トンネル

長いトンネルを抜けると、そこはまた別のトンネルだった。

やれやれ、またトンネルか。さっきもトンネルだったし、その前もトンネルだった。ここしばらくトンネルしか見ていない気がする。たぶん、次もトンネルなんだろうし、その次もトンネルなんだろう。ハロー、トンネル。僕たちの住まう世界。トンネルからトンネルへと続く旅路。そういうのが僕の人生なのかもしれない。
「何を考えているの?」
「退屈で頭がおかしくなりそうなんだ。見てごらんよ、またトンネルだ。まったく代わり映えしない。もしかしたら、何かは変わっているのかもしれないけど、こうも真っ暗じゃ何もわからない。僕にとっては、何一つ変化のない状態が続いているんだよ。世界はトンネル化してしまったんだ。あるいは僕の人生がトンネル化したのかもしれない」
「ちょっと落ち着きなさい。世界はそんなに簡単にトンネル化したりはしないし、人生だって易々とトンネル化に屈することはないのよ」
「なんで君にそんなことがわかるんだい。だって、見てごらんよ。トンネル、トンネル、トンネル。どこにも逃げ場所はないんだ。このトンネルが僕たちを取り囲み、永遠に暗闇に閉じ込めたまま、どこかにつれていこうとしているんだ。もちろん、たどり着く場所もまたトンネルなんだろうけども」
「そんなことを確信したかのように語るのは傲慢だわ」
彼女は咎めるような目つきで僕を見つめる。僕にはわけがわからない。
「傲慢。これは驚いた。僕は絶望しているんだよ。このトンネル化した世界に」
「その絶望が傲慢だと言っているのよ。この世界について何も知らないくせに、勝手にトンネル化したと決めつけて放り出そうとしている。そういうのは無責任だし、無分別だし、工夫もアイデアも足りていないわ。それらをボールに集めて、パン生地のように練り上げたあと、私は傲慢というネームプレートをそこに付けたのよ」
「だったらどうすりゃいいのさ」僕は言った。
「信じることよ。この世界に光があるということを」
「そんなこといったって光を見たのは、もうずいぶんと昔のことだよ。うまく思い出せない」
「人間に想像力があるのは、そんな泣き言をいうためじゃないわ」彼女はきっぱりと切り捨てる。
想像力。僕は想像力について想像してみる。それは一体どんな姿形をしていたのだろうか。
「どうしても信じられないのなら、たった一つだけ心に留めておいて」彼女は言う。「あなたが見ている世界だけが、世界の全てじゃないわ。それさえ受け入れてくれるなら、きっと想像力も息を吹き返すでしょう」
そういって彼女もまた、トンネルが抱える暗闇の中へと消えていった。