『ハイブリッド読書術』は、タイトル通り「ハイブリッドな読書術」がメインテーマです。方向性が異なる複数の手法を、そのメリットを意識しながら活用する。そんな感じですね。
ソーシャル時代のハイブリッド読書術 |
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倉下 忠憲
シーアンドアール研究所 2013-03-26 |
実は本書には、裏のテーマもあります。シャドウ・テーマ。それが「3つの多読」です。
この「3つの多読」は
- 「読書量を増やす」
- 「読む本のジャンルを広げる」
- 「一冊の本を何度も読む」
を意味しています。
「読書量を増やす」
もう少し言うと、「インプット全体における読書の割合を増やす」ということ。読書でしか得られないもの、というのは確かにあります。速報性で言えば、ネットの優位性は揺るぎませんが、書籍にもそれ独自のメリットはあります。
「本を読まないヤツはダメだ」と言うつもりはありませんが、何かを学ぶという目的において、読書が持つ価値は大変優れたものです。もちろん、どんな本でも読めばいい、というわけでもないことは改めて指摘するまでもないでしょう。
また、「インプット全体における読書の割合を増やす」なので、読書の量が増えれば、必然的に別のインプットが減ることになります。でないと、インプットで溺れてしまいますからね。何を減らすかは、ディペンド・オン・ユーです。
「読む本のジャンルを広げる」
「いろいろな本を読みましょう」ということ。手に取りやすい、読みやすい本ばかりを読んでいると偏りが生じてしまうことは間違いありません。その偏りこそが個性だ、と主張することもできますが、一定量のバランス感覚は欲しいところ。
まずは、自分の専門分野外の本にアンテナを広げてみることです。また、自分の考えとはまったく逆の主張をしている本もチェックしてみることをお薦めします。鉄というのは、叩かれて鍛えられるものです。
あるいは、実用書とはまったく関係ない本にも、関心を持ってみるとよいでしょう。
気軽に未知の領域に手を伸ばせる、というのも読書の良いところですね。丁寧に書かれている本ならば、門外漢でも一通りは頭に入れることができるでしょう。
ちなみに、そういうのをどん欲に吸収していると、やはりアイデア発想力というのは上がってくるかと思います。
※アイディアの傾向から見えるもの
「一冊の本を何度も読む」
たぶん、これがもっとも大切だと思います。いくらわかりやすく書かれているからといって、一回読んだだけで理解した気持ちになるのは、さすがに思い込みが激しすぎます。だいたいが、大まかに「知った」というだけで、「理解した」まではたどり着けていないのが本当のところ。何度も読む、というのは、理解に至る道のりとしては悪くありません。
※アウトプットするのも効果的です。
また、時間をおいて読むことで、一つの本に別の視点から光を当てることもできます。世の中には、読んでも読んでも汲み尽くせない本というものがあるのです。そういう本との出会いは、格別な体験と言えるでしょう。親友、というのに似ているかもしれません。
「良い本」の一般的な定義は難しいかもしれませんが、何度も読める本は自分にとって良い本だ、ということは言えそうです。
が、「世界中に住む人々:親友になれる人」の比率と同じぐらいに、そういう本を見つけるのは簡単ではありません。だからこそ、読書の数を増やし、できるだけ多様なジャンルの本に触れることが重要です。閉鎖的なコミュニティーに閉じこもっていたのでは、出会いのチャンスは限られてしまいます。
さいごに
「年収が10倍になる読書術」とか「一瞬で0.001兆稼ぐ読書術」とかだと、もうちょっとウケが良いんでしょうが、そこまでの力が読書にあるかどうかはわかりません。ただ、そういう要素もまるっと含めてしまって「人生を豊かにする」可能性を読書は持っているのではないかと思います。本を読めば、年収が10倍にならなくても、そこそこの満足感(あるいは納得感)を持って生きていける。あるいは「成功したい」と思った時に、「そもそも成功って何だろうか」と足を止めて考えてみる。そういうのも悪くありませんね。
もちろん、「どんな本を」「どのように読むか」という難しい課題は避けて通れないわけですが。
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