3-叛逆の仕事術 7-本の紹介

企業文化と習慣 〜『習慣の力』より〜

チャールズ・デュヒッグの『習慣の力』を、複数回に分けて読み解く連載の第四回。

習慣の力 The Power of Habit
習慣の力 The Power of Habit チャールズ・デュヒッグ 渡会 圭子

講談社 2013-04-26
売り上げランキング : 207

Amazonで詳しく見る by G-Tools

前回で「個人の習慣」については、一通り触れることができた。今回は「企業の習慣」に移ってみよう。

企業と習慣


企業が「習慣」を扱う場合、その対象は大きく二つ考えられる。

一つは顧客。つまり消費者だ。その行動習慣を分析し、何かしらのアプローチを加えることで自社製品の拡大を狙う。マーケティングでも、商品開発でもよく見られる視点だ。

『習慣の力』では、ファブリーズやペプソデントの成功事例がその文脈で紹介されている。が、こちらは主として「個人の習慣」に位置づけられるだろう。

もう一つ、企業がターゲットにしうるのが「社員の習慣」だ。つまり、企業の中の習慣。

社員がどのように考え、いかに行動するのか。その傾向を変えられるのならば、企業としてあげられる成果もまた変わってくるだろう。非常に重要なテーマだ。本稿で取り上げるのは、こちらの方の習慣である。

「私」を構成する習慣


企業と社員の習慣について考える前に、個人の習慣をもう一度思い出してみよう。

私たちの日常の大半は、「習慣」によって成り立っている。自由意志でいろいろ決めているような感覚を持っているが、実際のところ習慣が占める割合はとても大きい。でないと、脳はすぐにオーバーヒートしてしまうだろう。

私が朝起きて即座にTwitterアプリを立ち上げるのは、「偉大なる自由意志の決定」ではなく、単なる習慣の産物である。そういう産物は、日常という空間を満たす空気のようなものだ。そこにはあるのだが、私たちはそれを意識しない。

そんな小さな行動が積み重なり、「私の一日」を形成する。

そして、それは別の視点から眺めれば「私」を構成しているとも言える。誰かから何か言われたときに、つい「でも、〜〜じゃないですか」と反論から始めてしまう人がいる。そういうのは意識の産物ではなく、癖、つまり習慣なのだ。

しかし、それが自由意志の産物であれ、習慣によって生み出されたルーチンであれ、行動というアウトプットを作り出してしまえば、それがその人を構成する要素になる。つまり、そういう性格の人として認知されてしまうわけだ。しかし、それは生得的なものではなく、単なる習慣なので変えることはそう難しくはない。少なくとも不可能ではない。

これを、企業に置き換えてみよう。

企業文化と習慣


企業は、そこに参加する人々で構成されている。そして、その人々の意志決定や行動によって、成果が生み出される。ここまではいいだろう。

では、その意志決定や行動は何によって生み出されているのか。「偉大なる自由意志」?それも多少はあるだろう。が、すくなからずの部分は、やはり「習慣」なのだ。

個人の行動が習慣によって構成され、組織が個人によって構成されるのだから、組織は個人の習慣によって構成される。それほどややこしい話ではない。

私が毎朝Twitterアプリに手を伸ばすように、企業の中にも「習慣」は存在する。こういうことが起きたら、こんな風に対処する、という一種の手順と言い換えてもよいだろう。

売り場でキョロキョロしているお客さんを見かけたら、「何かお探しですか」とすぐさま声をかける。こんな対応ができるスタッフは、「キョロキョロしているお客さんを発見したときのチェックリスト」を胸ポケットから取り出し、それを参照して行動を決めているわけではあるまい(新人なら話は別だが)。困っているお客さんを発見した瞬間に、自然と__つまり無意識に__行動に出ていたはずだ。これはつまり「習慣」である。

もし、所属する10人のスタッフが、まったく同じような習慣を持っていた場合、お客さんはそのお店を「そういうお店」として認識するだろう。つまり、親切なお店、という認識だ。これは、個人における「性格」と同じ位置づけで捉えられる。

企業文化を形作るもの


メソッドという洗剤会社を紹介した『メソッド革命』の中では、「企業文化」の重要性が説かれている。企業に究極の競争優位をもたらすもの、それこそが「企業文化」である、と。

世界で最もイノベーティブな洗剤会社 メソッド革命
世界で最もイノベーティブな洗剤会社 メソッド革命 エリック・ライアン アダム・ローリー 須川 綾子

ダイヤモンド社 2012-10-13
売り上げランキング : 186367

Amazonで詳しく見る by G-Tools

実際、企業文化の重要性はビジネスの世界でも認識されているのだろう。成功した大企業が自社の企業文化を対外的にアピールしていることも多い。しかし、「企業文化とは、実際のところ何なのか?」と考えてみると、すっきりした答えはなかなか出てこない。少なくとも、社長室の後ろに掲げられている空虚なスローガンでないことは確かだ。

少し『メソッド革命』から引用してみよう。

(前略)私たちのカルチャーに必要なのは、企業として達成しようとする目的を明確に示す価値観だと分かった。

価値観とは、意識さえせずに実践するものなのだ。

「意識さえせずに実践するもの」。それはつまり「習慣」ということだ。

カルチャーには価値観が必要であり、その価値観は、習慣であるという。つまり、企業文化の創出というのは、社員の習慣にアプローチすることなのだ。

少なくとも、企業文化は枠組みだけ作って完成しうるものではない。会社で働く人々の感じ方や行動を、一つの方向にディレクションして、はじめて生み出されるものなのだ。偉大な理念は大切かもしれないが、実践が伴わなければ、企業文化とは言えない。文化は掲げるものではなく、為されるものなのだ。

企業文化の創出において、習慣へのアプローチは有効な手段と言えるだろう。

少なくとも、そういうアプローチを取っていないと、「部長がいるときだけ、目標に沿った仕事する」という職場が生まれてしまう。もちろん、言うまでもないが、それもまた「企業の習慣」の一つであり、そういう企業文化を持っているとも言える。

結局、埋めなくても組織には習慣が満ちあふれており、それは何かしらの価値観に沿ったものになっている。それを、変えることができれば、企業文化、言ってみれば企業そのものを変えることができるだろう。

さいごに


今回は「企業文化とは何か?」について少し考えてみた。

文化を本格的に定義するのは難しい。ただし、こういう風には言えるだろう。ある社会に文化があるのならば、そこに住む人々は生活スタイルや行動様式を共有している、と。つまり、似た傾向の生活習慣にを持っているということだ。

刀を差したり、髷を結ったり、顔を白く塗ったりするのも、「偉大なる個人の自由意志」ではなく、その共同体で共有されている一種の習慣である。文化とは習慣なのだ。

では、その習慣をいかに生み出せばよいのか。それについては次回に譲ろう。

▼新刊発売中:

ソーシャル時代のハイブリッド読書術
ソーシャル時代のハイブリッド読書術 倉下 忠憲

シーアンドアール研究所 2013-03-26
売り上げランキング : 39907

Amazonで詳しく見る by G-Tools

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です