魔女の呪い

会場は緊張感に包まれていた。 新しい元号の発表は11時からなので、あと30分は時間がある。会場では、さまざまなメディアの記者が、即座に記事を送信できるよう準備を整えている。紙のメモやノートを持っている記者はひとりもいない

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かつて壁があった。 その壁は人の行き来を塞いでいた。 ある人が壁を指さして言った。「あそこに壁がある。問題だ」 人々はその声に耳を傾けた。あまりにもそこに壁があるのが当たり前すぎて、人々はそれを壁だと認識していなかった。

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ハサミ

 男はハサミを弄んでいた。指かけはぬめりとした漆黒、刃は輝くような銀。それだけでどこか惹きつけられるそのハサミを、男は図書館で見つけた。奥まり、ジメジメとした空気が漂う一角に、堆く積まれた書籍。新雪のような埃。誰にも顧み

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ため息

 はあ。ため息をついた。一体何度目のため息だろうか。  ため息をつくと幸せが逃げてしまうなんて言葉があるけど、あれは嘘だ。幸せが逃げているからため息が出てくるのだ。観測者の認識違いによって、因果関係の混乱が生じている。ば

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