『ヤバい経営学』からブログの手法を学ぶ連載。
ヤバい経営学: 世界のビジネスで行われている不都合な真実 |
|
![]() |
フリーク ヴァーミューレン Freek Vermeulen
東洋経済新報社 2013-03-01 |
第一回:日の当たらない(ブログの)競争力の源泉
第二回:決してコピペできない(ブログを形作る)要素
第三回:エドおじさんを食べてはいけません
第四回:「無益」な研究の益
書評記事:【書評】ヤバい経営学(フリーク・ヴァーミューレン)
今回はノウハウシェアのスタイルについて。
シェアのトレードオフ
企業活動を続けていくと、各種情報やノウハウが蓄積されていきます。それは一種の財産であり、うまく活用できれば、活動において大きな助力となるでしょう。であれば、情報やノウハウを溜め込めるだけ溜め込んでいけばよい、かというとそうでもありません。
現在の「知識経済」にあっては、多くの企業が内部知識の重要性を認識している。そして、社員がアクセスできる社内データベースを導入している。しかし、今起きている問題は、その情報が多すぎるということだ。
情報が多くなりすぎると、使い勝手が落ちる。そんな経験はないでしょうか。しかしながら、情報をまったく蓄積しないとなると、経験的資産も活用できません。ここに微妙なトレードオフを見て取ることができます。
(前略)もし少ない書類しかアップロードしなければ、他の社員はわずかな書類にしかアクセスできない。しかし、あまりに多くの書類をアップロードしてしまうと、本来使ってくれる可能性のある社員もうんざりしてしまう。森のなかから木を探すのを止め、他の方法で情報を探すだろう。そして、パソコンの画面に向かいながら、多すぎる情報に文句を言ったりするだろう。
さて、どうやってバランスを取ればよいのでしょうか。
本書では、それについて調査したモルテン・ハンセン教授とマーティン・ハース教授の研究結果が紹介されています。
話は実にシンプルです。
「正しいバランスはトピックの中身による」
トピック別の戦略
トピックは、大きく二つに分けられています。一つは「他のグループでも広く扱っているトピック」。会計事務所で言えば「コスト管理、資本・資産管理、資金調達と新規株式公開」などの情報です。
もう一つは「ずっと狭い範囲でしか扱われていないトピック」。たとえば「特定のソフトウェアの使い方、限定的な業務のノウハウ」といったものです。
前者のトピック__仮にマス・トピックと呼びましょう__については、情報を厳選するほうが高評価を得られ、後者のトピック__仮にニッチ・トピックと呼びましょう__については幅広く情報を提供した方が評価が高かったそうです。
考えてみるとそんなに難しい話ではありません。
マス・トピックについては、すでに多くの情報が出回っていることでしょう。それに情報を探す人もある程度の知識がある場合が大半です。そんな環境においては、必要な情報を過不足なく提示してくれる人に評価が集まります。要点だけ適切に提示してくれるのならば、それにこしたことはありません。
対して、ニッチ・トピックはそもそもの情報量が少ない上に、情報検索者が何を探して良いのかすら分かっていないことがあります。情報を事細かく提供しておけば、そのうちの一つぐらいは何かしらのヒントになるかもしれません。そうしたことが積み重なっていけば、「この話題については、あのグループだな」なんて評判が生まれてくることでしょう。
ブログにおける記事展開戦略
この二つの戦略は、ブログにおいても活用できそうです。マスな話題、あるいは自分以外にも情報提供者が山ほど存在するテーマについては、内容を厳選したり、あるいは整理する方向へ。逆にニッチな話、あるいは自分しか書いているような人がいない話題であれば、細かい内容でも、ともかく数をアップする方向へ。
これが一種の「差別化戦略」として機能するのではないでしょうか。
社内の情報提供者は、関連するノウハウを求めている社員の注意を引きつけようと、お互いに競っている。そして、どんなビジネスであれ、自分たちが提供している製品(情報)に合わせた市場戦略(アップロード戦略)を取る必要があるのだ。
自分が「何」を書いているのか、どんな情報を提供しているのか。それについて無関心なままで記事の展開方法を考えることはできません。
また、最初ニッチであったにもかかわらず、やがてそれがマス化していくことも考えられます。その場合は、戦略の転換が求められるでしょう。
さいごに
「どんなブログの書き方が正しいのですか?」という問いに画一的な答えを返すことはできません。むしろ
「あなたはどんな内容について書きたいのですか?」
とこちらが問い返すことがスタートになりそうです。
それを見極めたうえで、適切な記事展開戦略を考える。というのがまっとうなアプローチでしょう。
One thought on “二つの記事展開戦略”