7-本の紹介

【書評】僕らの時代のライフデザイン(米田智彦)

正直にいって、悔しさ半分、楽しさ半分で本書を手に取った。

僕らの時代のライフデザイン
僕らの時代のライフデザイン 米田 智彦

ダイヤモンド社 2013-03-14
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※献本ありがとうございます

悔しさの方は、物書きとして。

本書のタイトルを飾る「ライフデザイン」というキーワードは、私の企画案ノートにばっちり記載されている。「あぁ、先を越されたか」と思ったことは間違いない。

楽しさの方も、やっぱり物書きとして。

このキーワードがどのように扱われているのか。そこからどんなストーリーが紡がれているのか。その点が気になった。まったく同じならば、私がペンをとる必要はなくなるし、違うならば、それはそれで執筆の動機付けになる。

読み終えてみてどうだったか。共感半分、なるほど半分、と言いたいところだが、物足りなさもあった。

概要


著者は、「ノマドトーキョー 」という生活実験型プロジェクトの主催者。ウェブサイトには「トランク1つで東京都内を遊動。昼は東京のどこかで仕事をし、夜は東京のどこかで眠る」と説明がある。

居住場所を一つに固定せず、その日の宿を渡り歩いてゆく。ポイントは東京という都市、そしてソーシャルでのつながりだろう。人口が密集し、さまざまなサービスが提供されている東京。そして、その上のレイヤーとしてSNSでゆるやかにつながる人々。この二つが結びついたとき、「ノマドトーキョー」という生き方が可能になる。

そんな生活実験を送ってきた著者が、自らの人生で体験したこと・考えたことが本書では語られていく。さらに、つながりの中で知り得た「新しい生き方」もあわせて紹介される。

章立ては以下の通り。

プロローグ「ノマド・トーキョー」という生活実験
第1章  「セルフデザイン」
第2章  「ワークデザイン」
第3章  「リビングデザイン」
第4章  大航海時代のキャリアデザイン
第5章  「あいだ」を行き来するこれからの人生設計

気になる疑問


第1章から第3章までの3つのデザインが、本書が提示する「ライフデザイン」の柱である。

個人的に物足りなさを感じたのはここだ。私自身は__その他に対する関心事と同様に__「ライフデザインとは何か?」という疑問に興味がある。本書では、「ライフデザイン」を実践している人々が多数紹介されているが、そもそもの「ライフデザインとは何か?」はあまり見えてこない。もう少し言えば、「デザイン」という言葉が持つ感触が捕まえきれなかった。

もちろん、そんな疑問に興味を持つのは私ぐらいだろうし、そんな方向に話を進めればどんどん抽象的方面に話が流れてしまう。「生きるとは呼吸することではない。行動することだ」とルソーは言ったが、もちろん、生きるとは議論することでも、何かを定義づけることでもない。その意味で、私が感じる物足りなさは、私固有のものなのであまり気にとめる必要もない。

今の時代からこそ可能な「新しい生き方」に興味があるならば、本書からさまざまな発見が得られるだろう。

自分なりの生存戦略


もちろん、著者は「皆さん、トランク一つで東京を旅するように生活しましょう」と提案しているわけではない。そんなことが可能な人の割合は東京を見渡しても限られているだろうし、過疎化が進む地域ではそもそもが無理な生き方である。

ポイントは、著者にとっての「ノマドワーク」を語る次の文章にある。

「会社をクビになっても、就職できなくても、元手をかけず小さいビジネスから始めて、場所や組織にとらわれず働きサバイバルしていく、その手段の一つ」

私は、今フリーランスで仕事をしているが、以前は__少しだけ__組織に勤めていた。その体験からいって、「フリーランスっていいよ、絶対おすすめ」などとは口が裂けても言えない。それぞれの職のあり方には、同じだけの分量の、方向性が違う苦労がある。どちらが良い、というのではなく、どちらが性に合うか、という話にすぎない。

ただ「この会社はもうダメです」という事態に直面したときに、呆然としながら沈没するタイタニックに居残り続けるのか、それとも少しでも生き延びる手段を探せるのかには大きな違いがある。

大企業に入って、○年目には係長、○年目には課長、・・・、で、定年退職して、老後は趣味の生活を送る。というライフプランが成立しない(というか、こんなものはプランとすら呼べない)社会において、生き延びるための手段を一つでも多く有しておくことは、決して悪いことではないだろう。

その手段を考える上で、「セルフデザイン」と「ワークデザイン」の章は参考になる。「働く」というのは、必ずしも「会社勤め」とイコールではない。「働く」はもっと多様な選択肢があるし、そこから自分で(ある程度は)選び取ることができるものだ。そう発想がシフトするだけでも、さまざまな手段を見つけられるようになるだろう。

重要なのは「何ができるか」、ではない。「できることを何か持っておく」ことだ。それが何であっても、自分が胸を張って「これができます」と言えるものを持っておくことは、これからの時代において大切なポイントになるだろう。

また、人々と多軸のつながりを持っておくことも有用だ。以前のエントリーで、<価値とは、「見出される」ものだ>と、私は書いた。
ジョブチェンジの心境 オッズとチップ あるいはささやかなエール

他の人が「これは価値がある」と思えば、それが価値なのだ。ということは、多様な人々とつながっておけば、あなたの中に含まれる「価値」を他の誰かが見つけ出してくれる可能性が高まる。

こうした要素を、私は「新しい時代の生存戦略」と位置づけているが、それはまた別エントリーで書くことにしよう。

さいごに


「ライフプランはノープラン」

というのが、私の座右の銘__ではないが、割と気に入っている言葉である。

一冊目の本のオファーを受ける前日まで、自分が物書きになるなんて考えたこともなかったし、結婚する1年前は「絶対結婚なんかしねーよ」と思っていたし、コンビニでアルバイトを始めたときは、まさか自分が店長となって店舗を切り盛りする立場につくとは思っていなかった。

まったく奇想天外(かつ波瀾万丈)な人生である。

しかし、自分を取り囲む環境が変化しても、意固地なまでに守っているものもある。生まれ育った田舎を出ずに、物書き業に専念しているのもそうだし、このブログのスタイルもそうだ。

おそらくその意味において、私もライフをデザインしていると言えるのだろう。

「ライフデザイン」というのは、新しい生き方を実践することではない。自分に合った生き方を選択するということだ。それが、これまでの社会に存在していなかったものであれば、「新しい生き方」として認知される。ただ、それだけの話である。

難しいのは、「自分に合った生き方」を見つけることだろう。それはデザイン思考の中で、探求していくしかない。

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