3-叛逆の仕事術 7-本の紹介

「実験者の心構え」と「信じる心」 〜『習慣の力』より〜

チャールズ・デュヒッグの『習慣の力』を、複数回に分けて読み解く連載の第三回。

習慣の力 The Power of Habit
習慣の力 The Power of Habit チャールズ・デュヒッグ 渡会 圭子

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前回のエントリーでは、個人の習慣を変える方法を紹介した。今回は、それを実践する上で必要な二つのものを紹介しよう。

一つは「実験者の心構え」、もう一つは「信じる心」である。

実験者の心構え


「習慣を変えること」と「実験者」?

いまいち結びつきが薄いように感じるかもしれない。が、本書で紹介されている、ボブ・バウマンの言葉がそれらを結びつけてくれるだろう。

「実験でいろいろなことを試しているうちに、うまくいくことを見つけたんだ」

習慣を変えるために必要なことは、まさにこれである。

自分がどのような欲求によってある種の行動を起こしているのか。その行動が「習慣」であれば、それを私たちは直接意識できないことは前回触れた。だから、思いつく限りの要素を全て書き出す方法が有効である。

そうして、10なり20なりの欲求がリストアップされたとしよう。そのどれが「本命」なのかは事前にはわからない。方程式に当てはめたら答えが出てくる、というものではないのだ。その中から一つ、「おそらくこれかもしれないな」と見定めて、とりあえず行動に移すしかない。もし、実行してうまくいかなければ、別の欲求にターゲットを移し、同じことを繰り返していく。

これはなんだろうか。

そう、「仮説」と「実験」だ。

状況の中から仮説を立て、それに基づいて実験を進めていく。実験の結果を受けて、新たな仮説を立て、さらに実験を進める。そのループを回し続ける。そうやって、自分の習慣のコアを見つけ出すのだ。

ひとつの認識をかえる


何かしらの欲求を見つけ、それを変えるために行動するも、見事に失敗に終わる。

そういうとき「実験者の心構え」を持っていなければどうなるだろうか。

「やっぱり俺はダメなんだ。俺が変わることなんて不可能なんだ」

と思うかもしれない。

しかし、科学者が実験を失敗に終わらせても、「このプロジェクトが成功することは無いんだ」なんて思ったりはしない。一つの仮説が消えただけだ。むしろ、プロジェクトは前に進んだと考えるだろう。

習慣を変えるためにも、この心構えが必要である。

おそらく、この心構えを阻害するのは、一つの致命的な認識だ。それは、

「自分のことは、全て自分がわかっている」

という認識である。

こう考えているから、何かしらの方法を見つけたとき__実はそれが単なる「仮説」だとしても__それが「本当の方法」だと思い込んでしまう。だって、自分のことは自分がよくわかっているのだから。が、これは大きな間違いである。

私たちは、自分についてほとんどわかっていない。

RPGのダンジョンで、たいまつを持っていないと自分の周辺のごく狭い空間しか視野を得られないものがある。自分の自分自身についての認識など、その程度のレベルと考えて間違いない。記録という地図がなければ、私たちは自分の周辺しか目に入らないのだ。そして、それが世界の全てだと思い込んでしまう。

「自分のことは、全て自分がわかっている」

という思い込みを捨て、自分の行動を「観察」し、そこから「仮説」を立て、具体的な「実験」を繰り返していく。それが習慣を変えるためには必要だ。

「信じる心」


さて、「信じる心」はどうだろうか。

どうにも、この単語からはスピリチュアルな匂いが漂ってくる。と、感じる人もいるだろう。その気持ちはわからないではないし、「やれやれ、精神論か」と見切りをつけたくなる人がいてもおかしくはない。

しかしながら、信じる心、というか心の在り様は、決して無視できない要素なのだ。

できるだけ即物的に書こう。

あなたの目の前にはリモコンがある。電池も入っていて、あなたはそれが壊れていないことを知っている。言い換えれば、壊れていないと信じている。あなたはリモコンを取り上げ、電源ボタンを押すも、テレビがつかない。そんなとき、どうするか?間違いなくもう一度か二度くらいボタンを押すだろう。「リモコンの角度が悪かったのかな?」なんて考えたりしながら。何度かの試行の後、テレビに明かりが灯る。

あなたの目の前にはリモコンがある。あなたはそのリモコンが壊れていることを知っている。言い換えれば、きちんと機能しているとは信じていない。あなたは、__もちろん__リモコンを取り上げることすらしない。

何度かの試行、言い換えれば「実験」を続けていくためには、その行為の先にあるものを信じていなければならない。

因果は横に置いておく


少し抽象度を上げてみる。因果について考えよう。

「何か」を「信じる」、という行為。先に来るのはどちらだろうか。

信じるにたるべき「何か」が先にあって、その後にそれを「信じる」という行為がついてくる。これがごく自然な認識である。

しかし、世の中にはこれがねじ曲がっているものがある。

「必ずうまくいくに違いない」と信じるからこそ、「うまくいく」という結果がついてくる。そういうこともあるのだ。

もちろん、これは直接的に因果の糸で繋がっているわけではない。うまくいくに違いないと信じたからといって必ずうまくいくとは限らない。しかし、うまくいくと信じられなければ、うまくことが起きなかった、ということは十分にあり得る。

なんだか詐欺くさい感じがするかもしれない。

このあたりは、深く考え込まない方がよいだろう。この先の停留所は思考の迷宮だ。そろそろバスを降りるタイミングである。

が、たとえばこんなことは言える。

「自分にはアイデアなんて出せない」と思っている人は、決してアイデアは出せない。

これはもう、はっきりとしている。こういう人は、自分で出したアイデアを(無意識下で)ことごとく捨てるか、無視するかしている。本当はアイデアを出せるスペックがありながら、自分でそれを否定して、閉じ込めている。『アクセルワールド』で言えば、自身のシンイで縛られている。

そういうこともあり得るのだ。

さいごに


今回は「実験者の心構え」と「信じる心」について紹介した。

実験者の心構えは、『仕事は楽しいかね?』の

「遊び感覚でいろいろやって、成り行きを見守る」

にも通じている。

また、「信じる心」は、『ビジョナリー・カンパニー2』の「ストックデールの逆説」と似た要素がある。

どれほどの困難にぶつかっても、最後にはかならず勝つという確信を失ってはならない。
そして同時にそれがどんなものであれ、自分がおかれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視しなげればならない。

この「信じる心」は、繊細なテーマなので、また時間があれば別のエントリーで触れてみたい。

次回は「企業の習慣」について。

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