7-本の紹介

【レビュー】「これからの世界」で働く君たちへ(山本賢治)

グローバル化が進み、ゲームのルールが次々に変わっていくような世界。そんな世界で、働いていくためには何が必要なのか、をテーマにした一冊。

伝説の元アップル・ジャパン社長の40講義 「これからの世界」で働く君たちへ
伝説の元アップル・ジャパン社長の40講義 「これからの世界」で働く君たちへ 山元賢治

ダイヤモンド社 2013-04-26
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※献本ありがとうございます。

著者の山本賢治氏は、元アップル・ジャパン社長。言葉通りの意味で世界にもまれてきた著者が、21世紀を働く人々に向けた40の指針を提示してくれています。

今回は、その指針の中から、気になった3つを取り上げてみましょう。

03 「変わり続けること」だけが真実である

「The only constant is change」

唯一不変なもの、それは変化である。

もっと短くすれば、万物は流転する、となるかもしれません。

川は流れているから川です。だから、まったく同じ状態の川に二度足を突っ込むことはできません。でも、その川は同じ川として存在し続けています。

あるいは、私たちだって、細胞の死と生成のサイクルを回しながら、同一個体としての生命を保っています。しかし、その私たちもいずれの時かは、土に還り、その中で新しい生命を祝福します。変化は自然なものなのです。

それは地球環境に限定されるものではありません。人間も、社会生活も、文化も、ビジネス環境も、変化は常に付きまといます。それを忘れて、固定化することを選んでしまえば、取り残されるのは必定でしょう。高速で回転する地球の上に立つためには、同じ速度で回転し続けることが必要なのです。

ドラッカーは「体系的廃棄」という言葉を使いました。さらに、こんな言葉も残しています。

「変化はコントロールできない。できるのは、その先頭に立つことだけである」

変化することを受け入れ、それに適応し、時にはその変化を自ら作り出す。

それは、規模の大小あれ、どのようなビジネスにも必要な考え方と行動でしょう。

15 最大のスキルは「WHY」で考えられる力である

「なぜ?」を積み重ねていくと、どんどん原理原則に近づきます。深く考えるための基本的な技法の一つと言えるでしょう。
※ただし、こじらせると哲学の泥沼にはまり込むので、ビジネスパーソンは要注意です。

ランチタイムに入ったファストフードでレジに長蛇の列が出来ていたとしましょう。「うっぜぇ〜な」と罵倒するのもよいですが、そこで「なぜ?」を持ち出すと、アイデアの種をいくつも発見できるようになります。

  • なぜ、こんなに長蛇の列が出来ているのだろうか?
  • →お客さん一人当たりの注文時間が長すぎる
  • なぜ、レジの注文時間が長すぎるのか?
  • →メニューがごちゃごちゃとして選びにくい
  • なぜ、メニューがごちゃごちゃとしているのか
  • →アイテム数が多い上、それらを全部均等に載せている

ここまでくれば、改善策はいくつも浮かんでくるでしょう。

あるいは、「なぜ、自分は長蛇の列にならぶと、うざいと感じるのか?」という方向からアプローチ可能です。これはこれで、まったく別種の改善策が出てくるでしょう。

問題は、どうすればこうした「なぜ?」を思い浮かべられるようになるのか。わかりやすい言葉を使えば、「疑問力」のアップ方法です。

もちろん、現場で実践的に磨くこともできるでしょうが、私としては「読書」をお薦めします。

本の中には、良質の問いと、その解答が大量に詰まっています。そうした本を速読ではなく、じっくり精読していくと、さまざまな「なぜ?」の形がインストールされることでしょう。

19 全能型メンターではなく、「インデックス型メンター」を持て

「インデックス型メンター」は、なかなか面白い表現ですね。あるいは「メンターポートフォリオ」なんて呼んでもよいかもしれません。

本書にはこうあります。

社内でもクライアント先でも、上司、部下、男性、女性も関係なく、全方位型に自分の憧れる力を持った人を勝手にメンターにして、そこに「文章の先生」とか「話し方の先生」のようにインデックスを貼っていくのです。

だいたいにして人間は不完全なものですから、自分の困った問題を一人のメンターが完全に解決してくれるわけではありません。アドバイスはもらえるかもしれませんが、それが適切であるかどうかはわかりません(科学者にファッションの相談をしてみましょう)。

そういう場合に、複数のメンター(ざっくりと先生や師と呼んでもよいでしょう)を持っていれば、うまく対応できます。それが「インデックス型メンター」。

私はこの対応力の高さよりも、むしろ人に対峙する姿勢こそが重要ではないか、と感じました。

インデックス型メンターを構築したい人は、常に他の人から学ぶ姿勢を持っています。そして、他の人の優れた点を探そうとする心持ちがあります。一人のメンターに帰依して、他は知りません、なんて状況よりも、はるかに学びの幅は広がることでしょう。

それは、一つ目に上げた「変化」、そして二つ目に上げた疑問力の向上にも繋がってくる話です。

さいごに

25番目の講義には「人生をデザインすること」が取り上げられています。以前紹介した「ライフデザイン」と同じテーマです。

これまでも幸せの基準が人それぞれであることはわかっていたかもしれませんが、それを誰もが選び取れる時代になったのです。これからは、もっと白紙ベースで人生を描ける「ライフデザイン」を考えるようにしましょう。

もちろん、ライフデザインには、白紙ベースで人生を描く要素があります。ただ、このデザインという言葉には、もう少し踏み込んだ要素があるようにも感じます。

それについては、またどこかで書いてみましょう。

▼BookLink:

万物は流転する

ギリシャの哲学者ヘラクレイトスの言葉。ヘラクレイトスについては、たとえば

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読書について

対話するように読書する、については拙著を。複数のメンターは、脳内賢人会議に通じるものも。

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アップルという会社

説明は必要ないだろう。さまざまな書籍が発売されている。商品展開の基本的な戦略は、ドラッカーのそれに通じる。

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ライフデザイン

ライフデザインについては、以下の本が考えるきっかけになるかも。書評記事はこちら

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