【書評】賢く決めるリスク思考(ゲルト・ギーゲレンツァー) 副題は「ビジネス・投資から、恋愛・健康・買い物まで」と盛りだくさんです。 原題はRisk Savvy。リスク賢者という訳が与えられています。 How To Make Good Decisions。いかにして良い決断を下すのか。 現代では、難しい決断を迫られることが多々あります。特に、変化が早く、未来が見通せないような時代ではなおさらでしょう。 本書はその助力となってくれます。 ★Amazonリンクを入れる ※献本ありがとうございます。

目次は以下の通り。 全部で3つの部から構成されています。 第一部では、私たちとリスクの関係が、 第二部では、実際にそれらを用いて決定を行う方法が、 第三部では、リスク・リテラシーをいかにして身につけたらよいのか、という観点が提示されています。 本書には、具体例も多く、それはそれで役に立つのですが、重要なのは、この世界をいかに捉えるのか、という視点の提示でしょう。 3つのパターンが考えられます。 「確実性」 「リスク」(既知のリスク) 「不確実性」 世界の捉え方を誤ると、当然その対処法も誤ります。結果、悲惨なことが起きるわけです。 問題は、私たちが世界を勘違いする傾向があるという点です。本来「リスク」である世界を、「確実性」の世界と勘違いすることを、本書では「ゼロ・リスク」幻想と呼んでいます。ゼロ・リスク幻想は、本当に頻繁に見られて、議論を空回りさせる原因ともなっています。「絶対に〜〜な、○○」というのを求めると、高コストになるばかりでなく、現実性のないものしか手に入りません。 さらにやっかいなのが、「不確実性」な世界なのに「リスク」な世界だと認識することです。これはタレブの著作から「七面鳥の幻想」と名付けられています。いわゆるブラックスワンです。 ある家につれて来られた七面鳥は、毎日毎日餌をくれる男主人にこんな思いを抱きます。「この人は、昨日も、一昨日も、その前も餌をくれた。きっと、明日も、明後日も、その次も餌をくれるに違いない。この人はいい人だ」。クリスマスのその日、男主人の家のテーブルには丸々と太った七面鳥が、こんがりと焼かれて切り分けられています。 不確実性の世界では、何が起こるかわかりません。少なくとも、全ての出来事の期待値を計算し、最良のものを選ぶ、というアプローチは不可能です。 以前、このような記事を書きました。 R-style » 二種類の「何が起こるかわからない」 二種類の幻想のどちらに惑わされていても、大きな損失がまっている可能性があります。 しかし、人はリスクを恐れます。失敗を恐れます。ただし、それは克服できるのかもしれません。 どのような場面で、どのような意思決定を行えばよいのか。それを本書は解説してくれます。