断片からの創造

もどかしい救助と想起の力

「あっ、あれなんだっけ?」

というもどかしい思いを経験されたことはあるでしょうか。

夜ベットで本を読んでいたら、面白いブログネタのアイデアを思いつく。よしよし、明日の更新はそれに決定。そんなことを考えながら、深い眠りの森へと潜り込んでいく。
朝、目を覚まし、ぼんやりした頭で部屋を見渡しながら、「あっ、あれなんだけっけ?」という思いが込み上げてくる。何かを思いついた感覚だけはあるのに、肝心の何を思いついたのかはたぐり寄せられない。必死にそのことを思い出そうとするが、元気いっぱいのうなぎのようにつかみどころはなく、想起のルームランナーの上を走り続けるだけ。洋服や歯ブラシやシャンプーをそのまま彼女が置いて出て行った部屋の中にひとり取り残されたような気分。

こんなとき、「人間の記憶なんて頼りにならんなぁ〜」と思うでしょう。

でも、むしろそれは逆なのかもしれません。

(don’t)Remember

一週間だけでいいです。

常にメモ帳を持ち歩いて、思いついたことを全てそこに書き付けてください。『ハイブリッド発想法』でも紹介した、アイデア力をアップさせるトレーニングです。

一週間後、そのメモ帳を最初のページから読み返せば、きっと愕然とするでしょう。

思いついた大半のことが、「思いついた」という経験と共にまるっと忘却されている事実に。

その事実に直面すると、自分は生きていながら指と指の間からぼろぼろとたくさんの経験をこぼれ落としていることに想いを馳せずにはいられません。

なにせ何かを思いついたことすら忘れているのです。「覚えていない」という認知すら、そこからは生まれてきません。それと同じような体験が、きっとわんさかあることでしょう。

一度そういう発見をしてしまうと、自分が認識している「自分の人生」というものが、もしかしたらごく一部のものでしかない気がしてきます。それは恐ろしいことなのか、素晴らしいことなのか私にはわかりませんが。

さいごに

私が不思議に思うのは、

「あっ、あれなんだっけ?」

と、よく思い出せたな、ということです。

本来はまるっと全て忘却されていても全然おかしくはないのです。でも、体験の感触だけは想起できた。それは、青い海にぽつんと浮かぶ孤島において、必死に救助を求める遭難者の声が、上空をパトロールするヘリに届いたぐらい奇跡的なことなのかもしれません。

「あっ、あれなんだっけ?」

は、脳の想起が持つ力の強さの証左なのです。

もちろん、そのヘリにロープがついていなければ、発見できても救助はできないわけですが。

▼こんな一冊も:

Evernoteとアナログノートによる ハイブリッド発想術 (デジタル仕事術)
Evernoteとアナログノートによる ハイブリッド発想術 (デジタル仕事術) 倉下 忠憲

技術評論社 2012-06-30

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