4-僕らの生存戦略

個性と読書と文章と

個性とは何だろうか。

あるいは個性的とはどういった状況を指すのだろうか。

「〜〜についてはどう思いますか?」

A:「○○です」
B:「○○です」
C:「○○です」
D:「△△です」

Dさんは、実に個性的だ。きっと出る杭のように叩かれるだろう。

もちろん、この個性を担保しているのは「△△です」という答えそのものではない。Aさんと、Bさんと、Cさんが、Dさんをマネして「△△です」と答えても、何一つ個性は引き立たない。むしろ減少してしまう。

個性とは差異だ。個性とは差異ある反応だ。

刺激が与えられ、反応を返す。その中央にあるブラックボックスこそが個性の源泉である。

体験と読書

その源泉は、言ってみれば体験の総体を含む記憶の蓄積から成り立っている。

体験。

それが個性を生み出すのだ。

一つ一つの体験は、ありふれているかもしれない。しかし、それが無数に組み合わさったとき、際だった何かが生まれる。

『ハイブリッド読書術』では、あえて「こういう本を読みましょう」という選書リストを提出しなかった。私だって、紹介したい本はいっぱいあったのだがぐぐっと歯を食いしばってそれを止めた。自身の経験から言って、それはあまり意味をなさないからだ。むしろ、これから読書を始める人にとっては足を大地につなぎ止める鎖のような働きをするかもしれない。

自身の興味の赴くままに、運命と時勢に導かれるように、手に取る本。そういうのを大切にした方が良い。

読書は苦役ではない。将来の成功を得るために支払う代償ではないのだ。

興味に沿って、まずは100冊、それだけを読む。できれば500冊ぐらいまで足を伸ばす。

無数に存在する本の中から、500冊の本を選び取る。計算すれば、膨大な組み合わせが数として出てくるだろう。多数の個性を生み出すには、十分すぎる数だ。

原則が生み出す個性

『数学文章作法』の中で、著者の結城氏は、「正確で読みやすい文章を書く原則」をシンプルな言葉で表現している。

<読者のことを考える>

これは原則だ。つまり、いろいろな人が使える。

では、皆がこの原則に従ったら、個性的な文章は生まれ得なくなってしまうのだろうか。

もちろん答えはNoだ。

まず、それぞれの人が想定する読者像が違う。誰に読んでもらうのかが違うわけだ。

また、どういう風に書けば読者にとってわかりやすい文章になるのか、というジャッジメントも人それぞれ異なってくるだろう。ある人は、図解を多用するかもしれない。ある人は物語を使うかもしれない。別のある人はハイブリッドを採用するかもしれない。出てくるアウトプットの形は、当然のように変わってくる。

妙な話だが、それぞれの人が<読者のことを考える>という同じ目標に全力で向かうとき、文章には個性が宿るようになる。

逆に、<読者のことを考える>ことなく、テクニックに走ってしまえば、没個性ルートまっしぐらだ。

これは文章だけではない。お店作りや接客態度、営業やその他もろもろの仕事についても同じことがいえる。

さいごに

最後に一つだけ蛇足をアタッチメントしておこう。それは、個性的な人は個性的になろうとしたわけではない。ということだ。

何かしらの結果として、あるいは副産物として強く認知される個性を手に入れたに過ぎない。

というわけで、個性的になるもっとも効果的な方法は、<個性的になる>方法を求めないこと、になる。とくに「簡単に」「誰でも」「すぐに」できたりする方法は、没個性への最短ルートである。

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