以下の記事に、興味深い記述があります。
クリエイティブの源、メンタルマップをどこにおくか(Lifehacking.jp)
思うに、クリエイティブさというのは筋力のように目に見えて何かを動かす力ではなくて、自分の了見が狭い世界から踏み出して、周囲との関連性のなかで目に見える言葉なり、作品なりに落としこむ能力なのではないでしょうか。
それほど長くない文ですが、エッセンスがたっぷり詰まっています。
そのエッセンスについて考え始めると際限がなさそうなので、とりあえず「クリエイティブさとはどのようなものなのか?」という問題提起を一つ拵えてみましょう。
問題の変換
まずは辞書を引いてみます。creative:創造的な,創造力のある.
ちなみに「クリエイティビティ」なら名詞になります。
creativity:創造的なこと,創造性,独創力.
おそらく、「クリエイティブさとはどのようなものなのか?」という問いかけは、「創造的な人とは、どのような人を指すのか?」という文に変換しても問題ないでしょう。
では、その文をさらに「創造的な人とは、どのような能力を持っている人のことか?」という文に変換するのはどうでしょうか。特に問題はなさそうです。
しかし、変換を二回も挟んでいるので、慎重に進めていった方がよいでしょう。
状況の整理
もう一度上の文章から引用してみます。自分の了見が狭い世界から踏み出して、周囲との関連性のなかで目に見える言葉なり、作品なりに落としこむ能力
さらに分解しましょう。
- 自分の了見が狭い世界から踏み出して、
- 周囲との関連性のなかで
- 目に見える言葉なり、作品なりに落としこむ能力
気になるのは、これらの能力が一つの塊のような能力なのか、それとも複合的な要素がパーツのようにとりまとまった能力なのか、という点です。
つまり、1をすれば3までセットで進むものなのか、1はできるけど、2・3はできない、といったことが起こりえるのか、ということです。
私はそれは起こりえる、と思います。
狭い世界から飛び出しても、何も捕まえられない。あるいは捕まえたとしても、それを形にできない。そういうことは珍しくありません。
クリエイティブさ、というのはある種の複合的な能力の表出であるのでしょう。
二つのアイデア要素
たとえば、次のエントリーで「アイデア作法」をカテゴライズしてみました。アイデア作法マトリクスで、発想力不足をチェックする(シゴタノ!)
「速効」と「緩効」の分類はすぐに思いついたのですが、困ったのがもう一つの分類軸。
いろいろ考えた上で「収穫」と「土壌」の二つに分けてみました。
「収穫」は、頭の中にあるものをうまく外に出すための手法です。対して「土壌」は、そもそもの頭の中にあるものを増やしていく方法。この二つがうまく組み合わさったとき、アイデアビッグバンが起こります__というのは少々大げさですが、両方あった方がよいことは確かです。
どれだけアイデアをひねり出すテクニックを身につけても、肝心の中身が空っぽでは(失礼)、出てくるものはそれほど大きくなりません。
$$
{}_{10}\mathrm{C}_5
\quad
{}_{100}\mathrm{C}_{50}
\quad
{}_{1000}\mathrm{C}_{500}
$$
逆に、豊かな経験があり、さまざまな刺激からたくさんの着想を得たとしても、それを「捕まえ」られなければ、他の人に「アイデア」として認めてもらえません。
自分の思ったことを言葉にすることすら、一種の技巧が必要なのです。サウザーのように「テクニックなどいらぬ!」と切り捨てることはできません。
自覚の有無にかかわらず、アイデアパーソンというのは、この両方のレベルが一定以上なのでしょう。
さいごに
クリエイティブさについて、思索の散歩をしてみました。かなり大ざっぱな散歩でしたが、いつもとは違った風景に出会えたかもしれません。たぶん、以下のような人は「クリエイティブな人」と呼ばれるでしょう。
- 普段から未知の刺激に身を置くようにしている人
- ある事象を別の事象と関係づけられる能力を持つ人
- それらを誰かに伝えようとする意志と能力を持つ人
もう一つ「主体性を持っている人」をここに入れるべきかどうか。それが迷うところです。いかがでしょうか。
▼こんな一冊も:
Evernoteとアナログノートによる ハイブリッド発想術 (デジタル仕事術) |
|
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倉下 忠憲
技術評論社 2012-06-30 |