7-本の紹介

【書評】田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」(渡邉 格)

田舎で経営されているパン屋さんの話でもあり、

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」
田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」 渡邉 格

講談社 2013-09-25
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天然にこだわったパン作りの話でもあり、資本主義とマルクスの話でもあり、小商いの話でもあります。

つまり、ちょっと変わった、そして面白い本です。

搾取のメカニズム

話はそう難しくありません。

  • 労働者は生産手段を持たないので、代わりにそれを持つ資本家に労働力を売って稼ぎを得る。
  • 買われた労働力は資本家の自由に使われる。そして、資本家は利潤を追求する。
  • 価格の決定のメカニズムからいって、資本家は労働者を徹底的にこき使うと利潤が大きくなる。
  • よって、労働者は資本家に搾取されてしまう。

→だったら生産手段を自分で持てばいい!

ということで、__戦争で亡くなったおじいちゃんの助言にも後押しされて__著者はパン屋さんになろうと決意します。

しかし、自身が生産手段を持っても、資本主義のシステムから抜け出せるわけではありません。そこでは何もかもが絡み合っていて、AからBの場所に移動しただけでは、大きな変化は何一つ起きないのです。

そこで著者は、少し変わったパン屋さんの「経営方針」を打ち立てます。それは著者の言葉を借りれば、辺境で起こりつつある革命であり、「腐る経済」でもあるのです。

惚れそうなセリフ

細かい話はもうしません。

以下のマリさん(渡邉夫人)のセリフを読んで共感できるならば__私は大いに共感しました__ぜひ、ちらっとでも本書を覗いてください。

「算数無視したら、経営なんて成り立たないよ。ふたりで何度も話してきたよね。『まっとうな”食”に正当な価格をつけて、それを求めている人にちゃんと届ける。それで世の中を少しでも真っ当な場所にしていこう』『つくり手が尊敬される社会にしていきたい』って。そのためには、つくり手がちゃんと暮らしていけなきゃいけない。この価格は”高い”んじゃなくて、原材料も含めて、”つくる”ことに対して支払われる”正当な”価格だと思う」

私自身も、食ではないものの、一人の作り手として生計を立てています。

できるだけまっとうなものを書いて、本という文化に貢献をしよう(あるいは恩を返そう)と考えています。このブログだってそうです。

もちろん何が”まっとう”かを決めるのは難しいし、責任を負う必要もあります。でも、「それは、明らかに違うでしょ」というものに手を染めずに、粛々と自分なりにできることを進めるぐらいならばなんとかやっていけます。

それで達成できる規模が、__まっとうでないものと比べて__小さいものだとしても、それはそれで十分納得感を得られるのではないか。そういう風に私は感じます。

その他の本

まだ考えがまとまりきっていないので、「おわりに」は省略して、本書を読んでいて思い浮かんだ本をいくつか紹介しておきます。

僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか? (星海社新書)
僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか? (星海社新書) 木暮 太一

講談社 2012-04-26
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資本主義と価格決定のメカニズムについて知りたければ、本書がお手軽でしょう。

スペンド・シフト ― <希望>をもたらす消費 ―
スペンド・シフト ― <希望>をもたらす消費 ― ジョン・ガーズマ マイケル・ダントニオ 有賀 裕子(あるが ゆうこ)

プレジデント社 2011-07-20
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「腐る経済」で語られていることは、ある意味で「スペンドシフト」の拡張とも言えます。消費者がお店から何かを「買う」というだけでなく、そのお店が仕入れ先から何かを「買う」という行為もスペンドなわけで、それが少しずつシフトして行った先に、どんな風景が広がっているのかを考えるのは面白そうです。

小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ
小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ 平川 克美

ミシマ社 2012-01-20
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本書内でも名前が出てきます。「これからは小商いの時代だ!」と謳うつもりはありませんが、小商い感を持った人たちは今後次々と出てくるでしょう。

もやしもん(1) (イブニングKC (106))
もやしもん(1) (イブニングKC (106)) 石川 雅之

講談社 2005-05-23
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発酵の話と言えば、この漫画。面白いですよ。

努力しない生き方 (集英社新書)
努力しない生き方 (集英社新書) 桜井 章一

集英社 2010-03-17
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努力ではなく工夫。著者が語る「菌の声を聞く」という部分が、何かしら雀鬼を彷彿とさせました。

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