7-本の紹介

【レビュー】グローバル経営の教科書(日経ビジネスムック)

「グローバル経営の教科書」とお堅いタイトルですが、表紙はきゃりーぱみゅぱみゅさんです。

グローバル経営の教科書 「カワイイ」を支えるファッションビジネス最前線 (日経BPムック 日経ビジネス)
グローバル経営の教科書  「カワイイ」を支えるファッションビジネス最前線 (日経BPムック 日経ビジネス)
日経BP社 2013-04-11
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※献本ありがとうございます。

“「カワイイ」を支えるファッションビジネス最先端”と副題にあるように、最近のファッション業界を取り巻く環境を、「カワイイ」をキーワードにして解きほぐしていくムック本です。

概要


内容は大きく3つに分けられそうです。

1つは、世界展開を推し進めるアパレルの経営戦略について。2つめは、ファッション業界の「ものづくり」を支える企業のお話。最後の一つが、それを販売する日本の「百貨店」について。

メインテーマはアパレルの経営戦略になるのでしょうが、それを中心にしつつも周辺分野にまで目を向けないと見えてこないことはたくさんあります。たとえば、ブログについて考えるならば、それを取り巻くSNS環境を加味する必要がある、といったことです。その点で、このムック本の構成はなかなか良いツボを押していると思います。

また、コラム『いかにして「服」は生まれたか』も、ファッション業界を眺める視点を得る上で有用でした。「効率性」と「ファッション性」の両立。よくよく考えてみれば、難しい課題です。

その課題をファッション業界は常に抱えていて、きっと今後も抱え続けていくことでしょう。もしかしたら、コンテンツメイキングの世界にも似た課題が潜んでいるかも知れません。

H&Mの注目点


さて、メインコンテンツであるアパレルの経営戦略。目を引くのは、もちろん「ユニクロ」です。が、私は柳井社長の著作をいくつか読んでいるので、そのあたりはサラサラと読みました。

ぐっと興味を引かれたのは、ZARAやH&Mの経営戦略です。

基本的にファッションに興味がないので、こうした企業は「名前だけ知っている」状態でした。が、その経営戦略に触れてみると、関心のアンテナがどんどん伸びていきそうになります。特に、H&Mについては、”最強のアパレル”と呼ばれるのにも頷けました。

紹介したいポイントはいくつもあるのですが、ここでは二つだけ。

流動的な店舗作り


一つは店舗作りの考え方。

「H&Mの店舗には毎日、毎時間新商品が届く。そのため陳列を常に変化させている」

日本のコンビニでも毎週必ず何かしらの新商品がお店に入ってきますが、さすがに毎日のレベルではありません。唯一の例外が雑誌で、本の売り場は毎日ちょっとずつ変化しています。で、だいたいの人はコンビニに入ったら本棚に向かいます。「新しい本がないかな」とチェックするわけです。

高頻度で変化する陳列は__明らかにスタッフさんは大変でしょうが__お客さんを飽きさせず、かつ店舗に引き込む力を持っていると言えるでしょう。

また、顧客ターゲットごとに店舗のフォーマットや看板を変える戦略をとっていない点も面白いですね。

売り場のパターンを変えることで、同じ「H&M」の看板でも出店場所の客層にマッチした店舗を作る。これもコンビニでよく行われている手法です。ビジネス立地なら、日用雑貨の棚を縮小し、お菓子やデザート、事務用品の棚を広げるといったことが同じ看板のコンビニの元で行われています。

これは、店舗に入る前の安心感(同じ看板)と、入った後のわくわく感(違う陳列・展開)という異なった方向性の感情をうまく満たせる方法と言えるかもしれません。

明確なマネージャーの仕事


紹介したい二つ目がマネージャーの仕事。

店長の任務の1つは、副店長などの次のキャリアを考えながら仕事の一部を意識的に任せること。

ようは、次のマネージャーを育てることがマネージャーの仕事、ということです。一見すると当たり前のようにも感じられますが、

リーダーは自分の仕事をすべて任せられる人材を、自ら意識して育てなくてはならず、それこそが高い評価につながる。

と、その業務にきちんと評価がついてくるのがポイントでしょう。

これはつまり、「マネージャーの仕事とは何か?」がきっちり定義されているということでもあります。

ポストとしては存在しているものの、「結局その仕事って何をするのか?」が明確になっていない状況はよくあります。だから、上司は命令するのが仕事、みたいに考える人も出てくるのでしょう。が、これは大きな勘違いです。こういう勘違いは、組織のパワーを欠損させます。

そうした欠損が、このH&Mには皆無なのでしょう。強いはずです。

さいごに


本書では、日本の自動車メーカーとアパレルメーカーの類似点が何度か上げられています。読んでいると、確かに似ているな、と思える部分はたくさんあります。やはり「日本のものづくり」という点では同じなのでしょう。

で、私はこうした構造を、別の「ものづくり」の形、つまりコンテンツメイキングのジャンルに持ち込んだらどうなるだろうか、と連想しました。SPAモデルによる、(セルフ)パブリッシング。これについて考えてみるのも面白そうです。

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