6-エッセイ

棚の向こうに、見える人

先日、グランドフロント大阪にある紀伊國屋書店に行ってきました。
2013-0502 紀伊國屋書店 グランフロント大阪店に行ってきました

「新品」の書店に足を運ぶのは、独特の楽しさがあります。

それは、出来たばかりの書店と、初めて訪れた書店の、二粒の楽しさのおかげでしょう。この二つは、微妙に位相が異なっています。

それはさておき。

まずは、何も考えずに店内をぶらっと巡ります。

児童書の充実っぷりに驚かされながら、趣味・実用・教養・科学・ビジネス・小説と棚をチェックして回りました。

棚をチェック?

そう、チェックです。「新品」の書店に足を運ぶとき、「買いたい本」を探す意欲は私の中でそれほど高くはありません。もちろん、面白そうな本を見かけたら、その他の書店と同じようにレジに持って行くわけですが、それは副次的なイベントです。むしろ、どういう棚が作られているのか、に興味の矛先は向いています。

  • 他の書店にないジャンルの棚はあるか
  • どの棚に力を入れ、どの棚がそれなりなのか
  • どんな本が揃えられているのか(あるいは置かれていないのか)
  • どんな風に本が陳列されているのか

といった興味です。

その興味は、お店の「棚作りのレベル」を確認しようという意図につながっています。ようは、「よく行く書店」なのかそうでないのかを見極めたいのです。

やはり、足を運ぶのであれば、良い本との出会いが期待できる書店を選びたいと思うのは自然なことでしょう。読書生活において、優良な書店は大切なパートナーなのです。書店の見極めは、読書生活において重要な要素を占めています。

『ハイブリッド読書術』でも、書店を見分けるポイントをいくつか紹介してありますが、この本は読書初心者向けなので、踏み込んだ要素は割愛しました。たとえば、ある程度本を読んでいないと判断できない棚の良さ、といったものがあります。

「ほう、この本をわざわざ置いてあるのか」「なるほど、あえてあの本は外してあるんだな」といったことです。「へぇ、ここにそれを置きますか」という驚きなどもあるでしょう。

書店はメディアである

という言葉もありますが、ある程度読書量が増えてくると、その棚を作った人のメッセージが見えてくることがあります。

もちろん、そのメッセージはNull、つまり空っぽであることもあります。つまり、単に本を棚に差し込んだだけ、という切ないメッセージです。これはまあ、忙しい書店員さんにしてみれば、致し方ないのかもしれません。しかし、時々ハッとさせられるような棚に遭遇することもあります。

このジャンルに興味がある人に、こんな本を読んで欲しい。

そういう意図が伝わってくる棚です。言い換えれば、その本棚の前に立つ「読者」がきっちりとイメージされている棚です。

一応小売業の経験者として言わせてもらえば、そういう棚を作るのは結構な手間ですし、なんといっても楽しい作業です。本を読むのがあまり好きではない、という人にはそんな棚は作れません。

そんな興味深い棚は、私たち__読書好きの書店員と購入者__に、それぞれ一方通行の相互確認をもたらしてくれるのかもしれません。棚の向こうに、人が見えるのです。

さいごに

『スペンド・シフト』という本では、消費は「企業に対する消費者の投票」として捉えられています。

すると、そういう棚が存続していくように願うのならば、できるだけそうした棚が存在する書店で、一冊でも二冊でも本を買うことが必要なのでしょう。あるいは、そういう消費が増えるように、お店の情報をシェアするのもよいかもしれません。

それは、

「安く売ってやったら、おまえら買うんだろう」

とか

「とりあえず置いておけば、売れるだろう」

という歪んだ思想への静かな反旗、と表現するのは少々大げさですが、評価軸を一つに限定させないようにする上では重要なことかと思います。

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