぜ守りの意思決定をしてしまうのか
- 第4章:恐れはどこからやってくる?
- ●第2部:賢く決める方法
- 第5章:投資に失敗しないシンプルな法則
- 第6章:リーダーは直観で決めている
- 第7章:ゲームから買い物まで
- 第8章:恋愛と結婚のリスク
- 第9章:医師の多くは検査結果をわかっていない
- 第10章:がんのリスクを知る
- 第11章:迫りくる危機への解決策
- ●第3部:リスク教育
全部で3つの部から構成されています。
第一部では、私たちとリスクの関係が、
第二部では、実際にそれらを用いて決定を行う方法が、
第三部では、リスク・リテラシーをいかにして身につけたらよいのか、という観点が提示されています。
本書には、具体例も多く、それはそれで役に立つのですが、重要なのは、この世界をいかに捉えるのか、という視点の提示でしょう。
3つのパターンが考えられます。
「確実性」
「リスク」(既知のリスク)
「不確実性」
世界の捉え方を誤ると、当然その対処法も誤ります。結果、悲惨なことが起きるわけです。
問題は、私たちが世界を勘違いする傾向があるという点です。本来「リスク」である世界を、「確実性」の世界と勘違いすることを、本書では「ゼロ・リスク」幻想と呼んでいます。ゼロ・リスク幻想は、本当に頻繁に見られて、議論を空回りさせる原因ともなっています。「絶対に〜〜な、○○」というのを求めると、高コストになるばかりでなく、現実性のないものしか手に入りません。
さらにやっかいなのが、「不確実性」な世界なのに「リスク」な世界だと認識することです。これはタレブの著作から「七面鳥の幻想」と名付けられています。いわゆるブラックスワンです。
ある家につれて来られた七面鳥は、毎日毎日餌をくれる男主人にこんな思いを抱きます。「この人は、昨日も、一昨日も、その前も餌をくれた。きっと、明日も、明後日も、その次も餌をくれるに違いない。この人はいい人だ」。クリスマスのその日、男主人の家のテーブルには丸々と太った七面鳥が、こんがりと焼かれて切り分けられています。
不確実性の世界では、何が起こるかわかりません。少なくとも、全ての出来事の期待値を計算し、最良のものを選ぶ、というアプローチは不可能です。
以前、このような記事を書きました。
R-style » 二種類の「何が起こるかわからない」
二種類の幻想のどちらに惑わされていても、大きな損失がまっている可能性があります。
しかし、人はリスクを恐れます。失敗を恐れます。ただし、それは克服できるのかもしれません。
どのような場面で、どのような意思決定を行えばよいのか。それを本書は解説してくれます。