7-本の紹介

【書評】タテ社会の人間関係(中根千枝)

現代の日本社会がそこにあった。

タテ社会の人間関係 (講談社現代新書 105)
タテ社会の人間関係 (講談社現代新書 105) 中根 千枝

講談社 1967-02-16
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と言ってしまってもほとんど問題がないだろう。

初版は昭和42年とあるが、finalventさんの書評を読むと、その3年前の1964年に中央公論で発表されたのがオリジナルなようだ。

しかし、これほどの年月が経っていながら、ここまで変わらないものなのかと驚かされるばかりである。

日本の(特殊な)社会構造

本書は日本の社会構造を分析した本だ。

どうやら日本はなかなか特殊な社会構造を持っているらしい。著者はカースト制度を持つインドと対置させながら、それを明らかにしていく。

社会は何かしらの集団を作る。そして個人はそこに属する。その際、二つの要素が集団を作るために使われる。一つは資格。もう一つは場。多くの社会がこれらを適宜に使っているが、日本とインドは針が極端に振れているようだ。

言うまでもなくインドのカースト制度は資格による集団作りだ。するとそれに対峙する日本は場による集団作りということになる。

そして、現代を見渡してみても、確かにそうなっている。枠によって区切られた場に人は所属し、そこにアイデンティティを全力で投げ込む。代表例は「会社」だ。

たとえば年功序列という制度は、「場」が機能していることを強く示唆する。個人が持つ能力や成果的貢献ではなく、その場に接触してきた時間の長さによって賃金や地位を決める。そして、多くの人がそれを当たり前に受け止めている。社会認識の中に場が組み込まれているのだ。

もちろん、そのような社会構造で日本社会は発展してきた。それは素晴らしいことだし、偉大なことだと言ってもよいだろう。が、デメリットがないわけではない。

場による集団作りの問題点

資格による集団作りと、場によるそれと比べてみたとき、いくつかの問題点が浮かび上がってくる。

  • 場(枠)は常に強調しないとあやふやになる→ウチとソト意識の強化
  • 場は異なった人が紛れ込まないため接触する機会がない→社交性の欠如
  • 場は資格による差異を作れない→タテ型構造の組織

他にもまだまだあるのだが、それらは本書を直接あたっていただきたい。

私が特に取り上げたいのは、次の二つだ。

一つは、集団(を組織する人々)との実際の接触の長さ自体が個人の社会的資本となってしまうこと。先ほど挙げた勤続年数に応じた賃金というのもそれだし、同じ会社であっても転勤してしまえば「ヨソモノ」になってしまうというのもそれだ。

これは明らかに転職、ひいては人材の流動化において不利な状況である。

もう一つは、個人の能力差がミニマムに考えられてしまう点だ。

伝統的に日本人は「働き者」とか「なまけ者」というように、個人の努力差には注目するが、「誰でもやればできるんだ」という能力平等観が非常に根強く存在している。

いみじくも著者は「伝統的に」と表現しているが、どうやらその伝統は現代にもしっかり受け継がれているようだ。この能力平等観はかなりやっかいな存在である。逆にこれがあるからこそ、「夢を売る」ビジネス書が売れるとも言える。

タテ社会が機能し、大きな懐を有していた時代はそれでもよかったのだろう。「誰でもやればできるんだ」というお題目の下で、その企業に献身していれば、その分の見返りはきちんと得られたのだ。「自己啓発」に取り組む必要なんてまったくなかったのかもしれない。

が、どうやら新しい産業の形の中では、タテ社会の企業はうまく立ち回れない雰囲気が漂っている。そんな中で個人の能力差がミニマムに扱われてしまうのは、どの側面を取ってみても危うい。

さいごに

もちろん、今の日本の全てが本書が書かれた時代とまったく同じとは思えない。変化は、わずかばかりではあるが起きているように感じる。でも、やはりそれはわずかなのだ。

不思議と、昨今盛り上がりを見せはじめているネット・ブログ・SNSの中に形成される集団にも、日本の社会構造が見て取れる。まあ、それを構成する人間は同じなのだから当然なのかもしれない。

本書を読みながらずっと、「単一社会からの離脱」というテーマが頭から離れなかった。タテの構造が崩れ始めているときには、新しい形のタテの構造を探すか、あるいはヨコ糸でそれをつなぎ止めるか。

何かしらの対応が必要になってくるだろう。

readingweekly

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