先日、『意志力の科学』を読了しました。
WILLPOWER 意志力の科学 |
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ロイ・バウマイスター ジョン・ティアニー 渡会圭子
インターシフト 2013-04-22 |
いろいろ想起したことがあるわけですが、読んでいて「なるほどな」と腑に落ちたことがいくつかありました。
そのうちの一つが「デイリータスクリスト」の有効性です。今回はそれについて書いてみましょう。
デイリータスクリストとは?
これまでも「デイリータスクリスト」については、いくつか記事を書いています。デイリータスクリストについて(1)
デイリータスクリストについて(2)
デイリータスクリストを作る意味合い
デイリータスクリスターはゴリラに気がつくのか
あるいは、次の本(拙著)が参考になるかもしれません。
クラウド時代のハイブリッド手帳術 |
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倉下忠憲
シーアンドアール研究所 2011-09-23 |
話をさくっと進めたい人のために解説しておくと、
- 一日の仕事を始める前に、「その日行うこと」のリストを作り
- 日中はそれを参照・修正しながらタスクを遂行し
- 終わったものは消去し、残ったものは明日以降に引き継ぐ
といった手順で仕事を進めるのが「デイリータスクリスト」を使った仕事術です。
この方式を、グツグツと煮詰めて、ツールの形に実装したものが「TaskChute2」と言えるかもしれません。このツールは、理想的なデイリータスクリストの要件をほぼ満たしていると言えます。
※Excelベース(&Windows環境限定)なのが個人的には「ほぼ」の部分です。
どんなツールで実行するのかは別として、「デイリータスクリスト」を使って作業を行うのは、そうでない環境で作業を行うことに比べて、「仕事を前に進めやすい」感覚があります。
この感覚は、もちろん私の体感的なものでしかありませんが、ある程度バイアスを差し引いてみても、その「効果」には有意なものがあるように思います。
とりまな4つの効果
おそらく、その効果はざっくりと次の4つにまとめられるかもしれません。- 現実的な「計画」を立てる
- 直線的に処理を進めていく
- 記録作業による監視効果
- ログが残ること
現実的な計画を立てる
現実は、その内に残酷さを秘めているものですが、「現実的な計画」にも似た要素があります。(ありがちな)破綻するタスクリストは「こんなこと、できたらいいな」という想像を紙の上に記したものです。想像、というか妄想のレベルかもしれません。
そこには「手持ちの時間」と「作業に必要な時間」の概念がまったく欠如しています。その妄想リストはどんどんふくれあがり、「結局、このリストどうやって処理するの?」という困惑を引き起こします。現実との齟齬が露呈するわけです。
「デイリータスクリスト」は「一日にできる分だけの作業」をリストアップするものです。
もちろん、計画は計画であり、それが100%実行できるとは限りません。
しかし、8時間の手持ち時間に36時間分の作業を詰め込んで困惑する、ということは起きないでしょう。デイリータスクリストを始めたばかりのころは、それに近い状態になるかもしれませんが、作りづけていくうちに「現実的な線」というのが見えてきます。
ごく簡単に表現すれば、「現実的な計画」とは、可能性が絞り込まれた計画、ということです。頭の中にだけ存在する、自由気ままな一日に比べれば、非常に残酷な行動余地が示されることになりますが。これが意志力に及ぼす影響はバカにはできません。
※詳しくは『意志力の科学』を参照ください。
直線的に処理を進めていく
リストは、リニアな処理体系です。つまり、リストの一番上にある項目から始めて、その下、さらにその下へと処理を進めていくわけです。
ここには「判断」が入り込む余地はありません。あるいは、あるとしてもごく少ないものです。
ということは、認知資源を温存できる、ということです。
上から下に、「機械的」に作業を進めていけば、作業の中身で必要な意志力が温存できることになります。
記録作業による監視効果
『意志力の科学』では、計画と共に「監視」のプロセスの重要性が説かれています。「デイリータスクリスト」を使っていると、
- リストから次の作業を確認
- 作業に取りかかる
- リストのタスクにチェックマーク
- 1に戻る
を繰り返すことになります。
明らかに、この行為には「監視」の要素が含まれています。
作業にかかった時間の記録を取っていれば、なおのこと監視意識は強くなります。
ログが残ること
「デイリータスクリスト」を使いながら仕事を進めていると、「一日分の作業ログ」が残ることになります。一週間経てば、__実働6日として__6日分の作業ログが出来るわけです。そこには、当然「やったこと」「成し遂げたこと」「達成したこと」「クリアしたこと」と言葉は何でもいいですが、自分の足跡が残るわけです。
これは、中長期的な「監視」の役割を果たしている、と捉えられるかもしれません。
あるいは、「小さな報酬」と捉えることもできそうです。
どちらにせよ、自己コントロールの要素として悪いものではありません。
さいごに
本当のところを言えば、デイリータスクリストの仕事習慣を一ヶ月ほど続けてもらって、現実的な計画を立てられるようになってから、一週間ばかりデイリータスクリスト無しで仕事をしてもらうと、その効果は一番わかりやすいのではないかと思っています。モチベーションがうまく上がらない、あるいは「MPを無駄遣いしている」感覚がよくわかります。ほんとに。
リストは現実を変えません。ただ、認識と意志力について、何かしら変化は与えてくれます。仕事を前に進めて行くには、十分な変化と言えるでしょう。
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倉下 忠憲
シーアンドアール研究所 2013-03-26 |
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