「タスク」の研究

15分と15分ぐらいの差

午後2時50分。

お昼休みを終え、午後一番の仕事にようやく一段落付いたところ。

ここで世界線は二つ(A,B)に分かれる。

A.打ち合わせに出かけるためにバスに乗る。バスの時刻は3:10。5分あればバス停まで余裕なので、あと15分、時間がある。

B.打ち合わせの電話がかかってくる。事前の連絡では「3時頃にお電話します」となっていた。あと10分から25分ぐらいは時間がある。


Aの世界線の私は、Evernoteのinboxを整理し、それが14分で終わったことをタイマーで確認して家を出た。

Bの世界線の私は、おもむろにiPhoneを取り出し、電話がかかってくるまでパズドラに明け暮れた。

どちらも同じ「私」だ。

片方が頑張り屋さんというわけでもない、もう片方がサボりの常習犯というわけでもない。

でも、こういう違いは容易に発生しうる。

Aは、明確な世界だ。

残りの手持ち時間がはっきりしている。時間がはっきりしていると、その時間で何ができるのかが、スッキリ判断できる。後は行動するだけだ。

対してBは、不明瞭な世界だ。

あとどのぐらいで電話がかかってくるのかはっきりしない。3時頃は、3時ぴったりを指しているのかもしれないし、3時15分を指しているのかもしれない。あるいは、そもそもそんなことは決まっていないのかもしれない。

その状況では、私の手持ちの作業時間は、開けていないシュレディンガーの箱のように、不確定な存在である。

もし最短の10分で電話がかかってきたとしたら、Evernoteのinbox整理は中断されてしまう。それはあまり心地よいものではない。効率はさほど落ちないかもしれないが、心理的にイヤな気分がすることも確かだ。脳は、そういう不確定なものに取り組むのに積極的にエネルギーを投下してくれない。

最長スパンの25分あれば、mixiの日記ぐらい更新できるかもしれないが、こちらも不確定だ。そもそも、3時少し前に電話がかかってくることすら、あり得ないわけではない。こちらの時計と向こうの時計がずれていることだって現実的には考えられる。

結局、手持ちの時間があっても、それが曖昧だと、うまく使えないことになる。正確に言うと、適切に使うための判断が難しくなる。だから、エネルギーが湧いてこない。

その点、いつ終わってもきにしないでいいパズドラは好き勝手に始められる。それに気晴らしにもなるし。


同じような体験は、作業するときにタイマーを使うとはっきり感じられると思う。

タイマー未体験の人が始めてタイマーを使ったら、作業の取りかかりやすさの違いに驚きを感じるだろう。

区切りがもたらす力は大きい。

脳の癖として、曖昧な時間の枠組みだとうまく使えない、という傾向を仮に知っていたとしても、それだけで問題を回避できるわけではない。

錯視のメカニズムを知っていても、錯視そのものを消せないというのと同じだ。何かしら、仕組みが必要なのだ。

まずは、時間を「区切る」ことだ。それも明確に。「だいたい」はよくない。

もう一つは、作業のバッチサイズを小さくすることだ。そうしておけば、細かくしか区切れない時間でも、作業を割り当てることができる。

つまり1時間の作業を20分、20分、20分という工程に分割して問題ないのならば、そのように管理しておくと良い、ということだ。これならば、40分の区切り時間で、工程1と2を進められる。これが、塊のままだと40分の作業には割り当てられない。

「40分で、できる限り作業を進めてしまおう」

と考えられるのは、脳が暗算でのタスク因数分解に慣れている人か、あるいは朝イチで脳が元気いっぱいの時だけだ。

自分の「言い訳」を冷静に観察したら、手持ちの時間が40分しかなかったら1時間の作業はかなりの確率で先送りするだろう。そういうものだ。別段卑下する必要はない。

白の中に黒を置いたら、より黒さが際立つことを知っているのならば、そこに置かない選択をすればいい。それだけの話だ。

15分と15分ぐらい、というのは表現上の問題でしかない。かのように思えるかもしれないが、実際はそうではないのだ。

「生存率70%」と「死亡率30%」という表現が、人間の判断に影響を与えるように、時間をいかに認識し、表現するのか、ということもその使い方に影響を与える。

月並みな表現だが、時間の使い方というのは、極限すれば人生の使い方とイコールになる。十分に注意を払うべき対象だ。

もちろん、この話は「3時頃にお電話します」という表現を使うな、という趣旨ではない。3時頃としか言いようのない状況はわんさかある。

そうではなく、曖昧さが私たちにもたらす影響を知っておいた方がいい、という話だ。線を引くことで、変化することはたくさんある。

曖昧さはプラスにせよ、マイナスにせよ、私たちに影響を与えるのだ。

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