持つペンと思考の速度

ペンには二種類あります。一つが速いペン。もう一つが遅いペンです。

もちろん、そういう用途のペンが発売されているわけではありません。

自分がそのように使い分けているだけです。

つまり、「そそくさと書くときに使うペン」と「ゆっくり書くときに使うペン」の二種類があるということです。

速いペン

私の中で、速いペンの代表格が『ジェットストリーム』。

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ジェットの名を冠しているのは伊達ではなく、実にスラスラと書き進められるペンです。

ほぼ日手帳への記入から始まり、雑多なメモなど、日常のさまざまな場面で活躍しております。『ハイブリッド発想術』でも書きましたが、「入力の速度」というのは想像以上に重要なファクターなのです。

ピンっと思いついたアイデアも、そそくさと書き留めないと、ガイア・オルテガ・マッシュのように昇天してしまいます。それを捉えるためには、違和感なく、引っかかりなく、スムーズに書けるペンが必要です。

でも、それだけで良いのでしょうか。速度こそが正義であり、善なのでしょうか。速は遅をかねるのでしょうか。

遅いペン

私はそう思いません。

現代社会が、効率性を意識しすぎるあまりに何かを失ってしまったように、「速いことが絶対的な正義だ。それだけあればいい」という風には言えないように思います。

いかに「時は金なり」と言っても、あるいは「時は金なり」だからこそ、ゆっくり書くことも必要ではないでしょうか。

私は、ゆっくり書くとき、『preppy』を使います。

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庶民派万年筆として有名__かどうかはしりませんが、とてもお安く手に入る万年筆型ペンです。もちろん、本道の方からすれば「こんなもの万年筆じゃない」と一刀両断されてしまうでしょうが、別段そんなことは気になりません。カリカリというペンごたえがあれば私には十分です。

たとえば、お気に入りの本からモレスキンにフレーズを転記するとき、私はこのペンを使います。一文字、一文字丁寧に確認しながら、言葉と共に、私の脳に言葉を刻んでいきます。そして、その言葉が持つ感触を確かめ、その意味を脳内で膨らませていきます。

満足感+α

「そんなの、コピペでいいじゃん」

というツッコミがやってくるかもしれません。

それに対して、「手書きで写した方が、記憶に残りやすいんですよ」と、実用的反論を打ち立てることもできるでしょう。でも、結局の所それは後付けの理由でしかありません。

真なる理由は、実に簡単です。

「そうしている時間、私はとても大きい充実感が得られるから」

これ以上ないくらい、感覚的なものでしかありません。でも、自己満足は人生の歩みにおいて、とても重要なものです。また、それを認識しておけば、無理矢理人に押しつけることもなくなるので、No 波乱ライフを送っていくこともできるでしょう。

しかし、よくよく観察してみると、ゆっくり書くことは、別の感覚的なもの__つまり、思考にも影響を及ぼしていることに気がつきます。

思考の転写速度

おそらく現状では、

「話し言葉を録音する」

が、思考の転写速度としてはもっとも高速なものでしょう。今後「脳の中」を直接読み取る機械がでない限りは、No.1の座は動きそうにありません。

話し言葉をイメージしてみるとわかりますが、言葉から言葉が導かれるようにすいすいと話題が展開していきます。その代わり、まとまりや文脈といったものは整理されていません。「勢い」が強い表現なのです。

そこからぐっと速度が落ちて、「キーボード・タイプ」が登場します。ブラインドタッチをマスターしていれば、かなりの速度で思考を転写できます。加えて、「後からいくらでも編集できる」という特性から、「勢い」の力はますます大きくなります。思うままに自らの思念を膨らませていき、右手から黒龍波でも打てそうな勢いが出てきます。

そこからさらに速度は落ちるものの、「何も考えずに、ただひたすらペンを走らせる」というフリーライティングも「勢い」重視の書き方です。

では、もっと速度を落として、ゆっくりと言葉を書く場合はどうでしょうか。そこでは「勢い」はほとんどゼロになっています。工場のラインを流れていく製品の品質検査、ではなく、職人が一つ一つ手にとって状態を検分していく。そんな言葉の紡ぎ方になります。

フリーライティングは、言葉を紡ぐ上で邪魔になりそうな意識を脇にやる手法ですが、ゆっくり書く(スローライティングとでも呼びましょうか)は、その意識を明示的に利用しようとする手法です。

両者に優劣はありません。使うべき状況が違うだけです。

さいごに

もしかしたら、スローライティングの概念提出は、ある世代の人にとっては当たり前すぎてばかばかしく感じられるかもしれません。その世代とは、原稿用紙を使って文章を書いていた世代です。その世代の人たちは、一文一文考えて文章を書くのが普通だったでしょう。

しかし、キーボードネイティブの世代においては、もしかしたら「スローライティング」の概念は、物珍しいものになるかもしれません。「ほとばしるように言葉を紡ぐ」ことが当たり前で、じっくり考えるという習慣が欠落している可能性があります。それは、私の中では、漠然とした懸念として心の中に浮かんできます。

両方使えること__ハイブリッド__が望ましいのです。

あるいは、若い世代に限らなくても、日常的に速度を求められ、じっくりと考える・ゆっくりと思索することから遠ざかっている人もいるかもしれません。それは、全体からみれば少々バランスが危うい状況と言えるでしょう。

いくつかのペンを持つことは、ツールによって思考のモードを切り替えることにつながります。特に、「ゆっくり欠かざるをえない」ペンを持てば、強制的に思考ギアも「ゆっくり」へとシフトダウンします。

もちろん、ツールを切り替えなくても思考のモードを切り替えられたり、日常ずっと「ゆっくり」モードな人には、まったく無用な話なのは言うまでもありません。

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